屋久島ツーリング・2日目


 朝4:00起床。前日台所を拝借して炊き上げたご飯とカップラーメンをすすって朝飯
を済ませる。周りは勿論熟睡中なので、静かに行動する。しかしやはり眠い。少々気が
萎えるがここで眠気に負けて行かなければ、屋久島に何をしに来たのかわからない。


 小雨の降る中、5:40分に民宿を出発。ここから縄文杉登山の荒川登山口までは、
約1時間といったところか。
 安房から道路を山の方角へ進路変更し、登山口へ向かう。俺達と同じ方向に向かう
車やバイクは殆ど居ないのに、大型バスとは4台くらいすれ違った。大勢の登山者が
縄文杉を目指すのだろう。


 6:30分、荒川登山口駐車場に到着。
既にたくさんの登山者がいる。バイクも
10台以上は居る。自動車は駐車場が満
車のため、かなり手前の方に駐車して歩
くことを余儀なくされているようだ。
 周りを見てみると、居たいた!リーダー
発見。俺達と別れてから、どこかの宿に
泊まって仲間を見つけていたようだ。良か
ったね。そろそろ何故リーダーという渾名
をかみさんが付けたのか、説明しなくては
いけないようだ。

 数名の仲間と一緒に縄文杉を登るようだった
が、どう見ても一番年長で、登山経験もあると
言っていたし、俺たちと居る時と違ってとても生
き生きしていたので、かみさんが「リーダーで
いいんじゃない?」ということで、渾名がリーダ
ーになったわけだ(当然、本名すら知らなかっ
たが)。


 しかしこれほど人がたくさん居るとは想像して
なかっただけに驚きが凄かった。
これはきっと
渋滞するなぁ・・・なんて思いつつ、ブーツを登山
靴に履き替え、ジャケットを合羽に着替えてザッ
クを背負い、念入りに準備体操を済ませて、6:
50分、いよいよ登山開始!
 俺はそれでも年に2,3回は山に登っているが、
かみさんなんて、俺と結婚する前に、近所の小さ
な山をハイキングして以来だろう。大丈夫かな・・


 そんな俺の心配をよそに、かみさんはよほど嬉
しいらしく大はしゃぎで歩いていく。1時間ほど歩
くと、昭和40年代まで屋久杉の伐採で生計を立
てていた、小杉谷集落跡に到着する。ここで休憩。

 小杉谷集落はかなり大きな集落だったようだが、今となっては僅かに石積みなどが残され
ているのみ。廃墟とまでは言わないが、それに近い感じ。でも建物が一切残されていないか
ら薄気味悪さは微塵も感じられない。
 荒川登山口から、途中の大株歩道入り口までの区間は、殆どの区間でトロッコ道を歩く。
最初は物珍しくて楽しいが、枕木の幅と俺の歩幅が合わないことが、段々ストレスになって
きた。
 周りを見ると、登山口付近から本州では見たことの無いようなぶっとい杉が何本もニョキ
ニョキと天に向かって伸びている。さすがは屋久島、スケールが全く違う。


 登山者の年齢層はまちまちだが、子供の姿を余り見かけなかったのは、意外だった。登
ってみて分かったことだが、子供が挑戦するには相当頑張らないといけないから、敬遠され
ているのかもしれない。男女別では女性が圧倒的に多く、多くは屋久島のエコツアーに参加
している人々だった。時々ガイドさんの説明が始まると、ちゃっかり耳を立てて、ガイドさん
の説明を無料で聞けたが、さすがに勉強しているだけあって、やたらと詳しい。まぁこっちは
タダでガイドさんの薀蓄を聞けたのだから感謝しなくてはいけない。

 小杉谷集落を過ぎてしばらくすると、出発前にあれほど元気だったかみさんから笑顔と無駄
話が消えた。段々体に応えてきているらしい。普段運動を殆どしない体には辛くなってくるのは
当然か、いくら学生時代にワンゲル部もどきに入っていたとは言え・・・。一番最後に物を言うの
は気力だけだ。そう辛い登山ではないから大丈夫だと思うが・・・。
 周りの連中も徐々にペースが落ちていく様子が伺える。ずっと同じような道を歩くのは意外に
も疲れるものだ。多少でもアップダウンがある登山道の方が、心理的に楽なのかもしれない。


 ダラダラとトロッコ道を登って約3時間、ようやくトロッコ道とお別れの場所である、大株林道
入口に到着。トイレはこの先ないので、しっかりと用を足してから出発する。ここからは普通の
登山道だ。いきなり急な坂道を登るとあとはフラットな登山道だ。しかし今度は木製階段が俺た
ちの心労を増長させることになる。
 屋久島の登山道は縄文杉まで綺麗に整備されているが、高低差のある場所はことごとく木製
階段が設置されている。これがまた曲者で、手すりがないうえにかなりの急勾配で、段差が大
きく幅が狭いため、よほど気をつけて昇降しないと、足を滑らせてしまう危険性が高いのだ。実
際に俺たちが登った2,3日前に60歳代のご老人が、縄文杉からの帰り道の下り階段で、足を
滑らえてしまってそのまま階段下まで滑り落ち、頭を強打して亡くなってしまったというニュース
を聞いたのだ。


 近くに居たガイドさんに詳細を聞いてみたが「知らない」の一点張り。だから登山客にくどい
ほど注意をすることもしない。隠したい気持ちは分からんでもないが、死人が出ているのだか
ら、やはり注意を喚起しなくてはいけないと思うのだが・・・。何が疲れたって、この階段の登り
下り、特に下りが非常に神経を使ったし、体力的にも疲れたのだった。

 大株林道から約30分ほどで、有名なウィルソン株に到着。

 ウィルソン株は、思っていた以上に大きくて
びっくりした。っていうかこの株はまだ命があ
るのだろう、と思うくらい生気が満ち溢れてい
る感じだったのだ。中へ入ってみると、これは
相当広い。10人くらいが楽にビバーグできる
広さだ。何故か皆さん上にカメラを向けて写真
を撮っている。何ですか?って聞くと「ハートに
見えるでしょう」と教えてもらった。おお!確か
にハート型に見える。早速俺も皆さんを真似
て写真をバシャバシャ撮っていた。


 もぅこのあたりまで登ってくると、そうそう大き
な杉にも驚かなくなっていた。慣れとは怖いも
のだ。果たして縄文杉ってどんな大きさの杉な
んだろうか???

 ウィルソン株を過ぎると、登山道はいっそう
厳しくなってくる。それと同時に珍しい形の屋
久杉たちが俺たちを迎えてくれる。その度に
登山の疲れが癒されるのだ。感謝しなくては
いけない。


 昼前、ようやく縄文杉に到着!よくここまで
登った!とかみさんを心の中で褒めてあげる。
荒川登山口から道程で10kmくらい、標高差
は800mほどだが、大株歩道入口からがや
はり辛かった。


 目の前に聳え立つ縄文杉は、大きさとか、
樹齢とか、そういう細かいことを気にさせない
ほどの威厳があった。思わず感動せずには
居られなかったのだった。

 縄文杉は直接手に触れることができない。
展望台の上から眺めるだけだ。さすがに混雑
していて、写真を撮るにも行列ができていて、
辟易してしまった。こういう時にその人がどの
程度のマナーを持っている人かが分かるとい
うものだ。
 人ごみからさっさと離れて、縄文杉を下から
眺めながら昼飯を食う。時間が経っているせい
か、昨日の晩に握った握り飯はあまり旨いと
思えずに、行動食のお世話になる量の方が多
かった。


 下りは木製階段を踏み外さないように慎重に
くだった。おかげでどっと疲れてしまい、小杉谷
まで下りたときにはかなりぐったりしていた。


 天候が回復してすっかり青空が見え始めた
16:10分、やっとのことで荒川登山口に無事
生還。9時間20分の登山だった。


 またライダーの格好に変身して、16:50分
出発。久々のバイクはやっぱり気持ちいい。
 今夜は、屋久島南西部、栗生にある「屋久
島青少年旅行村キャンプ場」だ。多少の雨が
降っても、昨晩のような何から何までカビ臭い
部屋に居るよりはマシだ。

 安房から島の南部を半周して栗生まで走る。すっかり晴れて暑くなった県道77号を西へ向かう。途中
尾之間のAコープに立ち寄り買出しをする。ここで縄文杉登山で度々う見かけた名古屋ナンバーのライ
ダーと話をする。今夜は何処か適当な場所でゲリラキャンプをすると言っていた。


 途中の平内海中温泉や湯泊温泉で、汗を流したいのを我慢して、キャンプ場へ向かう。あんまりノン
ビリしていると夕陽に間に合わなくなるからだ。慌ててキャンプ場に飛び込み、受付を済ませて夕陽を
見に行くも、残念ながら西の水平線付近は霞んでいて太陽が隠れてしまい、残念。
 屋久島青少年旅行村は、芝生のほぼフラットなサイトと、幾つかのロッジがある。管理棟にはシャワ
ーやコインランドリーもあって便利だ。ライダーも10人くらいはいるようだ。


 晩飯の支度をしていると、隣に同じ静岡県のKXL250のライダーさんが来たので、一緒に晩飯を
食うことに。明日縄文杉を登るというのでアドバイスをしてあげた。でも登山道具は持っていないようで
ちょっと心配・・・。
 バイクのこと、キャンプのことなどを3人で酒を飲みながら語り合い、22時頃疲れもあって撃沈して
しまった。


 今日の走行距離・・・82km