三騎士英雄譚〜第十九章〜
エドワード・レザースミス(23歳)男 愛称=エド
セルディア王国第六近衛騎士団所属。
革鎧職人の息子として生を受け16歳で戦時召集により兵士となる。
王都で開催されたトーナメント(馬上試合)の前座で行われた
勝ち抜き剣術試合で脅威の60人抜きを果たし近衛騎士の叙勲を受ける。
民衆寄りの考え方から上官との諍い(イサカイ)は絶えないが
剣の腕は王国一とも大陸一とも噂される。
ランスフォード・シュタイン(29歳)男 愛称=ランス
セルディア王国の無名の騎士の家生まれる。第三紺碧騎士団副団長。
父アーデル・シュタインは国王命令無視の罪により
騎士資格剥奪という憂いに遇うが、当時14歳であったランスに
異例の騎士叙勲を与え御家断絶の危機を逃れる。
また、29歳で騎士団副団長の要職への出世も異例。
セドリック・フォン・ラグワルト(32歳)男 愛称=セディ
セルディア王国ラグワルト伯爵家の次男。第二白銀騎士団中隊長。
貴族の名家の生まれだが華やかな社交界を嫌う変わり者。
いまだ独身を通しており、剣の道に進むが
うらはらに婦人からの人気は高い。
物腰は柔らかく、文才に長けるが剣の腕は白銀騎士団随一の腕を持つ
シャルル・フォン・フランソワーズ(29歳)男 愛称=シャル
セルディア王国フランソワーズ子爵家の当主。
剣より学問に通じ、第一黄金騎士団に所属するも
自領の統治に尽力を尽くしている。
セディとは幼少からの付き合いがある。
学者肌の貴族。
舞台説明
セディN:セルディアは作物の収穫の季節も終わり、
大陸側からの冷たい風が冬の到来を告げていた。
この王国には豪雪に見舞われる地域は殆ど無いが
それでも大軍を運用するには適しておらず。
大きな戦は新芽が芽吹く季節まで行われないだろう。
静かに冷える空気は戦士達の休息を約束してくれているのだろうか・・・
ランスN:セルに続き、ガルニア要塞にアルフレッドが帰還したのは
つい先日の事である。
シャルル卿からの召集により、
私・・・他、セドリック卿、エドワード卿が司令室に集められた。
エド:フランソワーズ様、今日は何用ですか?
シャル:皆さんを呼び集めたのは他でもありません。
現在、この要塞は資金援助を絶たれ
補給が今まで通りに行かない状態になっています。
ガルビア卿も本格的に我々と対決姿勢を見せているのでしょう・・・
そこで、これからの方針を話しておこうと思いまして。
セディ:しかし、これからは冬の季節に入るのだから・・・
ガルビア一党も無理に軍を動かしたりしないでは?
シャル:油断はできませんが・・・そうでしょうね。
しかし、大軍を動かさない分、影での動きを見せるでしょう・・・
ランス:私を襲ったあの男も・・・動きを見せるのでしょうか・・・
エド:で、フランソワーズ様はどうお考えなんですか?
シャル:食料や物資は、この要塞に一年は立て篭もれる程の備蓄があります。
グリマン男爵から没収した私財を処分したので
足りない物資は貿易都市バルマから買付ける事が出来るでしょう・・・
エド:それは篭城の策をとるという事ですか?
シャル:いえ、篭城とは敵に攻め立てられ際、味方の援軍を期待して
到着までの期間を持ち応える為にとる策です。
敵も攻めて来ていない現状で行う事ではないですね。
ランス:しかし、討って出る訳でも無いのでは?
シャル:はい、表立った動きは見せずに相手の出方を窺(ウカガ)おうと思います・・・
敵だと分かっていても、此方が表立ってガルビア卿を討てない様に、
ガルビア卿も表立ってこの要塞を襲撃する事が出来ないでしょうから。
セディ:派閥は違えど、表向きは同じ王国の貴族同士ですからね・・・
明確な罪が露呈しない限り、お互い手を出せない訳ですね?
シャル:その通り。お互い、兵を動かせない限り、ガルビア卿が策を講じれば
直接ガルビア卿に従う者が動きを見せる筈です・・・
セディ:それで相手の出方を窺(ウカガ)うのですね?
此方が動くより、相手の悪行を露呈させる・・・と
ランス:なるほど、現在の戦力差では正直なところ劣勢は否めない。
下手に決起して内乱に発展すれば、奴の思う壺という訳か・・・
シャル:それから今までに集まった情報からガルビア卿が
アスエルの三聖剣の捜索に乗り出している事が分かりました・・・
これについてはエドワード卿、貴方にお任せしようと思ってます。
エド:私にですか!?
シャル:行方が判明していない最後の一振り、『太陽の大剣』の探索を
お願いしたいと思っているんですが・・・どうでしょう?
エド:わかりました。
一命に代えましても・・・
シャル:有難う。しかし、必ず生きて戻ってきて下さい。
傭兵団長のグレゴール、賢者のサナウジャール殿を同行させましょう。
見つけ出した『太陽の大剣』は、エドワード卿・・・
貴方が所有して下さい。
エド:聖剣をこの私に!?
セディ:エドワード卿はセルディアきっての剣の使い手・・・
私も聖剣の所有者として一番相応しいと思いますよ。
エド:・・・・有難う御座います。
シャル:ランスフォード卿は要塞の練兵をお願いします。
春にはガルビア卿は軍を率いてこの要塞を攻略に来るでしょう・・・
それまでに練度を出来る限り上げて頂きたい。
ランス:了解した・・・尽力致そう。
シャル:ところで、アンジェリカ夫人の経過は順調ですか?
ランス:ははっ・・・ご心配、有難う御座います。
今のところは順調な様で・・・ゆっくり静養させて戴いております。
シャル:それは良かった。
それと『星の剣(ツルギ)』の修復も急いで下さい。
修復後は貴候の所有という事で構いません。
・・・・ランスフォード卿には、これからのガルニア要塞の全軍指揮を
采って戴きたいと思ってます。
その際、指揮官が聖剣を携え指揮を取れば兵の士気が上がるでしょう。
ランス:心得ました。明日にでも修復に取り掛からせましょう。
セディ:で、シャル・・・私はどうすれば良いんだい?
シャル:ガルビア卿は政治的圧力によりルーク皇太子派の貴族達を
懐柔する動きを見せています。
残念ながら、もう既に何人かの貴族は鞍替えしている様ですね・・・
セディは現在ガルビアが懐柔を進めている、
ルーク皇太子派貴族との会談をすすめ・・・
これ以上のルーク派の勢力縮小を防いで下さい。
セディ:漸(ヨウヤ)くガルビア卿も本気を出して来た・・・そういう訳ですね。
シャル:ええ、この冬の間に地盤を固めるつもりでしょう・・・
現国王アスベールU世陛下の容体も芳(カンバ)しくありません。
ランス:宮廷医師団の噂では・・・・もって後、半年・・・とか。
セディ:ガルビアの立場ならこの半年の間にアスター殿下の擁立を
急ぐでしょうね・・・
擁立前にルーク皇太子殿下に戴冠されては
全て水泡に帰すでしょうから・・・
エド:私欲の為に国を乗っ取ろうとする様な男が、この国を支配すれば・・・
グリマン男爵の様に民を圧政で苦しめるに違いない!
セディ:そうでしょうね・・・
しかし、この先からは厳しい戦いを強いられる筈です・・・
ランス:私を襲ったガルビアの手の者も、かなりの手練だった・・・
フォルテウス卿達が港街で襲撃を受けたという刺客も
三人掛かりで討ちもらした程だという・・・
侮れない相手である事は間違いないでしょう。
エド:暗殺を請け負うエスティア人の部隊の事ですか?
ランス:エスティアから亡命したという貴族に関係がある者達だろう・・・
エド:デミドーラ王国との国交も緊張したままだと言うのに・・・
エスティア王国まで介入してきては、セルディア王国の存亡自体、
危うくなってしまいますよ!?
セディ:暗殺部隊は亡命した貴族の私兵の様なモノだと思いますよ?
エスティア王国の介入は今のところ無いと思って良い筈です。
ランス:要塞攻略戦で行方不明となっていたサーバルド卿、アルフレッド卿が
捕虜の身から脱走してくる際に調べをつけて来てくれたのですが、
デミドーラ王国のガルビアとの内通者は
ボドワン・アンデルソン外務大臣だという事です・・・
シャルル卿には既に報告している事ですが・・・
エド:デミドーラの外務大臣ですか!?
それはまた・・・大物ですね・・・
セディ:デミドーラ国内でも発言権は強い人物ですね・・・
しかし、猜疑心(サイギシン)の強い男でもあると聞く
ガルニア要塞の件でガルビア卿には一度裏切られた事になりますから・・・
今度は余程ガルビア卿の勢力が優勢にならない限り
動かないと見て良いでしょう。
シャル:しかし侵略行為を行ったのは明らかにセルディア側です
デミドーラ軍が兵を起こすのに十分な大義名分はある。
楽観も出来ないでしょう?
セディ:ですが、デミドーラ軍にとって、このガルニア要塞は
特別な思い入れのある場所です。
絶対の守備を誇った、この要塞は、
敵の手に落ちた瞬間、デミドーラ軍の畏怖の象徴と変化した筈です。
シャル:確かに要塞建設より攻略された事が無かった要塞なのですからね。
セディ:要塞が狙われる可能性がないとは断言しませんが、
デミドーラ軍が動くとすれば・・・
シャル:海路・・・・バルマの港もしくは軍港ベイナンスからの侵攻・・ですか・・・
セディ:そう考えても甘い考えでは無いと思いますよ?
ランス:もしガルニア要塞への侵攻があったとしても
私とシャルル卿がいる限り、簡単に落とさせはしませんよ。
セディ:それは頼もしいですね。
ランスフォード卿の実力は信用しています。
シャル:私は信用ないのかな?
セディ:当然、信用してますよ?シャルの狡猾さはね。
シャル:・・・・狡猾さ・・ですか・・・
智謀と言って欲しかったですね。
エド:あの・・・聖剣探索の事ですが・・・
フランソワーズ様は何か手掛かりを掴んでおられるのですか?
シャル:実のところ、これといった手掛かりがある訳ではないんです・・・
しかし、リーゼロッテ王女の護衛で要塞を訪問されている
ユーリー・アルゲエーフ氏が母国の伝承に手掛かりがあるかも知れないと
話してくれました。
エド:ユーリー殿が?
・・・・母国というとローゼルク王国ですか・・・
シャル:ええ、今度の探索行は、かなりの難航が予想されますから、
十分、気を付けて下さいね・・・
ランス:ローゼルクは・・・今頃、雪に閉ざされた極寒の地だろうからな・・・
エドワード卿、鎧や馬などはローゼルクに着いてから
新たに揃えなおすと良いだろう。
セルディアの甲冑は防寒には優れていない・・・
金属は氷の様に冷え、火傷の様に皮膚を傷つけると聞く
馬も雪上に適した馬でなければ思う様に操れぬだろうしな。
エド:はい。有難う御座います、ランスフォード卿。
その様にする事にします。
シャル:なら探索費用として上乗せして考えておきましょう。
・・・・聖剣を探す限り、エスティア人の暗殺部隊との遭遇が考えられます。
エドワード卿が後れを取る事は無いと思いますが、
背後にも気を配って下さい・・・
真っ向勝負を挑む連中ではありませんから。
エド:分かりました・・・
ランスM:同国の騎士と戦う為の練兵か・・・
遣り切れぬものだな・・・
エド:俺はフランソワーズ様からの依頼により聖剣の探索行に赴く事になった。
向かうは、ユーリー殿の故郷ローゼルク王国、
セルディアよりエスティア王国北部を抜け
さらに北へと進んだ地にある北方の大国。
古(イニシエ)の伝承を辿り、俺の苦難の旅が始まろうとしている。
見知らぬ地での試練がこれ程までに大きい事を
この時、知りもしなかった・・・
二十章へつづく・・・
次回に続く。