モノノ怪 レビュー 1-12

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モノノ怪

座敷童子 前編 / 座敷童子 後編 / 海坊主 序の幕 / 海坊主 二の幕 / 海坊主 大詰め のっぺらぼう 前編 / のっぺらぼう 後編 / 鵺 前編 / 鵺 後編 化猫 序の幕 / 化猫 二の幕 / 化猫 大詰め
序説
2007/7/12

2006年1月から3月に放映された「怪-AYAKASHI-」の 中の評判の一説で、
斬新な美術や演出、ストーリーテリングで驚かせた新感覚の「化猫」
その主役である薬売りのモノノ怪調伏物語がピン立ちした作品。

化 猫
非常に優れた作品なので、未見の方はごらんになることをお奨めする。
座敷童子 前編
2007/7/12

「皆々様の真と理…お聞かせ願いたく候」

サッカー中継、さらには中継延長のおかげで開始が3時台までずれ込んだので、
念のため前後を大幅に加えて録画。だって何が起きるかわからんもんね。
というわけで余計な波乱の中、1年3ヶ月ぶりに帰ってきた謎の薬売り。
1年3ヶ月前にじんわりと感動した人は「待ってました!」で、先日の再放送で
初めて見た方は「ほほう、これが…」、全く知らずに伝え聞いた評判だけで
見たチャレンジャーは「ななな、なんじゃこりゃー!?」だった事と思われる。

何しろ続編には警戒が必要ゆえ、ドキドキしながら「ノイタミナ」のロゴを見て
ヒヤヒヤしながら本編に突入したのだけれど、5分経ち、10分経ってみればもう
すっかり物語に引き込まれて夢中になっていた。この世界の退廃的で恐ろしい
麻薬感にアテられて酔わされ、変わってないなぁと嬉しくてわくわくした。
脚本が「化猫」の時の横手美智子だけではないのもやや不安だったけれど
(よりによって同じ日の銀魂をやってた)謎の多い台詞回しや芝居がかった掛け合いなども
化猫の時のままで、特に問題はないようだった。まだ油断はできないけど。

今回の舞台は旅籠。雨の中、あの時のように「モノノ怪」の臭いを嗅ぎつけた
薬売りが一夜の宿を貸してくれと申し出る。一癖も二癖もありそうな女将、
真っ黒でチェケラな番頭に、そしてなんと青い眼に金髪の日本髪という、
実にファンキーな身重の女。女はちょうど薬売りで満室になった旅籠に
止めてくれとゴネまくり、ついに「あの部屋」に通される事になる…

「ずいぶん夜更かしだこと…」
キンパ妊婦の耳には楽しそうに走り回る子供の足音、笑い転げる子供たちの声。
すでにあちこちにくまなく張られている薬売りの強力なお札もまた懐かしい。
やがて眠りこんだ彼女の前に、1人の坊が現れる。でも襖は閉じたまま…
「それ返して!」
それはバラバラと番台から転がったり階段に置かれていた起き上がりこぼし。
「ややこがいるの?」
あと4ヶ月で生まれるそうだけど、デカいからもう臨月なのかと思ってたよ。
「ねーねー、あっち行こー?」
隣の部屋へと誘う坊に、やがて母になる彼女はもうお帰りと優しく諭す。

「ただ産みたいだけ!」
彼女はどうやら大店の若旦那と子を為したものの、今後一切関わらないという
約束をして飛び出してきたようだ。同じように騙された骨女を思い出すなぁ…
とはいえ関わらないと言ったくせに後になって名乗り出てくるパターンが
あまりに多いから、信用できないと始末したがるのも無理はないかな。

刺客は彼女の命乞いを聞くものの、手ぶらでは帰れないと凶刃を閃かせ…

この子がっ…産まれたがってるのぉ!

その叫びに答えるかのように、刺客は何かに捕まり、天井へと吊り上げられる。

「守ったのか…」
彼女が聞いたという子供の声。走り回る足音。そして天井から垂れる羊水。
「座敷わらしだ」
退魔の剣がカチンと歯を鳴らす。形たる名は明かされた。あとは真と、理。

くる・くる・くる…ぐる・ぐる・ぐる…
場面転換のたびに襖が閉じたり、同じようでいて微妙に違う似たシーンが
何度も差し挟まれたり、派手なテクスチャも黒い人影も背景に溶け込んだ
薬売りなど、相変わらず「見せる」センスがいい。クォリティ高いなぁ…

櫻井も久々に謎だらけの薬売りを好演。
ことに女将と薬売りがもう1つの部屋を巡って話す階段のシーンは、
短気な私がイラッとくる直前でセリフが返ったり動きがあったり、
かなり絶妙なテンポで間を取ってて唸ってしまった。

わずか30分足らずにこんなに引き込まれたのは久々かもしれないなぁ。
果たして女将は見かけによらず優しいいい人なのか、それとも彼女こそが
今回のモノノ怪の元凶なのか。赤ん坊と座敷わらしといえば、恐らく水子が
からまないはずもなく…また哀しい物語が待っていそうでドキドキする。

OPはチャーリー・コーセイの渋い声でのアミーゴ調。
前のOPは「怪」共通だったけど、どう見ても「化猫」が一番あっていたので
今度はどうかなと思ったけど、大人っぽくてなかなかいい感じだった。
EDも歌・絵共に綺麗であってたと思う。これは期待に応えてくれそうだよ。


座敷童子 後編
2007/7/19

「あなたがいいです…」

その部屋は、女郎が身ごもった赤子を降ろすための始末部屋だった。
壁一面の引き出しはややの墓。まるで現在のお墓マンションのように。

「こいつぁ…手強い」
形は「座敷童子」とわかった。残すは真と、理。

過去を巻き戻されてただ子供が生みたいと訴えるキンパ妊婦に、
「バーカ」とかぶる女将のブツブツいう物言いが面白かった。
襖の向こうは同じ部屋が続き、番頭も女将も薬売りも出られない。
けれど唯一違う風景を見る志乃は、男と女の睦言と、また現れたカラフルな
「ザ・赤子」、そして意味深に転がるややのようなダルマに囲まれる。

「おめでとー!」
女の腹に命として宿った瞬間。本当は誰からも祝福されるべき瞬間。
誰も喜んではくれなかった。ザ・赤子にはおっ母ぁはいない。
「いーなぁ…」
母に慈しまれる腹の中の赤子。
彼らには、そんな風に優しく待ちわびてくれる人はいなかった。

志乃が寝ていた台の上で繰り返された惨劇が、はっきりとではなく
イメージとしてちょこちょこと描かれる演出が相変わらず素晴らしい。

天秤は傾く。真実、偽り、右へ、左へ。

孕んだ女郎の弱みに付け込む男。腹の子を流そうと女郎を虐待する女将。
そして直前まで愛してる、結婚しよう、親たちもわかってくれると繰り返し、
志乃が妊娠したと聞いた途端に「え?」と驚くほど急激に冷え込む若旦那。

真は明かされた。残るのは心のありさま。

ザ・赤子が自分の母として選んだのは志乃。
子供たちはただ生まれたがっているだけなのに…
母としての気持ちを動かされた志乃は薬売りに逆らう。

「だけど…相容れん」うぉ、カッコいい

志乃が選んだのは赤子たち。一緒に、産んであげる…
けれど薬売りが貼ってくれたお札を剥がして流れたのは血。
飲み込まれるぞ…その言葉どおり、やはり座敷童子が望むのは血なのか…

いつも、頑張ってくれてありがとう。
刺客からも雨からも、体を張ってややを守ろうとする志乃の姿に、童子たちは
自分たちにはいない母を見た。そして志乃に受け入れられ、存在を認められた時
理は明かされて退魔の剣が抜けた。その一連のシーンを敢えて描かず、薬売りが
変化した黄色い男だけを見せたのはいいけど、初めての人にはわからんだろ…

童子を斬った薬売りは、描かれた浮世絵の女の腹をさすってやる。
まるで誰にもさすってもらえず、語りかけてもらえなかった赤子たちのために。

そして同じくその絵と自分の腹を撫でる、キンパを下ろした志乃ちょっと可愛い…かな?
赤子がもう一度生まれてくるのか、きちんと成仏したので生まれてくるのは
やはり生粋の志乃の子なのかはわからない。もしかしたら座敷童子は志乃の
お腹のややに触発されて、その姿を借りて現れたのかもしれないし。

「私のところに来てくれて、ありがとう」
産まれてきていいんだよ。産まれてきてくれれば嬉しいよ。
単純で最も原始的な愛があれば、救われない魂もまた救われていく。

本当に可愛くて愛しい小さき存在に対しては、ホント、これだけたくさんいる
人の中から、よりによって私なんかの元に来てくれてホントにありがとうと
ついついお礼を言いたくなる気持ちはよくわかる。だって可愛いんだもん♥

産まれてくる事を許されなかった彼らの理は「この世に生まれてきたかった」
かと思ったけど、志乃との会話を聞いた限りでは、全てを委ねられる相手に
「ありのままに受け容れてもらいたかった」ということだったんじゃないか。
または「歓迎されたかった」「生命の芽生えを喜んでもらいたかった」かな…


海坊主 序の幕
2007/7/26

「加世さん」「あ〜!天秤さん!」

今回はまたまた舞台はガラリと変わって海の上、そして加世が再登場。
船の中にいけすなんぞがしつらえてある絢爛豪華な船に乗っているのは、
朗々とウンチクを語る胡散臭い呪術師の幻殃斉、高僧の源慧とおつきの僧の
保毛尾田保毛男…じゃなくて菖源、気味の悪い傷のある陰気な侍佐々木など
また一癖も二癖もありそうなヤツらばかり。そんな中に薬売りもいた。

坂井の化猫の話はすっかり浮世の噂になってるらしい。
加世は「化猫」ラストで言っていたように忌まわしい坂井家を辞し、
奉公先を探して江戸に行こうと考えているのだとか。ってかあれって
江戸じゃなかったのか…そういえば富士山が綺麗に見えてたっけね。

座敷童子は雨のしずくのテクスチャが面白かったけど、今回は風。
それにしても相変わらず背景の描き込まれた襖や天井がすごいなぁ。
薬売りの前には、魚人とでもいうべき足の生えた魚がびちびち、
そして目玉が横っちょについた鳥のようなものがバタバタ。

この船には羅針盤が乗っているために北東の江戸へ迷うことなく行ける…
はずだったのに、何者かに傍に磁石を置かれて方向は狂い、船はいつしか
龍の三角と呼ばれる妖の海に迷い込んでいた。加世の寝間で泣いてた?
女は誰なんだろう?あれが今回のアヤカシのキーパーソンなんだろうか。

加世を気に入ってるらしいお馴染みの天秤で距離を測ろうとする薬売り。
そんな折、鳴り響く虚空太鼓と共に空から現れたのは巨大な迷い船だった…

って、空から来るなんて反則じゃん!ってかどう見ても船じゃないじゃん!

やがてそこから来たのか魚の骨らしき呪縛がビシバシと船に巻かれていく。
底抜けのひしゃくを用意しろって、あれが船幽霊とも限らないのにムダでは?
「そもそもひしゃくをよこせとも言っていない」
ほら〜、やっぱそうじゃん。

すると幻殃斉は主に灰を持ってこいと命じる。
確かに、以前薬売りが坂井の屋敷で結界を張るのに使ったのは塩だった。
けれどここは海なので塩はいくらでもあるので効果がないのだとか。
そこで代わりに使われるのは灰…おお、幻殃斉すごいじゃないか!

…と思ったら、なんと薪を束ねていた縄ごと燃やしたので効き目がないとか。
あーあ、せっかくいいとこ見せられると思ったのにねぇ…ダメダメだねぇ。
それに佐々木が刀を抜いても、アヤカシに人殺しの道具は効かない。

「眼を開けていたら…つぶれますよ」
結局薬売りが火薬を練って調合した「空にだけあるわけではない光」を
爆発させて退却させる。乳鉢からぼんっと紙風船のように拡がる爆弾玉。
光ってどんなのかと思ったら真っ白な背景にお札の眼みたいな物が出て、
やがてそれが閉じるという、少なくとも単なる光ではなかったみたいだ。

「それに比べて私はぁ…」
せっかく言いかけたかけたところでバタンと閉まる襖に笑った。
チーチさんは相変わらずよく通るデカい声で元気に頑張ってるなぁ。
江戸で一旗上げたがる似非修験者のようだけど、破邪の祈祷はできるらしい。
仕事柄小田島ポジションならいいキャラになりそうだけど、ドグサレキャラの
可能性もあるね。チーチさんはスゴむとかなり怖いのでどっちでもいいけど。

名を揚げたい幻殃斉、退魔の剣を見たがってた佐々木、消えた坊主たち…
「薬売り以外は皆怪しい」という前提で始まった加世の迷?推理劇だけど、
それを聞いてなぜか笑う薬売り。加世はそれを見て急に不信感を募らせる。
「楽しんでいるの?」

今回の薬売りはやけに謎めいてて不思議な感じ。まぁいつも不思議な
ヤツっちゃ不思議なヤツだけどね。さて一体どんな結末に至るのかな。


海坊主 二の幕
2007/8/2

幻殃斉曰く「もののけ」の「け」は病気を指すそうだ。
モノノ怪とアヤカシは似て非なるもの。この世に八百万の神々がいるように、
同じだけのアヤカシも存在する。けれどそのアヤカシと人の怨みや怒り、
憎しみや哀しみが結びつくと、人に祟り、害をなす「モノノ怪」となる。

「あんまり怖い顔をしてると嫁の貰い手がなくなる…」
加世は飄々とした薬売りに磁石を置いたのはあなたじゃないんですかと
問い詰めるも、応でもなく否でもなくのらりくらりとかわされる。

けれどその時船の舳先に現れた謎のアヤカシがいた。
目玉が一杯ついた琵琶を持ち、目玉が一杯ついたでっかい魚は妖怪海座頭。
海座頭は人と出会うと問いかけてくる…って、若本かよ!?

まずは船主に問う。最も怖いものは何か。
最初は幻殃斉に言われたように旅の先に何があるのかなんちゃら
かんちゃら答えるつもりだったけど、何しろ相手はおっかない魚くん。
結局金を失って一文無しになるのが怖いなんて言えば腹の中から出るわ出るわ
金魚が出るわの人間ポンプ!ってかでかいよ金魚!鯛かと思ったよ!めでてーな

次に佐々木に問う。最も怖いものは何か。
「この世に怖いものなど俺にはない」
辻斬りを繰り返し、ついにはいられなくなって江戸に落ち延びようとした
殺人鬼は、これまで斬り殺してきた100人の亡霊に苛まれ、魚に飲み込まれる。
どうやら問われた者は本質的に怖いと思うものと対峙させられるらしい…
じゃあホントの事を言っても嘘ついてもダメって事じゃん!

そして次は加世の番。恋をして結婚して子供を生んで幸せに暮らしたいな…
と言うことで膨れ上がる腹ぽんぽん。激痛と苦痛の果てに産み出されたのは
見るもおぞましいお魚チャイルドだった…それを見て気を失いかけた加世を
支えたのは薬売り。「落ち着いて…加世さんの真は、何も変わらない」
薬売りめ、相変わらずさりげない色気もあるしカッコいいじゃねーか!

さらに巡って幻殃斉。最も怖いものは何か。
「あー、まんじゅうが怖い」「落語かよ…」
酒蒸し饅頭を食った後で顔色が変わってゲロゲロゲーとなるリアルだけを
見せて何を見たのか見せないのが幻殃斉らしくてちょっと面白い演出だった。

この世の果てには、形も真も理もないと知ることが、恐ろしい…

薬売りに待っていたのは全てが消えていく「無」
けれど怖いというよりはそれを悟っているがゆえに揺らがない。

そして菖源により、磁石を置く事ができたのは源慧である事が明かされる。
漁師に頼んでも誰も船を出してくれないのでこのような行動に出たらしい。

50年前、この海に流された源慧の妹が乗る「虚ろ船」
大木をくり抜き、蓋をして出られないようにしたと聞くだけで
既に怨みの臭いがぷんぷんじゃねぇか!なんだその回天は…

魚の骨かと思われたのは虚ろ船を縛った鎖だったのか。
生簀の中から引き上げられたのはフジツボだらけの虚ろ舟。
しかも中からはカリカリと爪で引っかく音が…ってこえーよ!

「50年前、妹は自らこの船に乗り…」って絶対ウソだろ!おまえがそう言った
途端にカリカリカリカリカリカリッと引っかく音が激しくなったじゃねぇか!

劇画調の絵だと加世がめっちゃ可愛かった。
次回大詰め。兄に似ず美人の妹の真と理はなんぞ?


海坊主 大詰め
2007/8/9

モノノ怪と化していたのは妹ではなく自分だった。
かつて妹と共に置き去りにし、分かたれた自分の心…「半心」だった。

龍の三角のある海域に近い小島で生まれ育った源慧と5つ年下の妹おようは
仲のいい兄妹だった。やがてそれは互いを思いあう男女の愛情となり、
けれどそれを秘めたまま、源慧は出家のため島を出る事になった。

妹への想いを断ち切ろうと修行に励みながらも、忘れ難い思いは募り、源慧は
罪深さに苛まれ続けた。やがて龍の三角でアヤカシが暴れているという噂が
耳に入る。故郷の小島でも半数の船が失われ、すなどる者たちには死活問題。

今回は「女がひどい目に遭う話」ではなく、自分から目を逸らし続けた男が
モノノ怪となった自分の半心と向き合い、失った自分自身を取り戻すブレイブ
ストーリーだった。みっともなくて醜くて小ずるくて情けなくても、それが
自分なら仕方がない。受け入れて、理想とかけ離れたところは少しずつでも
近づけるように努力すればいい。知性は自分で身につける。美貌は化粧でも
整形でも試してみればいい。体型は痩せたり運動することで手に入る。

自分を否定してばかりの人は、そのくせ自分を肯定して欲しくてたまらない。
そんな甘えた精神、あさましさ、図々しさ、努力しない怠け心が大嫌いだ。
自分は自分を否定しておいて他人には肯定してもらおうなんてあつかましい。
自分をやみくもに否定する事と、美徳の1つである「謙虚さ」は全く違う。

源慧がいくら過去を語ろうとも退魔の剣は動かない。
16歳になった妹と再会した時、想いが1つも色褪せていなかった事に気づいた。
結ばれないなら、この気持ちを昇華できないなら、妹が幸せになる姿を見て
嫉妬に狂うのなら、その方がずっと恐ろしい…そしておぞましい…

だから源慧は虚ろ船に乗ってアヤカシを鎮め、そして同時に自分の想いをも
抱えたまま御仏の元へ行こうと考えた。誰にも知られず、消える事を望んだ…

虚ろ船を開こうとする加世たち。薬売りが札を投げれば、ビクともしなかった
虚ろ船が開く。けれどそこにおようはいない。彼女は消え去り、モノノ怪には
なることなく成仏していた…これは意外な展開。シチュエーションから見たら
加世曰く「おようさんが可哀想」なはずなのに…

僧になる修行も高い地位を得るための手段に過ぎない。自分の身代わりに
柱になると言う妹を見て小躍りするほど喜ぶ源慧。やったぁ、こいつバカか!
妹が自ら虚ろ船に入ると言ったことは真。兄を愛していた事も真。

「え?」

源慧が妹の事は好きだったのかどうかもわからないというのもよかったなぁ。
(ゲイだからというのも暗示されているかもしれないが)単に安易な男女の
ドロドロにしなかったのがこの話を面白かったと言わしめる要因になった。

そんな妹の無償の愛を知り、源慧はハタと立ち止まる。
生臭坊主で小悪党の自分には愛される資格などない…けれどそんな自分を
妹は慕っているのだという。あろうことか自分の身代わりに死ぬと言う。

自分が受け入れられない自分を愛し、受け入れてくれた妹。
愛されるという喜び、誰かに大切に思われることの幸せ…
けれど源慧はそんな価値のない自分を受け入れられない。だから心を分かち、
流されていった妹と共にこの海に置いてきた。それはいつしかこの海の
アヤカシを取り込み、人の本心を問い、人に仇なす海坊主となった…

今こそ真は明かされた。

源慧自身がモノノ怪だから、持っていたのは鏡だったのか…
その心の半分を斬れば、目を逸らし続けてきた自分をもう一度受け入れる事。
それを望むや否や…薬売りはその身を半分に分かたれた源慧に問いかける。
「お願いします…斬ってくだされ…」

そして理も明かされた…

「解き放つ!」
退魔の剣がぶっ飛んだー!
まさにロケットナイフの如く、源慧の心たる黒く巨大な影を斬る退魔の剣。
けれど斬られたそれは娘の姿になり、倒れる源慧の傍らにそっと寄り添う。

「綺麗な顔、してたんだ…」
50年間目を逸らし続けた心を取り戻した源慧が美青年になったのはビックリ。
一瞬のことかもしれないけれど、本心と偽りの違いを際立たせるためかな。
羅針盤に細工までして戻ったんだから、受け入れなきゃとは思ってたんだろう。
嘘もついたけど、時間はかかったけど、自分から動いただけマシなのかもね。

佐々木の顛末も皮肉。自分と向き合った殺人鬼が「ありがとう」なんて言って
綺麗に終わりかよと思ったら、刀が砕けて佐々木の眼を奪っていった。
これなら忘れない。殺人鬼の自分のことも、斬られて果てた人々も。

佐々木はあのままだったら多分次の海坊主になるはずだったろう。
けれど、人斬りの刀が自ら壊れ、佐々木を傷つけた事でそれを戒めたと思う。
そんな事は決して許さないと。だって簡単じゃないか、口先だけで反省した、
ごめんなさいって言う方が。半心をここに置いていく方が楽に決まってる。

多くの人を斬り、命を奪い、人生を絶った刀はそんな安易な方法は許さない。
だからこそ後ろには佐々木がいるのに、薬売りもこちらを向いてもう1人の
佐々木をちゃんと見張っているんだと思う。痛みは罪を思い出にはさせない。

だから自分の気持ちを「忘れないよ…」と言ったんだと思う。
でなければこの話をやった意味がない。所詮人の業など消えないというのも
確かにいい。けれどそれならそれでもう少しヒネった描き方をするはずだ。

今回は何しろ安易な近親相姦ものにしなかった事は大正解だったと思う。
キャラクターも1人も死ぬことなく事の顛末を見届け、コミカルとヘヴィさの
バランスも絶妙で面白かった。相変わらず背景美術は素晴らしく、青い水底に
ひらひらと尾びれをなびかせて金魚が泳ぎ戯れるのも綺麗だった。

年老いた源慧が急に若い頃に戻ったりすると、中尾の声がビシッと背筋が
伸びて若々しくなるのも見事。演じ分けのメリハリ、死を決意したおようの
気持ちをおもんばかりすらしない軽々しく憎らしい口調といいさすがだね。

次回「のっぺらぼう」は、「化猫」と同じ「怪」の2作目「天守物語」で主役を
張った桑島&緑川ペア。3作目との差が大き過ぎた2作目組のリベンジなるか?!


のっぺらぼう 前編
2007/8/16

夫、夫の母、夫の弟、夫の弟の妻を惨殺した罪で、市中引き回しの後磔獄門。
犯人の?鬼嫁お蝶はこの罰を慎んで受けると答え、これにて一件落着。
…と思いきや、なぜか彼女の牢には薬売りが待っていた。

売った薬が効かないからと金を返せとのたまう客に手を焼いて、
番所に駆け込んだらこっちが御用と相成りましてね…
何やら怪しい言い訳で女と男が1つの牢に収まっているのが現状。

しかし珍しくよく喋る薬売りが斬新だった。
いやホント、喋りすぎじゃないかと思うくらい。

薬売りが寡黙なお蝶に対して饒舌に語った他の事件も、全然違うのに何やら
やたら血生臭いものばかり。実際のお蝶の犯罪については「もう忘れました」

一家4人殺しは1人でやったことではなく、モノノ怪が絡んでいるのではないか…

「あなた…何者です?」
その時、天秤を取り出した薬売りの疑いを裏付けるように怪しげな煙と共に
怪しげな声がする。おまえはなにものだ…

閉じ込められたと思えば牢になり、出たくないと思えば城になる。
どうやらこの牢は薬売りがお蝶をモノ怪から守るために張った
結界のようなものらしく、この中にいれば安全なのだという。

ところがそれをやすやすと突破した狐面はキセルで襲い掛かってくる。
後半でもあったけど、そういえば薬売りが変身せずに生身で戦うのも
初めて見るよ。退魔の剣も抜けなければ武器としての威力は低いけど
相手の一太刀を受けるくらいはできるもんね。それでカキンカキンと
打ち合うたびにはぜる火花がモノノ怪らしくて綺麗なんだけど。

このキツネが面からすーっとキセルを吸って吐くのがなんだか面白くて。
この狐面がモノノ怪の本体、すなわち形なのかと問うても、退魔の剣は
歯を鳴らしかけはしたものの止まってしまい完全には反応しない。
貴様…モノノ怪の形ではないのか…

「心根の優しいモノノ怪だっているかもしれないじゃありませんか!」

薬売りは狐面に仮面をかぶせられ、それを割られる事で顔を失う。
真っ白な顔に何もない薬売りはばたりと倒れ、狐面はお蝶を連れて逃げ出す。

「またあそこに戻りたいのか」というのは殺す前の家庭に戻るって事かな?
お蝶も4人を殺した時の手応えとスカッとした気持ちが救いとなって耐えられた
というような事を言ってたので、同じ時間枠の中をループしてるんだろうか。
狐面の男も自分にはその程度の力しかないと言っていたし…

自殺した妻の代わりに後妻として嫁いだ家では、妻ではなく飯炊き女として
こき使われる毎日。母親が頼み込むから仕方なく結婚したとうそぶく夫…

戻りたくない、むしろ捕らえられて死んでしまいたいと呟くお蝶に、
狐面はポンポンとキセルで面を叩いて様々な表情を見せる。
やがて、自分は面を外す事は出来ない身だが、普段は人と変わらない。
道化芝居でも何でもやって食べさせるから結婚してくれないかとプロポーズ!
承諾してもらってからの狐面の喜びようがなんとも愉快で笑えた。

この狐面、お蝶の心に澱のようにたまった毒を吐き出させたかったそうだけど
モノノ怪だとしたらむしろその澱を糧にしてると考えられなくもないわけで…

突然背景は婚儀の祝宴となり、壁一面の面たちからの祝福と宴が続く中、
時はさらに遡ってお蝶が母から厳しく行儀作法をしつけられた頃に戻る。
器量がいいんだから習い事をして磨けばいい縁談があるだろうという母と、
素直に従順に答える娘。期待に応えよう、自分がこうありたいと理解して
いい子に育つ事は問題ないけど、親から見捨てられないために親の顔色を
窺って育つことは人格障害の第1歩なんだよね…ネグレクトも虐待も支配も。

人には様々な顔があり、どの顔を使うかは自分自身が決める事。
決められない人、選び方がヘタクソな人もいるようだけど、実はそれこそ
社会に順応する能力としては一番に磨かなきゃならないものだったりね。

お蝶の心が揺れたと同時に現れた薬売りはへのへのもへじから元の顔へ。
座ってるひっくり返ったゾウさんの椅子が面白い。うん、相変わらず面白い。

人の業、心、想い、そしてそれを表す顔、隠す面、閉ざされた世界。
今回はお蝶の袖の中にしっかり御札を仕込んでて、狐面の男を苦しませる。
何かを隠している…モノノ怪がまやかしで隠さねばならないものとは何か。

「面を忘れたモノノ怪…正体を表せ!」

それにしてもよりによって津波警報が…!くそ〜〜〜!!
後でキプして完成させるつもりなのにガッカリだ。


のっぺらぼう 後編
2007/8/23

頑なにカタチを示そうとしないモノノ怪。
阻止しようとする仮面を捕らえ、お札でふさいだ薬売りは問う。
閉じ込められた場所で、小さな空を見上げて、逃げる事もできずにいた。
心を強く持てば逃げられるのに逃げなかった。それは化猫のたまきとは違う。

「笑い事ですよ、こんな事」

誰を…殺した?
殺したのは夫と義母と夫の弟とその妻と…
けれど薬売りが聞いているのはそのことではないようだ。

そしてお蝶が何かを思い出そうとすると母の陰がそれを邪魔する。
「こいつぁ…しぶとい…」

モノノ怪の形を成すのは人の因果と縁。形を示さないなら、真と理を明かす。
これは今までのような最初に形、そして真と理とは違うパターン破り。

お蝶の人生劇場を語る薬売り。
幼い頃からその器量を買われて稽古事に精進させられ、母の期待を一身に
受けてきたお蝶。母上様が好きだったという言葉とは裏腹に、母に叱られ
ごめんなさいごめんなさいと謝り続ける姿から分かれ出るもう1人の自分。

母の夢は、父が死んで没落した家を再興させるために娘を武家に嫁がせる事。
娘の幸せを思うことも、娘の気持ちを慮る事も、娘の希望を聞くこともない。
やがて輿入れの日にも、人形のような花嫁からはもう1人の花嫁が分かれ出る。

母上様が好きでした…何度も繰り返される自分への呪縛の言葉。
やめて、聞いて、私の話を聞いて、気持ちを聞いてとうめくような心の声。

「その面は、モノノ怪ではありません」

まだ死んでないのになんで薬売りは「一生」なんて言うんだろうと思ったけど、
本当はお蝶はとっくに死んでしまっていた。そう、人間としてのお蝶は…

「私…バッカみたい」

殺してきたのは自分の心。
自由に遊び、自由に恋をし、自由に生きるもう1人の自分。
死体の顔はお蝶自身。そして面だと思った顔は自分の顔。

モノノ怪は…私?

モノノ怪はあの男を操り、家に縛りつけた。
心を殺しながら、その恨みや哀しみや虚無感はいつしかアヤカシと結びつき、
お蝶をモノノ怪に変えてしまった。のっぺらぼうは彼女が結びついたアヤカシ。

「のっぺらぼうはなぜ私を助けてくれたのでしょう…」

真、理、そしてようやく開かされた形が揃い、退魔の剣が抜ける。
黄色い男はお蝶に巨大な剣を向けながら、彼女の最後の言葉を聞く。

恋したんじゃないでしょうかね…

誰もいなくなった台所で薬売りがのっぺらぼうが残したキセルを吸う。
居間からはお蝶を呼ぶ乱暴な声。誰も死んでいない。何も変わっていない。
「しかし…誰もいない」
屏風に描かれた鳥は飛び立ち、そこにはただ静寂だけが居座っていた。

アヤカシがモノノ怪に恋をした。
縛られていたのはあの男も同然だったのに、それでもお蝶を助け出した。
それだけが精一杯…だけどあの時、お蝶さんが求婚を受け入れてくれた時に
跳ね回って喜んだ姿が本当だったと思うと滑稽で、そしてなんだか物悲しい。

う〜ん、それにしてもまたまたまさかの展開だったなぁ。
のっぺらぼうは媒体に過ぎず、モノノ怪となったのはお蝶自身だったか。
出たいと思えば牢になり、出たくないと思えば城になる…確かに他人を殺した
わけでもなく自分を牢に閉じ込めていたお蝶は「とんだ笑い話」というわけか。

でも、そんなお蝶に惚れてしまったのっぺらぼうの言葉も聞いてみたかったよ…


鵺 前編
2007/8/30

しょっぱなから閉ざされた部屋の中で悶え泳ぐように逃げる坊主の血の人型。
そして「座敷童子」ではまっすぐ落ちながらしずくが膨らんで変化する雨の
テクスチャが面白かったけど、今度はさらに横に流れる「雪」がお目見え。
真っ白な景色の中に真っ赤な実をつけた南天や、不思議な青い犬?や…
人死にのなかった「海坊主」や会話劇がメインだった「のっぺらぼう」とは
またがらりと雰囲気を変え、モノノ怪らしい雰囲気のスタートにわくわくする。

「あと1人は…」「どぉも」
青野武のおじゃる演技がこれまたハマり過ぎてて笑えるんだよなぁ。
青野武は色々な役をこなす器用な名優だと思うけど、実は私が一番好きなのは
こういう飄々とした声でなおかついい意味でも悪い意味でも人間らしい面を
見せる時なんだよねぇ。そのうち電王にも出ないかなぁちょっと大物過ぎるか

今回はお香で勝負という瑠璃姫の婿候補たちの戦いに入り込んだ薬売り。
しかしお香とはこれまた雅な…ってかこんな風に見たのも初めてかも面白いねぇ
昔ながらの遊戯といえばありがちな囲碁とか貝合わせとかかるたよりも
珍しくていいよ。あ、けど「モノノ怪双六」なんかも面白そうだな…

参加するのは公家の大澤ことマロ、赤鼻になぜかスピグラの辻堂みたいな
三角カップをしてる室町こと商人、そして小田島…ではなく、東侍の半井。
それぞれが一癖も二癖もありそうなれど、瑠璃姫の婿となってすたれたと
思われた香の流派笛小路流を盛りたてようという建前上の魂胆らしい…

香は嗅ぐではなく「聞く」というので「聞香」というのだそうだ。
そして勝負は「聞いた」香のうち、どれが同じであるかを当てるのだけど、
どうやらこれも一つ一つ香を炊いてから聞くという超スロープレイらしい。
しかも「源氏香」なるものは5つの香の聞き比べを五巡!行うという耐久戦。
夜が明けるまでに終わらないってどんなスローなハードプレイ!?

まぁさすがにそれはマズいらしく、一巡だけの一発勝負となって勝負開始。
香りを聞くたびにマロに春が訪れたり商人に父親の香り加齢臭?を思い出させる。
四香目にして東侍にもようやくわかったその香りは「…馬糞?」

香りを吸い込むたびに色が鮮やかについてまた消える演出も、画面全体は
決してモノクロではないのにはっとさせてセンスが光る。そんな中でも
色褪せない薬売りの華やかな着物とその表情はいつもとなんら変わらない。

真那賀、真那蛮、佐曽羅に混じって新伽羅と聞いた時は「え、誰が?」と
思ってしまうアニオタの哀しさよ。全く雅も教養もへったくれもねーな。
札をかちゃかちゃと組み合わせながらブツブツ言う3人と1人がスロットドラムの
ようにくるくると回る。マロが選んだのは「玉鬘」で商人は「常夏」を選ぶ。
玉鬘は天下の光源氏が夕顔の娘にもたもた手を出しあぐねている間に、まさかの
ダークホース髭黒の大将に寝取られるというある意味痛快?な話という印象。
一方東侍はヤケクソ気味にええいどれも同じと言って浮舟の思いをつづった
「手習い」、薬売りは一番と五番が同じという総集編「幻」を答えとする。

正解者である「玉」を選ぶ間、しばし4人は外へ。
しんしんと降る雪(とはいえ大分トリッキーな動きをしてるわけだが)の中、商人は庭の青い犬を、
マロは空中を滑るように移動する老婆を、東侍は塀の上や庭を駆け回る
小さな女の子を見る。そして皆はなぜか「東大寺」なるものを探している…

「おちゃー!何をしておじゃるか!」
1人バラバラに動く天秤の揺れを見ていた薬売りは、いつの間にか部屋中に
天秤を配置していた。天秤が傾くと薬売りは退魔の剣を向けて襖を開く。
そこにはもう1人の求婚者、実尊寺がぐちゃぐちゃになって転がっていた。
むせ返る血の臭いには香のおかげか誰も気づかないまま…

再び傾く天秤に、薬売りは御札を投げて反対側の襖を開く。
けれどそこにいた瑠璃姫は首に何かが突き刺さり、皆が見ている前で
頭を垂れ血を噴出して断末魔の叫び声を残したまま果ててしまった。

ところが怯えてるとばかり思った連中は、いきなり今死んだばかりの姫の下に
近寄り、「東大寺」なるものを探し始めたのでさしもの薬売りもびっくり。
「ほどほどに」
とても下品で破廉恥なものがあるという3人の誤魔化しでばーさんを追い払い、
もう一度組香をして勝利者が瑠璃姫と結婚した事にすればいいと悪企む3人。

「その代わり、東大寺とは何か!あなた方が瑠璃姫様より
      強く欲する東大寺とは何か!お聞かせ願いたく候…」

ちなみに瑠璃姫の正解は4人の男が女を面白半分に品定めするという「帚木」
鵺とは一体なんなのか。鵺の鳴く夜は恐ろしい…は金田一映画だったけどね。


鵺 後編
2007/9/6

「香、満ちたようでございます」

薬売りが炊いた香の香り満ちる中、ここには最初から誰もいなかった…

3人が瑠璃姫よりも欲しがっている東大寺とは、それを手にすれば
権力を我が物にできるという香木、「欄奈待」の隠語なのだという。
こうして理由を語った3人と薬売りは再び組香を行う事になる。

今度の勝負は「竹取」
あらかじめかぐや姫と翁の香を聞き、その後に他の香と翁とかぐや姫を
合わせて5つの香を聞いてそれぞれが翁かかぐや姫か別の香かを当てる。
う〜ん、シンプルだけど難しそう…ってか絶対途中で嗅覚が麻痺するよ。

薬売りが香を準備する間、「鵺」について語り合う3人。
再び啼いた「鵺」は、頭が猿で尻尾が蛇のあれかと東侍が聞けば、体は虎と
商人が答える。けれどマロはそれは絵物語の中のこと、猿を見れば鵺は猿、
体を見れば鵺は虎と言う。見る場所によって姿が違う、それが「鵺」

「モノノ怪は鵺なのだろうか」「さぁ…未だ形を得てはいませんので…」
それにしても準備してる薬売りが、アレコレと相変わらず変なものばかり
行李から出してるのが楽しくて仕方がない。あのタコはなんなんだろう?

「もう現れておったりしての」
かなり長い間の後、シャレにならん一言で場の雰囲気を凍りつかせたマロが
「すまんでおじゃる…」と言った時、コイツは心底憎めないなと思ったよ。

翁とかぐや姫はほとんど香りに差がないようだ。
そしていよいよ次からが5つの聞香。けれど薬売りはここで釘を刺す。
香の中にうっかり夾竹桃を混ぜてしまった…
夾竹桃の葉は薬になるが、木は猛毒となって人を死に至らしめる。
「うっかり、うっかり…」

一体何の目的があってそんな事を言ったのかはわからないけど、
商人と東侍は驚き、やり直しを希望。けれどマロはそのまま続行。
よくよく考えれば順番は常にマロが一番なので、死ぬとしたらマロから…
それなら自分が吸わなくて済むと考えた2人もそのまま勝負に乗る事にする。

毎回一人目が変わっていくなら和風ロシアンルーレットだなぁと思いつつ、
まずは最初の香。翁でも家具や姫でもないと判断したマロと商人に続き、
東侍が香を聞くと、それは何やら血の臭いがする模様…

「あなたのために用意しました…実尊寺さんを殺したあなたのために」

実尊寺を殺したのが東侍だったというのは、すまん、全く思いもよらなかった。
東侍といえば文化の深い上方から見れば無骨で教養足らずの田舎者だろうけど、
マロや商人が比較的心の広い人間なのか、この芋侍にも色々寛容に教えてあげて
バカにするような事がなかったので、実はナニゲにいいヤツらだなと思ってた。

ところが実尊寺はまさにそれ。組香では大澤すらも勝ったことがないという
実力者ゆえに、粋で雅な坊主は既に勝利者気取りで東侍をけちょんけちょんに
やっつけてしまう。得物を持った人を相手にする時は力に対抗できるだけの
何かを持ってない限りは圧倒的に不利だというのに、しまいには臭い臭い、
ああ臭いとバカにしくさり、キレた東侍に成敗されてしまうという顛末。

「ちっ…なんて死に様しやがる…」
そんな東侍は泥人形のようになった実尊寺に迫られ、怯えまくった挙句に
ベタッとひっつかれ(ここは結構怖かった)隣の部屋へと姿を消す。
これで1人、いなくなった…実尊寺も既にいないので残るは2人。
この時の東侍には鮮やかな色がついているのも何かの象徴なんだろうか…

そのまま続けられる組香。次の香りはマロには何も感じられず、けれど
商人には髪の毛が燃える臭いに感じられた…商人が殺した瑠璃姫の髪の臭い。
商人は東大寺を手に入れるために財産をつぎ込んでシンショをつぶした模様。
なのに貴公子の屏風を見てハァハァする二次元萌えの瑠璃姫を見、なんじゃ
そりゃーとキレまくってぶすぶすぶすぶす…と刺していたのは自分自身…

これで2人、いなくなった。残るは1人。
マロが聞いた香りこそ、夾竹桃だったと言う薬売り。
苦しみながら走り出し、マロは水を求めて庭に下りようと足を滑らせて昇天。
そしてもう誰もいなくなった…ここには薬売り以外は誰もいない。

「自分の人生は終わってしまったのだと、自覚できればそれでよいのですよ」

4人とも実は既に亡者だった…
夾竹桃は確かに枝に毒をもつ。けれど既に死んだ者には効果などない。
ああ、モノクロではないのにモノクロに見える画面で、なぜか色がついていた
刀、鼻、帽子に着物…これらかは皆、自分が死んだことにすら気づかなかった
亡者たちが残した遺品だったというわけか。そして最期を迎える時、全員に
色が蘇ったのは自分がとっくに死んだ事を思い出させるためだったんだろうか。

それにしても薬売りは一体誰と話してるのか。
モノノ怪の事を聞き出したらこのまま放っておくというのは、あのまま延々と
終わらない組香を続け、やがてモノノ怪が調伏されれば何もわからないままに
成仏したんだろうけど、不憫だったので死んだと気づかせてやったのだそうだ。
でもそんな教え方しなくてもいいじゃんという気も…どSにもホドがあるぜ…

鵺の正体は「見る場所によって姿を変える」モノノ怪。
時には幼女、時には姫、時には老女、そして時には犬…
「いや、今は東大寺とお呼びする方がよいのですかな?」
そう、東大寺こそがモノノ怪の正体だった。

自分の価値を認めてくれる者たちを集め、その念を集める事で存在し続ける。
集められてとり殺された人間は4人どころではなく、屋敷は死体だらけ。
でもちゃんと律儀に墓を作ってる?のがちょっと笑える。

ふすまから出てくるのは迷い続ける東侍とマロ、そして犬になった商人。
薬売りの背後からは泥人形となった実尊寺がまとわりつき、鵺が高笑う
不気味空間で、薬売りは退魔の剣を解き放つ。「ときはなつー」言い方が可愛い

黄色い男の変身シーンは久々かも。しかも飛んできた鵺の首をシールドを張って
防ぐのがカッコいい。バトルっぽいのは「モノノ怪」になってからは初めて?
斬り飛ばし、斬り割くことがかなわぬのなら焼いてしまえのホトトギス。
香木は火で焼かねば真の香りを出すことが出来ぬ…
さぁクライマックス、一体どんな調伏になるのか!…と思ったら、

ポンッ

…包丁切り?やべ、不意打ち過ぎて吹いた。
一晩中1人で大騒ぎした挙句、腐った木をえいやっとばかりに一刀両断。
このシーンの薬売りが可愛いすぎるよ。ギャラリーがいないせいかな?

モノが欲を持ち、それが人の欲と結びついてモノノ怪となったのが鵺。
やがて全ての色が戻り、絵が動き出し、香りが満ちて風が舞い始める。
屋敷の中を開放された亡者たちが歩き、走り、さんざめくのは花咲き乱れ、
暖かな春…けれど犬が1つくしゃみをすれば、それは泡沫の夢と消える。

願わくば、花の下にて春死なん…

香は絶え、亡者は埋もれ、屋敷は朽ちる。もはや誰も知るものはない。

次回からは化猫…って、化猫〜!?!?なんでよ!?
サブタイは前から知ってたけど間違いじゃないのかと思ってた。
ところが薬売りが電車に乗っている…加世に似たおさげ娘や、
小田島に、伊国やさとや下男に似たキャラもなぜかチラホラと…

化猫が時代を超えた!?締めで一体何をやる気なんだ!?!?


化猫 序の幕
2007/9/13

「化猫だ…」

モノノ怪最後の物語はなぜか怪-AYAKASHI-同様「化猫」
それこそキツネにつままれた気分のまま見てみれば、これまでとは
時代も違って地下鉄開通を祝っている時代はすっかり近代日本…?

人ごみを中途半端に服やらベルトやら帽子やらを身につけたマネキンで表すのが
これまた面白い。そんな怪しげなマネキンの海の中、普通の姿をしているのが
今回のメインキャラなんだなとわかる仕様。しかもなにやらどこかで見たような
見たことすらないようなキャラばかり…<どっちなんだ

福寿駅から4つ目の駅で折り返してくる地下鉄の記念乗車。
華の先頭車両は市長と警備のための刑事が乗り込み、続いて4番車両までに
各々が乗り込む。加世…ならぬ魅惑のお下げ髪のチヨは斜め前方に座った
派手な格好のチンドン屋のお兄さんが気になる模様。そういえば薬売り、
かつて坂井家の前でそうしていたようにプラットフォームでブツブツと…
そんな薬売り、チヨを見て軽く会釈をしたような合図をしたような?

順調に走るかに見えた地下鉄だけど、運転手の目に映ったのは
なにやらぼうっと線路に立つ白い影…急停車した地下鉄の中では
大惨事が!マネキンドミノ倒し!う〜む、なんかシュールな絵だよ…

気づいたチヨたちはなぜか一両目に集まっていた。
市長、新聞屋、刑事…そして扉の向こう側には混んだ車両が見える。
運転手は車掌に連絡を取ろうとボタンを押すけど無反応で、くたびれた様子で
運転席を出てきてしまい、手は打ったけどうんでもすんでもないと呟く。
一体何が起きたのやら全くわからず、車内はなにやら微妙な雰囲気に…
やがて時間を気にしてたおばさんは自分の車両に戻るとドアに手をかける。

ところが「美味しいトコ取り」らしいタヌキ市長が手伝ってようやく
開いた扉の向こうは隣の車両ではなく、なぜか線路が続いているだけ…
車両はどこだ?そう思った瞬間電車は急に走り出し、再び倒れこんだ
チヨが見たものは、市長がかけていたメガネだけだった。

マネキンやパタパタと揺れる旗など、相変わらずテクスチャ的な面白さを
取り入れつつも物語は謎だらけ。確かにこの雰囲気は化猫によく似てるかも…
なんだかわからないうちにまずは一人が欠けたのも同じだったよね。

「ここか…」

「許さない」と囁かれたおばさんはじめ何が起きたのやらわからないまま、
現れたのは薬売り。今日び、こんな格好でもしないと薬も売れなくてね…
既に4両目にいた頃からカタカタと鳴り続けていた天秤が、ズラララ〜っと
並んで飛び出してくるのは壮観だった。しかも今回はなぜか天井にペタリ。

必要なのは真と理、そして形。
ここにいる皆さんは全て何らかの関係がある…このモノノ怪と。
6人のうち4人までが刑事を知っている。カフェの女給のチヨや主婦は、
電車に轢かれて死んだ「市川節子」のことを聞かれたのだと言う。

そしてその市川節子を轢いてしまった運転手がこの列車の運転手であり、
市川節子の上司が新聞屋という線が繋がった…どうやら全員の関係を繋いで
いたのは刑事ではなく、この轢死した市川節子というモガだったようだ。

たった一人、その輪から外れたようだった牛乳配達の少年もまた、
その市川節子が落ちた陸橋を毎朝配達のために通っていたという…
アバンでは線路の上を歩いてくるなんともラブリーな猫の姿に重なって、
「許さない」という怨みに満ちた声が聞こえ続ける陸橋下が出ていた。

う〜む、今でこそどいつもこいつも善人面してるけど、それぞれにまた
どす黒い顔が隠されているんだろうか…前回は善人だった?チヨですらも。

自己紹介が終わったところでいよいよ傾き始める天秤。
天井にくっついてるのに鈴は天井に向かって下がり、そのままチリンと傾く。
そして牛乳配達は言う。「猫を抱いた女の人がいるんです…」

すると1つの吊革がゾッとさせるように動き出す。
怯える乗客とは裏腹に、いつの時代も相も変らぬ薬売り。
果たして近代の化猫の正体や如何に?


化猫 二の幕
2007/9/20

「真を知りたがるモノノ怪とは…面白い」

さらに混沌としてきた今度の化け猫騒動。
陸橋から落ちて轢死した節子は自殺だったのか事故だったのかそれとも…

陸橋から逃げ去る人陰を「見た」のに証言しなかった正男だけが、
誰も見る事ができない節子の姿が見えてるようだし、聞いたことを
証言しなかったハルは「許さない」と呟く声が聞こえているらしい。
そもそも今回はここに集った人間の誰もに何らかの瑕疵があるようだ。
刑事は居丈高にあれは自殺だったと決めつけ、証言した人間たちは眼が泳ぐ。

刑事さんが、目撃者がいるって言ったから…だから、自殺なんだって思って…

誘導尋問で聞き出した事実をそのまま取って、覆らなかったんだから自殺だと
決め付けた刑事。誰も文句を言ってこなかったらいいんだという、そもそも
自分から聞きに行こうという謙虚さのない親方日の丸には呆れるばかり。

しかしこの時の憎たらしいほどの「だって私(俺)は悪くないもんね〜」
という卑屈な演技には虫唾が走る。走らせるほど全員芸達者って事なんだけど。

「節子さんの死は…作られた自殺。それが、真だ」

薬売りが断定すると地下鉄は駅に停車する。
けれど猫から逃げようと狂ったように猫壁紙の中を走っていた運転士には
身に覚えがない。扉を開けようとする編集長と刑事を薬売りは止める。
けれど開いた扉の向こうには見覚えのある赤い顔と金色の瞳。

刑事のホッペに爪をかけてぐにぃと引っ張る猫の手がこえーよ!

そのまま消えてしまった刑事は気味の悪い色になり、駅のベンチで横たわる
市長の前に糸が切れてダランとしたマリオネットのように落とされる。

しかし今回はキャラクターがヘンテコ色に染まるなぁ…
そして今作の特徴は「音」だった。ボリボリガリガリかきむしったり、
電車の音、エキサイティングな声のガヤっぽいセリフがいつでも聞こえる。
だからこそいつものように落ち着いて冷静な薬売りの声が心に響く。

刑事がいなくなった事にパニックになった車内では、権力の権化が
いなくなってタガが外れた弱虫たちが慌てて真実を語りだす。

牛乳配達で橋の上を通った正男は、ホントはあの時間、橋の上で走り去る
人影を見たのだという…自殺だって言ってたからいいやと思ってた…
でももし事件だったら、節子を突き落とした犯人かもしれない。
そう言いながらやけに眼をこすり、バリバリと引っかき始める正男。

あれ、眼が痒い、痛い、見えない!

見たものを語らなかったせいなのか、正男は唐突に消えてしまう。

「死んじゃおっかな…」
そう呟いた節子の言葉を聞いたというチヨは、新聞や雑誌の取材でも受ければ
あわよくば…などと、女優になりたいなんてバカな夢を抱いてるミーハー娘。
だから刑事の聞き込みにも適当に話を合わせたのだという…

ウソをついた口が痒い。

バリバリボリボリ掻きながら自分を擁護するいいわけに反吐が出る。

ねちゃっとエンピツの芯をねぶる編集長は、節子は仕事に行き詰っていたけれど
優秀な婦人記者だったし、自殺する理由がないと言う。地下鉄建設のために
市長に絡んだ利権を暴こうとしていた節子の相談を無下に断ってしまった事が
悔やまれる…犯人は市長に関係ある人物ではないかと思い、今日も取材に来た…

鉛筆を持つ右手が痒い。脇が、首が、体中が痒い。

やがて編集長も消える。

本当のことを言っても消えるだけ?ならば何も言いたくないとハルは言う。
この地下鉄のチケットはもらっただけ…不倫相手に。そんな逢瀬の最中に、
節子と誰かが言い争う声を聞いた。でも姑の前でそんな話、できないでしょ?

聞いたことを語らなかった耳が痒い。

運転士は陸橋の下で何かを轢いたことには気づいたけれど、猫だと勝手に
決め付けて列車を止めなかった。列車の運行を乱すわけにはいかない。
猫ごときで!たかが猫ごときで!

ブレーキを踏まなかった足が痒い。

罪を背負った体のパーツに異変が現れ、残った3人もやがてポップな
化猫絵に腐って変な色になっちゃった死体のように積み重ねられる。

皆みんなクソヤローばっかりだ。

婦人記者として市長と金の癒着を探っていた節子は、死ぬ前に誰かと
言い争っており、早朝の陸橋から落ちて列車に轢かれて死んだ。
節子の靴は陸橋の上に並べられていた。なぜかその死は「自殺」と
決めつけられていた。証言者は罪ある沈黙か、何らかの嘘をついた…
なぜ自分の死が自殺になっているのか、知りたかったのは節子自身。

ほとんど喋らずに、ともすればすぐに罵りあいを始めるのでゲンナリするような
低俗な連中の話を聞きながら、全ての話を繋げれば理が表れるという薬売り。
けれど今回は全員がクロなのか、全員が消えてしまった…

と思ったら、不気味な音と共に隣の車両からやってくるものがいる。
ああ、市長の話を聞いてないからかなと思ったら、ドアが開いて
現れたのは気持ちの悪い眼をして変な色になった編集長だった。

「慎重にやれ」という理由で節子の記事を通さなかった編集長。
果たして真を知りたがる化猫の恨み、想いは一体どこにある?


化猫 大詰め
2007/9/27

「森谷さん…酷い人…」

節子をデキる職業婦人と買っていたんだ!
だから何も悪くない、俺は悪くないと言い張る編集長に群がる猫。

場に刻まれた記憶…それがこの化猫に宿った理。

今回は「毎朝月報」「カンカンカフェ」「料亭吉兆」「市庁舎」など、
電車が部隊名だけに場面ごとの切り替わりにサボが出る。

気の強いハネッ返りの婦人記者市川節子は、市長と鉄道会社の癒着を疑い、
編集長の森谷はそれを密会だけでは証拠が足りないとのらりくらりとかわす。
自分にネタを取られるのが怖いんでしょうと節子がくだらない理由で意地を
張ってるあたりで、この編集長の真意は見えてしまったけれど、そこはそれ。
果たして乗客がしたウソの証言がどこでどう絡んでくるかが楽しみだ。

なんとしても手柄を上げたい節子は吉兆で張り込みを続け、
ついに市長と鉄道会社の社長や警察のお歴々と会う姿を激写。
それを見た森谷は節子をカンカンカフェに誘ってこなた旅館にこもって
記事を書き上げるように命ずると、節子は嬉しさのあまり泣き出してしまう。

跳ねっ返りと嫌われて、うるさい女と疎まれて、仕事をすれば妬まれて、
でもまさかちゃんと評価されて認められる日が来るとは思いませんでした…

そう言って張り切って原稿の執筆に取り掛かった節子だけど、この節子自身が
また嫌な女なんだよね。旅館の仲居やカフェの女給の仕事を蔑み、インテリの
新聞記者様である自分を誇り、驕り高ぶる不遜さ。実際にはまだ職業婦人の
立場が低いのは同じなのに、同じ女を蔑む事で優越感に浸ってる姿を見ると、
いつの時代も女の真の敵は男ではなく女だよな〜と思うよ。

理が近づく…モノノ怪の真実が近づいてくる…

何者からか何者かへの電話。そして市庁舎で誰かを迎える市長。
節子や編集長が話している背景に、バーのカウンターに、時にはマネキン、
時には本人として存在して話を聞いている薬売り。吊革に掴まる手が増える。

あたしぃ、有名になりたいのぉ〜
あられもない格好で商売女スレスレの媚を売る女給は有名になりたい。
死んだ夫の母親と息が詰まるような暮らしを続けなければならない未亡人。

「そう急くな」

足を組んで座席に座る薬売りが向かいの編集長と対峙する。
アンタならなんとかできるんだろう?何とかしてくれ…

「俺ハタダ忠告シニ行ッタダケダ!」

夜明け前、陸橋に節子を呼び出した森谷は、出来上がった節子の
原稿を受け取るといきなりマッチを擦ってそれを燃やし始める。

驚いた節子はパニック。私のスクープを横取りしたいんでしょう。
スッパ抜かれたから悔しいんでしょう。私を妬んでるんでしょう!
越権行為だわ!社長に訴えてやる。アンタなんかクビよ!

これだから女は視野が狭い…
私が記事の揉み消しをしてるとは思わないのか?

突き飛ばされて屈辱に震える節子は別の新聞社に持ち込むと走り出し、
止めようとした森谷ともみ合いになる。なんだかすごい構図だよ…
大股を拡げてものすごい形相で意識を失った様子の節子を見て我に返った
森谷は、これを見てもまだ「自分から死んだと?」と薬売りに囁かれる。

おっそろしい顔で起き上がった節子にビビり、森谷はなんとそのまま
節子を線路下に落としてしまう。それでも節子はまだ死に切れない…
なのに痛みと苦しさと動かない体で、聞こえてくるのは電車の音。

この時もみ合う節子の叫び声を聞いたのが不倫相手との情事を楽しんでいた
ハルであり、この時線路を覗き込む森谷を見たのが牛乳配達中の正男だった。
そしてあろう事か職務中に居眠りをしていた運転士は節子に気づきすらせず、
意識のある節子をそのまま撥ねたのだった。

「許せない」

怒りと怨みはその時その場にいた猫に宿り、場に留まるモノノ怪となった。
だからこの場は化猫にアドバンテージ。けれどモノノ怪は斬らねばならぬ。

理は明かされ、黄色い男が現れるシーンは今までにない演出だったけど綺麗。
足がニョキリと出てくるシーンといいお札のシールドが貼られるシーンといい
今回は戦闘シーンはあまりなかったけど、いつもよりダイナミックだったかな。

ところが今回大剣をぶるんぶるんと振り回す調伏シーンの途中で急にEDへ。
ええ?そりゃ化猫も最終回は唐突に早いED突入でビックリしたけど、
こっちはまだ何にも決着ついてないじゃんか!

「ゆるさ…ない」

場面は元に戻ったように見えた地下鉄の発車シーンへ。白昼夢だったのか…
けれどこれまでのように、時計の秒針は突然逆戻りし始める。
人ではなくマネキンに囲まれ、乗客は誰もおらず、佇むのは市川節子。
その眼は闇を宿した恐ろしいモノノ怪のそれだった…

ED後には後日憚。
市長は汚職で逮捕され、婦人記者は自殺ではなく他殺とされ、過失とはいえ
安全確認を怠った運転士は逮捕される。結局、あの刑事は自殺と決めつけて
証言を強要した節はあれども、根本は悪い人間ではなかったということか?

節子が死んだ場所に花を手向ける年男とチヨ、そしてハル。
殺されるほどではないにしろ、あんな怖い眼に遭う事でちっぽけな
嘘をつくという自分たちが犯した罪を反省したって事なんだろうか。

節子の怨みを飲み込んだ猫の額や喉を撫で繰りまわす薬売り。
これにて人の心に棲みつくモノノ怪の調伏物語はおしまい。
どす黒い怨み、哀しみ、怒り、後悔…それらに囚われた時、アヤカシは
人の心と結びついてモノノ怪に変化する。人に仇なすモノノ怪は斬る。

「皆々様の、真と理…聞かせていただきたく候」

「怪」の続編として薬売りが再登板した「モノノ怪」
美しいテクスチャや音、動き、描き込まれた背景などは「化猫」と変わらず
ハイセンスだったけれど、やはり初代「化猫」に感じた台詞回しのセンスや、
感動で身が震えるような物語性の高さは失ってしまった事は否めない。

前回は3話と短かった事もあるし、ヨコテ氏は今回もシリーズ構成では
あったけれど、メインを務めたのが化猫の最終回だけというのも弱かった。
どうせなら、敢えて同じモノノ怪を出して組みなおした「化猫」くらいは
全話やって欲しかったよ…

高橋郁子は「座敷童子」と「化猫」の序の幕・二の幕だったけど、両者とも
非常にわかりづらい話。あと物語が尻切れトンボっぽくてスッキリしない。
石川学は「のっぺらぼう」だったけれど、これは好きな人は好きかもね。
私は「海坊主」と「鵺」がとても気に入ってるのだけど、これはどちらも
かなり癖のある脚本家として有名らしい小中千昭だった(あれ?)

キャストも豪華だった。田中理恵、藤田淑子、若本御大に中尾、チーチさんや
ダブルダイスケ、「怪」の天守組だった桑島&緑川など大物や中堅が揃った。
相変わらず素晴らしかったのは櫻井孝宏。お馴染みになったゆかなや沢海など、
前作繋がりの声優も懐かしい。エキセントリックな役をやらせると怖い二人だ。

OPはチャーリーコーセイのブルース調でカッコよく、EDは綺麗なメロディで
バラード曲としてはDTBや精霊のEDと並んでピカイチだったと思っている。
ちなみに第8話の「鵺・前編」からOPの絵柄が一部変わっていた。

「化猫」のような衝撃や感動は残念ながらなかったけれど、作画のレベルの
高さと毎回意外などんでん返しが待っていた物語はやはり魅力的だった。
視聴率的にもやや厳しかったようだけど、それも仕方ないか。

スタッフ、キャストの皆さん、本当にお疲れ様でした!

(2007/9/28記)
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