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2011年2月2日改訂


近況とお願い

刑部義雄です。 2003年9月末でS社を退職して、大好きなミステリーを読む時間が取れると思いきや自宅では本を読むのに没頭できないことがわかりました。 特に英語のPBなどは全く読めません。 通勤時間の往復2時間弱の間にPBを読みふけっていたことが懐かしくなります。 それでも、うまく今の環境に慣れて再びミステリーの世界に戻りたいと思っております。 どうか、お奨めのミステリーがありましたら yoshio_osakabe@ybb.ne.jp にメールをお送り下さい。

■ スパイ小説

私はミステリーの中でも特にスパイ小説が好きです。 スパイや諜報機関の主人公が、敵地から身の危険をおかして脱出をはかるスリルある場面が何とも言えません。 推理小説は追う側(探偵、警察官)と逃げる側(犯人)の関係ですが、スパイ小説では逃げる側がスパイで、追う側は相手国の諜報機関であり、警察、軍隊、市民も巻き込んで、逃げる側に力点が置かれるのが普通です。 Defector という相手の秘密を持って寝返った人物を守ったり、救い出すという推理小説にないパターンがあるのも特徴の一つです。

ソ連がロシアになって追う側に迫力が感じられなくなったのはスパイ物にとって大きな打撃になりました。 ひしひしと身に迫る危険を感じるからスパイ小説の醍醐味があるのであって、ぬくぬくとぬるま湯のような環境で諜報活動するではスパイとは言えません。 社会主義国だからと言って、中国や北朝鮮を舞台したのでは、抜け道も多そうで魅力あるスパイ小説の舞台には不向きです。 だからと言って、今更ソ連の恐怖政治に戻ってもらいたくはありません。

やはり、旧ソ連を含む東側に潜入した諜報員の話がスパイ物の傑作になっているようです。
"The Spy Who Came in from the Cold" by John Le Carre はその古典と言えます。 シリーズではLen Deighton の "Berlin Game", "Mexican Set", "London Match" 3部作が良いですね。 同じ Len Deighton の "Goodbye, Mickey Mouse", "Winter" はドイツナチ時代のスパイで、こちらも緊張感があります。 Frederick Forsyth の初期にも良いスパイ小説がありました。 "Icon" も楽しめましたが、開放後のロシアは諜報部員にとって天国みたいなものでしょう。 スパイ小説の中では、Brian FreemantleCharlie Muffin シリーズのファンです。 推理小説をペーパーバックで読むようになったきっかけは、この Chrlie Muffin シリーズにあります。 "Son of bitch" を「淫売の息子」と翻訳されているので、びっくりしました。 それから、英語のミステリー関係を翻訳で読むのが嫌になりました。 その Charlie Muffin シリーズを全部揃えたいと思っていますが、ロンドンの推理小説専門の古書店で聞いてもコレクター・アイテムになって出てこないということでした。 James Bond のようなエリートのスパイも良いのですが、Charlie Muffin のようなノンキャリアの諜報部員の方が人間的な面白味があり、小説自体に深みを感じます。 多少ひねくれた性格がキャリア組の鼻をあかすところが何とも言えません。 スパイ物の主人公はアメリカ人よりイギリス人、作家もイギリス人の方が良い作品を書くように感じています。

日本のスパイ小説ではだいぶ前に「明石大佐」という日露戦争で活躍した日本のスパイの小説を読みました。 本が手元になくて作者の名前もわかりません。 また読んでみたいと思っていますが、手に入りません。 佐々木譲の「エトロフ発緊急電」は緊張感があって好きです。 市川雷蔵主演の「陸軍中野学校」のシーンを思い出させてくれます。 

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お勧めのミステリーPB

毎年、12冊から多くて20冊 PB を読みます。 何故か通勤の電車の中とか、飛行機の中でしか PB に集中できません。 家では日本語が耳に入ってきてしまうためかも知れません。 最近はミステリを中心に読んでいます。 出張中に空港の売店でベストセラーの中からいきあたりばったりに本を選んできましたが、Nifty の F推理のメンバーの助言や「このミス」などの知識でPBも系統だって読むようになりました。 これまで読んだPB(ハードカバーも含みます)をまとめました。

PBでお奨めのシリーズ物としては、
(1) Sue Grafton の "A" 〜 "O"
"A" から "O" まで読みました。 キンジーは良いですね。 "P" はハードカバーが発売されました。 PBになるのはいつでしょうか?
(2) Janet Evanovich の ”One" から ”Seven"
"One for the Money", "Two for the Dough", "Three to Get Deadly", "Fore to Score", "High Five", "Hot Six" までPBで読みました。 キンジー・ファンなら、このシリーズも気に入ると思います。 ニューヨーク・タイムズで高く評価されているのがわかります。 Amazon.com でもミステリーPBランクの上位に "One" から "Six" ("Seven Up" はまだPBになっていません)が並んでいたのでまとめて注文しました。
ステファニー・プラムという女性賞金稼ぎが主人公ですが、脇役の魅力がたまりません。 ステファニーのお祖母さんとルーラが出てくる場面では電車の中で笑いを堪えるのに苦労しました。 2001年の収穫です。
(3) Lilian Jackson Braun の "The Cat Who ..." シリーズ
このシリーズも最新作が PB になるのを待っている状態です。 ココとヤムヤムを読んでいるうちに、猫を飼いたくなりました。 Nifty F 推理の CC 部屋に愛猫倶楽部があるので、親ばかぶりを発揮して玉緒のことを書き込んだりしています。
(4) Thomas Harris のレクター博士3部作
Thomas Harris は7年ほど前に "Black Sunday" を読みました。 その時はあまり感銘を受けておりません。 「このミス」その他で「羊達の沈黙」が話題になって PB で読もうとしたら、Nifty F 推理の PB 部屋で "Red Dragon" から先に読むように助言がありました。 その通りですね。 "Red Dragon" と "Silence of The Lambs" には感激しました。 "Hannibal" は PB で出るのをじっと我慢して待った割にはがっかりしました。 映画の方は評判が良さそうですね。 レクター博士と同系統の作品として、"The Bone Collector" by Jeffrey Deaver がお勧めです。
(5) 今は Lawrence Block にはまっています。 初期の作品は PB で入手しにくくなっているので手に入れるのに苦労をしています。

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日本のミステリー作家

横溝正史
Nifty は辞めてしまいましたが、Nifty のF 推理「横溝島」では作品の登場人物のハンドルを使うことになっています。 私は「悪霊島」の刑部守衛を名乗っていました。 悪霊島は刑部島の別名で刑部守衛は刑部神社の神主。 映画では若き日のスマートな中尾彬が扮していました。 岩下志麻扮する女主人公の巴御寮人は守衛の妻で本名は刑部巴、その双子の姉妹は刑部真帆と片帆(岸本加代子の二役)です。 ちなみに私は自宅のPCは、マシン名を Morie, Maho, Kataho にしております。 角川文庫の横溝正史のシリーズは既に絶版になったレアな本が何冊かあります。 「横溝正史読本」がどうしても手に入りません。 「シナリオ悪霊島」も結構レアですが、こちらは2冊持っています。 春陽文庫の横溝正史長編全集と人形佐七捕物帳全集は揃えてあります。 全巻読破には至っておりません。

志水辰夫
おととしに文庫本を買い込んで片っ端から読みました。 主人公の失敗を見込んで依頼された仕事を、そんなことは承知で最後までがんばってしまうというパターンは見え見えになってきますが、登場人物のキャラクターも良くて物語が面白いため、最後まで引きずられていきます。 「あっちが上海」、「こっちは渤海」のコミックなシリーズも好きです。

笠井潔
「哲学者の密室」(光文社)はナチ時代のユダヤ人収容所と現代のパリで起きる2つの密室殺人事件を重厚に描いていく傑作です。 普通なら退屈してしまいそうな著者の密室に関する思い入れは密室の哲学というべきもので、思わず引き込まれてしまいました。 「このミス」でも、この作品が高く評価されているのがわかります。 やっと、文庫になりました。
この本を読む前にぜひ「バイバイ・エンジェル」、「サマー・アポカリプス」、「薔薇の女」(以上、創元推理文庫)を読んで下さい。 「哲学者の密室」を含む矢吹駆とナディアのシリーズは物語の舞台を構成する内容の濃さでは日本の推理小説の中では第一級のものです。 これは欧米の推理小説では重要な要素になっています。 ともすれば奇抜な犯罪の方法に注目して新本格とか言われていますが、物語の背景をしっかり書き込むことが重要です。 横溝正史なども、この点に気を付けていました。 このシリーズはフランスとヨーロッパを舞台にした歴史ものとしても楽しめます。 日本でもこんなに密度の濃い推理小説を書く人がいつのだと感心しました。 「哲学者の密室」は当然としても、他の3作とも推理小説としても完成しています。 特に2作目の「サマー・アポカリプス」はミステリーとしての出来も最高です。

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