『FULL BOOST VERTICAL:The SUPERCAR Story』 DVDレビュー


『スーパーカー』のメイキングを紹介する『FULL BOOST VERTICAL - The Supercar Story』なる2枚組みDVDが発売された(総収録時間:約200分。フォーマットはNTSC、PALの2種があるが、リージョンコード=0なので、NTSC版なら日本用のDVDデッキで見ることが出来る)。私にとって『スーパーカー』は守備範囲外であり、パスするつもりだったのだが、アメリカでの販売代理店FABGEARUSA.COMにプロモーション映像があり、それによるとなかなかよさそうだったので購入することにした。
FABGEARUSA.COM(NTSC版販売元)の直販ページはここをクリック

このDVDは『スーパーカー』には思い入れがないようなTBファンにとっても、大きな魅力を持つものであることがわかった。なぜなら;

(1)本DVDは、ジェリー・アンダーソン、シルヴィア・アンダーソン、FANDERSONのいずれからも協力を受けないで製作されている。そのため、ふだんFANDERSON大会とかには参加しない元スタッフが多数出演している(途中退社したスタッフの多くはジェリー・アンダーソンに嫌われていてFANDERSON大会や公式ビデオに出てくることはまずない)。ジェリーの短気ぶりを示す逸話など”公認ビデオ”では絶対に出てこないはずの情報がたくさんある。この点に関し、制作者/著作権者のStephen La Riviere氏のコメント(及びスキャン画像の掲載許可)が取れた:

『FANDERSON抜き、ジェリー・アンダーソン抜きにしたのには紆余曲折があったけど、簡潔に言うと我々は”検閲”を受けていない映像作品を作りたかったのさ(=FANDERSONやジェリーはいつも都合の悪いものは削除させている)。また私にはFANDERSONの運営方針やドキュメンタリー制作スタイルが気に食わない。フレッシュなアプローチが必要なんだ。実際のところ、FANDERSONが協力できる資料なんて何もなかったんだよ。』

(2)出演した元スタッフの人数が非常に多く、全部門を網羅している上、できるかぎり複数いっしょにインタビューしているので、記憶の信憑性が高い。しかも第2シーズンの前に退社している人が何人かいるので、いつの話をしているのか、はっきりしている。

(3)当時制作がおこなわれていたスラウ・スタジオの現状(タイヤ販売ショップ)を元スタッフ4人が巡回し、CGで当時のスタジオを再現している。スラウのイプスウィッチ・ロード・スタジオがとんでもなく狭く、天井が低く、倉庫スペースがなかったことがわかる。

(4)『スーパーカー』以前のアンダーソン作品の秘蔵映像がたくさん出てくる(『Torchy The Battery Boy』『Crossroads to Crime』、TVCM『Blue Cars』(以上白黒)および『Four Feather Falls』のカラー・メイキング映像とか)。またバリー・グレイの動画もある。


ディスク1:ドキュメンタリー (約120分)

ディスク1はメイキングに関するドキュメンタリーである。字幕、ナレーションはなく、インタビュー映像とそれに対応するシーンの映像が中心だから、英語がかなり流暢な人でないとお手上げである(おまけにしゃべっている元スタッフのかなりの割合が入れ歯でモゴモゴいっているのだ!実際のところ、私も予備知識があるのでなんとかわかっている つもり(??)というレベルである)。

インタビューの合間のところどころに元スタッフ4人がスラウのイプスウィッチ・ロードの元スタジオを訪問するという映像が挟まる。そこは今ではタイヤの販売ショップになっているが間取りはほぼ当時と同じため、CGで当時の状況を復元している。つまり「イプスウィッチ・ロード・スタジオ・バーチャル・ツアー」。これが非常によい。イプスウィッチ・ロードは『XL5』の特撮まで使われていたが、スタジオの狭さがよくわかる上、倉庫のスペースがほとんどないこともわかる(注:スティングレイの前に予算も増えたため、スラウのすぐ近くの別の地区スターリング・ロードに引越した)。

映像はまずスラウの紹介からオープニング・タイトルへ。

続いて第1章”Preparing for Launch”というセクションで『スーパーカー』以前の状況が紹介される(『Torchy the Battery Boy』、『Four Feather Falls』、『Crossroads to Crime』、TVCM『Blue Cars』などの動画がある)。アーサー・プロヴィスのインタビューもある。

第2章は”Beaker's Character Bureau”といって登場キャラクター説明のセクション(案内:ドクター・ビーカー=声:デヴィッド・グレアム)。この番組ではマイク・マーキュリー、ジミー・ギブソン、猿のミッチの3人が主役で、ポプキス教授が脇役なのだが、この4人では会話がなりたたない(間がもたない)ので、ボケ役のビーカー博士を導入したと言っている。またレギュラーの敵役(マスタースパイ、ザリン)は一番最初のアイデアではいなかったこともわかる(脚本家のウッドハウス兄弟のアイデアを取り入れた)。

第3章”Strings Attached”は人形班の話。ヘッドの製作方法、オートマチック・リップ・シンクロ、撮影方法などが紹介されている。リップ・シンクロがよくトラブって撮影が滞っていたとの証言がある(電流の大小にものすごく敏感でパクパクしすぎたり、反応しなさすぎたり)。ジョン・ブルンダールがボディの解説をしているが、スティングレイの頃の大量生産型のボディとの違いがよくわかる。

(注:このDVDでは背景にパペットが4体出てくるが、中に本物が混じっているという話だ。私はザリンがヘッド、ボディとも本物でジミーがヘッドのみ本物。あと2人はスクラッチしたヘッドだと思う。ボディに関しては、ビーカーやマーキュリーのボディは背が高すぎ、この2人とジミーのボディは細すぎるのでスクラッチだと思う。)

第4章”Fly by Wire”は特撮班の話。飛行時の空の背景を映すバック・プロジェクション装置、『スティングレイ』でも重宝された薄型水槽について詳しい解説がある。海面のシーンはスタジオ内が狭くて、屋外にレンガで組んだプールで撮影していたことがわかる。

第5章”Musical Maestro”はバリー・グレイの話。1982年のFANDERSON大会でグレイが歌っている映像がある。

第6章"Voices from the Past"はセリフの録音の話。1日で3話分を録音したと言っている。

第7章"SUPERCAR Take One"は第1シーズン(全26話)のときの逸話が中心になっている。まず第1話の監督はクレジットには出ていないがジェリーなんだそうだ(デヴィッド・エリオット談)。また、ウッドハウス兄弟から『スーパーカー』の脚本執筆のペースが殺人的だったとのコメントがあり、第2シーズンの製作にGOが出たところでウッドハウス兄弟がジェリーに原稿料のアップを要求したところ、クビになったという逸話が紹介される。また『スーパーカー』はジェリーたちの乗り物中心の企画とウッドハウス兄弟の別企画『ビーカー博士のBureau』が合体した企画であることが暴露されている。さらに第1シーズンの脚本には『ヒュー&マーチン・ウッドハウス作品:スーパーカー』という表紙があったことがわかる。”公認ビデオ”では絶対に出てこないような逸話だ!

第8章”SUPERCAR Take Two”は第2シーズンの話。デレク・メディングスがフルタイムの正社員になったのは第2シーズンからだとエリオットとアラン・ペリーの2人が話しているが、これはデレク・メディングス自身の記憶と違っている。第2シーズンから「スーパーマリオネーション」と謳うようになったが、脚本はすべてジェリー&シルビアになった。ウッドハウス兄弟を追い出してていよく『ジェリー・アンダーソンのスーパーカー』になったのだ。

第9章”The Runaway Success”は放映後の興行的成功のことを語っている。

第10章”The Sky's the Limit”は現時点での元スタッフたちの番組評価である。

ディスク2:おまけ

ディスク2は秘蔵映像(NG映像)&スチル、イプスウィッチ・ロード・スタジオ・バーチャル・ツアー(アラン・パティロの解説付き)、海外版の映像、カラー化映像(『XL5』のカラー化オープニングもある)、ストーリー・レコード2枚のまるごと収録、となる。その多くはディスク1にも利用されている。


コメント

このDVDは大傑作だ。断片的で物足りないFANDERSON製作の一連のビデオやカールトンのDVDおまけ映像の類よりはるかに出来がいい。ドキュメンタリーだけで2時間もあるので、番組制作過程のほぼすべてが網羅されており、全体像がつかめる。特にスタジオをCGで再現したのはよい。

製作者はこのDVDが売れたなら、後継番組のメイキングDVDも作りたいと言っている様だが、この種の商品がどれほど売れるのか、他人事ながら心配になる。流通網も英1店、米1店の2店での直販しかない(FANDERSONのグッズ販売部門では、まだこの商品を取り扱っていない)。

このDVDは日本人にとって「買い」なのか?
本商品には字幕はなく、画面を見ていればなんとなく内容がわかるという類のものでもない。
とすれば、このDVDを楽しめる日本人はかなり限定的、と結論せざるをえないのではなかろうか?日本語版出す業者もないだろうしなあ...