衛星設計コンテスト体験記(前編)

衛星設計コンテストとは?

衛星設計コンテストとは日本航空宇宙学会等が主催して行われているもので,設計部門とアイディア部門があります.設計部門はその多くが大学の研究室単位で応募しています.衛星に関する詳しい知識が必要でかなりレベルが高いです.アイディア部門は衛星に限らず,宇宙を利用したアイディアならばなんでも採用されます.昨年度はスペースクッキングや携帯電話を衛星にしてしまおうというアイディアが受賞していました. 設計部門ではH2Aロケットで種子島から打ち上げられる50kgの小型衛星をミッションを設定して設計し,その設計書を提出するというものです.私の研究室でも他の修士1年の学生と5人で参加することになりました.以下に本審査会までの涙あり,笑いありのストーリーを紹介していきます.

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衛星のアイディアを出す

衛星設計コンテスト設計部門に参加するにあたり,まずどのような目的の衛星なのかミッションを考案する必要があります.このアイディアが独創的でなければ,10月に行われる本審査会(毎年10件ほど進める)に進むことができません.メンバー全員で色々な衛星をブレインストームします.少しでも可能性がありそうならば,インターネットで今までに似た衛星が出ていないか調べます.そうした過程で衛星に関する知識もどんどんと増えていくわけです.衛星設計コンテストの登録締め切りが5月中旬で,そのときにはタイトルもしくは内容を出さなければいけないのでそれまでにアイディアを決めなければいけません.何十ものアイディアが出た結果,私の提案した「大気圏突入消失時データ取得衛星」が採用されることになりました. これは機体周囲の空気が電離することによって電波を妨害するブラックアウト現象によって ,通信が困難な大気圏突入時の機体周囲のデータを,突入カプセルとその後方にいる母衛星のコンビネーションで 得てしまおうというアイディアです.ブラックアウトは機体後方では薄くなるので通信が可能なのです. これから設計書締め切りの6月末まで,このアイディアを煮詰め設計をしていくことになります.

役割分担

実際の衛星の設計と同じように,そして円滑に設計を行うために設計のサブシステムごとに役割分担します.ミッションのアイディアを出した私はチームリーダーとしてミッション系を担当すると共に全体の設計の進行具合の調整などプロジェクトマネージャーの役割をすることになりました.宮岡さんはサブリーダーとして私と同様の仕事をすると共にミッション機器を主に担当することになりました.児玉さんは衛星の熱バランスや機器の配置,機械的な構造(設計ソフトで設計する)熱構造系を担当.伊藤は推進・制御系,辻下は電源・通信系を担当することになりました.よりよい設計を行うためにはこれらの役割分担をしっかり把握し,お互い連携して設計を進めなければなりません.しかし,それぞれ初めての経験でいろいろなトラブルがこれから起こることになります.そしてそうしたトラブルと向き合い解決していくことでわれわれは大きく成長することができました.

設計変更

設計にとりかかり,まず何よりかによりミッションを煮詰めなければなりません.ネット上で関係論文を調べたり,とりよせて読み漁ったりしました.どのような機器が必要かによって,電源計,通信系に影響し,その発熱は熱系に影響します.構造系がその機器の場所を設定することで,重心が決まりますがその結果姿勢制御に影響することになります. このような周囲との影響を考慮していくのがチームプロジェクトの醍醐味です.しかし,全てを一人で担当すれば把握も簡単なのでしょうが,それぞれが自分の担当をこなすことで精一杯なため,最初は自分の設計変更が周囲にどのような影響を与えるのか考えることができませんでした.特に設計変更のドミノの最終位置にあたる推進・制御系は大きなフラストレーションがたまっていたようです.

オンライン会議

チームメンバーの5人はばらばらな教室に机を構えていたため,ファイルの共有,議論などはわが研究室が開発したオンライン会議室VSRLを用いて行われました.細かい議論を行いたい場合はメッセンジャー(チャット)を用いました.ただ,今考えると効率的ではありましたが,必要だと思わなければ議論しなかったため,他のメンバーがどのようなことを考え,どれくらい進んでいるのかを把握することができませんでした.うまくいくためには普段から机を並べ,食事をともにして一体感を出したほうがよかったのかもしれません.よくも悪くもこのネット上でのプロジェクト進行はよい経験になりました.

激しいぶつかり合い〜締め切りが近づいて〜

設計は進み全体像が見えてきました.それと同時に提出日も迫ってきます.仲間の間にもぴりぴりした緊張感が流れるようになりました.この時期の設計変更は周囲の仲間に大きく影響します.ミッションを見直していて軌道を修正すると全体がもう一度計算しなおさなければいけません.本当に信頼感が築けていないと,あいつにいうと文句でそうだから変更はやめておこうと思ってしまうようになります.実際のプロジェクトでは部署ごとにお金が絡むためかなり深刻だという話もありました. 遅くまでの作業で疲労も続き,フラストレーションはたまります,そしてついにお互い怒鳴りあうところまできてしまったのでした.

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