奏法

 パンフルートのスタンダードな奏法というものはまだ確立されていないと私には見えます。それぞれの奏者が独自に追求し、それぞれの形で実際の演
奏によってそれを提示しているわけですが、利点もあれば欠点もあり、ある部分理にかないある部分そうでないということもあるように見えます。

 私も今までいろいろな奏者から教えを受け、いろいろな奏者の実際の演奏を見、自分自身の経験も含め一つの型、演奏スタイル、様式、つまり一つの
奏法というものを見つけつつあると思っています。その演奏スタイルというものは口で説明するよりも実際の演奏で示すべきと思い、「どのような奏法が
合理的か、あれこれ議論するよりも実際に演奏によって示す」「言いたいことは演奏で示す」ということを実践して来たつもりですし、これからもそうしてい
くつもりです。
 しかし同時に、今まで自分が学び獲得してきたものは全て先人が多くの努力によって作り上げてきたものであり、私もそれを多くの人に伝える役割があ
ると認識しています。それで、ささやかなものではありますがこのページにおいて少しずつ具体的な奏法に関して説明していこうと思います。これから示し
ていくことは一演奏家の立場からの一つの提案と受け取っていただければよいと思いますが、それぞれの提案については実際の演奏によって示し、実
践を持って裏付けていくつもりです。

基本的な演奏スタイルその1 (横の移動) 2011.12.17

2  基本的な演奏スタイルその2 (横の移動) 2011.12.26

3  基本的な演奏スタイルその3 (縦、半音操作) 2011.12.29

4  楽器の持ち替えについて 2011.12.31

5  三つのポジション 2012.1.1

6  楽器を見ることについて 2012.1.2

7  右手 その1 2012.1.3

8  左手 その1 2012.1.6

9  呼吸、その他 2012.2.27

10 呼吸その2 2012.3.1

11 各管の位置の認識その1 2012.3.6

12 基本的な演奏スタイルその4(頭の中) 2012.4.3

13 何を練習するか、主食とおやつ 2012.5.4

14 潤滑粉、油について 2012.5.14

15 基本的な演奏スタイルその5(中心、軸) 2013.2.22

 16 基本的な演奏スタイルその6(回転運動) 2013.3.6



1. 基本的な演奏スタイルその1 (横の移動) 2011.12.17

 パンフルートの演奏においてまず2つのことがテーマとなります。一つは横の移動(管の移動、首を振るか楽器を動かすか)、2つめは半音(半音を含め
音程変化)をどのようにコントロールするか。実際の演奏においてはこの縦と横(半音操作と管の移動)をうまく組み合わせるわけで、いかに合理的に縦
と横をつなげ組み合わせるかがパンフルート演奏において重要となります。

 まず横、管の移動に関しては私は頭を固定し楽器を左右に移動する方法をとっています。この方法をとるに至った経緯はまたこれから追々書くつもり
ですが、はじめ多くの奏者がそうするように首を左右に振って演奏し、ある程度のところまで行きました。しかしさらに進んでいくためにどうしても首を振る
ことの限界を認識し、腕を動かし楽器を移動させる方法に一から変えた経緯があります。現在のところそれは正しい選択・判断だったと思っており、その
おかげでより高い段階に進めたと考えており、さらに多くの可能性が開けたと考えています。

 具体的には脚、背骨、頭が一本の軸に乗るように意識し、すっと一本筋を通すような感覚で、、背骨を回転の軸として上半身が回転し、上半身の回転
に従う形で腕が左右に振れるという感覚です。詳しいことはまた後述しますが、この「背骨を軸として腕を回転させる方法」の利点を挙げておきます。

★首を左右に振るということはつまり頸椎を酷使することを意味します。ルーマニアの曲を始めとしてパンフルートでは相当速く細かい動き、急速で大き
な跳躍などが頻繁に出てきます。訓練によって相当程度まで首は動くようになりますが、長時間の訓練を長期間続けた場合背骨、頸椎を痛める可能性
があります。そこには大事な神経が通っています。そもそも神様が人間の身体を創られた時に首の関節を長時間連続的に細かく動かすことは想定して
いなかったと私は考えます。この点では首ではなく腕や指こそあらゆる動きを正確に行うために最もふさわしいものであり、神様もそのような目的で人間
に腕や指を与えたと考えます。ちょうどバイオリン奏者やチェロ奏者が腕や指を動かすことを訓練することにより自由自在に弓を操り弦を操るように、パ
ンフルート奏者も腕を訓練し鍛えることにより彼らと同程度には楽器を移動できるようになります。つまり彼らと同じように吹ける可能性があるということを
意味します。

★上のことと重なりますが、自分の経験でも頭を振っていたときにはある程度練習すると疲労し、肩・首に負担を感じたものです。現在は腕を柔らかく素
早く動かす訓練を続ける中で、練習を続ければ続けるほど体全体がほぐれ、疲労を感じるどころか、ちょうど指揮者が元気で長生きなのと同様にますま
す元気になるという感覚があります。このことは身体に無理を強いないという点でも重要だと考えます。

「口で説明するよりも実際の演奏を持って示す」という趣旨なので、今までの演奏から参考になりそうなものを出しておきます。演奏自体は褒められたも
のではないかもしれませんが、ここで提示したテーマについて参考になればと思います。

・ビバルディ ピッコロ協奏曲
http://www.youtube.com/user/musicapan?feature=mhee#p/u/9/wr2DbCOoJdw
細かい3連符など

バッハ シャコンヌ
http://www.youtube.com/user/musicapan?feature=mhee#p/u/6/HayPBDjbahE
重音奏法や中間部の連続したアルペジオ


2. 基本的な演奏スタイルその2 (横の移動) 2011.12.26

 頭を背骨の上に乗せ固定し、腕を左右に移動するという基本的スタイルについてもう少し説明します。これはフィギアスケートの選手がいかに安定して
回転ジャンプをするか、あるいはテニスプレイヤーがいかに的確に球をとらえるか、あるいは野球選手がいかに内角球を呼び込んでジャストミートするか
ということとかなり共通点があります。また、いかに力を抜きつつ移動の筋道・通り道を決めていくかという点については、しばらく習った合気道がとても
役に立っています。もしこれらのスポーツを経験された方は思い出してイメージしてみてください。

 要点を言います。
・まず大きな跳躍、大きな移動については両肩を含めた上半身全体を背骨を軸として回転され、それに従い腕が移動し、楽器が移動する感覚です。

・次にオクターブ内などの中程度の跳躍・移動は肩から先の腕の移動です。

・隣接する細かい移動やトリルなど、急速な移動は肘から先の移動です。

ずばり要点を言ってしまいましたが、つまり大きな移動は背骨を軸として上半身全体から動かす、中程度の移動は腕を動かす、細かい移動は肘から先
ということです。

 どのスポーツでも中心がブレないこと、頭がぐらぐらしないこと、力が抜けていることは基本的に大事なことですね。そして頭が常に中心にあり、脚、背
骨、頭まですっと一本筋が通っているとどんな場面でもスムースに行く可能性が高いです。

 これらのことは言葉で説明するのはなかなかは難しいです。あれこれ説明するより、実際の演奏で示したほうが解りやすいと思うので以前の演奏から
載せておきます。
コレルリのバイオリンソナタA-durです。
http://www.youtube.com/user/musicapan?feature=mhee#p/u/52/UiDjpxhIjfw
特に2楽章や4楽章で、大きな移動、中くらいの移動、トリルなどの細かい移動について見ていただければと思います。

 上記のことを含め、奏法全体について疑問など生じた場合ご連絡ください。解ることであればお答えしますし、少しでもお役に立てればと考えてます。



3. 基本的な演奏スタイルその3 (縦、半音操作) 2011.12.29

  半音操作はパンフルートを吹く上で基本的に大事なテーマです。この技術をものにできればどんな曲、どんな調でも自由に吹きこなす可能性が生まれ
ます。そうでない場合音程が不安定になったりちょっと難しい音型で躓いたり、調によっていちいち楽器を持ち替えなくてはならなくなります。そういった意
味でこの楽器を吹く上で本当に大事なテーマとなります。

 まず強調しておきたいことは、縦(半音操作)と横(管の移動)は全く別の作業であって、はっきり分けて実行することが大事です。つまり横の移動は横の
移動としてしっかりと正確に移動するようにし、半音操作は半音操作としてきっちりと独立して行います。それをうまく縦と横に組み合わせるという考え方
です。

 本題に入りましょう。
★まず尺八で行うような頭全体を前後に揺らすいわゆるメリカリは基本的には使いません。頭を前後に揺らす場合、その揺らす速さに制限され、それ以
上の細かい動きはできなくなります。簡単に言えば頭を前後に揺らしていては細かい動きに追いつかないということです。(表現としてのメリカリはあり得
ます。表現のためにはどんな動きもあり得ます。また、低音管においてはこの動きも補助的に使うことはあり得ます。)

★右手を前後に移動することにより、歌口(楽器上部)を扇の要として楽器の角度を変えて音程を変えることができますが、実際にはこの方法は上と同じ
理由で良い方法ではありません。この方法も右手の前後の動きの速さに限定されてしまいます。右手はあくまでも左右の移動、横の移動が主です(チェ
ロの右手のように)。右手の使い方についてはまた別の機会に詳しく述べようと思いますが、半音操作に関しては右手はあくまでも従であり、「ほとんど保
持しているだけ」という感じです。

 頭は動かさない、右手は保持しているだけ、それではいったいどうやって音程を変えるのか。
結局口元のほうで何とかするわけですが、基本的には2つの方法があります。(色々バリエーションや裏技もありますが、あくまでも基本として)

方法1
 実際の演奏を見てください。
http://www.youtube.com/user/musicapan?feature=mhee#p/u/7/HayPBDjbahE
また長いシャコンヌで申し訳ないですが、その10分8秒、15分20秒、18分13秒、いずれも同じことをしていますが、同一管(Hの管のみ)で、半音のトリ
ルを行っています。結局種を明かせば下あごを前後に移動し息の角度を変えるという方法です。その際右手に注目してほしいのですが、ほとんど動いて
いないですね。にもかかわらず楽器は細かく動いているように見えます。これはどういうことかと言うと、あごが手前(後ろ側)に引かれたときに、それに応
じて歌口(楽器上部)が若干手前に倒れ込みます。ちょうど先ほどとは逆に手首を扇の要として、歌口(楽器上部)がある程度前後に移動すると言うことで
す。

 この方法は結局あごの前後移動の速さに依存するわけですが、無理せずだんだんとあごの関節を動かすことを訓練していくと、この演奏のように相当
早く移動することができるようになります。ちなみにこのシャコンヌの中間部(長調の部分)はH-durで吹いてます。

もう一つ演奏です。
http://www.youtube.com/user/musicapan?feature=mhee#p/u/11/aTdbdkPJU_o
ツィポーリのエレヴァツィオーネです。
0分48秒、2分8秒、2分57秒、3分4秒、3分36秒など、これらは隣接する管での半音を含むトリルでけっこう難しいものですが、あごの動き(縦)と右
手(横)をうまく組み合わせると可能になります。

いくつかその他の例をあげておきます。
http://www.youtube.com/user/musicapan?feature=mhee#p/u/0/Bdp5n1lOPL8
アダンのオーホーリイナイト
http://www.youtube.com/user/musicapan?feature=mhee#p/u/62/WOHgjPmhVMI
赤とんぼ
http://www.youtube.com/user/musicapan?feature=mhee#p/u/72/9B9oXG6KzLo
カタリカタリ
たまたまこの3曲ともEs-durで♭3つとなります。このような曲を不自然にならないようにできるだけ音楽的に演奏するよう練習することは半音操作に大
変有益であり、自分の耳で音程を取れるようになってくるものです。楽器の動き、右手の動きなど参考にしていただければと思います。

方法2
あごの前後移動ではなく、唇を前後に伸ばしたり縮めたりという方法です。この方法はコルネル・パナさんが得意とするもので、唇の筋肉を鍛えることに
より相当速く動かせるようになります。この方法の利点は、楽器をほとんど動かさずに唇の変化だけで音程を変えられるという点です。ただ、私も試みて
いますが今のところあごの前後移動のほうが唇の前後移動よりも速く動かせるので自分の場合前者を主に使っています。

 他にも音程を変える方法は色々ありますが、まず基本となるのはこの2つですね。それぞれフィットする方法を使えばよいと思いますが、いずれにして
も出来るだけ動きは少なく、特に頭や右手が出来るだけ前後に動かないようにすることが大事です。


4. 楽器の持ち替えについて 2011.12.31

 このことは直接演奏技法とは関係ないようにも思えますが、それぞれの奏者が基本的にどのような考え、どのような方向性、堅い言葉で言えばどのよ
うな哲学を持っているか、それが形に表れてきて、結局演奏に現れます。そんなわけでこの問題も各人の演奏に大いに関係すると思います。

 ずいぶん前、私は楽器をたくさん持っていて、その日使う曲にあわせて必要な楽器をいくつも持ち運んでいました。そして曲の調に合わせてさっと持ち
替えてそれなりにこなしていました。ただ、持ち替えたあとにまたその曲の中で色々転調したり複雑な音になったときにかえって混乱し、対応できないとき
はありました。

 ルーマニアに行くようになって、どのパンフルート奏者もちゃんとした奏者はだいたい楽器を一つしか持っておらず、アマチュアの人や自己流の人たち
はけっこうたくさん楽器を持って持ち替えていました。あるとき私は質問しました。「たった一つの楽器で難しい調の時どう対応するか」ある奏者の答えは
「ちゃんとしたパンフルート奏者はどの調でも吹けるものだ」というものでした。もちろん確かにその通りだと思いましたが、現実に難しい調に直面したとき
対応できないことがあるではないかという気持ちが残りました。

 100パーセント納得したわけではありませんでしたが、その後楽器は一つだけに決めて、彼の言うとおり出来る限りどんな調でも吹けるように日頃から
練習を始めました。現在はそれで正解だったと思っています。まず、そう決意して取り組み始めてから技術はずっと進歩したように思います。たとえば一
つ前の文章で取り上げたような、オーホーリイナイト、カタリカタリ、赤とんぼなど易しい調ではありませんが、まあこのようなゆっくりした曲であれば問題
なく吹けます。またたとえばドビュッシーのシリンクスは♭が5つですが、吹けないことはありません。
http://www.youtube.com/watch?v=67pS5pIQZUg

 難しい調への対応として現在どのように考えているかというと、一つはあまり杓子定規に決めつけないで臨機応変に対応するのがよいと言うことはあり
ます。たとえば皆さんが明日オーケストラと共演でどうしても難しい調で吹かなくてはならず、オーケストラに移調してもらうことは出来ないという事態に直
面したら迷わず吹きやすい楽器に持ち替えることもやむを得ないでしょう。

 あるいは1ヶ月後に吹かなくてはならないというなら、一応持ち替えた状態で吹けるようにしておいてから、与えられた時間で出来るだけ練習して何とか
持ち替えなしで出来るようがんばるのが良いと思います。

 また、オーケストラではなくピアノ伴奏などであれば楽器を持ち替えるよりは移調するほうがベターだと思います。演奏するというのはとても微妙な感覚
であり、楽器が変われば穴の位置も変わり、跳躍の感覚も全て変わってしまいます。それら微妙な感覚を大事にするなら普段使っている楽器は出来る
だけ持ち替えないのが賢明です。楽器の持ち替えより移調を勧める理由はこのことです。

 まあ、パンフルートを吹く限り半音操作は避けて通れないものであり、結局0か1か(ノーマルか半音か)の二者択一ですから、とことん取り組んで自分
のものにしてしまうのがよいと思います。

 実際のところ楽器と人間はけっこう似てます。一人一人姿形も違うし、いろいろなパーツの場所や大きさも違います。本当に自分の身体の延長として自
由に吹けるようになるためにはあれこれ取り替えるよりも、一つのものにとことん習熟したほうが結局良いだろうという私なりの結論です。

 同じ持ち替えでも低い音域を吹くために低音用の楽器に持ち替えるという場合はもちろんあり得ます。ただし上で述べた一つの楽器に習熟する利点は
確かにあると思うので、自分の場合普段使う楽器自体結構大きい楽器です。最低音C1〜最高音A4(?)27管、4オクターブ弱です。この楽器でほとん
どどんな曲も吹いています。ちょっと大きいので慣れるまでに少し時間がかかりましたが、現在はほぼフィットしています。


5. 三つのポジション 2012.1.1

 多くのパンフルートを吹く者はこのようなことは意識していないと思いますが、自分としてけっこう大事だと思い日頃意識していることについて書いておき
ます。3つのポジションと言うことですが、上半身、肩、腕など保持の仕方についてのことです。前に大きな移動については背骨を回転の軸として上半身
から肩、腕まで連動させ、それに従い楽器が移動する感覚ということを述べました。そして当然の結果として高音域を吹いているとき、中音域、低音域、
それぞれ上半身のポジションが変化するわけです。

 中音域を吹いているときには肩の位置はだいたい正面を向いているわけですが、高音域に移動すれば自然と右回りで左肩が少し前に出て右肩が後
ろへ動くでしょう。逆に低音域を吹く場合左回りで右肩が前に出てきて左肩が後ろへ引かれるでしょう。

最初のうちは高音域を吹く場合右肩が後ろへ行くのがちょっときついかもしれません。だんだんと上半身を含め肩をほぐし、可動域を広げて引っかかり
をなくしていきます。
実例としてバッハのプレリュードを出しておきます。3つのポジション移動のサンプルとして見ていただければと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=A0-wr7b8akE
少し注意して見ていただくと低音域の時、中音域の時、高音域の時肩の位置が若干変化しているのが解ると思います。その3つの大きな枠組みの中で
腕・肘から先を使って細かい動きを行っています。大きく跳躍するときはまず背骨を中心として回転されポジションチェンジする感覚です。

 もう一つ、ピアソラのリベルタンゴです。
http://www.youtube.com/watch?v=UhbrQLJ7O_4
ちょっと慌ただしい演奏ですが、高音域から低音域のポジション移動、あるいはその逆の移動について見ていただければと思います。

 このようなことはパンフルートを吹く人間でほとんど誰も気にしないことかもしれません。しかし私は22管なら22管、25管なら25管がパンフルートの自
由なフィールドであり、その中でどこへでも好きなときに好きなところへ自由自在に動きたいという願いがあり、そのためにはこの3つのポジションを意識
することはとても大事であり有効であると感じています。よろしければ是非トライしてみてください。

6. 楽器を見ることについて 2012.1.2

 楽器の持ち替えのところで「その人の基本的な考え方が結局演奏に出る」ということを言いました。また、普段練習でやっていることは本番でもやる、練
習でやっていないことは基本的に本番では出来ない、ということもあります。

 いろいろな演奏を見ると曲の途中でちらちら楽器を見、場所を確認する人を見かけます。もちろん誰がどのように演奏しようとその人の自由ではありま
すが、私はいくつかの点でそういう演奏を見るとがっかりします。「普段からちらちら見ながら吹いているのだな」「人の前で吹く位なのに場所を覚えていな
いのかな、跳躍に自信がないのかな」そしてなにより「ちらちら見るたびに音楽が途切れ、聴くものの注意をそらし音楽を散漫なものにする」そんな風に
感じてしまいます。これは初心者であろうとベテランであろうと大家であろうと同じことです。

 パンフルートを演奏する、パンフルートを練習する、その主なものはなにか、音色に気を配るのはもちろんですし、難しいフレーズを流麗に吹けるように
練習するのももちろんですが、その前提として各管の場所を覚えるということがあります。演奏しているときに場所を目で見ることが出来ないこの楽器に
おいては、目で見ずともきちんと飛べること、目で見ずともこれから吹く管の音が解っていることは基本的に重要なことです。

 どうすれば目で見ずとも自信を持って吹けるようになるか、結局普段の練習の時から見ないで吹くように訓練する以外ありません。曲の最初の出だし
の音を目で見て確認していますか。それでは今度から吹く前に目で確認することをやめて、最初の音が目当ての管に当たっているかチャレンジする習慣
にしましょう。そして吹き始めたら曲が終わるまで見ないようがんばってみましょう。うまく飛べないところ、自信のないところが出てきたらその部分をこそ
練習すべきです。

 普段の習慣が本当に大事です。この「見ないで吹く」という習慣を3年間続ければだいたいの場所は吹く前から解るようになります。目で見ずとも場所
がわかっているというのは演奏する上で本当に安心と自信をもたらします。そしてそのたびにこの楽器を自分の身体の一部にしていくことが出来ます。こ
れは大きな財産となります。ちらちらと見ている間は何年たってもその部分を覚えないでしょうし何年たっても自信を持って飛べないでしょう。

 同じことですが、楽器に目印をつけている人がけっこういます。これもご本人の自由ですし、かわいい目印はほほえましいものです。しかし目印に頼っ
ている間はちょうど自転車でいつまでも補助輪を付けているのと同じで、場所を覚える妨げになります。とっさの時の目印として一つ二つ付けておくくらい
は良いのかもしれませんが、出来るだけ目印に頼らないのが望ましいです。私も演奏していて自信がないところでちらっと見てしまうことはあります。しか
し、実際の演奏を見てもらえればわかるように、ほとんど見ないで吹いていると思います。

7. 右手 その1 2012.1.3

 右手についても左手についても言うべきことはたくさんありますが、全てを言葉で言い表すことは難しいです。ここではある程度最大公約数的に私が考
えていることや、そこから出てくる実際の動かし方について説明してみようと思います。まあ全部を伝えることは出来ないと思いますが、少しでも基本的な
ことを理解してもらえればと思います。実際のところ100人の奏者がいれば100人全部違うようです。それぞれ理由があり様々な保持の仕方、動かし方
があるわけですが、右手にしろ左手にしろパンフルートを演奏する上でとても大事な部分であり、各人が合理的な方法を求めるべきものと考えてます。ま
ずここでは右手について。

 まずは実際の例を見てもらうのがよいと思います。バッハのチェロ組曲のクーラントです。
http://www.youtube.com/watch?v=BiJOFaEiLcw
 頭を固定して、背骨を中心として、腕をチェロやバイオリンのように動かすという考えで吹いています。パンフルートの場合片腕ではなく両腕が連動して
動きますが、演奏を見てわかるように左右の移動についてはどちらかと言えば右手が主役となり、左手は従となります。チェロの演奏でボーイングの訓
練をするようにパンフルートにおいては右手を徹底的に鍛えるべきと考えています。

 ご覧のように出来る限り余計な力を抜きリラックスした状態で自由に動くようにします。楽器を握りしめるのではなく、ちょうどソフトクリームをスポッと保
持するように楽器が落ちない程度に保持します。強く握りしめてしまうと楽器が固まってしまい半音操作の妨げになるし、せっかく楽器が響いているのに
その響きを止めてしまいます。

 もう一つ大変大事なことがあります。それは手首の状態についてです。これは合気道で習ったことなのですが、身体の中心から腕、肘、指先、そして楽
器まで氣がスッと滞りなく流れていくのがよいと言うことです。ところが手首に力が入ったり、きゅっと曲がったりしてしまうと自然な氣の流れが妨げられ、
同様に血液の流れも滞り、神経の敏感さにも影響するようです。要はどこかに力が入っていたり、不自然な形になっていると本来の動きが妨げられると
いうことです。ここで言っていることはなかなか言葉で説明しにくいのですが、何とかビデオを見て感じ取っていただければと思います。肩、肘、手のひら、
楽器まで自然にスッとつながっていて不自然な形や余計な力が抜けている感じです。

 親指を立てる人もいれば立てない人もいます。親指を立てることにより半音操作を助けるという意味合いはあるかもしれませんが、私は親指は立てず
に裏側(手前側)で自由に遊ばせています。響きを止めたくないのと、半音操作の時親指でかえって邪魔をしたくないからです。

 この演奏自体はまあちょっとした屋外での練習ですが、右手についていえば自然体で力が抜けていることによる動きの美しさはあるように思います。

8. 左手 その1 2012.1.6

 左手についても千差万別で、がっちり固めて保持する人、親指と人差し指だけでつまむ人、楽器のかなり中央よりを持つ人などいろいろな形がありま
す。実際のところ首を振って演奏する人にとっては楽器は固定されているのでどのように保持してもあまり違いはないかもしれません。しかし、頭を中央
に固定し楽器を自由自在に移動しようとする場合、左手の保持の仕方は大変重要なポイントとなります。私も色々試行錯誤はありましたが現在のところ
「これだ!」という形に落ち着いています。人それぞれ流儀がありますし、慣れの問題もありますが、私の保持の仕方とその理由について一応説明してお
きます。

 まず左手の役割について確認です。
1,右手とともに楽器を安定して保持する。
2,左右に移動する際には左手がガイド役となります。唇と歌口の接し方や当たる角度など大変微妙なコントロールは左手の役割です。
3,ビブラート、基本的にはちょうど弦楽器のように左手でビブラートをかけます。
4,管の位置を認識するための基準、特に高音域の場所の認識は左手の指との位置関係が大事です。
5,半音操作の補助

例としてルーマニアのドイナです。(左手が見やすいアングルという理由です。)
http://www.youtube.com/watch?v=ypm4U4UAEpE

 全体として左手にしろ右手にしろスッと力が抜けていて、余計な力が全く抜けていて、氣が指先までよどみなく流れ出る感じ、自然体の美しさが感じられ
るような姿勢・保持の仕方だと良いと思います。腕だけでなく前に述べた全体的な姿勢にも注意してください。上半身全体力が抜けて、肩の力も抜けて背
骨もスッと真っ直ぐにのびて、頭やあごは前に突き出さず背骨の真上に乗っている感じです。

 さてちょっと細かく見ます。
1と2について。もちろん安定した保持が大事ですが、必要以上に固く持つ必要は全くありません。楽器が安定して、なおかつ自由自在に左右に移動で
きて、半音やビブラートなど微妙なコントロールが出来ればよいわけです。その意味で私は親指については注意を払っています。ご覧のように親指は楽
器の左端の角のあたりに当てています。決して楽器の裏側(手前側)に持ってきて他の指とともに楽器を挟む形は用いません。これは実際に試していた
だければすぐわかると思いますが、親指と他の残りの指で楽器を表裏から挟むと肘や肩の辺りが窮屈になり自由に動かすのに支障が出ると感じていま
す。

 1と2についてもう一つ、残りの指については自然な形で楽器の表側に添えますが、私が注意している点は決してベタッと手のひら全体を楽器に付ける
のでなく、各指の指先だけ楽器に接するようにしています。その分腕や肘を全体としてほんの2〜3センチ前方に出します。是非試していただきたいので
すが、そうすることにより肘や腕がずいぶん自由になり窮屈さがなくなります。実際のところ唇と歌口の接し方やビブラートは大変繊細なコントロールを要
します。一番敏感なのは手のひらや指の付け根ではなく指の先端が一番敏感です。特に高音域の細い歌口にうまくジャストミートさせるには指先の敏感
な感覚が必要と考えています。

4について。特に高音域については左手の指の位置が基準となり、そこからの位置関係で場所を認識します。この点でも指先の敏感な感覚が役に立ち
ます。また、左手の場所をしょっちゅう変えたり楽器の中央寄りを持つ人がいますが、常に同じ場所を持つことが大事と考えます。また前に22管なり25
管内がパンフルートの自由なフィールドだと言いました、その点でも左手は常に楽器の左端にあるべきと考えます。中央寄りを持った場合、それより左側
の位置関係が曖昧になります。

5について。ベタッと指全体を楽器に付けてしまうと出来なくなりますが、各指先だけで保持すると左手の手のひらが柔らかく湾曲し、特に親指の関節を
ちょっと動かすことにより半音操作を助けます。リコーダーで左手親指をちょっと動かして穴を開けたり閉めたりします(サミング)が、パンフルートにおい
てもご覧のような持ち方をした場合親指を使うことが可能となります。

 以上、けっこう細かく説明してみましたが、左手はとても微妙なもので、ちょっとしたことでずいぶん吹きやすさが違ってきます。また人により千差万別な
のでどれがよいとなかなか決められないものです。私自身はこのビデオのような保持の仕方が今のところ理にかなっていて演奏の自由さを助けていると
感じており、とても気に入っています。


9. 呼吸、その他 2012.2.27

 以前指導させていただいた生徒さんの一人より呼吸について書いてほしいとリクエストをいただきました。自分も含めて誰でも「もっと力強く、もっと長く
続く息がほしい」と願うものです。この事については歌うときや他の管楽器にも共通する一般的なことしか言うべきことはありませんが、それも含めて全般
的なことについて少し書いておきます。

 パンフルートは管楽器の中でも特に息をたくさん使う楽器であり、しかも基本的にかなり力強く吹き込む楽器です。そのために一般的には
1、いかにたくさんの息をしっかりと取り込めるか。
2、取り込んだ息をいかに効率的によく響かせ長く吹き続けるか。
というようなことが当面のテーマとなります。

1について、普段無意識に私たちは呼吸しているわけですが、まず人体がどのような仕組みで息を取り込むことが出来るのか確認しておくことは有益だ
と思います。息を吸い込むということはとても能動的なイメージがありますが、肺自身には自分で膨らんだり縮んだりして息を吸い込むことは出来ず、ご
存じのように横隔膜を腹部に向かってぐっと押し下げる(背筋や腹筋もそれを助ける)ことにより肺の容積が広がり、肺内部の気圧が1気圧を下回る、そ
の結果として内部と外部が同じ1気圧になるまで外部から空気が流れ込む、そのようなメカニズムでありイメージとは裏腹にとても受動的なものです。簡
単に言えば肺の容積が広がり気圧が下がった分だけ結果として外部から空気が補充されるということです。

 従って心がけるべきことは息を出し切った状態から横隔膜を大きくぐっと押し下げる訓練が一つ、もう一つはたくさんの空気が流れ込むことが出来るよ
うに前もって胸を広げておくという意識でしょう。良いオペラ歌手の姿勢をイメージしてみてください。自然体で力が抜けていながらスッと良い姿勢で胸が
開かれているでしょう。パンフルートを吹く場合にも基本的には同じことであり演奏の時だけでなく普段から息をたくさん取り込めるよう良い姿勢を心がけ
ることは大変有益だと思います。そして時間を見つけては息を出し切った状態からぐっと横隔膜を押し下げて空気を流れ込ませる練習も大変有益です。

 私自身も演奏の時や普段の練習の時にも、出来る限りにおいて息を良く取り込める良い姿勢や横隔膜の動きを意識しつつ吹くよう心がけています。参
考としてアルカデルトのアベマリアの演奏の様子です。
https://www.youtube.com/user/musicapan?feature=mhee#p/u/60/UeSVSTnEKDU
もっと深く大きく息を取り込めると思いますし姿勢もさらに良くできると思いますが、ある程度実践できていると思います。参考になるかわかりませんが、
自分の場合普段の生活の中でジョギングしたりある程度の距離を自転車で走ったりしており、そのことは横隔膜をよく働かせる腹式呼吸に大変役立って
いると感じています。また、笛を吹くということは生命の息吹を周りに伝えるということでもあり、基本的に循環系を主として元気で快活であることは大事な
ことです。単に息の量云々ではなく、しっかりと十分に呼吸し全身活力に満ちているということは笛を吹く上で基本的に大事なことと思います。また逆に笛
を吹くことによりこの元気や活力を獲得することが可能でもあります。

2について、基本的にはロングトーンなどの練習により良く鳴らし良く響かせることが可能となり、結果として同じ息でも長く持つようになるわけですが、楽
器の製作もする立場からすると「一つ一つの管が潜在的に持っている能力を最大限発揮させてほしい」という願いがあります。ちゃんとした楽器であれば
一つ一つの管は正しく吹いてあげれば相当豊かに鳴り響くはずです。吹く側の力が足りなかったり技術が足りないために本来鳴るべき管が鳴りきらない
のは残念なことです。どうか良い教師になったつもりで一人一人の生徒(各管)がそれぞれ十分に個性を発揮しつつ最大限に能力を発揮できるように心
がけてください。そうすればきっと素晴らしく鳴るようになり、結果として息も長く持つようになると思います。

10. 呼吸その2 2012.3.1

 呼吸についていくつか補足しておきます。息は肺自身が取り込むのではなく、横隔膜をぐっと押し下げることにより結果として空気が流れ込んでくるとい
いました。その感覚というのはそれぞれの奏者や歌い手の人が自分なりの感覚を持って説明すると思います。参考のために私自身の感覚についていう
と、あたかも自分のお腹がビヤ樽であるかのようにイメージしています。そして息を取り込む時にはガバッとビヤ樽が膨らむというような感覚で息を取り
込んでいます。(実際にビヤ樽状態の人もいます)横隔膜をグッと押し下げる時に同時に腹筋や背筋も拡げます。

 その感覚をつかむ練習として色々あると思いますが、一つの方法は息を全て吐き出した状態で自分の脇腹を両手で強くグッと押さえます。人によりま
すが、かなりウェストが絞られた状態になります。その状態からガバッと息を吸い込みます。その時両手がグッと押し広げられると思います。両手で強く
押さえているので息を取り込むためにかなり強く横隔膜を下げ腹筋を拡げる必要があります。この練習により息を十分に取り込むためにどの筋肉を使う
のか実感できるようになると思います。

 背筋についてもいくつか感覚をつかむ方法があると思いますが、今度は両手の平を背中の腎臓の裏あたりに当てます。そして上と同じようにグッと息を
取り込みます。その時背中の部分まで広がるように背筋を使います。初めはあまり動かないかもしれませんが練習を重ねると結構背中の部分も広がっ
てくるものです。

 このようにして横隔膜、腹筋、背筋を始め可能な限りありとあらゆる筋肉を使って出来るだけたくさんの息を取り込みます。そして吹く時には逆に横隔
膜をグッと押し上げてきます。実際に吹いている時には息はとても細く強く出されますから、横隔膜は相当力強く押し上げていく必要があります。イメージ
としてはアコーディオンを演奏する時に両手でグッと押し込むような感覚です。注意することは力が入っているのは横隔膜と息の出口である唇部分だけ
であり、そのほかの部分例えば肩とか喉などは力が入ってはいけません。一生懸命吹いている時に喉に空気が引っかかって「クックッ」と音が出る時が
ありますが、そのような時には喉や肩に無意識に力が入ってしまっている状態です。

 息を取り込む時には肺の内部の気圧は1気圧といいました。しかし吹く時には唇の小さな穴から高速の息を出すために横隔膜で強くプレッシャーをか
けているわけです。従ってロングトーンの時など1気圧よりずっと強い圧力で長い時間吹くわけですから、肺の隅々まで空気が行き渡り、その間十分に酸
素が取り込まれます。つまり笛を吹くという行為は本当に健康促進の効果があるわけです。

11. 各管の位置の認識その1 2012.3.6

 誰もが願うことは自由自在に思ったところへ間違いなく移動できることだと思います。自由な演奏、自由な表現というものも、この「正確に思った場所に
移動できる」という前提の上で成り立つことです。このテーマについてはいくつかの視点、いくつかのセグメントがあります。純粋に技術的な観点、メンタ
ル的なこと、脳の記憶に関すること、そしてスポーツや武術とも共通する身体の使い方に関する視点などです。

 「相対的認識と絶対的な認識」
 誰でも最初は隣の管への移動(2度の移動)から始めて、3度、4度、5度と広げていき、跳躍の感覚を覚えていくものだと思います。そして練習を繰り
返す中でオクターブくらいまでは結構自信を持って移動できるようになると思います。これはある管を基準として相対的に間隔を認識しているわけです。
ところがオクターブを超えるあたりからイメージを持つのが難しくなりあやふやになってきます。また、うまくいっている間はよいのですが曲の途中でいった
ん引っかかったりすると、そのあと場所がわからなくなってしまうこともあります。そのため演奏中も「1度の失敗も許されない」と過度に緊張してしまうこと
もあります。

 そうならないためには相対的な位置関係の認識とは別に各管そのものの位置を覚えていってしまうと言うことがとても大事になります。具体的に言うと
例えばソならソについてはその管の場所自体を覚えてしまい、今現在どの管を吹いていようともいつでもソの管に戻れるというようなことです。言い換え
ると実際に音を出す前にその管が何の管なのか解っているということでもあります。「どの管も同じようで、なかなか認識できない」と誰もが思いますが、
しかし日頃の練習の段階から「意識して覚えようとする」ことを続けていくと、だんだんと解ってくるものです。

 一度に全部の管の場所を覚えようとするのではなく、覚えやすい管から一つずつ時間をかけて覚えていくと良いです。例えばまず楽器の最高音と最低
音は目で見なくともすぐに飛べるようになりますね。あるいは普段よく使う管、例えば中央のソ、ラ、シなども認識しやすい管です。普段から少しずつ意識
して「これはソなのかラなのか」と確かめることを続けていくといずれ目で見なくとも解るようになってきます。そして演奏中とっさの時にとても役立ちます
し、「少々間違えても大丈夫」という大きな安心と自信につながります。

 このようにして「解っている管」を一つずつ増やしていくことにより、だんだんと楽器が自分の身体と一体化してくることが実感できると思います。前にも
書きましたがこのような訓練については日頃の習慣が大変大事であり、普段からちらちらと楽器を見ている間はなかなかこの感覚が育ちません。普段
から楽器を見ない習慣を付け、出来るだけ力を抜き(力が入っているとそれだけ感覚が鈍り、覚えにくくなる)、良い姿勢を心がけ(良い姿勢であるほど上
達が早い)てください。
例として先日の演奏からチャルダッシュとチゴイネルワイゼンです。
チャルダッシュ http://www.youtube.com/user/musicapan#p/u/0/kgzNqJgle_E
これはどちらかというと悪い例であり、ぶっつけ本番で普段と違うことをやったのでずいぶんと見てしまいました。
チゴイネルワイゼン http://www.youtube.com/user/musicapan#p/u/1/Qgrz4Ibby-A
こちらもゆっくりした部分から快速部分に移るときに楽器を見てしまってますね。これは最高音のドから中央レへの7度の移動のとき自信が持てなかった
ためであり、相対的移動の感覚だけでなく、レ自体の場所をそのものとして解っていればもっと自信を持って飛べたところであり、今後の宿題です。

 こんなところまでいちいちこだわらなくても良いではないかという声もあると思いますが、目標は「自分と楽器の一体化」であり「自由に思ったところへ移
動できる」ことであり、そのために役に立つことであればどんなことでもすべきというのが私の意見です。

12. 基本的な演奏スタイルその4(頭の中) 2012.4.3

 前に「基本的にどのような考えでいるかということにより各奏者のスタイルや技術は形作られていく」ということを書きました。よく聞く言葉
「パンフルートは難しい」
「パンフルートはレガートに奏するのが難しいので音が切れても良い」
「パンフルートは複雑な音型は省略したり、大きな跳躍は縮めたりして良い」
そして「パンフルートは不完全な楽器だ」等です。
確かにある程度事実を言っているかもしれません。しかしあまりにも安易に「パンフルートだから」と決めつけ、はじめから限定してしまうことは多くの可能
性を奪うものです。そしてむしろ自分の技術の不足や怠慢を表明しているとも言えます。個々の技術論ももちろん大事であり、皆さんはそのことに一番興
味をお持ちだと思いますが、実は前にも言ったように「基本的にどのように考え、どのような方向か」ということがより重要と思います。

 上述のことについては次のように考えることも可能です。
「パンフルートだけでなく、どんな楽器でも難しいのは同じ、好きでやっているのだから難しいことは問題ではない。」
「レガートで奏せないのは移動に時間がかかりすぎ、移動の鈍さ、技術の不足以外の何者でもない、音楽的にレガートが必要なら、そのように奏せるよう
に工夫するべき。」
「やむを得ず省略や単純化はあり得るが、はじめから安易にすべきではない、ちょっとやってみて妥協するよりは時間をかけて技を磨く」
「ある楽器が完全とか不完全とか言うその枠組みがずれている、それぞれの楽器の可能な領域の中で最大限の表現をすべき」など。

先日の市内の団地でのミニコンサートからの例です。
ホラスタッカート http://www.youtube.com/watch?v=sHxb1X9K3Tg&list=UUGKKRBPgSN4il_tofi6fBFw&index=1&feature=plcp 11分40秒以後
もう一つ 四季より春一楽章 http://www.youtube.com/watch?v=IzQc03W0dV4&feature=BFa&list=UUGKKRBPgSN4il_tofi6fBFw&lf=plcp
まず見て感じ取っていただきたいのは全体的な姿勢、楽器の保持、体の動かし方等です。今見てみると、この時の演奏に関してはおおむね良い姿勢で
余計な力が入らず、体を動かしても軸がぶれず、頭はグラグラせず、高音域と低音域のポジション移動もスムースで、結構良い例として見てもらって良い
と思います。iいつも言っているようにこの事は基本的に大事です。

 その上で話を戻しますが、ホラスタッカートのテーマの部分で上から降りてきた後の分散和音ファドラドファドラド(ト調の場合)、この音型はほとんどの
パンフルート奏者はファファドドララドドという音型に替えていますがこの部分は本当は替えるべきではありません。理由は2つ、

1,その前の部分ソソファファミミレレドドシシララソソの下降は同音を2回ずつの下降旋律ですが、その後のファドラドファドラドは旋律ではなく和音です。
両方同じように吹いてしまうと旋律と和音が別物であるという大事な違いを無視することになります。

2,この曲のようにある意味で奏者の技量を示す曲において音型を替えたり省略するのは本末転倒(腕の見せ所で腕を見せられない、聴かせどころを
聴かせられない)ではないでしょうか。私の知る限りではシメオン・スタンチュウ氏は元々の音型で吹いています。(ただし録音においてです。ライブでは音
型を替えていました。)それ以外の奏者はだいたい替えているようです。
 ビバルディの四季に関しても同様です。この曲は世の中の腕に覚えのある奏者が吹いています。そしてこの曲の一番の聴かせどころと言えば鳥のさえ
ずりのようなトリルと中間あたりでのソロの快速な連続する三連符(2:08)でしょう。ところがある奏者はその一番の聴かせどころである三連符の部分をカ
ットしたり、別の奏者は音型を単純化してしのいでいます。しかしこの部分がこの曲の一番の聴かせ所だとすれば、それを省略などするのはやはり本末
転倒と私には思えます。もしこの曲をやるなら何とかがんばって吹くか、吹けないならこの曲をやるべきではないというのが私の考えです。

・「個々の技術の前提として基本的にどのような考えるか、どのような方向性か」ということが大事ということ。そして
・「どのようにすれば吹けるかということを考える。その結果として背骨を軸として腕と楽器を移動する、頭は動かさないという奏法に至っている」と言うこと
です。これらのことを議論するのではなく、実際の演奏によって実例で示しました。

13. 何を練習するか、主食とおやつ 2012.5.4

 あまり奏法的な事柄とは関係がないようですが、各人の演奏スタイルを形作る元となることなので書いておきます。人の健康を形作る基本として食生活
は根本的に大事なことです。もちろん他の要因は多々ありますが、少なくとも基本的な食生活は大きな影響があります。普段何をどのように食べている
か、その積み重ねによって時間の経過とともに大きな違いが出てきます。出来るだけ自然のもの、出来るだけ健康に育ったもの、出来るだけ化学物質
や添加物の少ないもの、出来るだけ愛情込めて作られたもの、例えば出来るだけ農薬を使わず安全な田んぼで作られた玄米のように、ちょっと食べて
おいしいものというよりは毎日食べ続けて健康の元となるような食物が望ましいです。

 以前に「普段何を考えどのように練習するかによって演奏スタイルが形作られる」と書きました。つまり普段どのような曲を演奏し、どのような曲を練習
するかということはとても大事なことです。ある程度基本的なことをマスターした人は(本当は基本をしっかりマスターしていると思える人は希ですが)その
人の好みや巡り合わせによっていろいろな曲と出会い、それを一つ一つ身につけながらスタイルを形作っていく訳です。その人がどのような曲と向きあっ
てきたかをみれば、だいたいどのような演奏をするか察しがつくとも言えます。

 自分が練習し演奏しようとする曲については、まずその曲が好きであること、何とかその曲を吹けるようになりたいという希望・願望はまず大事です。さ
らにその曲が単なるデザートのように甘くておいしいだけでなく、本当に歯ごたえがあってかめばかむほど味が出て、自分の血となり肉となるような曲で
あればよいですね。更に深い精神性・霊性に満ち、知らず知らずのうちに曲に感化される、そんな曲であればなお素晴らしい。というよりは、おやつのよ
うな曲は大いに結構ですし、まずは楽しむことが大事ですから大いに意味はあります。しかし自由になる時間が今後無限にある人ならばよいですが、「時
間は限定されている」と認識する者にとっては何を主食とするかは根本的に大事なことです。

 参考になるか分かりませんが、一例として私自身の食生活は
主食1 ルーマニアの歌と踊り。
パンフルートを育てた母国の文化や音楽を尊重・尊敬し、謙虚に学ぶことは当たり前のことだと思っています。それにパンフルートの歌わせ方、テクニッ
クを身につけるために一番有効だと思っています。ジャズと同じで楽譜はあまり当てにならず、自ら能動的に曲を聴き、感じ、譜面に定着させていく作業
は代え難い財産となります。個人的にはヨーロッパの奏者であろうと日本の奏者であろうとルーマニアの音楽と本気で向き合い取り組んでいる奏者こそ
本物というのが私の個人的な意見です。私もつたないながらライフワークとして少しずつレパートリーを増やしており、おおむねルーマニア人からは好意
的なコメントをもらっています。時に厳しく辛辣なコメントをいただきますが、それがまた励みとなっています。

主食2 ヘンデル、バッハ、コレルリ、ビバルディなどバロックの曲。
自分として幸いだと思うことは以前クラシックギターの世界に親しんだこと、聖歌隊で歌っていたこと、そして中学や高校の音楽の先生の影響によりこれ
らの古典に親しんできたことだと思っています。他のパンフルート奏者同様に私もこれらの古典を何とか自分の楽器で自由に奏したいという願いを持っ
てライフワークとして取り組んでいます。音楽を学び、技法を身につけ、技術を鍛え、何より音楽自体により知らず知らずに感化され影響されると感じま
す。

ビバルディの四季より春、ドイナとブレアザ(3:40以降)
http://www.youtube.com/watch?v=ioBWFRanohU&feature=endscreen&NR=1 (このドイナはバイオリンの曲なのであまりパンフルートでは吹かれませ
ん。ブレアザはポピュラーな曲でルーマニアのパンフルート奏者なら誰でも吹く曲です。)

 自分の場合はこの2つが主食であり二本柱だと思っています。また日本人としての血が流れているので当然日本の伝統的な音楽は大事なものです。
また以上のような全ての音楽を通して自分の中に形作られてきたものをそろそろオリジナルとして出していく時期と感じています。

 これらのことは人それぞれですから、各人が自分の食生活をよく考え、自分自身を教育していくべきものと思います。

14. 潤滑粉、油について 2012.5.14

 さわやかな春や秋の季節は空気が乾燥し、楽器の滑りも良く、気持ちよく吹ける時期ですね。しかしちょっと汗ばむ時期になると摩擦が増えて吹きにくく
なってくるのは事実です。それで多くの人がそれぞれ工夫し、パウダーを使ったり油を付けたりしているようです。私も本番の時などやむを得ないときに
は少量の亜麻仁油(くれぐれも無添加で安全なもの)をさっと付けて急場をしのぐことはあります。(以前は結構使いましたが、現在では実はほとんど使わ
なくなりましたが)

 しかしいつも言っているように普段どのように考えどのように実践していくかによって結果が大きく違ってくるということがあります。人それぞれ考え方や
流儀があるので自分のことについてちょっとだけ書いておきます。夏場の滑りにくい時期は私にとってはテクニック向上の良い機会となっています。どう
いうことかというと、滑りにくく唇がくっついてしまうときには出来るだけ摩擦を減らしてほとんど触れるか触れないかの状態で移動し演奏する訓練の格好
の時期ととらえています。滑りにくいときには「さあ、この機会に出来るだけ摩擦を減らして、余計な力を抜き、余計な熱エネルギーの発生を抑える訓練
の時だ!」ととらえています。

 そしてもう一つさらに実践していることは、「そもそも管を吹いているときだけは軽く触れているが、移動の時には触れる必要はない!」「管を滑らせるの
ではなく、リニアモーターカーのようにわずかに浮かせて直接目当ての管に移動する」そのような訓練をしています。そのためにはよほど気をつけて余計
な力を抜きソフトに移動する必要があり、その良い練習になります。(そのためにはいつも言っているように頭を移動するのでなく背骨〜上半身〜腕〜楽
器と連動させ、ブレのない軌道を描くことが大事です。)

 「滑りにくい時期を技術向上の好機とする」そして「そもそも管を滑らせず直接目当ての管にスムースに移動する」、これらのことを夏が来るたびに実践
しています。私が何度も強調していることは基本的にどのように考えるかによって結果が違ってくるということです。ちょっと滑りにくいからすぐに粉を付け
るのを習慣とするか、その時期を好機ととらえて訓練に取り入れるか、どちらがよいのかということです。前述の通りどうしても必要なときには使えばよい
と思いますが、普段の練習の時から使うのは私から見ればもったいないことです。

 それとは別に楽器を吹き続けていると歌口がざらざらになってきたり滑りが悪くなってくることはあります。それは竹の性質上仕方ないことです。その時
には細かい紙やすりなどでうまくざらつきを取るというメンテナンスは必要です。

 ここまで色々少しでも役に立つと思うことを書いてきました。必要と思うことや有益と思うことは取り入れてもらえればと思います。しかし現実には「今ま
でのやり方や考え方を変えるのは難しい」ということがあり、初心者は素直に聞いてくれますが、ベテランになるほど難しくなるのが世の常ですね。自分と
しては直接レッスンをさせてもらっていなくても私の演奏を見て何か取り入れてくれたり、言っていることを実践してみて取り入れてくれた人は本人が認め
ようと認めまいと私の大事なお弟子さんだと勝手に思っています。
先日のルーマニア大使館での演奏からです。
http://www.youtube.com/watch?v=cboZ57h7Ouw&list=UUGKKRBPgSN4il_tofi6fBFw&index=1&feature=plcp

15. 基本的な演奏スタイルその5(中心、軸) 2013.2.20

 今まで基本的な演奏スタイルに関して、縦の動き(半音操作)、横の動き(管の移動)、低音域・中音域・高音域の3つのポジション、頭を動かさず楽器を
移動することなどについて説明しました。ある部分繰り返しになりますが、パンフルートの演奏において中心をしっかりと作ること、その中心をもとにブレ
ずに演奏することが基本的に重要なことなので、あらためて取り上げます。

 先日フランスの作曲家シルヴァイン・ギネ氏の「Sad Romance」を演奏しました。試みに後ろから録画してみましたが、それを見ていただけばよくわかる
と思います。
Sad Romance 
http://www.youtube.com/watch?v=93l3KF1tY2U&list=UUGKKRBPgSN4il_tofi6fBFw&index=1
特に背骨の動き、頭の位置と動き、上半身の動き、そして腕の動きなど、全体として感じ取っていただければと思います。この小品は一見簡単そうです
が、実は奏者の実力がもろに出る手強い曲でした。思いの外動きもあり、あちこちで連続的な跳躍もあります。また、Bbという調もGスケールの楽器にと
っては課題となります。またこの演奏では2コーラス目に1オクターブ上げたことも課題となりました。そして全体としてゆったり且つしなやかに演奏するこ
とが求められます。

 まず第1に背骨が中心となり回転の軸となり、頭が真っ直ぐその上に乗っていること、演奏中どんなに動こうともこの関係を常に保つことが大事です。
管の移動に際しては頭を左右に振るのではなく、常に正面を見据えています。このビデオの場合常に遠くに見える富士山を見つめながら演奏していま
す。この「軸がずれない、軸がぶれない」ということを保つ限りにおいて演奏中どんなに身体が揺れても、たとえ踊りながら吹いても大丈夫です。

 第2に音域が変わるに従い背骨を軸として上半身が3つのポジションを取っていることを理解してください。低音域を吹いているときは左肩が後ろへ、中
音域では正面を向き、高音域では右肩が後ろに、そして連続的な跳躍などではこの3つのポジションが順番に変化するわけです。そして背骨、上半身に
従う形で腕が動いています。腕は独立して動くというよりは上半身の回転に従い、巻き付くように動いています。この曲では細かいトリルなどはありません
でしたが、背骨を軸として上半身→腕→腕の先の部分が連動して回転運動をするということです。つまり管の移動は単に楽器が左右に平行移動するの
ではなく、あくまでも背骨を軸としての回転運動ととらえるべきです。したがって楽器自体も直線的な配列ではなく、ある程度湾曲しているのは理に適って
いるわけです。

 狙った管に正確に移動するためには楽器の移動の道筋がぶれずに正確に描かれることが大事です。後ほど別のスポーツのことも触れるつもりです
が、管の移動を背骨を軸とする回転運動としてとらえることはこの「正確な移動」に対して大変有効です。ビデオを見ていただければ、例えば連続的な跳
躍に際して大変無駄なく移動していることがわかると思います。

 例えば野球においてバッターがいかに正確に狂いなく、且つ力強く球を打ち返すかということを例に取ります。必ず言われるであろうことは「頭を動かす
な、手打ちするな、腰の回転で打て、泳ぐな」というようなことでしょう。つまり言い換えると「腰の回転主導」で、「腕は上半身の回転にしたがって巻き付く
ように」、「打ち終わったあとも頭は元の位置に残す」というようなことです。正確に球をとらえると言うことは軌道がブレないと言うことですし、力強く打つと
言うことは回転の速度が速い(移動が素早い)と言うことを意味し、レガートに奏することが出来ることを意味します。このように見るとバッターの肝とパン
フルートとの肝はかなり共通しているわけです。おそらく他のスポーツでも同じだと思います。

 「なるほど、この曲のようなゆったりした曲については解った、しかしルーマニアの曲などのように細かく速い動きの曲の場合は?」という質問が出るか
もしれません。詳しいことは次回の説明でするつもりですが、上述のような背骨を回転の軸とするという基本・土台の上に、今度は肘から先の素早い動き
が加わります。例としてホラ・スタッカート
http://www.youtube.com/watch?v=NdBtrKqYQeY (3分過ぎより)

16. 基本的な演奏スタイルその6(回転運動) 2013.3.5

 前回の基本的な演奏スタイルその5において背骨を軸とした回転運動を意識することを述べました。そしてゆったりとした曲「Sad Romance」を例に取り
説明しましたが、ルーマニアの曲やクラシカルな曲、テンポの速い曲については実際どのような動きになるか、ここで説明したいと思います。
例としてバッハのバイオリンパルティータ3番のプレリュード
https://www.youtube.com/watch?v=4WTUs9UJQo0
実際のところ、この曲の演奏では今まで述べたことのほとんど全てのことが実行されています。
・背骨を軸とした回転運動
・頭を動かさず上半身や腕を動かす
・音域による3つのポジションとその移動
・半音操作
・右手や左手の保持の仕方や使い方
・途中で楽器を見ないこと

 実際の演奏を見ながら上のことについて確認していただければ、大体解ると思います。皆さんも遊びでグリッサンドをすることがあると思います。低音か
ら高音へトゥルルルーと滑らせるものです。その時良い姿勢を保ちつつ、頭を中心に据えて固定し、背骨を軸として回転させて最低音から最高音へ、また
その逆に何度か移動してみます。くどいようですが、回転の軸をしっかり固定し、頭は固定し目は一点を見つめて動かさないことです。そうすると腕はあ
る一つの軌道を描くと思います。上昇の時も下降の時もその軌道を意識し、軌道がブレないよう一定の道筋を通るようにします。そしてどのような場合も
今描いた軌道に沿って移動するようにします。
 ビデオのプレリュードの演奏もまさにそのようにして行っています。どのような細かい運動もどのような大きな跳躍も今描いたところの背骨を軸とする回
転移動、その軌道に沿って動いています。細かい反復運動では頭ではなく腕が細かく動いているわけですが、その場合でも同じく上記の軌道に沿って動
いています。また大きな跳躍や連続的な和音においても同様に上記の背骨を軸とする円運動の軌道に沿って動いています。

 実際のところ今説明した事柄について頭で理解するだけでなく、実際に身体を動かして体感し覚えることが出来ればこのプレリュードのような曲も吹け
ると言うことが示されているわけです。
例えば右手に注目すると、移動に際して細かく速く、そして大きな跳躍では大きく移動しているわけですが、チェロやバイオリンの右手と同じような感覚で
動かすことによりこのような曲も吹けるわけです。もしこれだけの連続した運動を首を振って行うとすると相当大変だと思いますが、背骨を軸として腕を動
かす限りにおいてはどこの部分にも負担はかからず、何回でも連続して吹くことが出来、長時間繰り返してもどこにも負担がかかりません。そしてはじめ
は腕を動かすより首を振った方が速く移動できると思うかもしれませんが、ある段階を超えると腕の方が首よりもずっと速く正確に動かすことが出来ま
す。そのことをこの演奏は示しているつもりです。

 この奏法の優れている点は他にもあります。自分自身頭を振っていたときと比べて実感できるのですが、首よりも腕の方がより音楽的に動かせると感
じています。どういうことかというと例えばこのバッハの曲などはアレグロの16分音符が楽譜上延々と続くわけですが、実際にはそれら16分音符はコン
ピューターのゲーム音楽のような機械的な音の連続ではなく、生き生きとした不均等な16分音符です。例えば1拍目の低音はしっかりと長めに吹いて、
残りの3つはやや短めに吹いたりしています。以前首を振っていたときにはどうしてもピコピコと均等になってしまったものですが、腕を音楽的に移動する
ことにより生き生きとした音楽が生まれると感じます。つまり生き生きとしたリズムやテンポの揺れなどを首の動きだけで作り出すよりも、身体全体から腕
を介して直接楽器に伝えることが出来ると感じるわけです。

 ここまで基本的な演奏スタイルとして1から6まで説明してきました。他の個別の技法についてはこれから述べるとして、基本的なスタイルについては大
体説明したと思います。今まで経験したスポーツや合気道等が大変役に立っていると感じます。役に立つと思う人は取り入れてみると良いかもしれませ
ん。


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