Fernando Samalea
 

Fernando Samalea。バンドネオン奏者、ドラマー。

80年代前半より本格的に音楽活動を始め、80年代半ばより、Charly Garcia、Illya Kuryaki & The Valderramas、Andrés Calamaroのバンドメンバーとしてレコーディング、コンサートに参加。それらにおける主な活動はドラマーとしてものもだ。Fernandoがバンドネオンを本格的にはじめたのは1989年からだ。それはHoracio Ferrer "the history of tangó"を読んだのがきっかけだっという。同時期に自身の「声」を探していたFernandoにとって一目ぼれだった。自身のアイデンティティとオリジナリティを表現する「声」。それがバンドネオンだった。そしてそれは彼の「声」となるとともに彼の音楽に変化を与えていく。

 

バンドネオンを始めて10年。1998年にFernandoの1stアルバム"EL JARDÍN SUSPENDIDO"をF.P.Samalea名義でリリース。ブックタイプのこったデザイン、かなり分厚いブックレットもついたこのアルバム。アラブの古い慣習にインスパイアを受け、それを20世紀のブエノスアイレスで展開させたものだという。このようなストーリーをもたせたアルバム作りは以後今でも続くFernandoの一つのスタイルとなっている。内容的にはFernando KabusackiとTony LevinのからみがKrimsonフォロアー的な音をきかせるが、Niranka Singh Khalsaのタブラ、Hindu FluteとSamaleaのバンドネオンが誰も知らない異国の香りの中へと意識を沈殿させる。

 

1999年、2nd"PADRE・RITUAL"F.P.Samalea名義でLos Anos Luz Discosよりリリース。イタリアよりアルゼンチンへ亡命したアナキストSeverino Di Giovanniと30年代のBsASをテーマに、Fernando自身の南米、ブラジルMato Grosso州のジャングルへの旅の成果を詰めたアルバム。1曲目の"Xavante"から2曲目"Plaza de mayo"への流れが絶品。Fernandoのバンドネオン、ドランベ調ドラミングに、Miguel Garciaのキーボード、Kabusackiの静かに唸るギターの絡みがなんともスリリング。正に静かにジリジリと焦燥していく燃え殻のような音。恐怖、焦り、脱力そんな短い時間の一生を追うかのような映像を感じる。Ramiro Musottoのbirimbauがブラジル奥地の神秘性をアルバムにもちこむ。原始と幻視の境に燃え尽きる炎。バンドネオンとロックドラミング。Fernandoの中の二つの音楽の完全な一致を見ることができるアルバム。そして、Fernandoが追い求めるバンドネオンと現代テクノロジーが始めて理想的に結びついた作品といえるだろう。

 

2000年、3rdアルバム"Full Femme"Fernando Samalea名義でLos Anos Luz Discosよりリリース。架空のフレンチシネマ"Full Femme"のメイキングのサントラといった凝ったコンセプト。アルバム中の俳優の声はJean-Luc Godardの映画からサンプリングしたものだ。前作よりもアコースティックな演奏はアルバムコンセプトを考えてのものか。FernandoのバンドネオンとAxel Krygierのヨレヨレのトランペットがさらに雰囲気を怪しいものとする。フランスParisというよりもやはりArgentina、BsAsの大人の女と男の物語が似合う音楽だ。思う存分哀愁たっぷりに弾かれるバンドネオンの中に、バンドネオンを自分の「声」にしたFernandoを聴くことが出来るアルバム。

 

2000年3月からJoaquin Sabinaのサポートのためにスペインへと渡ったFernando。4thアルバム"Metejón"はスペインBarcelonaのBlue Moon RecordsよりF.P.Samalea名義でリリースされた。50年代Peron大統領と妻Evitaのもとで発展をとげるアルゼンチン。そんな時代のBsAs近郊の少年院の子供たちがテーマのアルバム。富と名誉のために追いやり閉じ込められた自由と未来か。はたまたその為に虐げられる小さな夢と希望の話しか。

数曲でDiego Galazのviolin、そして盟友Andrés Calamaroのキーボードが加わる意外はFernando自身の演奏でソロアルバムの趣。前作でバンドネオンと自身の「声」とが一体となったその音は、哀愁というよりも時間という波を操っているかのようだ。記憶を揺さぶり、感情を撫で、どこかへ流しどこかへ引き戻そうとする。また、ここではバンドネオン、ドラムの他にFernandoの主要な楽器marimbaとglockenspielがとても印象的。ソロアルバム的ではあるが音は詰め込みすぎず、ジャケットにあるような空と雲のようなそっと流れていくような音が素敵。Fernandoと静かに語り合っているかのような1枚。

 

2002年、スペイン、ドイツに本拠を置くGalileo Musicより5thアルバム"Noche en Madrid"Fernando Samalea名義でリリース。タイトルどおりにマドリッドにおけるライブ音源("PADRE・RITUAL""Full Femme""Metejón"からの選曲)に2曲のスタジオ録音の曲を加えたアルバム。ジャズの様相を、ラウンジに流れるジャズのムードを装ったような演奏が今ひとつしっくりこない。スタジオ録音の曲もFernandoのバンドネオンとヴァイブ、ドラムに、テナーサックスとジャズギターが絡む内容。これも没トラックというか、いかにもオマケのようで今ひとつ納得のいかない内容。レーベルの意向が働いたものなのか、Fernando自身の指向なのかはわからないが、充実した内容のアルバムとは思えない。
あるインタビューのなかでFernandoは自分のアルバムを"cd-cuento"(cd-story)といっていた。このようなLiveアルバムでは、彼の音楽は充分に表現できないということだろうか。 

 

2003年、Los Anos Luz Discosより"Compilado 1997/2003+remixes"をFernando Samalea名義でリリース。1st"EL JARDÍN SUSPENDIDO"から4th"Metejón"からの曲と、Remixされた3曲を加えたアルバム。1stの曲の変態さ、2ndの曲のスタイリッシュさが目立つ。しかし何といってもRemix(というより一部新録!)の3曲に注目したい。Maria Eva Alvisturのbassもかっこいいが、Luciano Supervielleの参加が肝。Lucianoはウルグアイ人でBajofondo-Tango Clubにも参加していた人物だ。Lucianoが2004年にリリースされるFernandoの新作に参加しているかはわからないが、このremix3曲で聴ける音が今後のFernandoの音に近いものだろう。
またこのアルバムにはHoracio Ferrerが1曲に声で参加し、序文のよせている。Horacioによってバンドネオンを弾きはじめたFernandoにとってはこの上のない喜びであっただろう

そしてFernando Samaleaを語る上で忘れてはならないのがMaria Eva Alvisturの2枚のアルバム"Insomne""Avatar"

ブエノスアイレス出身でマドリッドに活動の拠点をおいているMaria"Insomne"は2000年、"Avatar"は2004年のアルバム。

Fernandoは2枚ともに製作、演奏に参加。一聴してFernandoとわかるサウンドながらも、Mariaのアルバムになくてはならない存在となっている。

 

タンゴとエレクトロニクスを融合させた音楽が世界中を賑わせているが、Fernandoの音楽はそれらとは一線を画すものだ。

ジャンルの融合を図ろうとする実験的な試みではなく、先鋭的なRockを演奏する中で、世界中を旅する中で、自分自身の「声」とアルゼンチン(BsAs)人としてのアイデンティティを求めた結果が今のFernandoの音楽だからだ。そして今、Fernandoは見つけ磨き上げた「声」を使い、新たな何かを作ろうとしているように感じる。

リズミカルでノスタルジックでコスモポリタンでエレクトロニック。それがアルゼンチンタンゴと呼ばれるものであるなら、Fernando Samaleaの音楽こそ、現代のアルゼンチンタンゴだろう。

Fernandoはあるインタビューの中でこう語っている。「私にとってタンゴとはブエノスアイレスが作ったbeautiful Frankenstein」だと。そして続けてこう言う。「Frankenstein of the Frankensteinを作っているんだ」と。

Fernando Samalea.。BsAsに降り立ったジキルかハイドか、聖者か罪人か。いずれにしても、その作品は永遠のもの。
(sh2o)

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