・押し並べてMの格付け日向ぼこ    ・観覧車廻りて聖夜の上に出る    ・皺深き目尻に溶ける雪やさし    ・地肌まで日の射し込んで今朝の春    ・野沢菜の歯に挟まりて年を越へ      比呂
                         


・前のめり生きた男の春炬燵    ・茶柱を吹きし遊も松の内    ・犬の尾の真直に立ち寒の明け    ・立春や仏間の隅に闇縮む    ・大根切るネイルアートは春の色    ・二人して茶腹となる春の雪    ・白寿なる古兵の唄う春の歌    ・冬の蠅足擦りもせずに石の上    国比呂
  


・花びらを暫くは置き春の風    ・蝌蚪の尾を集めて思案四月馬鹿    ・足のある蝌蚪も混ざりて池満ちる    ・耳たぶの小さき女遍路笠    ・目の中に桜溢れて山下る    ・透き通る耳朶眩し白木蓮    ・内股の削げて人生春うらら  国比呂
  


・湿舌に関東南部戻り梅雨    ・赤色の紫陽花雨に溶け込まず    ・初鰹その眼で見たか海の底    ・父母の歳越えられぬかも半夏生    ・万緑に身を低くして谷の駅    ・この夏は越えられるかも雨上がる  比呂
  


・犬の鼻白く乾きて夏盛る    ・契約の付帯条項酷暑あり    ・見えるもの見ずに見つめて遠花火    ・蟻の列兵隊蟻も混りおり    ・蟻の列太郎も次郎も混ざりおり    ・蝉三日蛍二十日や長寿国    ・いじめっ子面影残し妻午睡   国比呂
  


・我妻はススキを嬰のように抱き    ・月の客ビリーホリデイ似合う人    ・富有柿鎖を長く犬眠る    ・短日に追われる人とすれ違う    ・秋耕や野太き声を運び来る    ・秋出水鍵穴通る風もあり    ・空蝉を散骨にして手を洗う   国比呂
  



キャベツ切る音の響きや寒戻り    長電話している男かげろいぬ    蝌蚪老いて昇る地上は騒がしく    迷彩の葉をカタクリは身にまとい    春耕や骨コキコキと荒起し 国比呂
 


紫陽花や緑重たき中に咲き    緑亀そろりと仰ぐ梅雨半ば    新芽抱く雫に指のそっと触れ    雨三日紫陽花色を深くせり    万緑に細き道あり谷の駅 国比呂
                                



知らぬ間にゲートル巻いた蟻の列     障子孔抜いた若さの夏終る     赤城山競う高さに揚雲雀     抑揚の無き言葉から帰省する     撫で肩の石仏染めて緑雨  国比呂
                         



蓑虫の顔を出してる秋日和    犬の耳静かに動く秋日和    靴下の穴から生気抜けて秋    念力は雲突き抜けて菊花賞  国比呂
                              


産土の神と引き合う大根引    根を伐りし聖樹に飾る軽き雪    闇の部屋我と梟第九聞く    雪降りて目で古里を思う妻    背を分けて風花触れる里の道    我の上とにかく冬は過ぎるかな  国比呂