エドワード・ノートン自らを語る

セリフなしでも心の動きが
手に取るように分かるんだ。
それってすごいことだよ―

エドワード・ノートン 自らを語る

制作 ブラボーTV/ザ・モーメント・プロダクションズ(2002年、アメリカ)
放送 NHK 2005年4月14日(再放送)

司会 ジェームズ・リプトン James Lipton
ゲスト エドワード・ノートン Edward Norton
2002年、ジョン・L・ティッシュマン劇場で録画

ページ4・「レッド・ドラゴン」〜「25時」

エドワード・ノートン フィルモグラフィ

●影響を受けたホプキンスの演技―「レッド・ドラゴン」
リプトン 「レッド・ドラゴン」では大役を。
(会場、拍手)
アンソニー・ホプキンスの
向こうを張る役どころだね。
彼は人としても俳優としても
魅力的だ。
共演の感想は?
ノートン 最高だった。
「真実の行方」の公開時
彼から賛辞を贈られ
とても励みになったのを覚えてる。
その後、知り合いに(なった)。

僕は彼の演技から
具体的なことを学んだ。
例えば、彼の出演作を見ると
感動もそこそこに―
彼の演技を細かく分析し
テクニックを探ったりね。
彼は最高に繊細な演技ができる
映画俳優だ。

偉大な俳優は大勢いるけど、
彼やモーガン・フリーマン、
デ・ニーロには独特の沈黙がある。
彼らは、どこまでフィルムに映るか
分かった上で―
そのぎりぎりの線で
微妙なニュアンスを出してるんだ。
ホプキンスは無言のまま―
頭で何を考えているのか
表現できる俳優の一人だ。
それってすごいことだよ。
セリフなしでも心の動きが
手に取るように分かるんだ。

以前このニューヨークで
彼の映画を見たことがある。
「永遠の愛に生きて」と
「日の名残り」を立て続けに。
僕は家に帰るとすぐ机に向かい、
彼の演技の分析を書き始めたんだ。
すごく影響を受けたよ。

シーン 映画「レッド・ドラゴン」(2002年)
刑事のグレアム(ノートン)がレクター博士(ホプキンス)を追い詰めるが、逆に返り討ちにあってしまう。
腹部にナイフを刺され、もんぜつするグレアム。
レクター 「動くな。
 ショック状態だ。
 痛みは感じてほしくない。
 すぐに意識がもうろうとし
 眠くなる。
 (さらに深く刺す)
 逆らうな。穏やかに。
 お湯につかるように」
叫び声をあげるグレアム。
レクター 「よく来てくれたね。
 だがゲームは終わりだ」
レクター、グレアムを床にねかせその上に乗る。
レクター 「大した男だよ。
 その勇気には感心する。
 (ナイフを抜く)
 ・・・心臓を」
その瞬間、グレアムが床に転がっていた矢をレクターに突き刺す。
驚き、あとずさるレクター。
自分のわき腹に刺さった矢を見て、グレアムに微笑む。
グレアム、はいずりながら銃に手を伸ばす。
シーン終わり

●ノークレジット、でも実際、脚本は僕が書いたんだ―「フリーダ」
リプトン 「フリーダ」の話を。
(会場、拍手)
リプトン 出演者は?
ノートン 大勢いるよ。
すばらしい配役だ。

サルマ・ハエック、
リベラ役の
アルフレッド・モリーナ、
ジェフリー・ラッシュ、
アシュレイ・ジャッド、
アントニオ・バンデラス、僕。
リプトン 君も脚本でかかわった?
ノートン 僕の意見を言えば―
スクリーンに映る大部分は僕が書いた。
セリフもね。
でも脚本家組合に入ってないから
名前は外された。
やっぱり悔しかったよ。
実際に使われた脚本は
僕が書いたんだからね。
リプトン ジュリー・テイモア監督は?
ノートン 彼女は本当に驚くべき女性だよ。
そして芸術家だ。

僕らは皆で話し合いながら―
長い間 映画の構想を練っていたんだ。
僕も脚本を書くために
いろいろと考えていた。
退屈させずに
芸術を見せる方法をね。

僕は少し型破りに考えてみようと
思っていたんだ。
でもジュリーには型を破るどころか
型さえなかった。
(会場、笑)
彼女は僕らとは
全く別の宇宙に生きてる人だ。
幻想芸術家なんだよ。

フリーダも非現実的な感性を持ち、
独学で絵を学んだ幻想芸術家。
ジュリーも同じだ。
彼女の考え方は
シュールレアリスムさ。
まるで魔法だ。
すばらしいよ。

●彼は最も正当に評価されてない偉大な監督のひとりさ―「25時」
リプトン 「25時」の話を。
ノートン 昨春、スパイク・リー監督と
撮った映画だよ。
自分の選択と行動の結果に
真剣に向き合う男の話だ。
その男の24時間の話。

僕は麻薬密売で
7年の服役が決まった男を演じた。
その彼がなぜこんな結果になったのか
考えながら―
ニューヨークで最後の24時間を過ごすんだ。

シーン 映画「25時」(2002年)
暗い部屋で、男たち4人が会話している。
太った男 「すごい美人だぞ」
ノートン 「間にあってるよ」
太った男 「今夜は特別な夜だろ。
 最後の自由だ。
 とびきりの女を用意した」
ノートン 「この前の女は
 歯が3本しかなかったぞ」
渇いた笑い。
シーン終わり

ノートン 脚本に感動したんだ。
それは―
あの恐ろしいテロ事件の後
最初に出会った脚本だった。
スパイクは最初から
はっきりこう決めていたよ。
映画の背景はテロの傷あとが残る
ニューヨークにすると。

僕が思うに彼は―
最も正当に評価されてない
偉大な映画作家の一人だ。
(会場、拍手)
彼は米国映画界において、
最も個性的で多作で―
ユニークな
真の創造者の一人だと思う。
独自の表現方法を確立してる。

シーン 映画「25時」(2002年)
ノートンと彼の恋人があわでいっぱいの風呂に入っている。
彼女 「ちょっとやめて」
ノートン、彼女の左足を持ち上げ、
そこにタトゥーがあるのを見つける。
ノートン 「なぜプエルトリコのタトゥーなんか。
 米国人だろ。
 プエルトリコへは2度、旅行しただけだ」
彼女 「私のルーツよ」
ノートン 「だけど・・・
 じゃ僕は尻に
 アイルランドの旗か?」
彼女 「そのガリガリのお尻じゃ
 狭いわね(笑)」
ノートン 「僕らの子供のルーツは
 この辺り?」
くすぐったがる彼女。
彼女 「(笑い終わって)子供は無理よ」
シーン終わり

ノートン スパイクとの仕事は
すばらしい経験だった。
必死で彼のペースについていったよ。

彼いわく
実際に使うのは1テイクだけ。
3テイクいいものを撮っても
意味がないと。
要するに1テイクに
すべてを賭けるか
だらだらと何テイクも
撮るかの問題さ。

スパイクの驚くべきところは―
複雑な映画を
37日で作ってしまうこと。
鍛えられた彼だからできる神業だ。
僕にはきつい。
撮り直すうちに
素直だった演技が―
壊れてしまうこともある。
でもしだいに
良くなることもある。
特にリハーサルなしの時とかね。
リプトン リハーサルは?
ノートン 好きだよ。
この映画では何週間もやったんだ。
本番で撮り直しが減るよ。
でもリハーサルがないと
2〜3回ほど増えるかな。

●舞台では俳優の責任が全く違う
リプトン 今日は休日だね。
何の?
ノートン 舞台だよ。
リプトン 何を上演してるんだい(笑)。
ノートン ランフォード・ウィルソン作
「バーン・ディス」
(会場、拍手)
リプトン 共演者は?
ノートン キャサリン・キーナー、
ダラス・ロバーツ、タイ・バレル。
リプトン 演出は?
ノートン ジェームズ・ホートン。
久しぶりに彼の劇団に
参加できてうれしいよ。

舞台では俳優が
物語全体を
きちんと把握できるんだ。
リプトン 映画よりね。
ノートン そのとおり。
だから映画とは
俳優の責任が全く違う。
とてもやる気になるね。
(つづく)

←前へ

→次へ

特別企画(仮)/トップへ戻る