エドワード・ノートン自らを語る

皆 内側から作り上げる
“メソード演技”を称賛する。
でも、役にぴったりの靴を見つけるのも
役作りのいい方法だ。
姿勢や身のこなしが変わる―

エドワード・ノートン 自らを語る

制作 ブラボーTV/ザ・モーメント・プロダクションズ(2002年、アメリカ)
放送 NHK 2005年4月14日(再放送)

司会 ジェームズ・リプトン James Lipton
ゲスト エドワード・ノートン Edward Norton
2002年、ジョン・L・ティッシュマン劇場で録画

ページ2・「デビュー作でアカデミー賞の候補に」

エドワード・ノートン フィルモグラフィ

●この人も落ちていた!アクターズ・スタジオの狭き門
リプトン ニューヨークに来てから演技の勉強を?
ノートン うん。
今は亡きグロリア・マドックスという女性に、
テリー・シュライバー・スタジオで習ったよ。

シュライバーにはその後
もっと長い間教わった。
彼はすばらしい先生だ。
リプトン というと?
ノートン うまくは言えないけど―
彼は実に多元的な指導法を
とっていたと思う。

よく知られたテクニックや
アプローチ法にも詳しくて、
有名な演技の概念や方法論にも
精通していたけど、
“道具”をそろえておくことの
大切さも教えてくれた。
道具が多ければ、素材に応じて
使い分けられるから。
この素材にはこの道具が役立つ、
今度はあれが使えるな、とね。

彼には多くを学んだよ。
リプトン アクターズ・スタジオは?
ノートン 受けたよ。幾度かね。
(会場、笑)
リプトン 何回?
ノートン 少なくとも2回。
「レフティを待ちつつ」の一場面を
友人と演じたよ。
2人とも落ちたけど(笑)。

ダスティン・ホフマンは7回受けたとか。
リプトン ハーヴェイ・カイテルは11回、
(ジャック・)ニコルソンは5回だ。
もっと受けなきゃ(笑)。
ノートン イエールの演劇科も落ちたよ。

●オフ・ブロードウェーでの出会い
リプトン 以前、オフ・ブロードウェーに出演を?
ノートン 「レフティを待ちつつ」や
「イタリアン・アメリカン・
 レコンシリエイションズ」に。
ブライアン・フリール作の「ラヴァーズ」は
最高の舞台だった。

そのころジェームズ・ホートンと
出会ったんだ。
俳優で劇作家の彼は
少し前に劇団を創設していた。
2年ほど前に劇作家の
ロミュラス・リニーとね。
リプトン 本校の脚本科の主任教授だ。
ノートン ホートンは
1シーズンの間ずっと―
リニーの戯曲ばかりを
上演したいと思い、
シグネチャー・シアター・カンパニー
を作ったんだ。

●デビュー作「真実の行方」
リプトン リチャード・ギアとも話したが、
君はデビュー作でいきなり
英米のアカデミー賞候補に。

「真実の行方」の
アーロン役のために、
何人がオーディションを受けたと?
ノートン いろんな・・・
(ここで、会場から大きな拍手。)
ノートン いろんなうわさを聞いてる。
配役担当者のデボラ・アキラは―
人数は知らないけど
そこら中探しまわったとか。
リプトン (無言で手を挙げる)
ノートン 知ってるの?
もちろん知ってるよね(笑)。
(会場、笑)
リプトン 2,100人がオーディションを受けたそうだ。
ノートン (うなずく)
リプトン あの役には
人格が二つ必要だった。
登場人物と観客をそれぞれ
納得させる別の人格がね。
どんな役作りを?
ノートン 原作を読んで思ったのは・・・
あの作品というのは結局―
最後の最後に少年が皆を
だましていたことが分かる。
リプトン 彼は利口だ。
ノートン 僕は初めて原作を読んだ時、こう解釈した。

彼は弱々しい外見を利用して
他人の同情を誘い
あの手厳しい弁護士まで
丸め込もうとしてるんだと。

それで僕は・・・
結論に至ったというか―
自分なりに分析して
こう納得したんだ。

この役のポイントは同情を誘うことだ。
何をするにしても、とにかく―
人に自分を助けたいと思わせること。
心配させることが重要だと。
シーン 映画「真実の行方」(1996年)
リチャード・ギア 「あの本に下線を?」
ノートン 「(視線をそらす)」
ギア 「私を見ろ。
 下線を引いたか」
ノートン 「いや 僕じゃない」
ギア 「信じないぞ。
 そんなでたらめ誰が信じるか!
 テープを見た。
 彼が君に何をしたか知ってる」
ノートン、ギアに背を向け部屋の壁に手をつく。
ギア 「全部話すんだ。
 君が彼を殺したんだろ。
 本当のことを言え!
 もううそはたくさんだ、
 お前が殺したんだろ!」
ノートン 「違う!
 (突然、人格が変わったように)
 何わめいてんだよ。
 オレにはさっぱり分かんないね。
 腰抜け野郎!
 (ギアを見る)
 ・・・お前、いったい誰だ?」
ギア 「お前こそ」
ノートン 「オレの独房だぞ。
 お前は誰だ
 (座っているギアの足を蹴飛ばす)」
ひるむギア。ノートンが迫っていく。
ノートン 「(指差して)分かったぞ・・・」
シーン終わり

●ウディ・アレンとの仕事―「世界中がアイ・ラヴ・ユー」
リプトン 多くの俳優が抱いている野望を
君は既に実現した。
ウディ・アレンの作品に出演を。
「世界中がアイ・ラヴ・ユー」だ。
(会場、拍手)
ノートン あの年は俳優として
本当に夢のような年だった。
「真実の行方」のオーディションテープが―
業界中に出回ったんだ。
すごかった。
すさまじかったよ。
まるで大物バンドのデモテープだ(笑)。

そのオーディションのテープを―
長年ウディ作品で配役を担当している
J・テイラーが見てね。
「真実の行方」の撮影中だったけど
休日にニューヨークに来て彼に会った。

その後の展開は
もう大勢の人から聞いて知ってるね。
部屋に入ると彼が(アレンのまねをして)
“今 映画を撮っていて・・・”
(会場、笑)
その後、現場に行き
登場場面の台本を受け取る。
僕は一瞬で
セリフを覚えられるんだ。
ウディは隅に座っていてね。
僕はずいぶん即興を入れた。
面白いと思ったことは
遠慮せずにね。
ウディは
“映画はそうやって作るものだ”と。
リプトン 君が歌った曲は?
ノートン 「マイ・ベイビー・ジャスト・ケアズ・フォー・ミー」。

撮影はとても楽しくてぞくぞくした。
ウディの能率的な仕事も見られたしね。
リプトン 能率的?
ノートン ああ。とてもね。
いろんなうわさがあるけど、
実に適格に指示を出す監督だ。

●映画がどれほど柔軟なものか、よくわかった―「ラリー・フリント」
リプトン 「ラリー・フリント」ではどんな役を?
(会場、拍手)
ノートン ラリーの長年の弁護士、
アラン・アイザックマンを。
リプトン ミロス・フォアマン監督と
仕事をした感想は?
ノートン すばらしくクリエイティブな経験だった。
俳優としての経験では
トップ3か4に入ると思う。
「真実〜」の時も最終的には
脚本作りに参加してたけど、
フォアマンは
とことん役を追求させてくれた。
余白の部分が多い役だったからね。

でもこんなことを言う人は始めてだったよ。
“いちいち私に聞かずに
 やりたいようにやってくれ”
僕が何か考えるたびに
意見を求めていたら、
“質問はあと1つで終わりだ”と。
(会場、笑)
しばらく不安だったよ。
正気を失ったフォアマンの
初の駄作になるのではとね。
(会場、笑)
でも実際は貴重な経験になった。
隣りに座って
彼の編集作業を見せてもらったんだ。
もう鳥肌が立ったよ。
僕の中にあった映画作りの概念が
吹っ飛んでしまった。
映画がどれほど柔軟なものか
よくわかった。

●バッグス・バニーのように―「ラウンダーズ」
リプトン どのゲストにも意外な作品が。
今回は「ラウンダーズ」を見て
うれしい驚きを覚えた。
(会場、拍手)
出演したいきさつは?
ノートン まるで夢のようだよ。
なんの苦労もなく
すんなり決まったんだ。

送られてきた脚本を読んで
あの役を気に入ったので
2日後に監督に会い
“ぜひやりたい”と。
リプトン あのワーム役は
どのように役作りを?
ノートン ワームのようなタイプは―
僕が昔から楽しんで演じられる
役柄のひとつなんだ。
ある意味カオスの力を
持っているからね。
リプトン バッグス・バニー的?
ノートン 最近スパイク・リーに聞いたけど、
バッグス・バニーは貧民街のチンピラだ。
あの話し方はまさにそうだよ。
決り文句の“バカだねえ”とか
あの言い回しも抑揚も
まさにブルックリン育ち。

ワームという青年も同じタイプだと思う。
警句を吐き
独特の言葉遣いをする。
世間擦れしてて
いつも銃を持った男から逃げ回ってる。
バッグス・バニーだよ。
それを意識しながら役作りをしたんだ。

でもこのワームを演じたときは―
ほかのどの役柄よりも
服装が大きな助けになった。
役にぴったりの靴を見つけるのも
役作りのいい方法だ。
靴で姿勢や身のこなしが変わる。
リプトン 何度同じことを
この席で耳にしたか。
実に驚きだよ。
ノートン でも靴から役作りに入るのも
いい方法だよ。

皆 内側から作り上げる
“メソード演技”を称賛する。
その手法で頑張るのもすばらしいし
良い結果を生む時もあると思う。
でも外見をまねることが
必要不可欠な場合もある。
その役にとってはその外見が本物だし、
その表面的なものを吸収しながら、
演じればいいんだ。
リプトン 感情は?
ノートン それはまた別問題。
リプトン 難問だ。
ノートン でも映画では・・・
舞台でもそうだけど

その人物の振る舞いを
自然に表現することも―
俳優の仕事の一部だ。

その動きが感情表現と
つながっていることもある。
それにその人が暮らす
空間や環境は―
言動に現れるものだよ。
(つづく)

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