コッククロフト・ウォルトン型降圧回路、CWVR




 コンデンサによる降圧回路は、地球温暖化防止上コイルによるトランスに代わる理想的な変圧装置として普及が期待されているが、トランジスタが高価なこともあり、現時点では一般に普及していないのが現状である。

 そこで、実用的な価格に製造コストを抑えるには、数Aもの電流が流せる高価なトランジスタに代わり、安価なダイオードで回路を組むことが考えられるのだが、この回路がようやく見つかったのでご紹介したい。この回路をパソコンの電源やACアダプタに使用すれば、待機電力を消費しないため、現在トランスが無駄に排出している二酸化炭素を減らす効果が期待できる。

 尚、このページの内容は、同じ研究をしている人が多くいることから、誰が第一発見者かという問題は非常に繊細な問題であることもあり、明確な宣言は避けさせて頂くことをご了解頂きたい。最終的には、中立の第三者が厳正に第一発見者を特定することが理想的であり、似た研究をしている方はおられるものの、ここではあえて触れないことにする。ここに掲載している内容は、他によらず、独立・独自の発見である、ということだけ申し上げておきたい。

 また、この回路は、2009年10月現在日本国内で特許出願中だが、事情により放棄する可能性がある。




 何よりもまず、最初に挙げておかなければならないのは、この分野の偉大な先駆者である「コッククロフト・ウォルトン回路」である。この回路は、発明者であるコッククロフト博士とウォルトン博士の名をその名に冠し、コンデンサとダイオードだけから成る、スイッチングなしで動作する理想的な昇圧回路である。



 


 
fig1. コッククロフト・ウォルトン回路





 この回路の動作は、下記の図において次のように説明される。


 まず、電源電圧が上向きの時、ダイオードの整流作用により、右側のダイオードには降伏方向にC−2にかかっている(又は溜まっている)電圧がそのままかかって微量の電荷が溜まり、左側のダイオードは通電して、電流は青の矢印に沿って流れ、コンデンサC−1が左向きに充電される。

 次に、電源電圧が下向きになると、通電するダイオードが入れ替わり、左側のダイオードは降伏方向に微量の電荷が溜まってC−2と並列接続状態に、右側のダイオードは通電状態になる。この結果、C−1に充電された電圧は、電源電圧と同じ向きに、電源電圧に足し合わされるようにC−2に作用する。こうして、コンデンサC−2には、電源電圧の振幅の2倍の電圧が充電されることになる。

 以下、同様の動作が繰り返され、C−2よりも右側に接続されたコンデンサには、電源電圧の向きが反転する毎に、逐次的に電源振幅の二倍の直流電圧が蓄積され、結果、これらのコンデンサを数珠つなぎにした方向に、昇圧されたDC出力が得られる。得られる出力は、コンデンサの梯子を横に長く重ねるほど高電圧になる。

 これが、コッククロフト・ウォルトン回路の動作である。



 単純に考えると、この回路を逆に動作させれば、昇圧の逆である降圧動作が得られそうである。その場合、コンデンサを降圧に使用するには、通常、直列接続にした後特定の一つだけを放電させるという動作をさせることになる。しかし、コンデンサは、全て充電したなら全て放電させないと、電荷が偏り、放電しないコンデンサに電圧が偏り、放電させられているコンデンサの電圧がゼロに近づくという性質を持つ。そのため、単純にコッククロフト・ウォルトン回路を逆に接続したからといって、安定した降圧出力は得られない(※そうした動作を説明する文献もあるが、コッククロフト・ウォルトン回路をダイオード・ポンプ回路という別の名前で掲載しているため、ここで文献名と著者名を掲載することができない)。


 そこで、このコッククロフト・ウォルトン回路において利用されている、ダイオードの特殊な整流作用を基に、直列に接続されたコンデンサを全て並列につなぎ直す回路を考えることができる。それが、ここで紹介するCWVRである。





fig2.CWVR





 この回路は、ダイオードの整流作用とコンデンサの連続放電の関係を詳しく調べる研究から発見した。

 当初は、スイッチングなしで降圧する回路を探していた。下記の回路は、その回路の一つである。

 直列につながれたコンデンサに交流電圧をかけると、コンデンサの静電容量比に応じてかかる電圧が分割される。この分割された低い電圧をブリッジダイオードで整流すると、コンデンサで降圧された電圧を取り出せる(※実験では、連続充放電できることを確認している)。

 もともと、コンデンサは抵抗が少ないので、不必要に流れた電流は殆ど無駄なくそのまま送電側に戻るのだが、原理上出力先が要求する量と同じ量の電流を全体に流す必要があるため、家庭用配電設備の電流容量を無駄に消費してしまうという難点がある。


fig.ex.スイッチングなしで動作するコンデンサ降圧回路の例




 そこで、コイルのトランスと同じ動作をする回路を別に考案したのだが、それがCWVRである。



 CWVRの動作は、次のように厳密に説明される。

 まず、DCoutが接続されていない状態で、DCinに直流電源をつなぐ。すると、上下のダイオードがコンデンサを並列に充電することを阻害するため、コンデンサは斜めのダイオードが順方向であることから直列接続で充電される。

 次に、DCinをオフにしてDCoutを接続すると、今度は斜めのダイオードが充電されたコンデンサに対して降伏方向となるため、微量の電荷がコンデンサからダイオードに流れ込み、ダイオードはコンデンサと同じ電圧を保つことになる。

 この結果、コンデンサは直列接続から並列接続に自動的につなぎ直され、上下のダイオードはコンデンサの放電方向に対して順方向であるため通電し、並列に接続し直されたコンデンサが出力に放電することになる。

 これが、CWVRの動作原理である。斜めに架けられたダイオードが、上記のコッククロフト・ウォルトン回路の特殊な整流作用に似た「充放電方向の切り替え効果」を示すことから、コッククロフト・ウォルトン型降圧回路と呼んでいる。


 ちなみに、実験では、DCoutに電圧計をつないだままDCinに9V電池をつなぐとコンデンサが充電されて電池の9Vがテスタ上に現れ、そのまま電池だけ外すとテスタ上には降圧された約3ボルトの電圧が現れた(コンデンサ3個をつないだケースでの実験)。コンデンサに蓄えられたエネルギーは保存されるため、この回路は、事実上コイルによるトランスと同じ、電力保存型動作の性質(高電圧・小電流で充電し、低電圧・大電流で放電する)を示す。




 現時点で動作が確認できているこの回路のバリエーションは、下記の通りである。ただし、fig3のタイプは、降圧放電時にダイオードが直列接続で通電するため、大きな電力を降圧する用途には不向きである。
 


fig3.同一入出力型CWVR




fig4.双極型CWVR




fig5.fig4からダイオードを減らしたもの



 さて、この回路のアプリケーションとしては、下記のような用途が考えられる。

 ・ACアダプタ
 ・パソコン用電源
 ・降圧IC

 CWVRは、コイルと違い、出力から電力を求められなければ、入力に対して電力を要求しないという、理想的な節電の性質を持つ。二酸化炭素排出量の問題にとって、特にパソコンのトランスを置換できれば、わずかでも二酸化炭素排出量の削減につながると考えられる(ウェブで調べたところ、IT業界の排出量は、航空機業界とほぼ同じで、全体の2%を占めているという)。そこで、最も適した使い方として、ACアダプタやパソコン用の電源を挙げることができるが、この他に、降圧した電力を回路に供給するための降圧ICも考えることができる。

 CWVRを駆動するための回路は、電位の問題をクリアするための特殊性からそれ自体が特許になる可能性があるため、CWVRとは別に研究していたのだが、今回、特許権は得られないだろうという判断から、こちらも公表することにした。

 CWVRのように、駆動対象に直接接続する回路では、更に別の複数の電源が接続されることを考えた場合、電位の矛盾による短絡を避けるための工夫が必要である。

 これには、スイッチを電源に対する一配線上だけでなく、二配線両方に設置する。これにより、CWVRを接続する接続先となる回路の電位に関係なく、CWVRを駆動することが可能になる。

 また、主電源と出力先の間でCWVRを交互にスイッチングするための駆動回路には、フォトカプラ(発光ダイオードとフォトトランジスタを組み合わせたもの)を使うのが最も安価である。


 この方式によるACアダプタ用CWVR電源回路の例を挙げておく(※商用上の開発になるので、動作は確認していない)。駆動用のツェナーダイオードと抵抗の部分は小利を捨てて大利をとる構造になっている。

 実用上の理由から、高価な大電流用のトランジスタはコンプリメンタルペアで二組4石しか使用しない。hfeの大きなものを使用することで、ベース電流用抵抗による熱損失を避けるようにする。図中、@と@、AとAは、それぞれクロックジェネレータからフォトカプラを駆動するために接続する点である。二つのフォトカプラは、入力と出力の短絡を防ぐため、完全に排他的に動作させる必要がある。

 尚、場合によっては、コンデンサが2個程度のfig3のタイプのCWVRをスイッチングで多段式に切り替えることで、2や3の累乗の降圧ができるのだが、目標とする電圧によっては、こちらの方が少ないコンデンサで済み、効率がよい可能性がある(回路図は省略する)。ただし、ダイオードに大きな電流を流すことになるため、大電力の降圧には不向きである。


 ちなみに、理論上、クロック周波数を上げると、CWVRを小さなコンデンサで作成しても大きな出力電流を維持できる。理由は、小さな電荷ΔQでもそれが出入りする時間Δtが短くなれば、電流値であるΔQ/Δtが大きくなるためである。





fig6.CWVR電源回路の作例

 (2009年10月29日追記)※書き忘れましたが(汗)、上記図中において、ブリッジダイオードに接続されているコンデンサには、充電初期の大電流を避けるため、緩衝用に別の回路か装置が必要です。ちなみに単純に抵抗をつないだだけでは熱損失が発生してこの回路の本来の目的に反しますので注意が必要です。