先週末から今日水曜日まで、ワイン農家にとって願ってもない好天が続いている。午前中の霧がボトリティスの発生
を促すとともに、午後の陽光が葡萄の糖度をぐいぐいと押し上げている。ぐずつきがちで肌寒かった先週までの天候
とは、まるで手のひらを返したような変わり様だ。月曜に偶然リースリングの収穫に出会った時は、やけに収穫を急
いでいるのだな、と思ったが、この好天で予定を繰り上げてリースリングを収穫しはじめた醸造所も多いようだ。

今日もじっとしていることが出来ず、今日はザールのヴィルティンゲンに行ってきた。大抵、最上の畑の収穫は後まわ
しにして、とりえあずデイリーワイン用の畑から収穫を始めるのだが、列車の窓からは最良の畑であるカンツェマー・
アルテンベルク、ヴィルティンガー・クップには、ほのかに黄色く色づきはじめた畑が静かに広がるばかりで、収穫す
る人影は見えなかった。しかし、ヴィルティンガー・ゴッテスフスの麓に近い区画の農道にトラクターが止まっているの
が見えた。おそらく収穫作業だ。

(ヴィルティンガー・ゴッテスフスの畑。少なくとも30年は使い込んだようなベンツのトラック。)

ヴィルティンゲンの駅から歩いて10分ほどでトラク
ターのあった場所にたどり着くと、案の定、畝では
4人ほどの人々が収穫作業を行っていた。奇遇に
も、トリアーのワインスタンドの顔見知りのシュミッ
ツ・シモン醸造所の人々だった。醸造所の奥さん
とそのお母さん、親戚の娘さんとジーグブルクから
来たという知り合い、それにオーナーの5人で、朝
10時から夕方5時まで収穫している。リースリング
の収穫は昨日から始めたばかりだそうだ。健全な
房とボトリティスのついた房を別々のバケツに入
れて、ある程度溜まると「背負い籠〜!」とオーナ
ーにお呼びがかかる。それに答えて彼が畝の間を
上り、バケツの中身を背負い籠にあけてもらう。そ
の際、片足を跪くようにして身を屈めるのだが、い
つもは威張っている男がこの時ばかりは頭を低く
するんだよ、と、収穫していた女衆は愉快そうに笑
った。

(肩越しに放り投げるように勢いをつけて中身をあける。)

(収穫に混じっていた天道虫。葡萄の房の中は温かくて居心地がいいらしい。)

(貴腐のついた房を、文字通り粒選りしてベーレンアウスレーゼにする。)

(収穫風景を斜面の上からみたところ。見た目よりも急斜面。)



(ヴィルティンゲン村の夕暮れ。)

午後の日差しも傾いた午後5時ころ、ヴィルティンゲンの村の通りは連結した荷台に収穫を山と積んだ古ぼけたトラク
ターが、けたたましくも勇ましいエンジン音を轟かせながらひっきりなしに通り過ぎていた。ゴッテスフスの畑だけでな
く、ブラウンフェルスでも収穫が始まっていたらしい。村の所々にある醸造所の玄関先には同じようなトラクターが止ま
り、建物の奥から圧搾機のうなりが響いている。ファン・フォルクセン醸造所でも、開け放った扉の影で、まだ真新しい
輝きを放つステンレス製の圧搾機の静かな回転とともに、果汁のしたたる音が絶え間なく響いていた。偶然、昨年か
ら醸造主任をしているフェルク氏が顔を出した。今年はいいよ、すごくいい。そういう彼が心底からそう感じていること
が、眼差しからも見て取れた。果汁を少し試飲させてもらうと、少し酸味は低めだが、アロマティックでほのかにヴァニ
ラの香りのする濃厚な甘さが印象的だった。

この好天は、あと1週間ほど続く予定だ。もしかすると、2005年は1959年に次ぐ偉大な年になるかもしれない。
日を追うにつれて、期待は次第に高まっていく。


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撮影2005年10月
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