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職人が高品質の物を作る(2003.2.11)

 このページでは「完全版」(※1)のルールに出てくる高品質の武器や鎧などのルールを元に、職人の利益を考えて見ます。

アイテムの価格 取り分 高品質の道具 職人の利益 職人の能力 比較 まとめ 参考文献


アイテムの価格

 まず、ソード・ワールドRPGにおける武器や防具の値段について見てみましょう。

 ソードワールドの多くの武器や防具の価格は必要筋力x一定割合+基本料金という料金体系になっています。

 一定割合の部分が必要筋力に比例しているということは、この部分は材料の値段に大きく依存していることが考えられます。逆に基本料金の部分は、剣一本、鎧一着作るときに必ず費用が掛かってしまう部分、柄や金具などの部分なのでしょう。

 このページの考察では、簡単のため、一定割合の部分も基本料金の部分も同じ割合の利益が得られるとして論を進めています。


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職人の取り分、商人の取り分

 普通にルールブックに載っている価格は商人が店頭で売る場合の一般的な値段です。

 商人が職人から仕入れるのはもっと安い値段です。完全版P135によれば、仕入れ値は売値の半分の価格です。

 えっ、安すぎる? そんなことはありません。こういう商品は複数の商人を経由することが当たり前。輸送費、保管費、販促費。実際、末端価格の半分で買ってくれるのは良心的です。


 一方、職人たちは自分たちが作るものからどれくらいの利益を得ているのでしょうか?

 材料費やら道具の維持費やらを差し引くと、職人の儲けはそんなに大きくはありません。私の個人的な感覚では、職人の売値(販売価格の半分)の10%、1割程度の利益が出れば良い方である気がします。

 もちろん、物の大きさとか、もろもろの理由が重なって利益率は変わってくるでしょうけど。

 とりあえずここでは「X」という代数にしておきます。


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高品質の道具

 ソードワールドには高品質のアイテムというものがあります。

 高品質のアイテムとは必要筋力が従来の物より小さい品物です。

 力の弱い者でも扱える威力の大きい武器や防具な訳です。

 価格は必要筋力を1下げるごとに通常価格の2割増ということになっています。

 これらのアイテムは、職人の技術による付加価値ですから、その増分は全て職人のものとしましょう。

 もともとの利益をXとしているので、品質上昇、つまり減らした必要筋力を「Y」とすると職人の利益は通常価格の(X+0.2Y)倍した額になるわけです。


 また、高品質のアイテムを作るときには失敗の可能性があります。

 通常の品では造ったものが全て製品になりますが、高品質のものは違います。

 必要筋力を「Y」だけ下げた高品質のアイテムを作るときには達成値で(15+「Y」)以上を出さなければならないのです。

 そして、狙った品質の物が出来なければ失敗作。通常品としても使えず廃棄処分です。(「Q&Aブック」(※2)P260)

 つまり、職人が高品質のアイテムを作る時にはリスクを背負わなければならないのです。


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職人の利益

 今までのことを考えると、職人の利益の期待値は


  (利益の期待値)=(通常の売却額)*(X+0.2Y)*(歩留まり率)ー(通常の売却額)*(不良率)


と表せます。通常品の場合は「Y」を0、(歩留まり率)を1、(不良率)を0として、(通常の売却額)のX倍という当たり前の結果が得られます。

 また、(歩留まり率)と(不良率)を足すと「1」(100%)になることを考えて、式をこねくり回すと、、、


  (利益の期待値)=(通常の売却額)*[{1+(X+0.2Y)}*(歩留まり率)ー1]・・・(1)


となります。つまり{1+(X+0.2Y)}*(歩留まり率)が1より大きくなければ。利益がマイナス、すなわち赤字になります。


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利益をあげられる職人の能力

 (1)式から利益をあげるために必要な(歩留まり率)を計算してみましょう。

 職人が利益をあげるためには「{1+(X+0.2Y)}*(歩留まり率)」が「1」より大きくないとなりません。つまり、、


  (歩留まり率)>1/{1+(X+0.2Y)} 


です。仮に「X」を1割と考えて、品質を「1」上げたときに必要な(歩留まり率)を逆算すると、77%以上になります。

 品質を1上げた品物を作る場合の目標値は15+1=16です。

 また、2D6で6以上が出る確率は約72%ですので、これでは赤字。コンスタントに利益を出すためには5以上の出目(約83%)で品物を作り上げる必要があります。このためには職人の能力である基本値が16−5=11以上の必要があります。

 この値は、職人の器用度ボーナスが3有ったとしてもクラフトマンレベルは8以上無いと達成できません。


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通常品を作った場合との比較

 ところで、通常品の利益を(1)式と同じ形で表すとどうなるでしょうか?


  (利益の期待値)=(通常価格)*X ・・・ (2)


 高品質アイテムを作った場合の(1)式と比較すると「[{1+((X+0.2Y))}*(歩留まり率)ー1]」と「X」が対応します。

 すなわち「[{1+((X+0.2Y))}*(歩留まり率)ー1]」がXよりも大きくなければ通常品を作っている方が儲かる、ということになるわけです。

 先ほどと同じようにXを1割(0.1)で品質を1上げたときのことを考え、基本値が11の職人の利益がどうなるか考えてみましょう。

 (1)式に当てはめて、(利益の期待値)=1+(0.1+0.2x1)x0.83−1=0.08 ということでX=0.1に足りません。

 この条件だと8レベルの職人といえども通常品を作っている方が儲かるという結果になります。

 さらに製作時間の問題が有ります。仮に高品質のアイテムを作る時間が通常品と同じだとしても、製作に失敗すればその製品に費やした時間は返ってきません。

 このため、通常品を作る時と比べて利益はさらに少なくなります。

 筆者の試算では、利益のみを見た場合、職人の基本値が「12」以上ないと通常品を作る以上のメリットは出ません。

 最もメリットが出る=利益の期待値が高いのは基本値が「12」の職人は品質を2上げた場合で通常品の約2倍の利益。基本値が「13」の職人だと品質を3あげた場合で通常品の約3.5倍の利益。基本値が「14(レベル10ボーナス4!)」だと品質を3上げた場合で5.1倍の利益になります。

 また最高品質(必要筋力を5下げる場合)のアイテムを作る場合に利益を出すには基本値が「13」必要です。

 すなわち、レベルは10(通常のキャラクターが到達できる最高レベル)で、しかも器用度ボーナスが3という天性の器用さを持った職人である必要があるのです。


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まとめ

 相当の技量を持った職人、大陸でも最高に近いレベルの職人でもないと、高品質のアイテムを作って通常品以上の利益を出すことは出来ないことが分かりました。

 それにも、かかわらず、結構な確率で高品質のアイテムは出回っているようです。

 つまり、多くの職人は高品質のアイテムを作るときには利益を度外視しているのでしょう。

 良い物を作り出したいという職人の意地なのか、それとも、単にこの構造に気づいていないのか、、

 もし、このからくりに気づいた職人が無理に高品質のアイテムを作らされたら、たまったものではありません。

 「狙え!魅惑の大出世」※3に登場するグードンの刀剣鍛ブルスが「腐って」いたのも当然なのかも知れません。

 

 (2004.12.5追記)もっとも、この状態で職人たちが黙っているなどとは筆者も考えてはいません。きっと何かカラクリはあるのでしょう。

 例えば、ちゃんとした仕事場を持っている優秀な職人は、その道具などを工夫する事によって達成値を上げているのかも知れません。

 道具の工夫等によって達成値を+4ほど出来れば、基本値が「8」で利益を出すことが出来ますから、優秀なドワーフの職人(レベル5ボーナス3)であれば十分な利益を上げながら高品質のアイテムを作る事が出来ます。

 Q&Aで示されている、狙ったものを作れなければ無駄になる、という指針を覆すよりも、こちらの方が実際的だと思うのですがいかがでしょうか?


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参考文献


(※1)ソード・ワールドRPG完全版:第四版、平成10年10月20日、清松みゆき/グループSNE


(※2)ソード・ワールドRPG【Q&Aブック】:初版、平成8年8月30日、清松みゆき/グループSNE


(※3)狙え!魅惑の大出世〜新ソード・ワールドRPGリプレイ4:初版、平成14年5月30日、秋田みやび/グループSNE:著 清松みゆき:監修


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