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竜の卵

ソードワールドRPGの世界であるフォーセリアにはたくさんの謎、
そして一見矛盾としか思えない現象があります。
そうした中の最大のものとして「フォーセリアの竜は卵を生むのか?」という矛盾点があります。
ここではその竜の卵に対する矛盾点を整理して、
さらにもーりょの提唱する「卵=他者に対する転生竜説」を説明します。


〜竜の卵に関する記述の矛盾〜
まず、最初に竜の卵に対する記述がどうなっているのかを説明しましょう。
ロードス島伝説3栄光の勇者(水野良著)の中で
風竜ワールウィンドは竜騎士ナシェルに対し、
子孫を残すことについて語っています。
「汝が我に与えし使命は、魔神と戦うこと」
 下位古代語を使って、ワールウィンドは答えた。
 その声はくぐもっているが、言葉自体は驚くほど正確だ。この風竜は高い知性を持っており、ドワーフ語やエルフ語にも通じている。ロードスで現在、使われている日常語もあっという間に学習してしまった。
〜中略〜
「人間には、男と女がいる。男と女は恋をして、子供を産む。その子供は男か女かで、成人して異性と恋をする。そして、また子供を産む。永遠の連鎖だ。」
 ロードスの日常語に言葉を変えて、ワールウィンドは答えた。
〜中略〜
「そう、汝は我が心を掴んだのだ」
 下位古代語に言葉を変えて、ワールウィンドは言った。
「汝は我に、名前と使命を与えた。されど、汝には我には与えることのできぬ使命をもうひとつ有している」
「与えることのできない使命?」
 ナシェルは顔を上げて、訊ね返した。そんな使命が自分にあるとは思えなかった。
「それが子を残すことだ。死すべき定めのものだけが持ちうる崇高なる使命だ。子を残すことにより人間は、種族としての不死性を得る。それと同時に、変化を遂げる。死すべき定めにないものは、変化する可能性を持たぬ」
 日常語に再び言葉を戻して、ワールウィンドは言った。
「竜族は違うのか?おまえたちも卵から孵るんだろう」
 何人もの賢者たちの研究にも関わらず、竜の生態はそのほとんどが謎に包まれている。だが、竜たちが卵から孵ることは、周知の事実である。
「そう、我々は卵から生まれる」
 そう言うと、ワールウィンドは天を仰ぎみるように首を伸ばし、鼻から大きく息を吐いた。闇に慣れたナシェルの目には、この風竜が嘆息しているように見えた。硫黄のにおいが一段と強くなる。
「だが、我々は卵を生まぬのだ」
「何だって?」
 ワールウィンドの言葉に驚いて、ナシェルは腰を浮かしていた。
「卵から生まれるのに、竜は卵を生まない。だったら、竜の卵はどこからくる」
「それは、知らぬ。太古の昔から存在したのか、それとも、新たに発生したものか」
「それ故、我々は自問しつづけるのだ。何故、我らは存在しているのか、我らが存在する意義はどこにあるのか、と・・・・・」
「今は、魔神を倒すためだ」
 ナシェルは断言するように言った。
 いかに竜の心を掴んだとはいえ、人間と竜とは本質的に異なる。彼らの思いを完全に理解することはできないのだろう。(P35〜P38)
この記述より、竜ははっきりと自らが卵を生まないことを認識しているようです。
他にも、竜の出生に対して、なぞめいた記述が各所に現れており、
竜が普通の爬虫類のように親が産んだ卵から生まれないのは明白なようです。

一方、ソードワールドリプレイ集5南海の勝利者(山本弘/グループSNE著)では
奪われた竜の卵を巡って冒険が繰り広げられています。
ここで本書から、竜の卵に関する記述を抜き出して引用してみましょう。
GM「まあいいや。とにかく、リザードマン語を知ってる人は、ドラゴンの言葉がわかる。『卵を返せ〜』といってるね」
〜中略〜
GM「ドラゴンはまた、君たちに向かってガオーッlと吠える。『私の卵はどこだ〜。返さないとこの村を焼き払うぞ〜』・・・・・・口調からすると雌らしいね」
〜中略〜
シア「う〜ん、困ったな。とにかく話を聞かせてよ。何があったの?」
GM「私のかわいい卵が盗まれた〜」(P31〜P32)
GM「ドラゴンが言う。『お前たちか。卵を取り戻したんだろうな?』」(P299L3)
また、このリプレイの中の登場人物たち(海賊やプレーヤー)が
何の疑問も抱いていないことから、竜が卵を産むということは
一般人にとって「常識」だということも分かります。

それから、西部諸国ワールドガイドP78には「竜使い」チェルシーの記述があります。
雌のレッサードラゴンが病の身を押してフォレスト・ジャイアントと戦い相討ちになり
その死の直前生まれたばかりの自分の子供を育ててくれるよう、
猟師ブラウドに頼んだ、と、そこには書かれています。

上記数ヶ所の記述で竜(ドラゴン)が卵を産むことを匂わせる記述になっており、
「ロードス島伝説」の記述と矛盾する。
というのが、この問題の本質です。


〜従来の説〜
この矛盾を解決するためにいくつかの説、考え方が有ります。

一つは、これらの卵を産む事を匂わせる記述自体を
公式なものでないとする考え方です。
そうすれば、矛盾は一切なくなりますが、
あまりにもこのリプレイの冒険者たちが浮かばれません。
それに著作グループSNEとして正式に出版しているわけですから、
公式でないというのはどこか変です。
私としてはこの冒険や記述はフォーセリア世界で実際にあったことだと考えます。

次に、2種類の竜がフォーセリアには存在し、
卵を産まない種と別の卵を産む種がいるのではないか、という説があります。
ENT氏のフォーセリアにおける竜-山本弘氏との解釈の違い
セヴィー氏のリザードマン・ドラゴン説(フォーセリア研究室LOG13参照)など
これらの説はとても納得がいく説で、数ある説の中で最有力候補だと考えられます。
しかし、生態が違う種が同じ名前で呼ばれていることを
長い間フォーセリアの賢者たちが気づかなかったことや、
知能のある2種のドラゴン同士がお互いのことを認識していない様子には
少し違和感を覚えます。(あくまで個人的感想ですが)

最後に、この竜たちはどこかで卵を拾ったのではないかとするものです。
記述をよく見ると、この竜たちは「私の卵」、「私の子供」とは何度も言いますが、
この卵を産んだということは一度も言っていないのです。
この記述を「私の所有する卵」「私の育てる子供」という様に考えて、
産んだものではなく拾ったものとすれば、記述の矛盾はとりあえず無くなります。
ただ、たまたま拾った卵を大切にしているにしては、
リプレイの竜の行動は過激すぎるような気がします。
また、こんな偶然を待って卵を探していた海賊たちは
無計画にすぎるのでは無いかという感じもします。

−2005.4.10追記−
掲示板にて白拳さんから、面白い説を頂きました。
それは、竜の卵が生まれる場所が決まっているのでは? という説です。
竜が決められた場所に生まれる卵を拾い、それを自分の卵と思い込む本能がある。
という事があれば、上記の説は俄然、信憑性を帯びてきます。


〜もーりょの提唱する「卵=他者に対する転生竜説」〜
以上の3説ともに一応、納得できる説なのですが、
私にとって少し納得がいかない部分も残ります。
そこで私もーりょが考えた別の説を提案したいと思います。

それは、竜が他者に竜語魔法のリボーン・ドラゴンまたはエッグ・シェルターをかけ、
その卵を守るということが、端から見ると卵を産み、育てるというように
見えるのではないか、という説です。
他者にかけるリボーン・ドラゴンまたはエッグ・シェルターは
公式にはサポートされてはいません。
しかし、ロードス島伝説4伝説の英雄(水野良著)P311〜に
それらしい記述(※2)が出てきています。
それによると、近しい間柄では他者にこの魔法の効力が及び、
この魔法が、他者を甦らせることがあるようです。
もしこの魔法が非常に近しい竜同士の間で用いられたとき、
例えば、仲間の竜が死んでしまったり、瀕死の重傷を負ったときに
非常に近しい間柄の他の竜がこの魔法をかけたときに
卵を産んだように見えるのではないでしょうか。
そして魔法をかけた竜は、命にかけてこの卵を守ろうとするでしょう。
「私の卵」として。

※2:この部分の引用は完全にねたばれになるので割愛します。

ここで難点なのは、レッサードラゴンは竜語魔法を唱えられないという点です。
リプレイでのドラゴンは以下の記述でレッサードラゴンとされています。
GM「もっとも、レッサーだけどね」(南海の勝利者P30L1)
また、竜使いのドラゴンは明確に雌のレッサードラゴンだ、と書かれています。
そのため、この説を提唱するに当たって、以下の条件をつけます。
他者にかけるリボーン・ドラゴンまたはエッグ・シェルターは
思いの強さが有れば、レッサードラゴンにも使える。
というものです。

この説を取ることによって、従来フォーセリアの世界ではほとんど無理だった
人間が一般ドラゴンの卵を手に入れ孵化させて育てる、という状況を
比較的矛盾無く作り出すことができるようになるのではないかと思います。

また、思いの強さ、状態によって転生時の状態、及び期間が変わる
という設定を付加することで
竜の成長期間などの記述に大きな差がある事も説明でき、
また、もしこの設定をゲームに使ったときは竜の状態を管理することで
暴走を防ぐこともできるかと思います。

〜矛盾点の解決-「転生竜説」の観点から〜
この「転生竜説」を取るといくつかの矛盾点が残ってしまいます。
ここでは(屁理屈で)それを解決してみようと思います。

雌雄の区別
フォーセリアのドラゴンに雌雄の区別があるかどうかは未だ不明になっています。
西部諸国で語られるドラゴンには雌のドラゴンという記述が現れるのですが、
その他では、性別がいっさい分からない、
いわば、性別の区別がないような印象で描かれることが多いようです。
私は、卵を守る竜はその性格から人間から雌のように見えてしまうのではないか
と考えています。
普通の人間がドラゴンの性別を判定しようとしたとき、
判断の基準となるのはその行動や言動しかないと思います。
卵を持っているドラゴンの行動や言動が雌に見えることは十分に考えられるのです。

病気のドラゴン
竜使いのところで出てきたドラゴンは病気にかかっていたとされます。
しかし、完全版のルールブックによると
ドラゴンは「毒、病に冒されない」とされているのです。
私は、この病気の記述はドラゴンの見栄が言わせたと考えます。
今一度客観的に考えますと、最期を見とった猟師が見て
実際に病気だったのかどうかを知るすべがあったと思われないので
病気であったという記述はドラゴンが自ら語った話だと考えられます。
そのとき、幻獣の王たるドラゴンである自分がジャイアントと戦い
相討ちにしか持ち込めなかったことを恥じて、かかるはずのない病気に
かかっていると言ってしまったとは考えられないでしょうか?
(実際にはモンスターレベルは同等で相討ちになるのは十分有り得ることです。)

以上で竜の卵に対する矛盾点の整理、
「卵=他者に対する転生竜説」の説明は終わりです。


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