睡眠薬の副作用について

睡眠薬と呼ばれているものは、現在では、ほとんど、精神安定剤の仲間です。精神安定剤には、高ぶった神経を抑える鎮静作用と、眠くさせる催眠作用があるわけですが、この2つの作用のバランスは薬の種類によって異なり、眠くなる作用が強いものを睡眠薬として用いています。ここで睡眠薬と私が呼んで説明するものは、その意味で全て精神安定剤の一種です。

睡眠薬で一番重要なのは、その効果時間と内服する時間です。非常に短い時間(2−3時間)のみ効くものから、短時間、中時間、長時間と、数種類に分類されます。
寝付きが悪いだけなら、超短時間作用型の薬でよいわけですが、明け方早く目が覚めてしまうようなタイプの不眠症には、やや長く効くものが必要です。
しかし、効果が長すぎるものを飲んだり、あるいは、深夜過ぎに内服をすると、翌日の午前中まで薬の効果が残り、午前中は眠く、午後から夕方になって目が冴えて、また翌日の夜の寝付きが悪くなるという悪循環も起きます。
ですから、超短時間作用型のもの以外は、目安として深夜12時を過ぎたら内服しない方がいいわけです。そのため、「眠れないから飲む」のでは遅すぎることが多いので、「眠るために飲む」ようにする必要があります。

さて、睡眠薬にはいくつかの誤解があります。確かに不眠症は、それだけで死んでしまう病気ではありませんが、生活を質を非常に悪くしうる病気です。薬の濫用は慎むべきですが、上手に使えば、睡眠薬は非常に有用な薬です。下記のような迷信から、睡眠薬を避けすぎてしまうのはもったいないことです。

1.睡眠薬には依存性があるか?
昔(30年以上前です)よく使われていたバルビタール酸系の睡眠薬は依存性が強いことから、睡眠薬というと、麻薬のように、量がどんどん増えてしまう怖い薬だと思われています。しかし現在使われている薬には、依存性はほとんどありません。通常、効果が弱く感じられるようになった場合は、不眠症が悪化していることが多いです。

2.睡眠薬より、お酒の方が安全か?
医師に処方されないと買えないような睡眠薬より、誰でもどこでも買えるお酒の方が安全だから、お酒で寝付きをよくした方がよいと考える人がいますが、これは間違いです。
ごく少量のアルコールは、気分をリラックスさせて寝付きをよくしますが、少しでも量が増えると、寝付きはよくなっても、その後の睡眠の質を悪化させることが知られています。
アルコール依存症で困る症状のひとつが不眠症なのです。

3.睡眠薬は量をなるべく少なくして、眠れない日だけ飲む方がよいのか?
薬には副作用もあるので、確かに量を減らした方がいいかもしれません。しかし、飲んでも眠れない量しか睡眠薬を内服しないのでは、効果がないです。
眠れない日だけ飲むのも、うまくできれば構いませんが、薬を飲まないで我慢して、眠れないので深夜になってから薬を内服するというのは、たいてい逆効果になります。
眠気には波のように振幅があり、眠気が強くなる時間に睡眠薬を飲めば、少量でもよく効くはずです。
24時間のリズムがしっかりしている人の場合、その眠気のピークは、通常21時から23時のあたりです。深夜を過ぎると、かえって眠気がなくなり、この時間に睡眠薬を飲んでもなかなか眠れないはずです。

4.睡眠薬で眠る癖をつけると、薬無しでは眠れなくなるのか?
睡眠薬を長い間内服した後に中断すると、反跳性不眠と言われる、離脱現象が起きます。そのため、確かに、長期間、毎日内服を続けた場合、急に止めると眠れなくなり、また内服を始めてしまうということが起きることもあります。
そのため、睡眠薬は止め方も大切です。上手にやめれば、ちゃんと中止することができます。
ただ、もともとの不眠症そのものが治っていなければ、ある程度の不眠症の症状が残ることは避けられません。不眠症は「不治」の病という面もありますから。
ただ、実際の臨床では、何年にもわたって毎日、睡眠薬を飲まないといけない人は少なく、一定期間内服して、睡眠がしっかりとれて、精神的な健康を回復できれば、薬を止められる人がほとんどです。

5.睡眠薬の副作用は怖いか?
睡眠薬にもいろいろな副作用があります。その中で一番多いのは、翌日のふらつきや眠気です。
これは、副作用というよりも、内服時間が悪いか、種類が悪い(もともと長く効くタイプ)せいで起きてくるものです。
現在の睡眠薬は精神安定剤の中でも、ベンゾジアゼピンと呼ばれる薬をもとに開発されたものが多く、この薬は、長期に飲んでも安全な薬のひとつです。
見方によれば、睡眠薬は風邪薬より安全で、風邪薬は数日の単位で飲むことを前提に開発されているので、これを1ヶ月以上飲めば副作用が出現する可能性が高くなりますが、慢性疾患である不眠症の薬は、もともと数ヶ月ー数年という単位で飲むことを前提に開発されているので、長期間飲めるように作られています。

現在よく使われている睡眠薬の一部

1.超短時間作用型(3時間程度の効果を持つ)
ハルシオン、アモバン

2.短時間作用型(6時間程度)
レンドルミン、デパス、リスミー、エバミール、ロラメット

3.中時間作用型(12時間程度)
ベンザリン、ネルボン、ニトラゼパム、ロヒプノール、ユーロジン、エリミン

4.長時間作用型(24時間以上)
ソメリン、インスミン

5.精神安定剤(中間作用型で、眠気を引き起こす作用は弱い)
セルシン、ジアゼパム、リーゼ

なお、この中で1.の超短時間作用型は、急に眠くなるので、飲んだ後、すぐに(30分以内)ベッドに行かないと、ベッド以外で眠ってしまうことさえあります。また、内服後、眠るまでの間の記憶を失うことも多く、これはアルコールと併用すると、非常によく起きます。ですから、睡眠薬とお酒の併用は危険で、また、内服後は、速やかに眠ることを勧めます。この記憶喪失の副作用のために、老人ではボケ症状を増強することがあり、1.の薬は避けることが多いです。

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