睡眠障害について

A.不眠症の定義:
夜間中々入眠出来ず寝つくのに普段より2時間以上かかる入眠障害、一旦寝ついても夜中に目が醒め易く2回以上目が醒める中間覚醒、朝起きたときにぐっすり眠った感じの得られない熟眠障害、朝普段よりも2時間以上早く目が醒めてしまう早朝覚醒などの訴えのどれかがあること。 そしてこの様な不眠の訴えがしばしば見られ(週2回以上)、かつ少なくとも1ヵ月間は持続すること。不眠のため自らが苦痛を感じるか、社会生活または職業的機能が妨げられること。などの全てを満たすことが必要です。 
なお精神的なストレスや身体的苦痛のため一時的に夜間良く眠れない状態は、生理学的反応としての不眠ではありますが不眠症とは言いません。

B.過眠症の定義:
日中に過剰な眠気または実際に眠り込むことが毎日の様に繰り返して見られる状態で、少なくとも1ケ月間は持続し、そのため社会生活または職業的機能が妨げられ、あるいは自らが苦痛であると感じるものです。
ただし一回の持続期間が1ヵ月より短くても繰り返して過眠期がみられるものも含みます。

1.精神生理性不眠症 (Psychophysiological insomnia)
何らかのきっかけにより、夜眠ろうとしても寝つけず、それ以来また眠れないのではないかという不安感と緊張が著しく強まり、眠ろうと焦り過ぎるため、かえって興奮して寝つきが悪くなることが繰り返される場合です。 筋肉の緊張、血管収縮増加など身体化された緊張も増大します。 さらに寝室に入るとか、歯磨き、消灯など睡眠に関連する行動に対しても条件づけられた覚醒が形成されます。夜良く眠りたいと患者が強く意識すればするほど、逆にこの意識自体が睡眠を妨げます。 患者は自らの睡眠問題だけに囚われて頭が一杯であり、不眠の直接のきっかけとなった外因がなくなっても不眠は徐々に発展し、自己増殖します。 
治療は不眠に対する不安・緊張感を取り除くため、精神療法、睡眠習慣の見直しを指導します。薬物療法としては夕方から抗不安剤を投与し、さらに就寝前に睡眠誘導剤を追加投与します。

2.ナルコレプシー  (Narcolepsy)
ナルコレプシーのもっとも基本的な症状は日中反復する居眠りがほとんど毎日、何年間にもわたって続くことです。 通常10〜20分位眠ると目が覚めてさっぱりしますが、2〜3時間もすると再び眠気が襲ってきます。 このとき意識的に体を動かしたりすることによりある程度眠気を抑える事は可能ですが、毎日続く眠気に打ち克つことは困難です。このほか普通の人であれば緊張してまず居眠りなどしない場面、例えば試験中とか商談中等でも急に強い眠気が起り数分間程度眠り込んでしまうことがあり、これを睡眠発作と言います。
次に大切な基本症状は情動脱力発作 です。全身あるいは膝、腰、頚、顎、頬、眼瞼などの姿勢筋の力が両側性に突然脱けてしまう発作です。通常脱力は瞬間的ですが、数分間にわたり床に崩折れることもあります。 この間意識は清明に保たれ、周囲の状況はよく記憶されて、呼吸困難は起りません。てんかんの発作とは全く別のものです。 時には数分から30分間位も脱力状態が持続することがあり、脱力重積状態と呼ばれています。

また入眠時幻覚と睡眠麻痺もしばしば見られますが必発症状ではありません。
入眠時幻覚(hypnagogic hallucinations)は、就床後間もなく、自覚的には半分目が覚めているにもかかわらず、生々しい現実感を伴った鮮明な夢をみることで、睡眠開始時レム睡眠期に一致して起こります。怪しい人間や動物、得体の知れない怪物などが部屋の中に入り込んできて、襲いかかってきたりする幻視、幻触、身体運動感覚などを主とする体験で、強い現実感と恐怖感を伴います。稀には入眠時幻覚が発展して日中にも侵入し、夢幻様体験から幻覚妄想状態を呈することがあります。
睡眠麻痺(sleep paralysis)は入眠時、通常入眠時幻覚による不安・幻覚体験に一致して、全身の脱力状態が起ることをいいます。 患者は恐怖から助けを求めて起上がろうとしますが、全身が金縛り状態となって身動き出来ず、声もほとんど出すことが出来ません。
さらにナルコレプシーにしばしば見られる症状としては、夜間熟眠困難(disrupted
nocturnal sleep)、行動の記憶が短時間失われる自動症(automatic behaviors)、精神面の弛緩(decreased psychic tension)などがあります。また肥満、頭痛、多汗、糖尿病などが合併することがしばしばあります。

不眠の原因は様々であり、いくつかの原因が重なっている場合もあります。不眠の原因としては大きく分けて次のようなものがあります。

1)生理学的不眠
 
睡眠環境の変化、生活リズムの変化として短期間の入院、不適切な睡眠環境、時差ぼけ、交代制勤務などにより不眠となった場合で、これらのケースはだいたい数日で改善します。

2)心理学的不眠
 
精神的なストレスやショック、例えば身近な人が亡くなる等の喪失体験による不眠。このような不眠は多くの場合、時間が経てばその状況に慣れて眠れるようになります。

3)薬理学的不眠
 
コーヒーは一般によく知られています。一方一般常識に反してアルコール、抗精神病薬、抗うつ薬等で不眠を生じます。

4)精神疾患に伴うもの
 
神経症、躁うつ病、精神分裂やアルツハイマー型痴呆のような脳の器質性疾患等です。精神病の多くでは特に発症の初期や再燃期に不眠をよく伴います。

不安、うつ病と睡眠障害

重症の睡眠障害のある人の47%は情動的な問題があります。恐怖や強迫などの心理学的な因子が寝つきが悪いとかぐっすり充分に眠れないといった偏見を生むのです。いつも緊張している人はいらいらし、動き回り、床についてもなかなか眠れないと思いこんでいるのです。

うつ病の悲哀感、絶望感、無価値感、罪責感は異常な睡眠パターンと深く関係しています。うつ病患者は朝早く眼が醒め再び眠ることが出来ないものです。反対に、眠ってばかりいて、生活上の問題を否定したりそれから逃避させる眠りによって救われているうつ病患者がいます。

生きる目的を喪失することは、眠気や持続性の疲労感および、異常な睡眠・覚醒リズムを示す夜間睡眠を引き起こすことが知られています。

多くのうつ病患者は自分がうつ病であることを知らずに睡眠障害を訴えるケースが多いのです。もしあなたがいつも楽しんでいたことに興味を失い、また絶望感や自殺願望を持つならばあなたもうつ病の可能性が高いといえます。

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