地獄に家を建てて住む


        集談会の効果のひとつは、他人とのふれあいを通して、そういった気づき
      を増やしていくことにあるのではないでしょうか。自分の体験から言っても、
      やはりそういった一番大事なところに気づかなければ、神経症を根本的に解
      決することはできないと思うのです。

        ところが、集談会では、初めはこういう込み入った話はあまりしないで、と
      にかく理屈抜きに日常生活に目を向けさせ、身近なことから行動を起こすこ
      とを奨めるのが普通です。なぜかというと、そうすることで、頭でっかちになら
      ずに、結果的に「治らないまま生きていく」ことをじかに体験できるからであり
      ます。
       それによって、とらわれている自分を受け入れ、体験的に「とらわれ」から
      脱出できるからです。

       素直にこれを実行する人が早くよくなるのはそのためです。素直でない人
      は、納得しなければ実行しないので、私のように一度地獄のどん底に落ちて
      しまわなければ、「治らない」ことを承知しないように思います。そのために、
      永い間苦しむことになりますが、それはやむを得ないことです。地獄に家を
      建てて住むようになれば、やがてそこが都になってくるのですが、そうなるま
      でには、かなり時間がかかるものです。



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