(2)健全な不安と神経症的不安

       不安には「健全な不安」と「神経症的不安」とがあります。両者は似ているよ
      うでも異質なものですから、その点をはっきり理解しておく必要があります。

       「健全な不安」とは建設的な欲望と結びついている不安のことです。この不
      安は欲望を実現するために必要なものであり、通常は、
       欲望→不安→準備→実行→結果→再計画(新しい欲望)→不安→……
       という建設的なコースを進むうえで重要な役割を果たしています。
       私たちは不安があるおかげで、欲望を実現するために必要な対策や準備を
      することができて、成功の確率を高めているわけです。
       実際にはできることとできないことがあるために、完全な準備はできませんが、
      不安があるおかげで準備ができるという関係に変わりはないわけです。

       私たちがこの世で生きるということは、欲望を実現していくことだと言ってもい
      いし、誰もが幸せになるために努力しています。その幸せの内容は人によって
      違いますが、いずれにしても幸せになるには、苦労してでも欲望を実現しなけれ
      ばならないところがありますから、そのために必要なのが「不安」という感情です
      。その「不安」を準備のために活用して欲望を実現していくのが、普通の人間の
      営みというものではないかと思います。
       このように不安は不快なものではありますが、人間が生きていくためになくて
      はならない大切な感情です。

       これに対し「神経症的不安」というのは、欲望を実現するために必要な不安を、
      あってはならないものとして問題視する不安です。つまり、不安そのものを問題
      にする不安であり、それが神経症的不安の特徴です。したがってそれは「不安の
      原因も不安」という関係になっているために、その不安を取り除こうとする心理的
      悪循環は止まることがありません。
       そういう状況から脱出するためには、どうしても最初の不安の原因である欲望
      にまでさかのぼって自覚し、その欲望を実現するための準備に、不安を活用する
      ようになる必要があります。

       しかし、すでに不安にとらわれてしまってそれができない人は、前述したように、
      「とらわれている状態になりきる」とか、「とらわれている状態を受け入れる」という
      体験が必要になりますが、それについては別のところで説明いたします。

       そのように不安そのものにこだわるようになった原因として考えられることは、あ
      まりにも自己中心的に完全な状態を求めるところから、「不安はないほうがいい」
      という「願望」や「認識」ができあがり、それが不安が起きることを不安がらせてい
      るのだと思います。したがってこの場合には、
       不安→不安の異物視→不安の排斥→不安からの逃避→不安へのとらわれ→
      苦悩→新しい不安→……
       という形になって循環することになります。このサイクルの特徴は、最初の不安の
      原因である欲望を度外視して、ただ不安を取り除くことだけを目的にして循環して
      いるという点にあります。

       以上で、「欲望と不安」の関係についての説明を終わりますが、こういったことを
      頭に入れておいて、次の学習に進んでいっていただきたいと思います。


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