1.「神経症になりやすい人の性格特徴」について

    @ はじめに

   「神経症」というものを簡単に要約しますと、「異常ではないものを異常
   と思いこみ、それにとらわれ、それをなくそうとして悪戦苦闘している状態」
   であると言うことができます。世の中には「神経症」になりやすい人と、な
   りにくい人があると思いますが、森田療法では「神経症になりやすい人の性
   格」を「神経質」といっておりますので、それについて少し説明しておきま
   す。

    神経質の人の性格特徴は、「神経症」の成り立ちと、それを克服していく
   過程に深く関わっていますので、そういった点に触れながら勉強していくこ
   とにします。

      森田療法の創始者である森田正馬先生は、およそ病というものは、「素質
   ×機会×病因によって初めて発生するものである」と言っております。
   (「森田正馬全集」第三巻p.48)。これを神経症の場合に当てはめますと次
   のようになります。


                症状=神経質素質 × きっかけ × 症因

     各項目についての詳しい説明は後でしますが、要するに症状は、「素質」
    と「きっかけ」と 症因」の三拍子揃ったときに初めて発生するというわけ
    です。したがって、このうちの一つでも欠ければ症状にはならないという
    ことになります。この認識は、症状の成り立ちを理解するうえで非常に重
    要で、私たちがその気になれば変えることのできる後天的な性格特徴であ
    る「症因」をなくすことによって、神経症になるのを防止したり克服する
    ことができることを示唆しています。

       このなかで、「神経質素質」は遺伝的に受け継いだ先天的なものですから、
    我々の力ではどうにもならないものです。素質とは、そういう特徴をもって
    生きるべく運命づけられたものと考えられますから、善くても悪くても、と
    にかくそれを活かしていかねばならないものです。これは重要なことですか
    ら、まずこの点をしっかり頭に入れておいてください。

    「きっかけ」というのは、困難な状況とか、ふとしたことで偶然にそうなっ
    たとかいうようなものですから、いついかなる時にそうなるのかまったく予
    想がつかず、私たちの社会生活にはそういったものが無数に存在していると
    思われます。たとえば、たまたま人前で赤面したのを指摘されたのがきっか
    けで、赤面を気にするようになったとか、友人の死を見たのがきっかけで、
    死の恐怖に悩むようになったとか言うのがそれに当たります。したがってこ
    れもやはり、私たちではコントロールすることのできないものです。

    「症因」というのは、誤った認識とか、それに伴った誤った行動とか、観念
    的理想主義とか、幼弱性といったもので、これは後天的に身につけた思いこ
    みとか、習慣とか、経験不足といった類のものですから、私たちの努力によ
    って変えることのできる性質のものです。

     このように「森田」では、私たちがコントロールできない「素質」や「き
    っかけ」と、コントロールできる「思いこみ」や「習慣」や「経験不足」と
    いったものが組み合わさって症状が発生していると考えているわけです。い
    つもそのようなことを意識しているわけではありませんが、症状の成り立ち
    は、そのようになっていると考えています。細かい事情は人によって違って
    いても、そういった基本的なものは同じだろうと思います。


       

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