歯周病と全身疾患について

 歯周病の治療の主役は患者さん御自身です。
 私たち、歯科医師側ではそのお手伝いをしているに過ぎません。
 でも歯周病は、慢性病であるがゆえに、その対処(正しい歯磨きや定期検診など)には
非常に根気が必要になります。
 普段これといった症状も無いわけですから、つい怠りがちになったりもします。
 患者さんの中には、
『こんな面倒なことをするくらいなら、だめになった歯は抜いて、入れ歯にした方がいい。
歯で死んだやつなんかいないんだし...』
などとおっしゃる方もいらっしゃいます。
 そんな方に向けて、ちょっと怖いお話をひとつ。

 私たちの口の中には約300種類、数にして約2億個の細菌が住み着いています。
その細菌が常に勢力争いをしているわけですが、口の中の管理が悪くなってくると
体に悪い影響を与える悪玉の細菌が勢力を拡大して、虫歯や歯周病を作ります。
 そしてその細菌が、歯茎の中の血管に入り込んで全身を巡ったり、喉から気管をとおり
肺で増殖したりして全身的な疾患を引き起こしたりします。

 まず、血管の中に入り込んだ歯周病細菌は血管の壁に取り付き、アテローム性プラークという
粥状の堆積物を作ることがあります。そうした血管は硬くなったり(動脈硬化)、
狭まって塞がってしまったり(血栓)します。
 冠動脈がこういう状態になれば、心筋梗塞や狭心症を引き起こしますし、
脳内の血管で起これば、脳梗塞から脳卒中の原因となることが考えられます。
 また、歯周病細菌が心臓の弁膜に取り付いて細菌性の心内膜炎を引き起こすことも有ります。

                

 次に肺炎との関係です。
 私たちは普段何気なく唾液を飲み込んでいますが、唾液の中にある細菌は胃液で死んでしまいます
ので、まず問題ありません。しかし、誤って唾液が気管のほうに入り、気管支や肺で
感染してしまうと、誤嚥性肺炎を引き起こすことがあります。
 また、風邪をこじらせて肺炎になった場合でも、歯周病菌の影響でより悪化してしまう傾向があるようです。
 お年よりの実際の死因で一番多いのは肺炎です。
実際にある老人ホームでは、口腔清掃指導を徹底させたところ、死亡率が激減したという
報告もあるようです。
 歯周病を改善するということは、気管支炎、肺炎の予防にもつながるということが言えるでしょう。

 次に、全国民の20人に一人が罹患しているといわれる糖尿病との関係です。
 糖尿病になると体の抵抗力が落ち、網膜症や腎臓病などの全身疾患が進んでいきます。
当然、口の中でも歯周病に抵抗する力が落ちて、歯周病は進みやすくなります。
そしてその勢力を拡大した歯周病菌の影響で、血液中の糖分の濃度を下げるインシュリンの
作用が邪魔をされ、血糖値は上がり、糖尿病は悪化していきます。
 だから、糖尿病をコントロールするためには、まず歯周病をコントロールすることが
大切であるということが最近言われるようになってきました。

 と、このように歯周病は口の中だけにとどまらず、全身的な疾患にも大きな影響を及ぼす
ものであります。
 でも反対に、自分自身でコントロールしやすい病気でもあります。
そのためには一にも二にもプラークコントロール。
面倒くさがらずに頑張ってください!


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