TOPあかげらの表紙>第303号




― 冬 岩手山と北上川 ―
  
 2月、白鳥の北帰行は冬の終わりを感じさせます。甲高い鳴き声が澄んだ冬の空に鳴り響き、声の行方を捜して思わず視線は空へ。

同じ景色でも冬の空の色、川の色は違うことをいつの頃からか感じていました(かつて描いた「新緑の岩手山」の冬バージョンです)。冴えわたる空の青、北上川の黒に近い群青、その間に「白鳥は悲しからずや…」の、あの詩のように真白い岩手山が鎮座して、ふと時間が止まったように一息ついてしまいます。岩手山に登るようになってからは、稜線の一つ一つ、見るのも描くのも思いが違います。

 白鳥の群れはきれいなV字を描いたまま岩手山の向こうに小さく消えていって、そんな光景を何度か目にしているうちに、春が訪れる。年の瀬とともにまた一つ一年が巡ったことを感じる季節でもあります。
 
                       161 田中 弘美