■ 脱出とその後 ■

この状態が虐待であることに気づいたら、次に脱出しなければなりません。脱出とは家を出ることの他に、自分で「大変だったね」と慰め、 「よくやった!自分!」褒めてあげることです。そして自分の心をとことん癒してあげて下さい。心療内科やカウンセリングにかかるのも大変有効な方法です。大切な行動を起こす準備として専門医からの診断は 重要なことです。アロマセラピーやマッサージなどは体と心の緊張をほぐすいい手段です。 健康のためと割り切って、お金を使って下さい。お金のない方は、洗面器にお湯を張って、好きなアロマオイル(300円程度から) を1・2滴入れて湯気を顔にあてて体の緊張を緩めてください。小さなお子さんがいらっしゃる方は時間を 作るのが大変だろうと思いますが、心をに休養をあげるためにできるだけ行ってください。 とにかく体の緊張をほぐすのが目的ですから、アロマ以外でもお好きな方法で癒して下さい。

ここで悩まなければならないのは、次に自分はどうしたらいいのか、 どうしたいのかを見極めることです。離れた方がいいのですが、経済的なことや子どものことですぐにはできない場合もあるでしょう。 もしこの家に留まることを決めたのなら、どうしたら自分の精神的ダメージを小さくできるかを考えて下さい。モラ夫の場合、 話し合いは不可能なばかりでなく、妻をさらに追いつめるだけですのでやめた方が得策です。モラ夫に愛を乞うのはやめましょう。モラ夫は人を愛するという能力がありません。 ないものねだりは時間と体力の無駄です。できるだけモラ夫に近づかず、言葉を交わさず、事務的な生活をおくるしかないでしょう。 それが一生続くものならば、そういうものだと割り切るか、後にモラ夫と別れるための準備期間にしましょう。ただし、この準備期間は長くても1年以内を目標に してください。数年後という目標は「明日からやろうダイエット」のようなもので、「夢」だけで終わってしまうことが多いようです。目標の年月が すぎたら、「ここまでがんばったら後1年耐えられる」と、ずるずる無駄な時間を過ごしてしまうことになります。

モラハラは普通暴力を伴いませんので、とっさに逃げるということがありません。ですから「チャンスの女神」が走ってきたら、その少ないチャンスを いつでも生かせるよう常に準備しておいて下さい。後から「あれがチャンスだったのだ」と気づいても、体力と気力が伴っていなければ脱出することが できなくなってしまいます。数少ないチャンスを必ずものにしてください。

一番のチャンスはモラ夫が「離婚しよう」「出て行け」と言った時です。モラ夫の「離婚」はほとんど脅かしですので、最初から離婚する気はありません。 そう言えば妻がはいつくばって謝ると思っているので言っているだけです。普段から別居→離婚の準備をしておき、モラ夫が「離婚だ」と言ったときに 離れましょう。離婚を言い出したのは夫ですので、夫の意志を尊重しただけです。

一番大切なのはこの決心を自分ですることです。他の人から強く言われて決めてしまうと、後悔が残ってしまいます。私の主治医の話では、私にフラッシュバックがないのは、モラ夫との離婚調停を 自分でシナリオを書いて、自分のやりたいように進めた結果だそうです。誰かに方法を尋ね回ったとしても、集めた資料を自分で吟味し、 自分がどうしたらいいのかを自分で決めましょう。そうしないと後から「これでよかったんだろうか」という思いが、長い間続いて しまうことになります。「あの人がこうしろと強く言わなければ私は離婚なんかしなかった」と責任を転嫁し、また転嫁している 自分が嫌になったりします。ここまで来たら早急に結論を急ぐことはありません。幸いモラル・ハラスメントは身体的DVと 違い、明日殺されるかもしれない危険はありませんので、時間をかけてゆっくり結論を出して下さい。ただ、お子さんのいる方、 特に男の子がいる場合は細心の注意を払って下さい。子どもの問題行動で夫がモラ夫であることが発覚することも少なくありません。 児童相談所で「子どもの不登校の原因はお父さんですよ」と言われて、初めて気がついたと言う方もいます。

専業主婦の方は仕事の準備をしなければ、離れてから困ってしまうことになります。準備は周到にが鉄則です。もっとも掲示板に来られる方からは、 離れてから仕事を見つけたという方もいますので、何らかの資格を持っているという方は気にしなくてもいいかもしれません。 ハローワークや役所には、就職に必要な技術を習得するために補助金を出してくれたり、受けている間、手当を支給してくれたりする制度がありますので、役所の福祉事務所等に問い合わせて みてください。

次にお子さんの説得です。 中学生以下の子どもはどんなに自分を虐める父親でも、やはり離婚となると反対する場合があります。私の場合もそうでした。しかし、私は離婚を実行しました。 子どもには環境を変えないことを約束しました。怖いのはモラハラの連鎖です。母が父に虐められているのを見て育った 子どもは大きくなって同じ事を始めてしまうことが少なくありません。しかし心配ばかりしていても仕方がありませんので、できるだけ子どもの 様子に敏感になり、愛情をたっぷり注いであげてください。あなたがこの世で一番好き!と言葉や態度で示して下さい。 知人にモラ夫を父に持った人がいますが、普通の大人になっています。 小学生の頃にはもう父を見捨てたそうです。そして反面教師として父を見ていたということです。

モラハラの連鎖を断ち切ること、 これが私たちに科せられた大きな課題です。

離婚は大きな仕事ですので、これをひとりで乗り切るのは大変な作業です。できるだけ味方を増やして下さい。私はわかってくれそうな 人たちにモラハラについて書かれたものを渡して協力をお願いしました。 「とっても優しくていい人」と思っていた人が、実は家族を虐待していたということを告げられ、最初はとまどっていた人も、きちんと話をすれば大体わかってくれます。 そして納得してもらうためには物的証拠が一番効果的です。モラハラメモは必ずつけて下さい。録音はICレコーダーが100円ライター程度の大きさで長時間の録音が可能です。 新しく買うのであれば、電話、携帯電話からも録音できるものを選んでください。機械によって性能がまるで違いますので、少々高くてもいいものを選びましょう。

家の財産がいくらあるかは必ずコピーをとっておいて下さい。離婚の時、夫は絶対に嘘をつきます。その嘘をくつがえすためにも、証拠品は必要なのです。 レシート、メモなど、「こんなもの」と思われるものが後で偉大な効力を発揮することがあります。どんな小さなものでも取っておき、整理しておいて ください。感情を入れた日記より、事実関係を丹念に記した物の方が証拠価値があります。

モラ夫はコロコロ嘘をつきまくりますから、協議離婚よりも調停離婚の方が後から楽です。調停にかけないのであれば、公正証書を作っておいて 下さい。一緒に日付を入れない離婚届を取っておけばいいでしょう。ただし、不受理届けを出されてしまうことがある、ということも念頭に置いてください。

調停委員は頭が古くて堅い人がいますので、「モラル・ハラスメント」という言葉を出すと「自分がわからない言葉を知っている生意気な女」に思われて しまったりしますので、モラハラという言葉を出さず、ひとつひとつ事例をあげ、夫がどれだけ自分を精神的に追いつめてきたかを静かに説明 してください。時系列で書いた実情を前もって裁判所へ提出しておくこともいいでしょう。ただし、これは長くてくどかったりすると、調停委員が 読まなかったりしますし、内容が込み入っているとちゃんと把握されないことがありますので、箇条書きにして、できるだけ 短くまとめましょう。 モラ夫は権威に弱く、お上のいうことには屈することが多いので、頑固親父程度の場合は、これだけで状況が変わることがあります。

人の目からしか自分を見られないモラ夫が、もっとも怖いのは自分への世間の評判です。優しそうな顔をして 実は妻子を虐待していたなどと知れたらとんでもないことになります。ですから妻が他の人に実情を 訴えたとわかったら攻撃に出るかもしれません。でも、ひるむことなく「私は被害者なのだ」とまっすぐ前を見てください。悪いのは加害者です。 守られるべきは被害者なのです。

見方を変えれば夫もモラ夫にされてしまった被害者です。しかし 「今」最初にしなければならないのは、妻や子が安らかな生活をおくるようになること。モラ夫が同じように 安らぎの生活を得るには夫自身が自分を省みるしかありません。そしてモラ夫は、決して反省することはありません。妻がどんなに献身的につくしても、 夫は決して幸せになれないのです。

離婚を言い出したとき、夫がとる行動はまず平謝りです。自分が悪かった許して欲しいと繰り返します。 土下座はモラ夫の得意技です。ペコペコと頭を下げて謝ってきます。そして別れてからの子どもたちの ことを考えて欲しいと罪悪感を植え付けます。さて、どうしましょうか。 もしそれが一番最初だったら、受け入れてもいいかもしれません。モラ夫と頑固親父の線引きはとても難しいのです。 それで夫が変わるならば、それにこしたことはありません。真性モラ夫の場合は戻ってから数週間から数ヶ月程度で 元に戻ります。人間の人格はそんなに簡単に変わるものではありません。夫が「君を離したくないんだ」と言うのは 妻を愛しているからではありません。妻がいなくなったら、夫は誰に怒りをぶつければいいのでしょう。その怒りとは モラ夫をモラ夫にしてしまった相手に対するものなのです。妻はその代役にされているのです。また、世間の目を気にする モラ夫ですから、離婚したなどどいう不名誉なことは絶対に避けたいのです。

私の場合は3度調停をしました。夫に反省の色が見えたので 2回目が終わったとき、「やり直してもいい」と調停委員を通じて伝えますと、モラ夫の態度が一変しました。私が弱くなったと踏んだのか、 今までヘコヘコしていたのが、再び威圧的な態度を持って接してくるようになり、嫌がらせも始まりました。これで私の腹は 決まりました。

コイツの性根は一生治らない

ただし、これは私の場合ですので、全部にあてはまるわけではありません。長い年月をかけてモラ夫と対決を繰り返し、 まともな夫婦生活を手に入れたという方もいます。ただこれはお互いに武器を持っての平和獲得です。 決して心を許しあってのものではありません。妻が病気になるなどの事態になれば、再び始まることも覚悟しておかなければ ならないでしょう。

ヘコヘコ「帰って欲しい」と「お願い」したのに妻が帰らないとわかると、モラ夫は攻撃に転じます。 A級モラ夫の場合は、離婚になると慰謝料請求、親権要求などと言い出します。養育費が決まっても払いません。ですから調停を した方が後から楽なのです。
モラ夫の中には「妻が離婚を言い出したせいで、自分は鬱病になった」と訴える者が出てきます。自分のしたことは棚にあげ、 相手に自責感と罪悪感を押しつける、モラ夫ならではの攻撃です。しかしここでひるんではいけません。ここで戻ればまたモラハラが、 それも以前以上のモラハラが行われるのは火を見るより明らかです。自分の犯した罪は自分で受け止めてもらいましょう。

夫は外ではいい人なので、なかなか妻の言うことは信じてもらえません。言葉にしてしまえばどこにでもある話だからです。 ここで妻は再びセカンドアビューズ【二次被害】にあいます。でも決して落胆しないで下さい。心ある人たちに 淡々と語って下さい。決して感情的になってはいけません。これは調停の場でも同じです。真摯に、事実だけを静かに訴えて下さい。 一番大変なのは「夫もかわいそうな人なのだ」という憐憫をどうやって振り払うか、かもしれません。払えない人はずっとモラ夫との 共生が続くのかもしれません。どうなるにせよ「自分の人生は自分で決める」ことをしなければ、後悔の残る一生になるのではないでしょうか。



v目次    v加害者とは   v被害者とは   vモラハラの特徴   v被害者の様子   vあとがき   vACとわたし   
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