東洋大

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東洋大学 理工学部 機械工学科大学院工学研究科 機能システム専攻

マイクロ・ナノ構造形成 研究室

(物部秀二 研究室)

〒350-8585埼玉県川越市鯨井2100

概要

連絡先/メンバー

業績

講義

研究機器

リンク <所属機関><研究室・学会><図書館・検索・分析><鶴ヶ島><その他>

お知らせ


【研究室関連】

  • TOYO UNIVERSITY 2008 Guide Book146ページにて,マイクロ・ナノ構造形成研究室が紹介された.
  • 東洋大学工業技術研究所報告「工業技術」の技術報告および紹介として,報告書(物部秀二,近接場光学顕微鏡のための光ファイバープローブ,工業技術(東洋大学工業技術研究所報告),第29号,(2007), pp. 48-51.)が掲載された.

【教務関連】 川越キャンパスの教務情報に関しては,掲示板(教学課・教務関連掲示板,機械工学科掲示板など)にて発表する.ここでは,掲示板への学生の注意を喚起する目的で,その一部分のみを転載しているに過ぎないので,最新,完全,かつ正確な教務関連情報を得るためには,タイムリーに大学の各掲示板を確認することが不可欠である.


【入試関連



【注意】 このお知らせ欄の情報が最新かつ正確なものであるとは限りませんので,最新の入試情報に関しては,必ず東洋大学の公式ホームページにてご確認いただきますようお願い致します.


物部研究室の概要

物部研究室では、独自の物理的・化学的加工法(真空蒸着、スパッタ、化学エッチング、無電解めっきなど)に基づいて,マイクロ、ナノ・フォトニクスための微小構造、すなわち、近接場光学顕微鏡光プローブ、近接場ナノフォトニクス素子の実現を目指します。

(物部秀二)

【キーワード】 光ファイバー,エッチング,スパッタ,真空蒸着,サイズ依存無電解めっき,水素脆性,ナノテクノロジー,走査型プローブ顕微鏡,近接場光学顕微鏡,ナノフォトニクス


研究テーマ

近接場光学顕微鏡用プローブ、マイクロレンズのための光ファイバー加工法

化学エッチングによる石英系光ファイバー評価法の開発

サブミクロンサイズ依存無電解めっきの研究

微小ピンホールのないめっき膜形成法の開発

マグネトロンスパッタを用いたプローブティップの形成


マイクロメートル(μm)、ナノメートル(nm)とは?

例えば、通信用の石英系光ファイバーの外径(クラッド直径)は、80125μm0.080.125mm)程度であり、光波長1500nm=1.5μm)の赤外光ビームを単一モード伝播する通信用光ファイバーのコア部(光ビームが閉じ込められる断面領域)の直径は210μm(200010000nm)程度である。この光ファイバー外径を感覚的にイメージするなら、髪の毛の太さ(数十から百ミクロン(μm))程度に相当すると考えればよい。ここで、マイクロメートル(ミクロン)、ナノメートル等は次のように定義される。

マイクロメートル

1μm=10-6m

サブミクロン

0.1μm=100nm=10-7m

サブサブミクロン 

0.01μm=10nm=10-8m

ナノメートル

1nm=10-3μm=10-9m


最近の研究業績

論文,解説

物部秀二
小学校における理科教育支援の実践と管理
理科教育学研究, Vol. 52, No. 1, 2011年7月, pp. 97-105.

Shuji Mononobe
Ultrasonically Induced Effects in Electroless Nickel Plating to Fabricate a Near-Field Optical Fiber Probe
Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 47, No. 5, May 2008, pp. 4317-4318.

Shuji Mononobe and Motoichi Ohtsu
Electroless Nickel Plating Aqueous Solution Containing Additive Ammonium  Chloride to Fabricatte a Near-Field Optical Probe with a Tip Protruding from Nickel Film
Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 46, No. 9B, Sep. 2007, pp. 6258-6259.

Yuichi Saito, Shuji Mononobe, Motoichi Ohtsu, and Hideo Honma
Electroless Nickel Plating under Continuous Ultrasonic Irradiation to Fabricate a Near-Field Probe Whose Metal Coat Decreases in Thickness toward the Tip
Optical Review, Vol. 13, No. 4, Jul./Aug. 2006, pp. 225-227
.

Masaru Sakai, Shuji Mononobe, Shusaku Akiba, Akifumi Matsuda, Wakana Hara, Mamoru Yoshimoto, and Toshiharu Saiki
High-Contrast Imaging of Nano-Channels Using Reflection Near-Field Scanning Optical Microscope Enhanced by Optical Interference
Optical Review, Vol. 13, No. 4,
Jul./Aug. 2006, pp. 266-268.

齋藤裕一, 物部秀二, 大津元一, 本間英夫
超音波照射を用いた無電解ニッケルめっきによる近接場光学プローブの作製
表面技術, 第56巻, 第12号, 2005年12月, pp. 906-909.

Masaru Sakai, Shuji Mononobe, Keiichiro Yusu, Toshiyasu, Tadokoro, and Toshiharu Saiki
Observation of Amorphous Recording Marks Using Reflection-Mode Near-Field Scanning Optical Microscope Supported by Optical Interference Method
Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 44, No. 9A, Sep. 2005, pp. 6855-6858
.

物部秀二, 齋藤裕一, 本間英夫, 大津元一
超音波照射下無電解めっきによる近接場光学顕微鏡プローブの作製
マテリアルインテグレーション, 第18巻, 第4号, 2005年4月, pp. 29-32.

Shuji Mononobe, Yuichi Saito, Motoichi Ohtsu, and Hideo Honma
Fabrication of a Near-Field Optical Fiber Probe Based on Electroless Nickel Plating under Ultrasonic Irradiation
Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 43, No. 5B, May 2004, pp. 2862-2863
.

M. Sakai, S. Mononobe, A. Sasaki, M. Yoshimoto, and T. Saiki
High-contrast imaging of NiO nano-channels using a polarization near-field scanning optical microscope
Nanotechnology, Vol. 15, Issue 6, Jun. 2004, pp. S362-S364.

M. Takesada, E. Vanagas, D. Tuzhilin, I. Kudryashov, S. Suruga, H. Murakami, N. Sarukura, K. Matsuda, S. Mononobe, T. Saiki, M. Yoshimoto, S. Koshihara
Micro-character printing on a diamond plate by femtosecond infrared optical pusles
Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 42, No. 7A, Jul. 2003, pp. 4613-4616.

石川薫, 阿部治, 三浦修平, 物部秀二, 大津元一, 本間英夫
光ファイバプローブを用いたnm オーダ領域での無電解ニッケルめっきの析出挙動
エレクトロニクス実装学会誌, 第5巻, 第2号, 2002年3月, pp.171-176.

物部秀二, 大津元一
化学エッチングに基づく石英系光ファイバの評価法
電子情報通信学会論文誌C, Vol. J84-C, No. 9, 2001年9月, pp. 894-895.

業績一覧

書籍(分担執筆)

Progress in Nano-Electro-Optics III: Industrial Applications and Dynamics of the Nano-Optical System (Springer Series in Optical Sciences), M. Ohtsu ed., (Springer, May 2004).

ナノテクノロジーハンドブック, ナノテクノロジーハンドブック編集委員会 編, (2003年5月, オーム社).

ナノ光工学ハンドブック, 大津元一, 河田聡, 堀裕和 編, (2002年11月, 朝倉書店).

近接場ナノフォトニクス入門, 大津元一, 河田聡 編, (2000年4月, オプトロニクス社).

Near-Field Nano/Atom Optics and Technology, M. Ohtsu ed., (Springer, Aug. 1998).

研究内容紹介・関連記事

博士学位論文ダウンロード

サイエンスチャンネル ``Message from Scientists", 〔2002年制作〕

JSTさきがけ「組織化と機能」領域 研究報告, PDFファイル, ビデオ(mpg, 31.9MB, 2004年制作〕

KASTメールマガジン第5号「無電解めっきのサイズ依存性とナノ光デバイスへの応用」 〔2005年8月〕

平成15年度KAST研究概要「光科学重点研究室・大津グループ」〔2004年9月〕

特許庁標準技術集 ``表面構造の原子領域分析:光ファイバープローブ" 〔2002年〕

特許流通支援チャート: 一般19 プローブ顕微鏡技術 〔2006年3月〕


近接場光学顕微鏡用光プローブに関する研究背景

光を情報媒体とする走査型プローブ顕微鏡あるいは回折限界を超える超高分解能光学顕微鏡として1980年頃に登場した近接場光学顕微鏡は80年代中頃から90年代初頭にかけて行われた萌芽的研究(*1)の結果システム化され,近年はナノメーターサイズの生体試料の形状と構造の観察,単分子蛍光検出,半導体デバイスの分光研究,高密度光記録等への応用研究が活発に行われている.また,90年代半ば以降、Shear--force顕微鏡と金属コートファイバープローブを用いる近接場光学顕微鏡が商品化され、、その後も複数のメーカーから市販品が提供されたことは、90年代半ばごろから数年の間に近接場光学研究に携わる人口を急速に増加させることに寄与した.

90年 代後半からは、様々な分野の研究者が市販の近接場光学顕微鏡を用いて再現性のあるデータの蓄積が進み,近接場光学が学際的広がりをもって発展することが期 待されたが,残念ながら、供給される金属コートファイバープローブの品質のばらつきのために再現性のよい近接場像を得ることに苦労するユーザーが多く, ユーザー人口増大に比して、データーの蓄積のそれは緩慢なものであったと言わざるを得ないであろう.この時期、多くのユーザーが通信用に準じる市販光ファ イバーを用いる従来のファイバープローブ技術に問題があると認識し,新たなプローブ技術の開発と実用化を切望していた。近年、大津元一教授(東京大学)、 斎木敏治助教授(慶応大学)、物部秀二らが担った神奈川科学技術アカデミーの成果展開事業により、性能向上したプローブや近接場光学顕微鏡の商品化が実現 し、近接場光学顕微鏡のニーズとシーズのギャップは90年代半ばに比べて飛躍的に縮まったものの、未だ広範な用途から生じるニーズ問題やプローブの生産効率に関する問題は顕在であると認識している。

市販初期の90年代半ばにおけるファイバープローブ技術の問題は応用研究の展開に伴い顕在化してくる幅広いニーズに対して、多品種性、量産性など生産効率向上のための技術シーズが蓄積されていなかったことにある.物部は学位論文(1999年)に おいて、初めて、ファイバープローブの問題をニーズとシーズの両面から総合的に分析し、具体的解決策とファイバープローブ技術を体系的に論じた。また、そ の後も、ファイバープローブの研究者として、サイズ依存無電解めっきの光プローブへの応用など、光プローブを量産する手法の模索とコストダウンを意識した 姿勢をもって、この分野をリードしている。


ファイバープローブのニーズと従来のプローブ技術に関する問題

以下に標題問題に関する学位論文(1999年)における内容を記述する。2006年現在においては、執筆時よりも技術的な進歩等のため、以下の記述と異なる部分がある。

 

http://www.geocities.jp/mononobe_lab/1_01.jpg

図1.近接場光学顕微鏡の種々の応用研究における空間分解能(左図)と照明・励起波長(右図)の需要を示す概略図.点線で囲まれた部分はそれぞれi-modec-modei-c mode,分光技術が用いられる領域を示している.

 

近接場光学顕微鏡用プローブに関わるニーズの要素として、目標分解能,使用光波長,顕微鏡方式などを挙げ、これらに関する顕微鏡ユーザー(あるいは測定者)の行動原理として、以下

 ○ 観察に際して,ユーザーは対象とする試料の大きさ・形状・構造と最も必要とする情報を考慮して目標分解能と使用光波長を決定する。

 ○ 測定する対象・目的を達成するために、最も有利な顕微鏡方式を選択する。 

のような手順を踏むと仮定し、既に顕在化している代表的な応用に関してニーズを推論する。図1は既出文献と既存のデーターを元に近接場光学顕微鏡の代表的な応用において必要とされる空間分解能(左図)と照明・励起波長(右図)を示したものである.顕微鏡方式に関しては

 ● 微小光源の発生型プローブを用いるイルミネーション モード (i-mode)

 ● 近接場検出器の散乱型プローブを用いるコレクション モード (c-mode

 ● プローブが発生型と散乱型の両方の役割を果たすイルミネーション--コレクションモード(i-c mode

の3つに分類される.図の点線で囲まれた部分はそれぞれ顕微鏡方式の応用範囲に相当する.また、+Spectroscopyの点線部分は分光技術が導入される場合に適用される分解能である.光加工・光メモリー書き込み,高分子試料の蛍光・発光分布測定,吸収分布測定はそのほとんどの測定がi-modeで行われており,生体試料の高分解能形状観察は暗視野照明c--modeによる測定に成功例が見られる.また半導体デバイスの光励起測定ではi-c modeが使用される.図2(a)、図2(b)、図2(c)はそれぞれ、i-mode,暗視野照明c-modei-c modeの概略図を示す。

 

 

http://www.geocities.jp/mononobe_lab/B_01.jpg

図2.(a) イルネーションモード(i-mode),(b) 暗視野照明コレクションモード(c-mode),(c) イルミネーション--コレクションモード(i-c mode)の概略.

 

【イルミネーションモードが用いられる応用】

光加工・光メモリー書き込み,高分子試料の蛍光・発光分布測定,吸収分布測定はそのほとんどの測定がi-modeで行われており,生体試料の高分解能形状観察は暗視野照明c-modeによる測定に成功例が見られる.また半導体デバイスの光励起測定ではi-c modeが使用される.3つの顕微鏡方式とそれらのシステムの詳細については学位論文の付録Bを参照せよ.
i-mode
を光加工・光メモリー書き込みへ応用する場合には,加工・書き込みヘッドにその発生型プローブ~ が使用される.加工速度と加工サイズはトレードオフの関係にあり,加工サイズは近接場光学顕微鏡の分解能に相当する.可視から近赤外の光を用いていくつかの試行実験が行われているが,最近の研究動向を見ると分解能を70-100nm程度に設定して加工速度の向上を目指す傾向が顕著である.また近紫外光を用いる光加工の研究に着手する研究グループもある.
有機高分子材料の蛍光・発光分布測定のためには,微小領域を励起することにより高分解蛍光像が得られるi-modeが使用される.光加工と同様に100nm程度の分解能を目標にした測定例が多いが,蛍光検出に関しては,試料の熱的変化やフォトブリーチングを避けるため,プローブへの光入力をできるだけ小さくする必要がある.また,一分子蛍光検出や局所的分光測定では十分な検出光強度を確保をするために,分解能を>100nmに設定する例が多い.励起波長,試料の発光波長は共に可視域に集中しているが,ポリシランの紫外光励起による紫外発光の検出に関する我々の報告~[36] が 広く注目されていることから,紫外域にもニーズが広がっていると類推される.また半導体レーザー励起チタンサファイアレーザーなどに代表される短パルス発 生技術の進歩により最近注目を集めている多光子励起を用いる近接場測定では,光励起が赤外域で光検出が可視紫外域で行われる.
平坦な試料の吸収分布画像は透過分布画像から容易に生成されるので,高分子材料,有機薄膜等の吸収分布測定はi--modeで行われる.試料が有機薄膜の場合,微小領域内での膜厚あるいは膜質の評価が目的であり,しばしば<100nmあるいは20-30nm程度の高い分解能を達成することが望まれる.ただし,吸収の分光特性を測定する場合には蛍光の場合と同様に,十分な検出光強度を確保するよう目標分解能を調整する必要がある.
この他のi-modeによる測定として,可視域でのレーザーラマン分光分析が挙げられる.一般にラマン散乱光は励起光強度の10-6程度の微弱光であり,また近接場空間分解測定においては励起光強度がμWあるいはnWオーダーに制限されるので,この応用では検出光強度を確保することが最優先課題となる.10-3の高いラマン散乱効率を持つポリジアセチレンの近接場ラマン像の分解能が100nm程度であるので,他の物質の近接場ラマン分光を行うためには応用研究者が設定する目標分解能は>100nmであると類推する.励起のためには可視短波長のレーザー光がよく使用される.散乱効率は光の周波数の4乗に反比例するので,散乱効率を増加するためには励起光の短波長化が必要である.

イルミネーション--コレクションモードが用いられる応用

付録B.1.3で述べるように半導体の近接場光励起測定においてナノメートルオーダーの空間分解能を達成するためには,プローブによって励起しかつ局所的に散乱・検出を行うi-c modeを選択するべきである.現在までにInGaAs系半導体デバイスの光励起発光分光の報告例があるが,このような測定では検出光強度の確保が最優先課題であるので典型的な空間分解能は>200nmである.GaAs系半導体の場合,励起光源として633nmHe-Neレーザーや700-900nmで発振するチタンサファイアレーザーが使用され,不純物やフォノンの発光への影響を抑制するためには極低温環境において,また試料の酸化を防ぐためには不活性ガス雰囲気中で測定する必要があるので,それらの環境を実現するクライオスタット中での測定例が多い.
紫外可視域で発光するGaN系半導体やII-VI族半導体に関しては未だi-c modeによって測定したという報告はないが,ワイドギャップ半導体デバイスの研究・開発に伴い,今後近紫外-可視短波長域での半導体光励起測定のニーズが顕在化すると予想する.またラマン分光や他の応用においても,半導体試料や不透明試料のi-c mode測定は効果的である.

 

【コレクションモードが用いられる応用】

電子の注入励起による光デバイスの発光を2次元マッピングする場合には,光励起の必要がないのでc-modeによる測定が有効である.光励起を必要とする測定に比べて検出光強度確保の困難さは緩和されるが,注入励起できる光デバイスに限られるため報告例は少ない.

生体試料の形状測定においては通常の光学に基づく顕微鏡のパフォーマンスが高いので,近接場光学顕微鏡の対象となるのは例えばデオキシリボ核酸(DNA)等のナノメーターサイズの生体試料である.それゆえ,この応用のためには非常に高い目標分解能が設定される.DNA近接場像の成功例が暗視野照明c-modeを用いた測定のみであることから,このような超高分解測定を実現するためにはi-modeよりもc-modeの方が期待される.また,生物学分野において近接場光学顕微鏡が一定の評価を得るためには,走査中に生体試料を損傷させないようにプローブを制御する技術や試料を液中にて測定するための技術が確立されなければならない.暗視野照明c-mode信号をピエゾ電源に帰還するプローブ制御(光強度一定モード) が液中測定に有効であることが分かっており,暗視野照明c-modeShear-force顕微鏡に代わるプローブ制御手段としての側面を持つ.このことに関連して,特定部位を色素で着色された生体試料の観測等のために暗視野照明c-modeに基づく制御系を持つi-modeが提唱されている.光強度一定モードに関しては学位論文付録B.2.2.2を参照せよ.通常の生体試料形状測定においては,生体にあまり刺激的でない可視・赤外域の光が選択されるので,光パワー制御が容易な可視半導体レーザーがしばしば使用される.

 

【従来のファイバープローブ作製法の問題点】

金属コートファイバープローブの製造法 は光ファイバーのテーパー化とその金属化という2つの作業から成り立つ.テーパー化のための技術手段としては光ファイバーの溶融延伸,メニスカス・エッチ ング,選択エッチングが知られ,金属化のためには真空蒸着が用いられた.市販プローブは溶融延伸と真空蒸着の組み合わせによって製造されている.金属コー トファイバープローブが実用化に至ったのはそれが最も汎用性に富んだプローブとなるための3つの特徴

 (A) 発生型と散乱型の両方の役割を果たすことができること

 (B) 伝送路を内蔵し外部光学系を簡素化できること

 (C) 可視から近赤外まで広い使用波長領域を持つこと

を備えていたからであろう.しかし,市販品に関して調査すると

 (1) プローブの金属化テーパー部分において強い光学的損失を持つこと

 (2) プローブの先端径と先鋭角の制御範囲がそれぞれ50nm以上と40°以下に制限されること

 (3) プローブのファイバー先端が金属で薄く被覆されていて露出していないこと

 (4) 紫外光がGeO2-SiO2製コアで強く吸収・散乱されるので,紫外域におけるファイバー導波路部分の伝送損失が大きいこと

 (5) 紫外域と可視域においてGeO2-SiO2コアが発光すること

 (6) GeO2-SiO2製コアにおいてGeO2に起因するラマン散乱光が発生すること

などのテーパー化技術,金属化技術,光ファイバー技術に起因する問題があり,これらのために応用・用途の広がりが阻まれていた.また検出光強度に乏しいとの理由から金属コートファイバープローブを暗視野照明c-modeで使用することは行われなかった.

近接場光学顕微鏡は試料とプローブの双極子間近接相互作用に基づくので,プローブの先端径,開口径は顕微鏡の到達分解能を決定する最も重要なパラメーターである.問題2に挙げられたように溶融延伸に基づくテーパー化法では50nm以下の先端径を持つテーパー化プローブを作製することはできず,市販プローブは<50nmの高分解能を要する測定に応用できない.またメニスカス・エッチングによってテーパー化されるファイバーの先端断面形状は正円ではなく楕円あるいは多角形であり,その長軸を60nm以下に制御することは困難である.
またプローブの透過効率あるいは顕微鏡の明るさが主としてプローブの開口径と先鋭角によって決定されるので,問題1の解決においては先鋭角を制御することが最も重要である.溶融延伸,メニスカスエッチングを用いる場合は,先鋭角制御範囲は40°以下に制限されており,ナノメーターサイズの先端径を維持しながら先鋭角を制御することは困難である.これらに対し,分散補償ファイバーの選択エッチングは,10nm以下の先端径をほぼ100%再現でき,かつその先端径を維持しながら先鋭角θを20<θ<180° の範囲で厳密に制御できるなど,3つのテーパー化技術の中では最も優れた形状再現性・制御性を備えている.しかし,選択エッチングされたテーパー化プロー ブを金属コートするための有効な手段がなく,新たな金属化技術の開発が課題である.表1は溶融延伸,メニスカス・エッチング,選択エッチングの3つのテー パー化技術に関してまとめたものである.


表1.三つの従来技術によりテーパー化された光ファイバーの特徴

技術

先鋭角

先端径 

再現性

対応可能な金属化技術

溶融延伸

20-40°

50nm

80%

真空蒸着

メニスカス・化学エッチング

9-40°

60nm以上

80%以下

真空蒸着

選択化学エッチング

20°以上(*)

<10nm

ほぼ100%

なし

(*)比屈折率差2.5%,コア径2μmの分散補償ファイバーの場合.

 

一方,問題3に 掲げたように,溶融延伸(あるいはメニスカス・エッチング)と真空蒸着の組み合わによって作製される金属コートファイバープローブの先端は金属蒸気の回り 込みのために金属から露出していない.この先端を覆う金属膜のために試料の空間フーリエ周波数の高い成分が擾乱されて検出されるので,このようなプローブ を用いて先端径に相当する高い分解能の近接場像を得ることは困難である.それゆえ,先端が金属で覆われたプローブを使用する前に,試料基板に接触させてプ ローブ終端部を機械研磨して金属膜からファイバー先端が露出した開口型プローブに仕立てる機械的研磨法が行われるが,これにより100nm以下の開口径のプローブを製造することは容易でない.
問題1-3はテーパー化と金属化という光ファイバーの加工に関する課題であるが,問題4-6は 原材料である光ファイバーに関するものである.後者の3つの問題はそれぞれ紫外光で照明あるいは励起を行う場合,検出光に紫外から可視域で生じる光ファイ バー・コアの発光が重畳する場合,検出光に光ファイバー・コアのラマン光が重畳する場合に限って顕在化し,赤外域での応用においてはこれらの問題はあまり 重要ではない.問題4-6に関連する応用としては紫外分光,可視蛍光検出,可視ラマン分光などが挙げられるが,これらはいずれも検出光強度を重視する分光応用であるので,しばしば問題4-6とともに問題1を解決することが課題となる.しかし,既存の技術によってこの複合問題を解決することはほとんど不可能である.

研究を始めた動機と応用指向プローブ構想

物部が近接場光学という学問分野とその原理に基づく新しい顕微鏡のことを初めて知ったのは金属コートファイバープローブが用いられるようになった1992年頃のことである.さらにこの分野の第一人者である大津元一博士との出会いをきっかけとして,近接場光学技術と従来光学技術の融合を深めて種々の応用の可能性を探求することに強い研究意欲を持ったことから,翌年4月より(財)神奈川科学技術アカデミー(KAST)の「フォトン制御」に関する研究プロジェクトに参加した.神奈川科学技術アカデミーにおいては近接場光学顕微鏡の応用範囲を拡充することを目的としてファイバープローブの研究開発を行うことにより,プロジェクトの一翼を担った.
既に、述べたように近接場光学顕微鏡の個々の応用における目標分解能,検出光強度,顕微鏡方式,プローブ--試 料間距離制御方式,照明・励起波長,検出光波長などの多くの項目がプローブに関わるニーズとして顕在あるいは潜在するので,筆者はプロジェクト発足当時以 来「ある一つの高性能プローブによってすべての応用を実行するのは現実的に不可能であり,種々の応用を実現するためには各応用ごとにそのニーズに応じたプ ローブを用いる」ということを研究方針として掲げている.本論文ではこのような特定の応用範囲を対象とするべく開発されたプローブを総じて応用指向プロー ブ(Apprication-Oriented Probes)と呼ぶ.

以上で省略した文章中の引用、応用指向プローブの詳細などについては、学位論文を参照せよ。


Copyright (C) 2006 Mononobe Laboratory

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