
神秘学入門 その12 オカルティズムの理論 その2

●この文章は、下記の本からの引用によるものです。
この文章には、当方の独自の省略、編集、まとめ、加筆などが含まれています。
この文章の責任は、いっさい私、森 真澄にあります。
Books Esoterica 18
「神秘学の本」
株)学習研究社

★占星術
☆天体の秩序は人間社会に影響を及ぼす
●ルネサンスに開花した占星術
●西欧神秘主義で最も重視され、あらゆる分野で活用された術ーそれが占星術である。
隠秘学の伝統に従って、占星術の起源もはるか太古に引き戻されるのが常だが、我々が
占星術と呼んでいるものは、紀元前700年頃から始まった。その頃、バビロニア人は太陽
の軌道である360度の黄道帯(こうどうたい、獣帯=じゅうたい)を発明し、さらに100年ほど
後になると、黄道帯を12分割した黄道十二宮(きゅう)を考案した。これが、今日の星占いで
用いられている牡羊座から魚座までの12星座のルーツである。(12宮の属性は別表参照)
●ただし、バビロニア占星術には、後の占星術を構成する最も重要な原理のいくつかが
なかった。とりわけ、人の運命に最も影響を及ぼすと考えられた上昇宮(じょうしょうきゅう、
誕生時に東の地平線上に上昇して来る星座=アセンダント)の思想や、惑星同士が形成
する角度(アスペクト)による吉凶判断を欠いていた。
これらは、バビロニアを征服したギリシアによって発明され、後世に伝えられた。
また黄道帯を10度刻み36区域に分割して惑星の影響力をはかるデカノスの手法はエジプト
で編み出され、バビロニア占星術と組み合わされた。
占星術は、古代の支配者、哲学者、神学者、医者、異教の祭司らからキリスト教徒に至るまで、
あらゆる層に浸透した。そして、中世を経て古代の諸学が一気に開花したルネサンスには、
爆発的に支持を集めるに至ったのである。
●大宇宙と小宇宙の照応
●占星術が神秘学の中心的学問と見なされたのは、それが天体の影響をはかる唯一の学問
だったからである。「地上の世界は天上の世界の動きと結び付けられている」というアリストテレス
をはじめとするギリシアの賢者の思想は、そのままルネサンスの占星術師の信念だった。
あらゆる隠秘学の伝統は、この信念を補強し後押しした。たとえばヘルメスは、「下なるものは
上なるもののごとく、上なるものは下なるもののごとく」という原理を説いたが、これは占星術の
これは占星術の正しさを裏付ける大宇宙と小宇宙(=人体)の照応の原理に他ならなかった。
●神の創造にかかる天体の秩序は、人間の社会の規範であり、天体の個性は、神の属性の高貴
な顕れに他ならなかった。同心円状に地球を取り巻く月天、水星天、金星天、太陽天、火星天、
木星天、土星天、恒星天、第九天、の「九天界」は、人間の霊魂が神に近付いて行く為の秩序
だった階梯であり、「九階級の天使」の影響圏であり、地上の諸物のルーツであった。
神が構想した世界は、天界に具現され、人間社会に反映されていると見なされた。
その力は、九天界と九階級の天使を経て、地球の諸物に注がれると考えられた。
ルネサンス期の一隠秘学者は、霊魂レベルでそれを説明している。
彼によれば、世界の霊魂は3種に分かれる。
第一は神のみに仕える「超天界霊」で、この霊魂は下位の九天界とはかかわりを持たない。
第二は「天界霊」で、月天から第九天までの九天界を支配する。
第三は、「奉仕ダイモン(神霊)」と呼ばれる複数の霊魂で、それぞれ四大の性質を帯びている。
地上の各地に住み、ギリシア人やローマ人が、パン、サテュロス、ニンフなどど呼んでいた聖霊は、
この奉仕ダイモン(神霊)の事を指している。
天界霊は星の霊魂であり、奉仕ダイモンの原因となった霊魂に他ならない。その為我々は、この
天界霊の影響をふんだんにこうむるという。
●人体と黄道十二宮の対応
●天体の具体的な影響については、実に多種多様な説明が繰り返された。
月が潮の干満に影響を与える様に、人体を構成する四体液が天体の影響を受けるというのは、
伝統的な観念だった。
すでに紀元1世紀の時点で、人体と黄道十二宮は、対応関係にあると考えられた。
また、西暦130年生まれの「実験生理学の父」ガルヌスは、薬剤の調合と惑星の位置の相関を
説いた。
●こうした伝統は、ルネサンスに至ってグロテスクなまでの膨張を遂げた。
精液や血液に天体の影響が染み込んでいる以上、後に発生する人体諸器官が惑星や十二宮の
影響をこうむるのは当然で、その影響は、必然的に気質や感情や体質にまで及ぶと見なされた。
もちろん、天体の影響は、人間にとどまらなかった。
すでに錬金術で見た様に、惑星の影響は鉱物にも植物にも染み込んでいた。占星術は錬金術
理論の骨格でもあった。
魔術についても同じ事が言えた。
「天体の影響が行き渡っている時に、(その天体の影響下にある)物質を用意し、混合する。これに
よって術師は、天体の力と影響を手に入れる」
『自然魔術』の著者デッラ・ポルタ(16世紀)は、こう書いている。
魔術師が何らかの薬物や呪物に超自然的なパワーを込める事が可能なのは、彼が天体の影響
を理解し、その影響下にある物質を、天体の動きと連動させて混合する事が出来るからだという
のである。
●神への観想の道
●好ましい惑星(代表は太陽)の影響下にある植物は、健康の為に最も望ましい食物になると
信じられた。惑星と対応する音楽療法もあった。
これらは、占星術の魔術的活用だが、より通俗的な、日常的活用法もあった。外出に望ましい日、
新しい衣服を下ろす日などと言った、こまごまとした事柄が、占星術によって割り出された。
知人や友人との相性も、それぞれの支配的惑星の相性によって判断された。また、曜日や時間
に対応する惑星によって吉凶が判断され、行動が決定されるといった様に、占星術の影響は
社会生活のすべてに浸透していった。
●こうした通俗占星術は、オカルトの発展に寄与するものではなかった。一部の神秘主義者は、
占星術による運勢判断を否定し、ドラゴンヘッドやドラゴンテイルと呼ばれる月と太陽の軌道の
交点を無意味なものとして排除した。
もし、人間の運命は、(天体の影響を受けるかも知れないが、)天体に完全に支配されてしまう
と考えるならば、それは神への冒涜である。
多くの宮廷では占星術師を抱え、行動の吉凶を勧告させた。
しかし神は、人間に自由に振舞う事を許す自由意志をも与えたもうた。
この意志は天体(の影響力)によっては動かす事は出来ない。
●では、占星術は何の為にあるのか?
それを知るには、古代の聖賢(賢人)の振る舞いを見ればよい。アリストテレスやプラトンは、
運勢判断や金銭の為に天体を追及したのではない。カバリストや真の魔術師、錬金術師も
同様である。
占星術は、神への観想の道なのだと、彼らは考えた。
そしてこの方面でこそ、占星術は、神秘学の一課として、密かに命脈を保ち得た。
●それ以外の通俗占星術は否定され、追放された。各国に先駆けてフランスの諸大学が
占星術の科目を追放したのは、1666年であった。
(しかし占星術は、今も神秘学の一課として、神への観想の道として、生き続けている。)
●天体の秩序と人体の照応関係
*この配当表はルネサンス当時のもので、現代の占星術のそれとは異なる。
|
四 大 |
十二宮 |
太陽のいる期間 |
対応する人体部 |
支配惑星 |
|
火 |
白羊宮 |
3/21〜4/19 |
頭部 |
火星 |
|
土 |
金牛宮 |
4/20〜5/20 |
首・肩 |
金星 |
|
空気 |
双子宮 |
5/21〜6/21 |
両腕 |
水星 |
|
水 |
巨蟹宮 |
6/22〜7/22 |
胸・胃・口 |
月 |

★魔術
☆神に由来する秘められた力を駆使する
●白魔術と黒魔術
●魔術は、かっては自然の秘密を追求する自然学の一課と見なされ、魔術師は、一種の
万能教授と考えられた。『自然魔術』20巻の著者として知られる16世紀の自然哲学者
デッラ・ポルタによれば、魔術はペルシアで起こった。最初の魔術師は、ゾロアスターであり、
彼以後、東西の「賢者」が、この多いなる学問を究め、後世に伝えて来た。
ルネッサンスの神秘家が魔術師という存在をどう捉えていたかは、デッラ・ポルタによる
魔術師の系譜を見れば、ただちに了解される。彼によれば、ローマ人のいう「賢者」、ギリシア
人のいう「哲学者」、バビロニア人やアッシリア人のいう「占星術師」、ケルト人のいう「ドルイド僧」、
エジプト人のいう「司祭」、カバリストのいう「預言者」などは、みな魔術師の事である。
●魔術師が行なう魔術は、2種に大別された。
第一は、いかなる邪悪な勢力とも手を結ばず、「主イエス・キリスト」の名において術を行なう
「自然魔術(=白魔術)」。
第二は、悪魔に代表される「邪悪な霊」との契約によって獲得した魔力を用いる
「妖術(=黒魔術)」
である。
●自然魔術の原理
●自然魔術とは、神の被造世界の秘密を探り、天体や自然の諸力(たとえば光や磁力)、
動植物や鉱物、精霊、呪文、護符、数、音楽などを利用して、超自然的な作用を他に及ぼす
事を目的とした魔術の事を言う。
その原理は、「唯一なるものの奇跡を成就すべく、下なるものは上なるもののごとく、上なる
ものは下なるもののごとくある」(『エメラルド・タブレット』)という、ヘルメスの言葉に集約
される。上=天=大宇宙と、下=地=小宇宙(人間)は、互いに照応し合い、響き合って
いる。なぜなら、一切は「唯一なるもの(神)」から流出して発生したが、その際、より上位の
ものを一種の雛形として下位のものが出来たからである。下位のものの中には、上位のもの
の性質や姿の片鱗や影響などが宿っている。
●そこで、とられた方法の例として、
「下なるもの」の姿から「上なるもの」の影響を類推したり、「上なるもの」からよりよい
影響を得る為に、それと類縁する事物、たとえば守護惑星の宝石を身に付け、あるいは
特定のものを飲食し、また、「上なるもの」のうちでも悪い影響を及ぼすもの、たとえば土星や
火星のマイナスの影響などを避ける為に、それを打ち消す「下なるもの」を護符にしたり、薬石
を飲むなどがあった。
●博物学者としての白魔術師
●近世以前の白魔術師には、博物学者、自然学者としての能力が要求された。
なぜなら、「下なるもの」を知る事が、すなわち「上なるもの」を知る事に直結したからである。
それ故彼らは、(たとえ今日から見て、迷信まみれだったとしても、)動物学や鉱物学や本草学、
化学、薬学などを熱心に追求した。先に登場したフィチーノは、当代きってのヘルメス学者で
あり、プラトン学者だったが、同時に熱烈な魔術師でもあった。その彼が自らを「医者」と見なして
いたのは、医学と自然魔術が、本草学や薬学などを通して、この時代、共通の土壌で育った
からに他ならない。
●この博物学的知識と並んで、魔術師に要求されたのが、「上なるもの」に関する知識・学問だった。
「上なるもの」の知識とは、言うまでも無く、神や天使などに由来する知識を指す。具体的には、
占星術、形而上学(哲学)、数学、数秘術、幾何学、カバラ、秘教的聖書解釈学、音楽などであり、
これらによって、魔術師は「上なるもの」の性質やヒエラルキー、相互の影響関係などを類推し、
「下なるもの」と組み合わせた。
たとえば、フィチーノは、小熊座の影響を獲得すべく、磁石に熊の絵柄を彫り、それを首にぶらさげたが、
好ましくない土星と火星の影響した得られなかったので、中止したという。
(その様な馬鹿げたあらゆる可能性をも排除せず、真剣に実験により検証していたという)この
エピソードが、魔術師という仕事の(ある意味先駆的?)内容を物語っている。
●悪魔に奉仕する魔女
●この自然魔術は、おおむね教会からは黙認された。しかし、悪魔との契約によって成り立っていると
考えられた黒魔術は、そうは行かなかった。
黒魔術の主要なメンバーで、あらゆる病気や不運、災害などをもたらすと信じられた魔女は、悪魔の
奴隷となって悪魔に奉仕する者と考えられた。その魔力の源泉は、「魔女の膏薬(こうやく)」と
呼ばれる塗り薬にあった。
魔女はこれを全身に塗り込めて空を飛び、悪魔の夜宴(サバト)に出かけると信じられた。
記録に残された膏薬材料の分析から、研究家は、この膏薬には、催淫(さいいん)性と、幻覚性を
呼び起こす成分が含まれていただろうと推定している。現代でいうドラッグである。
こうした秘薬は、古代から魔術師にはおなじみだった。すでに2世紀の時点で、アプレイウスが
魔女の膏薬の効果を記している。
それによれば、膏薬を塗り込めた魔女は、まず手足を痙攣させ、ついで暫時、沈静する。
次に羽根が生え始め、鼻は固い嘴(くちばし)、爪は鉤爪(かぎづめ)に変化し、ついには
フクロウになるというのである。
●魔女への狂気としか言い様の無い弾圧は、中世から近世まで続いた。
多い日は、ひとつの都市で日に100人もの魔女が殺戮(さつりく)された。
かりに自分は魔女だと考える者が中に含まれていたとしても、それは例外でしかない。
実際には、魔女も魔女裁判も、それを編み出し、それによってさまざまな利益を得ていた教会と
裁判官と死刑執行人と拷問役人と魔女発見人らの、フィクションにすぎなかった。
「魔女裁判は、新発明の錬金術だ」という言葉が、その実態を雄弁に物語っている。
魔女が流す血は、たちまち金銀や宝石に形を変えて、教会や権力者を潤したからである。
●悪魔と魔女の契約の儀式
○魔女がいかにして悪魔と契約を結ぶかを、ミラノの修道士グアッツォが記している。
それによると、サバト(夜宴)に加入する魔女は、まず神とキリストへの信仰を否定し、洗礼の秘蹟を
否定して悪魔への忠誠を誓う。悪魔は鋭く尖った爪で、彼女の眉(まゆ)の上に、洗礼を無効にする
悪魔の印(しるし)をつけ、時には穢(けが)れた水で再洗礼をほどこす。
すべてのカトリック信者は、生まれた時に教会で洗礼名を付けられているから、これも否定の対象
になる。そこで悪魔は、自分の僕(しもべ)にふさわしい悪魔の洗礼名を新たに授け、その名を
「死書(黒書)」に記録する。これは、神の王国に入る者は、「生命の書」にその名が刻まれる、という
「ヨハネ黙示録」の記述を裏返すものである。
○悪魔の烙印を押されて魔女になった者は、悪魔にさまざまな奉仕をしなければならない。
そこで彼女らは、月に一度、あるいは2週間に一度、子供をくびり殺して、悪魔もしくは不浄な
魔物に捧げる事を誓うという。
●イエスの権威を用いた黒魔術師
●魔女は悪魔の奴隷と見なされたが、男性の黒魔術師は、悪魔に魂を売るかわりに、
生きている間は、魔族の主人となる契約を結び、彼らを使役する恐るべき妖術師と考えられた。
それだけに数は少ない。
魔女20人に対し、黒魔術師は1人の割合だと、16〜17世紀の英国国王ジェームス1世は書いている。
王ジェームス1世は、ジョン・ディーの庇護者として、また『悪魔学(デモノロジー)』の著者として知られ
た人物である。
自然魔術を行なう白魔術師の力の源泉は、イエスと、善霊(天使と善のダイモン)と、古代賢者の教え
だが、黒魔術のそれは、悪魔とその眷属(けんぞく=従者、一族)である。
それ故彼らは、魔法陣と呼ばれる結界をつくってその中に入り、悪魔を召喚(しょうかん)して契約を
結び、悪魔を使役すると信じられた。
●けれども、実際問題として、両者の区別は曖昧(あいまい)である。
黒魔術師も、悪魔を支配する際に、イエスの権威を用いた。そもそも、悪魔自体が、堕天使(だてんし)と
考えられていたし、さらに遡(さかのぼ)れば、悪魔は古代異教の血を濃密に受け継ぐダイモンや聖霊
の変種に他ならなかった。
●ところで、白魔術にも、ダイモンや聖霊にまつわる召喚(しょうかん)魔術がある。
両者の差異は、結局の所、教会の権威との折り合いのつけ方にあった。
実践の場で彼ら両者が行なおうとしていたのは、究極的には、秘められた精神の力の行使に他なら
なかったのである。
(MOMOの蛇足=とは言え、力の悪用、善用はあると思う。例えば人を呪い殺すとか、影の必殺仕事人
などという事は、たとえ教会が認めて白魔術としてなされても、本当の白魔術とは言えないだろう。
そうであれば、これから何が白魔術で、何が黒魔術かの新しい基準が必要という事になる。)
