

■偽装モブデムの可能性
JM-NETのモブデムは実現不可能であると「JM-NET定額IP携帯不可能論」にて結論を出した。しかしTTMはホーダイクンと称してアペル社アペルロムのラベルだけを貼り替えて出荷するという愚挙に出て自滅した。今後もJM-NET・TTMの両社がこのような、従来の説明のモブデムとは似て非なるモノをモブデムまたはホーダイクンと偽って出荷する可能性があると思われる。ここではそれを偽装モブデムと定義し、その正体を検証していく。
海外からコールバックすることで、携帯電話の通話料を安くするサービスがいくつも登場している。
まずはそのカラクリを説明する。
日本から某国に電話する場合の(B)の電話代より、某国から日本に電話する場合の(C)の電話代の方が安いことがあることはよく知られている。これはキャリア間の接続料が非対称であったり、経路によって料金が違うからである。
ちなみにコールバックという用語は、相手からこちらにかけ直させることを指す。正確な定義はこちら。
X氏がY氏に電話(A)をするケースを考えたとき、この電話代(A)よりも某国から日本への電話(C)2本分の方がまだ安い場合がある。
ならば、某国にいるZ氏から日本のXとY両氏を呼び出してもらって、Z氏経由でXとY両氏が通話したら安くあがる。これがコールバック格安電話のカラクリである。

具体的な仕組みとしては次のようになる。
発信側携帯電話機に装着された自動ダイヤラが某国のコールバック中継器に一旦国際電話をかけ、自分の電話番号などだけを通知し、すぐに切る。発番号通知が有効であれば、1コールで切る方法もあるだろう。(1)
コールバック中継器は直ちにかけ直しを行う。これがコールバック。(2)
この状態で“発信側電話機”から通話相手の電話番号をコールバック中継器に伝え、コールバック中継器は相手に着信をかける。(3)
相手が出たところで、コールバック中継器が(2)と(3)の回線を中継してあげると、めでたく通話が可能になる。(4)
この場合、(2)と(3)の従量制国際電話料金はコールバック事業者がキャリアに支払う形になるが、コールバック事業者は利用者にこの自動ダイヤラを売ることで料金を回収する。自動ダイヤラには個別のIDが振ってあり、どの自動ダイヤラがあと何分通話可能かをコールバック中継器側で管理している。
当然、このようなサービスは合法であるし、自動ダイヤラを差す手間を我慢すれば電話代が安く済むうまい方法である。
ただし、定額ではなくあくまで従量課金である。調べた限りでは、23円/分(一律)程度のようだ。

関係者からの情報によれば、偽装モブデムは携帯に差すと「00531xx…」というダイヤルに自動的にかけているとのことである。
総務省の資料によれば0051〜0059まではKDDIに割り当てられていて、その一部は国際フリーダイヤルになっている。(フリーダイヤルはNTTの登録商標なので、KDDIはそうは呼ばないはずだが、ちょっとごめんなさい。)
偽装モブデムなどを使わずに普通の携帯から実際にこの番号にかけてみると、「アペル通信でおつなぎします」という日本語のアナウンスが流れ、放っておくと数秒後に再び同じアナウンスが流れる。試しに適当な番号を入力して#を押すと「カード番号が違います」とはねられてしまう。(それはそうだろう)
アペルという名称から調べると、アペルロムというコールバック自動ダイヤラにたどり着く。
この偽装モブデムはアペル社に無断で、このアペルロムにTTMホーダイクンのロゴシールを上から貼っただけのモノだった。
事態の判明後、アペル社は不正利用されたアペルロムの回線をただちに停止した。
このアペルロムの仕組みを考察すると、最初にコールバック中継器を呼び出す部分だけを国際フリーダイヤルとし、そこで利用者の携帯電話番号なりID番号なりを通知した後に一旦切断し、コールバック中継器からの呼び出し(=コールバック)を待って着信する方式であり、これらの作業をこのアペルロムが自動的に実行するものと思われる。国際フリーダイヤルのまま通話するよりも、コールバックさせた方がコスト的には安くなるはずだ。また、この方式は発信側に対して通話に伴う課金は一切生じない。

これによって、一見モブデムっぽいものができたことになる。もちろん、本来の説明にあったモブデムとは全く異質のモノであるが、この偽装モブデムを使って月額4,500円の定額で電話し放題になるなら、利用者からすれば仕組みなどどうでもいいはずだ。
ところがどっこい、世の中そう甘くもない。
まず最初の問題は、利用者は定額なのにこの「国際フリーダイヤルを用いたコールバック接続」事業者がキャリアに支払う電話代は従量制である。従って、利用者があまり電話しなければ儲かるが、通話量が増えると赤字に転落する。
(ちなみにJM-NETは8/23、モブデムの定額料金を従来宣伝していた4,500円から6,300円(税込み)への値上げをアナウンスした。)
極めて単純化した試算では、国内で普通に携帯→携帯通話で6,000円相当の通話料を払っている人は、月に約2.5時間の電話をしていることになる。この人がアペルロムを使うと、同じ料金で月に約3.6時間の通話が出来るようになる。
偽装モブデムの利用者が、月に3.6時間というような時間内に通話量を留めてくれれば問題はないが、これを超えると赤字になる。6,000円定額のモブデムを買いたい人は、電話代に困っている人だろうから楽観は出来ない。例えば、月に10,000円の通話料を払っている人は月に約4.2時間の電話をしているだろうから、このラインを超えてしまう。
…というように、断言はできないものの赤字転落の危険が高い事業である。赤字事業はいつまでも続くはずはない。
今回のTTM事件ではTTMが無断でアペルロムを不正使用していたので、上記の赤字は全てTTMまたはJM-NETがかぶることになる。
では、これを絶対に赤字にならないような仕組みにすることはできるか?
答えのひとつとしては、集線率を上げれば可能、である。
集線率とは1の回線資源を何人で共用するかを指す用語で、集線率1/10なら10人に対して1本の割合で回線を用意してあることを意味する。

某国に設置する折り返し中継器には現地のキャリアから何本もの加入者回線を引き込んでおく必要がある。利用者は折り返し中継器を経由して通話するので、1通話が往復2本の加入者回線を占有する。日本にいる偽装モブデム利用者数の2倍の加入者回線を折り返し中継器に引き込めば、折り返し中継器は絶対に輻輳せず、偽装モブデム利用者全員が同時に誰かと通話することが可能である。
しかし、全員が同時に、というところまで準備するのはいささかやりすぎである。では、どこまで減らせるか? ここがひとつの鍵になる。集線率は低くすればコストがかかるし、高くすれば利用者から不満が出る。
折り返し中継器の運用コストの支配項は、日本との通話にて生じる電話代であると予測できる。ラフな試算では、常に回線が使われているとした場合(これが最悪ケース)、1往復回線あたり最大で月に120万円程度ではないかと思われる。これは、アペルロムの通話料から概算した。
ということは、月額6,000円の利用料でこれを賄うならば、1往復回線あたり約200人の利用者を収容すればだいたいコストの逆ざやは避けられそうだということになる。つまり、集線率1/200である。
次は、この集線率1/200という数字が利用者から見て不満がない数字かどうか、である。
ひと月の1/200の時間とは、約3.6時間である。つまり、平均的には1利用者あたり3.6時間/月の通話時間を付与されたことになる。もちろん、この試算は深夜の時間帯まで含めて24時間/日で計算している。
カラクリがおわかりになっただろうか?
赤字を避けようとして集線率を上げると、折り返し中継器の回線が「話中」になる確率が高くなり平均的には定額・話し放題のサービスを受けられなくなるのである。
中には、リダイヤルしまくって十分に元を取る利用者も出るかも知れないが、そのしわよせは他の利用者に及ぶ。
本質的にどこにも新たなコスト削減が無いのだから、これは当たり前の話である。
これを、「定額・話し放題」と称してサービスをするならば相当な誇大広告である、と釘を刺しておくことにする。
なお、上記の試算はかなりラフなものなので、数字の精度についてはあまり期待されないようにお願いする。
つまり結論としては、きちんと定額・話し放題を達成しようとすれば赤字に転落する危険が高く、赤字を避けようとすれば実効的にはサービスを提供できず誇大広告になる、ということである。
■偽装モブデムの判別方法
前章で、国際フリーダイヤルによる海外経由接続を用いた偽装モブデムの可能性とその矛盾を指摘した。
となると、次はその判別方法である。
方法は多々考えられると思うが、ひとつの例として参考にしていただきたい。
●前提となる考え方
モブデムは音声を圧縮しデータとして送る装置であるのだから、携帯電話機としては電話はしていないように見えるはずである。
●実験
“モブデム”が海外折り返し自動ダイヤルアダプタなら、差しただけ(またはその後にアダプタのスイッチオン)で勝手にどこかにダイヤルするはず。通常はそこから相手の電話番号を入力するが、それはせずにここで電話を切る。
次に、“モブデム”を抜いてから携帯電話の発信履歴を表示させ、今、自動ダイヤルアダプタがダイヤルした番号を書き留める。
上記で書き留めた番号がどこかのフリーダイヤル番号であることが判明すれば、偽装であることが確定。すなわち、データ通信ではなく単に電話していただけであることが証明できたからである。
あるいは、書き留めた番号がフリーダイヤルではなかったとしても、同じ番号に“モブデム”を使わずに電話してみて、つながったら笑ってあげましょう。いや、怒るべきか。
さらにその時、かけた先から折り返し電話がかかってきて「会員コードを入力してください」などというような自動アナウンスが流れたら、もう怒る気にもならないでしょう。。。
●他の方法
他社の既存のコールバック自動ダイヤルアダプタの説明によれば、相手との通話が確立したら(通話中に)アダプタのスイッチを切って携帯から抜いても構わない、とある。コールバック中継器の電話番号を自動的にダイヤルするのが主な機能なのだから、当然である。
それに対して、“本物のモブデム”は音声を独自に圧縮して送信する機能があるのだから、通話中に抜いたら切れてしまうはずだ。
偽装モブデムを入手された方は、是非通話中に抜いてみてください。:-)
他にもっといい判別方法があるよとか、8/25以降に実際に試した結果などがあればこちらの定額IP携帯掲示板にでも書き込みをお願いします。
2003.8.27 by tama.