電流帰還型65Wパワーアンプの製作

前回製作したパワーアンプは、音に不満があったわけではありませんが、その後試してみたい 案件がそこそこたまってきましたので、マイペースで断続的でしたが取り組んでみました。

今回トライした項目は以下のようなものです。

・電流帰還型アンプの初段バッファをTrによるダイアモンドバッファにしてみる。
2SA872A/2SC1775Aで試してみることにしました。

・出力をアップする。
2SA872A/2SC1775Aは前回使用したFET(2SK170/2SJ74)よりも 耐圧が高いようなので、ついでに出力もUPしてみることにしました。

・電源部とアンプ部を再び一体にする。
前回はノイズやトランスのうなりに悩まされて別体にしましたが、なんとか 一体にできないか、挑戦してみました。

・入力ATTにSinotecさんアイデアを導入
以前私もATTをいじった時期がありましたが、このアイデアは簡単そうで効果も高そうに思いましたので、 試させていただくことにしました。

・回路図、基板製作CADとしてEAGLEを使用。
今まで使用していたWinDraft/WinBoardは、今のサポート状況等がわかりにくくなたため、他のものを さがしていたら、EAGLEというものがよさそうだったので、 使ってみることにしました。


アンプ回路

回路図無しですみません。
基本的には初段をFET(2SK170/2SJ74)2個のシンプルなバッファから、Tr(2SA872A/2SC1775A)4個に よるダイアモンドバッファに変更しただけです。あと電源電圧を上げたくらい。出力段も前回と同じ2SK2221/2SJ352です。
ただし、いつまでたっても勉強不足、経験不足の私のやることですから、そうすんなりはいきませんでした。
試作基板を作って動かしてみると、DCオフセットが数百mVの範囲でフラフラしてしまいました(息を吹きかけたりしたとき)。 スピーカにつないでもコーンがゆらゆらしたりということはないし、音も問題なく鳴っているのですが、今まで作ったものの中では ふらつきが大きい方でしたので、何とかしなければ、と思いました。
この試作基板では、ダイアモンドバッファを構成するTrにそれぞれ2mA位ずつ電流が流れるように定数を決めていたのですが、 PSpiceのシミュレーションにかけてみると確かにそのままでは結構温度変化によるDC変動が大きいと出ました。
で、ためしに先達のNobさん回路 の定数でPSpiceのシミュレーションをかけるとぜんぜんこちらの方がDC変動が小さいことがわかりました。
一体これはなぜか?データシートの数字やグラフをじっくり検証していけば何かわかるのかもしれませんが、 不精の私は安直にこちらの定数に近い値でよさげな値をシミュレーションで割り出して使うことにしました。

電源回路

今回も左/右、出力段/電圧増幅段、の電源を分けています。ただし、これも前作と同じですが、各々の上下は1組のブリッジダイオードで整流したものを 使っていますので、ここの独立性は高くないと思います。
今回実際に使用したトランスのはノグチのPM3001WとPM242Wを各2個ずつ、ダイオードは前回と同じFCH/FRH10A15、 FCH/FRH20A15です。
あと、今回は、電圧増幅段の電源ではリップルフィルタコンデンサの前に100Ωの抵抗を挿入してノイズの低減を狙っています。 電源部とアンプ部を一体にするため何かやった方がよいだろうと思ったためです。
今回も大型ブロックコンデンサは使用せず基板実装型のKMGをパラって使います。その方が安いのと背が低くすむからで、あまり 考えてはいません。

EAGLE

以前WinDraft/WinBoardを使用したときも、電子工作の実験室 にとても親切な解説があって初心者の私でも何とか使うことができましたが、今回EAGLEでも 趣味の電子工作という これまた親切丁寧なページがあって大変助かりました。
使ってみた感想としては、EAGLEの方が部品ライブラリと回路図と基板の関係がより直接的でわかりやすい感じがしました。 ただ、いろいろ試行錯誤をしながらの慣れというものは必要です。

基板作製

EAGLEで作製した基板パターンを透明シートに印刷し、感光基板に焼き付け、現像、エッチングとなるわけですが、 私は今までは、この焼き付け作業に、普通の蛍光灯スタンドを使用していました。
しかし、今回試作基板を起こしたり、本番基板を起こす過程で、何度も焼き付けに失敗してしまいました(10枚くらい)。
失敗の理由は、せっかちな私が、早く焼きたいがために、スタンドを近づけすぎ、焼きすぎたり、焼きムラが生じたためなのですが、 あまりに失敗しすぎてムカーッとなって、 ついに ちびライトを導入してしまいました。
今回導入してからは何とか修正可能な範囲で製作できましたが、これがあるからといって100%うまくいくとは限らないというの が「なんだかなー」な作業です。

ケースとレイアウト

ケースとレイアウトを考えているうちに、前々回のパワーアンプでやったように、放熱器を 背面に持ってくれば奥行きが少なくすみ、しかもノイズの少ないレイアウトになるのではと思い、その線で考えることにしました。
この前々回のパワーアンプではノイズに悩まされた記憶が無いのです。ボリュームを仕切り板に付けて背面側に寄せることで、アンプ部は 背面部、電源部は前面部、と分けられており、これがノイズ的に有利に働いているのだと思います。
ということで今回の検討を進めたところ、サイズ的には横幅は400mmくらい、奥行きは150mmもあればOKそう、トランスの高さは 76mmということで、2Uのラックケースに入れることにしました。ボリュームは仕切り板でなくアングルで背面側に取り付けますが、 ノイズの点で仕切り板が必要そうなら入れることも考慮しておきます。
2Uのラックケースはタカチの奥行き160mmにしようかと思いましたが、安いものを探していたら、 奥澤に奥行き150mmというのが あることを知りました。構造や強度が心配でしたが、値段も安いのでこれにすることにしました。

危険な?放熱設計

すみません。今までは放熱器を、このくらいの大きさがあれば大丈夫だろうと、根拠なく適当に選んでいたのですが、 今回は一応計算してみることにしました。
今回最大出力65Wとすると2SK2221、2SJ352それぞれの発熱は65Wの1/5の約13Wなので2個を1つの 放熱器につける場合26Wの発熱、周囲温度50℃として
全熱抵抗θja=(Tj-Ta)/Pc=(150-50)/26=3.8
(Tj:パワーデバイスの接合温度、Ta:放熱器の周囲温度)
パワーデバイスの熱抵抗θi=(Tj-Tc)/Pd=(150-25)/100=1.25℃/W
(Pd:Tc=25℃におけるパワーデバイスの許容ドレイン損失)
放熱シリコンシートの熱抵抗θm=1℃/W、放熱器の熱抵抗θrとすると、
θja=θi+θm+θr
よってθr=3.8-1.25-1=1.55℃/W以下の熱抵抗の放熱器を使う必要があるようです(計算が合っていれば)。
ですが、今回私が選んだ放熱器は、LSIクーラー社製30F138のL=70というものです。
これの熱抵抗は、L=50で2.3℃/W、L=100で1.5℃/Wということのようですので、L=70では2.0℃/W 位になりそうです。
「ダメじゃん!」ということになるのですが、今回サイズやケースへのレイアウトの都合で無理を承知でこれを使うことにします。
不安は不安ですが以下のような楽観的な見方はできなくもないように思います。
・フルパワー正弦波の連続動作ではNGだが、実際の音楽ではまだ大丈夫ではないか?
・そもそもフルパワーで使うことはまず無い(だったらVccから下げるべきかもしれないが・・・)。
・放熱器をケース裏板(アルミ1.4mm厚)に広い面積で接触させるので、もう少し熱抵抗は下がるのでは?
・放熱シリコンシートの熱抵抗は、実は1℃/Wもなくて、0.55℃/Wくらいだったりしないか? (これはメーカのHPを調べてもズバリが書いていなくて不明です。0.7℃/Wくらいの期待はできそうなのですが・・・)
もちろんこのような使い方は他の人には絶対勧めません。実際どうなるかはフルパワーテスト(長時間連続)を してみればわかると思います。


製作と動作

で、こんな感じとなりました。

ケースの天板と底板の、放熱用の穴の位置を思い切り間違えていることがよくわかります(後列の穴がふさがっている)。 天底板だけ取り寄せて作り直そうかと思ったのですが、面倒くさいのでたぶんずっとこのままです。
今回最新兵器として、ステップドリルと面取りカッターを導入。これは便利。ただし、ハンドの電動ドリルに取り付けて 使用しているので精度はいまいち。次回は絶対ボール盤を導入しようと思っています。

ステップドリル
面取りカッター

ということで、新兵器を導入したとはいえいろいろあって結局今回も難儀した穴あけ作業だったのですが、アンプ工作的に 一番楽しいのは、この後の、ジャック等の機構部品類を、穴あけの済んだケースに取り付けるところではないでしょうか? 少なくとも今回の私はそうでした。その後の配線作業ではまた少し憂鬱になります。

製作としては、仮組のときに入力ジャックの信号側とグランド側を間違えてハムが出て驚いたことがありましたが、その他は 石を飛ばすこともなく割りとすんなり行きました。
心配していた放熱ですが、自宅での実使用環境、音量では、アイドリング電流が少ない(100mA以下)こともあって、 ほとんど熱くならず、温かくもならない感じです。フルパワーテストはまだ怖くてしてません。

DCドリフトですが、数mV以内とは行きませんで、数十mVという感じです。 変則的なATTの使い方のため、ATTで6dB減衰する分をアンプのゲインを倍にして取り返したりしていますので、 たぶんその関係もあるのでしょう。
まだ多いとは思いますが、DCサーボに挑戦したりする気力は無いのでとりあえずこのまま目をつぶろうと思います。

電源部とアンプ部一体型ということでノイズが心配でしたが、とりあえずスピーカ 「唐傘」からはノイズは聞こえず一安心でした。「大仏ES」のような 高能率スピーカだったらどうだったかはわかりません。もしノイズが出たら、トランスに銅箔を巻いたり、 建築用の鉄板を仕切り板としてトランスとアンプ基板の間に挟んだりしてみるつもりでしたが、とりあえずその必要はなさそうです。

この2Uラックケースですが、確かに強度は十分とは言えず、大きいトランスが載るような用途には向かないと思います。 表板の裏側で、天板、底板を固定する部分がなく、そこを押すと数mm凹みます。しかし、持ち運び等ハードな使い方を しなければまあ大丈夫でしょうということでこのまま使用します。トランスはうなっていますが、このケースの適度な軟弱性? のおかげで振動が吸収されるためか、近づかないとそれに気がつきません。
私としては、150mm(放熱器等を除く)という薄型に収まって安かったのでとりあえず気に入っています。

測定と試聴

方形波応答ですが、こんな感じです。若干うねうねがあり、何か残っている感じですが、これだけをきれいにとる方法は いまの私の実力ではわかりません。
10kHz方形波10Ω
10kHz方形波10Ω+0.1uF

音は前回のパワーアンプと比べて、安定感が増し、より彫りが深くなった感じです。
Sinotecさん方式のATTは ヘッドフォンアンプでも試しましたが、確かに彫りが深く、くっきりした音になりました。すばらしい!!
ダイアモンドバッファに変え、パワーを上げた効果は、音質的な安定感が向上し、とがった感じは減りその代わりに彫りが深 くなった、ということに現れているように思います。
というわけで、またメインのアンプが入れ替わりました。


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