アシモフ入門
―アシモフについて簡単に―

このページはアシモフ初心者の方を想定していますので、基本的事項に限定しています。紹介している著作も代表的なものだけです。

目次(リンク下線が出ている箇所は記載済み項目です。クリックするとジャンプします。)

1. 略歴
2. 名前の読み方及び日本語表記
3. 著作
(1)SF
 ・ロボット工学3原則
 ・初期ロボット短編集
 ・ベイリ&ダニールシリーズ
 ・ファウンデーションシリーズ
 ・未来史
 ・未来史を読む順番
(2)ミステリ
 ・黒後家蜘蛛の会

1.略歴
アイザック・アシモフ(Isaac Asimov)、1920年生まれ1992年没。
ロシア系アメリカ人。幼い頃アメリカに両親と移住し、ニューヨークのブルックリンで育ちました。学生時代からSFを書き始め、本業の生化学の傍らSFを中心に数々の作品を発表しています。一時期SFの執筆からは離れ、自然科学や多方面の入門書等を書いていた時期もありますが80年代にSFに復帰、その後も死の間際まで数々の作品を発表。SFの黎明期から常にSF界の三大巨匠の一人とされてきました(あとの二人はハインラインとクラーク)。博識で知られ、軽妙な雑文(言葉は悪いですが)でも人気が高いです。

2.名前の読み方及び日本語表記
“Asimov”についてはカタカナでは「アシモフ」と「アジモフ」の二種類の表記がなされています。
アシモフ本人によるとこの発音は”has him of”の”h”を抜いた音ということなので、どちらかといえば「アジモフ」の方が近いのでしょうが、近いなんてことを言い出してしまえばこの音をカタカナで表すのだったら「アズィモフ」の方が近いんじゃないのという気もしますし。ロシア語読みだとアシモフに近いらしいので、ならロシア語読みということでいいじゃないかとも思いましたが、「アイザック」という読みが既に英語読みらしいので(ロシア語読みでは「イサーク」のようになるようです)、苗字だけロシア語読みというのも変ですよね。
というわけで考え出すと難しいですけど、日本では広く「アシモフ」で定着していると思うので当サイトでは「アシモフ」で統一します。

※この読みですが、実際にはロシアでも「アジモフ」に近い読みがなされているようです。 「正確にはАйзек Азимов“アイズェーク・アズィモーフ”です。」という情報をいただきました。この方の実体験によるとロシアの本屋で「イサーク・アシモフの本ある?」と訊いたら「ない」と言われ、「アイズェーク・アズィモーフのこと?」と訊き返されたそうです。(2006.8.3)
3. 著作
アシモフは非常に多作な作家で生涯に500冊にも及ぶ本を執筆しています。日本で翻訳されているものは限られていますが、それでも相当なもの。SFはハヤカワ文庫及び創元SF文庫、ミステリは創元推理文庫が中心です。
その他、自然科学エッセイ、自伝、雑学コレクション等数多く出ていたものですが、最近は絶版も多く、みかけなくなったものもたくさんあります。
というわけで今からアシモフを読もうとお考えの方、お早めに入手された方がいいです(と宣伝)。

(1) SF
アシモフは広い分野で活躍したとはいえ、やはりまずアシモフと聞いて浮かぶのはSFでしょう。

・ロボット工学三原則
アシモフの名をSF外の世界にも知らしめたかの「ロボット三原則」はアシモフのキャリアの初期、ロボット短編を書いていた頃に既に確立しています。実際には編集者との共同作業の部分もあるようですが、一般にアシモフのロボット三原則として知られています。
ロボット(工学)三原則とは、
第1条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。(A robot may not harm a human being, or, through inaction, allow a human being to come to harm.)
第2条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。(A robot must obey the orders given to it by the human beings, except where such orders would conflict with the First Law.)
第3条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。(A robot must protect its own existence, as long as such protection does not conflict the First or Second Law.)
というものです。

・初期ロボット短編集
アシモフのロボット短編(及び後述のロボット長編も)は、上述ロボット三原則を前提としながら何らかの想定外の出来事が発生し、人間がそれを論理的に解決していくという作りのものが多いです。
人型でないロボット、しゃべれないロボット、メタル製ロボット、人間と外見的には全く同じヒューマンフォームロボット、人間に尽くすロボット、人間に対して脅威となるロボット……。さまざまなロボットが登場します。そして人間の係わり方もいろいろです。ロボットを恐れる人間、ロボットに友情を感じる人間、ロボットを人間扱いする人間etc.
シリーズとして著名なのはロボ(ット)心理学者であるスーザン・キャルヴィン博士が探偵役を務める連作短編で、私もこれはお勧め。特に「お気に召すことうけあい」「証拠」「迷子のロボット」あたりがイチオシです。
アシモフのロボットものをコンプリートするのならその名の通り「コンプリート・ロボット」というアシモフのロボット短編・中篇を1冊にまとめた素晴らしい本がソニーマガジンズから2004年に出ていますが、これは巨大かつ高額な上に既に入手が難しいです。入手しやすい(物理的にも経済的にも)という意味ではハヤカワ文庫「われはロボット」「ロボットの時代」、創元SF文庫「わたしはロボット」あたりからというのがいいと思います。但し文庫版だけでは全ての話は網羅できません。

※実は「コンプリート・ロボット」でもロボットものは全てというわけにはいきません。「コンプリート」のくせにコンプリートではないっていうのはどういうこと、と言いたくもなりますけれど、ロボットものというのをどう定義するか(陽電子頭脳人間型以外のAIも含むのかとか)にもよるとは思いますが、そもそもこれは日本でこそ2004年の発売であるものの、本国で最初に出版されたのは1982年だった模様です。アシモフは92年まで存命だったわけですからその後書かれたものは入っていなくて不思議はないわけですね。 コンプリートというには何篇欠けているのか分かりませんが、少なくともスーザン・キャルヴィンものが1作欠けていることは判明しました。1986年に書かれたらしいので上述事情からすると仕方ないのでしょう。
ハヤカワ文庫で出ている「われはロボット〔決定版〕」の解説ページに素晴らしい一覧がついているのでこれと照らし合わせればもう少し詳細が分かるかもしれません(がそこまでやってません)。(2006.8.3)
上述キャルヴィン博士というのは映画「アイ、ロボット」にその名前と設定が出てきていますが、小説とはかなり別人です。このアシモフの原作キャルヴィン、言いたい放題で相手が可哀想になりつつも痛快です。
アシモフのロボットもの映画といえば他に「アンドリューNDR114」があります。これはアシモフの「バイセンテニアル・マン」をもとにしています。(この「バイセンテニアル・マン」は中篇ですが、後にシルヴァーバーグという別のSF作家が「アンドリューNDR114」というタイトルで長編化しており、日本では創元SF文庫から出ています。)このバイセンテニアル・マンは70年代に書かれているので、アシモフ「初期」ロボット作品とはいえませんが、アシモフ自身がもっとも気に入っており、これを越える話は書けそうにないからもうロボットものは書かないと言っていたほどの話です。

・ベイリ&ダニールシリーズ
このサイトの中心でもある管理人イチオシのシリーズ♪
これは是非読んでください、と言うしかないのですが、簡単に紹介してみます。 なお、この「ベイリ&ダニールシリーズ」というのは公式な(?)シリーズ名ではありません。

「ベイリ&ダニールシリーズ三部作」
タイトル
内容
「鋼鉄都市」
「はだかの太陽」
「夜明けのロボット」
(いずれもハヤカワ文庫)
未来の地球において地球人は過剰な人口を支えるためにドーム状のシティと呼ばれる空間内で一種の共産主義的社会を営み、ぎりぎりの生活をしている。反面かつて地球から出ていった人々の子孫は自らをスペーサー(宇宙人)と名乗り、ロボットと豊かな経済に支えられた贅沢な生活を満喫している。
ニューヨーク市警の私服刑事イライジャ・ベイリは地球でのスペーサー殺害事件の捜査を皮切りに、スペーサーから割り振られたパートナーであるところのヒューマンフォームロボット、R.ダニール・オリヴォーと共にスペーサー絡みの事件を解決していく。

「鋼鉄都市」「はだかの太陽」は文庫各1冊、「夜明けのロボット」にしても上下巻の2冊と決して多いとはいえない分量ながら見所満載です。息詰まるような未来都市、人とロボットとの関係、人類の未来。
SFミステリとして評価が高いだけのことはあり、SFとしてもミステリとしても文句のつけようのない出来です。とにかくこれは読んでみてください。私自身はこのサイトではこの主人公である地球人私服刑事イライジャ・ベイリとヒューマンフォームロボットダニール・オリヴォーのファンサイトという形を取っていますが、アシモフの原作はキャラ萌え話ということではなく、アイデア、ストーリー、設定、リーダビリティ、構成、もちろんキャラクターも、何を取っても一級品の名作です。
なお、読むときは必ず順番に読むことをお勧めします

「ベイリ&ダニールシリーズ続編」
タイトル
内容
「ロボットと帝国」
(ハヤカワ文庫)
「夜明けのロボット」から200年が経過しています。人類はどのような未来を作っていくのか、そして人間に仕える存在として作られたロボットはそこでどのような役割を果たすべきなのか。前3作に出てきたダニール・オリヴォーと思い出のベイリを中心に他のロボットとスペーサーが地球人植民者と共にスペーサーワールドの一つで生じた謎に巻き込まれていきます。

アシモフのもう一つの代表作であるファウンデーションシリーズとの架け橋となる重要な作品です。アシモフが構築したロボット3原則をアシモフ自身が昇華させていく過程は体が震えるほどの面白さです。更にこの本のラストシーンは必ず心に残ることでしょう。

閑話休題:「ヨシャパテ!」について
当サイトのサイト名である「ヨシャパテ!」は、ベイリの口癖からきています。ベイリは何か驚いたときなどに”Jehoshaphat!”という間投詞を発し、これは翻訳では「ヨシャパテ」というルビを振られながら「なんてこった」などと訳されています。
現代英語でもこういう場面で”Jesus!” “Oh, my God!”なんて言ったりしますが、それと同様の言葉を持ってくることによって間投詞であることをあきらかにしつつ、普通使われない言葉を使うことによって異世界風味とベイリの個性を出したというところなのでしょうか?
なお、このヨシャパテ、一般にはユダヤのヨシャパテ王という旧約聖書に出てくる人物の名前として知られているようですがこのヨシャパテという言葉自体の意味は神の裁き(ヤハウェの審判)という意味だそうです。「鋼鉄都市」でベイリがダニールに語る聖書中のエピソードである、姦淫した女への石打ちの刑にあたりイエスが「罪無き者から打ちなさい」と言ったという話、そしてここから最後にダニールが口にする台詞、このあたりを考えてみるとこのヨシャパテというベイリの口癖との間に何か響き会うものが感じられる気もします。ただし、別にこの話もシリーズも宗教的な話ではないのでそういうモチーフに抵抗がある方もご安心を。アシモフは無宗教・無神論者でした。
ところで当サイトのサイト名がカタカナ書きなのは、この単語の複雑なスペルのためです。こんなスペルでは読めない書けないという、サイトタイトルとしては致命的な弱みになってしまうので間が抜けて見えるよなと思いつつカタカナ書きにしています。まあ元がヘブライ語だかギリシャ語だかから来ているのでしょうけど、あまりにもこのスペルと読み方は乖離しすぎでは……。(もっとも英語読みをする場合スペルに近い発音もされるようです。)

 ・ファウンデーションシリーズ
「ファウンデーション初期三部作」1〜3
タイトル
内容
「ファウンデーション」
「ファウンデーション対帝国」
「第二ファウンデーション」 (いずれもハヤカワ文庫)
創元SF文庫から「銀河帝国の興亡1〜3」として出たものもあるが、以後の作品の翻訳との統一性を考えると早川版にしておくのが無難かも。
遠い未来、人類が築いた銀河帝国は繁栄し栄華の絶頂を極めている。だが頂点に達してしまったということは次は下降線を辿ることになるということ。人類がこの先暗黒時代に突入することは避けられないが、その期間を短縮して文明を出来る限り守ることはできるはず。そのために開始された心理歴史学の祖ハリ・セルダンの悠久のプランは銀河帝国の行く末を予言し導くことが出来るのか。

アシモフの名前を不朽のものとせしめた代表的傑作。
古くからのSFファンがファウンデーションというときには単にこの初期三部作を指すこともあり、またこの3部作とこれ以降の話は別物という声も聞きます。
ただ個人的には(最初に読んだのが子供の頃だったせいもあるかもしれませんが)時間の経過の早さ(前半は各話ごとに時代が数十年経ってしまっているので主人公も変わっており、話についていきにくい)が馴染みにくかった覚えがあります。話の規模や発想、それぞれの話の捻り、大人になって読むとやっぱり凄いなと思うのですけど。読みやすさでいえば断然4巻以降の方が上だと思います。
(なので1を覗いて「なんか読みにくそう、合わないかも〜」と思ってもそこで諦めてしまわないでください)

4、5
タイトル
内容
「ファウンデーションの彼方へ」
「ファウンデーションと地球」
(いずれもハヤカワ文庫)
1〜3の続きとなっています。時代は更に進み、セルダン・プランが始まってから500年が経過。順調そうに見えるプランは本当に順調なのか。疑問を持ったトレヴィスは事の背後関係を調べるために仲間と伝説の惑星にして人類発祥の地、地球を探して旅立つ。


初期3部作から30年も経っての発表だというのに、すんなりと世界に入りこませ、かつ現実の世界で進歩した技術をさりげなく織り込み、初期3部作とはまた違った面白さを描き出しているアシモフの筆に運びには脱帽します。
そしてよく未来史としてまとめたと思います。「ファウンデーションと地球」のラストは凄いです。

6、7
タイトル
内容
「ファウンデーションへの序曲」
「ファウンデーションの誕生」
(いずれもハヤカワ文庫)
セルダン・プランとファウンデーションの設立者にして心理歴史学の祖であるハリ・セルダン。「ファウンデーション」では既にこれらを達成した時点での老人として描かれているセルダンだが、彼はどのようにしてこれらの業績を成し遂げたのか。ファウンデーション前史といえる作品。

執筆順でいくとこれがシリーズの最後ですが、作品内時系列ではこれはシリーズ1「ファウンデーション」の前に当たります。
なので、5を読んでからこの2作を読むと時間が巻き戻り、外伝でも読んでいるような気分になりますが、好きな登場人物にまた会えるのはそれだけで嬉しいものです。話も読みやすくスピーディーに展開します。

 ・未来史
アシモフのSF活動前半とでもいうべき1950年代までにもともとは別個のシリーズとして書かれたロボットシリーズとファウンデーション、その他短編中編長編の数々。
ですがなんと四半世紀も経ってSFに復帰した(この間の期間もSF以外は大量に書いていましたし、SFも全然書いていなかったわけではありませんが)アシモフは、自分が書いてきたこれらの話を1つの大きな未来史に統合することを決め、それまでの話をつなぎあわせるための作品を発表し、1992年に帰らぬ人となるまでにほぼその構想どおりの世界を書ききりました。これを広くアシモフの「未来史」と言っています。ただ、ほとんどのロボットシリーズとファウンデーション、それにいくつかの長編はこの未来史に整合しますが、どうしても含まれないものや収まりきらなかったものもあり。どの作品までを未来史と呼ぶかはあまり一定していなかったりもします。

 ・未来史を読む順番
ロボットシリーズとファウンデーション初期3部作はどちらを先に読んでも、あるいは混ぜこぜで読んでも構わないと思います。ですが、この元来別々だったシリーズをまとめあげるために書かれた「ロボットと帝国」「ファウンデーションの彼方へ」「ファウンデーションと地球」「ファウンデーションへの序曲」「ファウンデーションの誕生」については読み方が難しいところです(なお厳密にはベイリ&ダニールの第3作も未来史を作り上げるための1冊ではあるのですが、これはベイリ&ダニールの1部として読むのがすっきりします)。
つまり、ポイントは「ファウンデーション」シリーズとしては6,7に当たる「序曲」と「誕生」が、作品内時系列としてはファウンデーションシリーズの最初にあたるということで、では「1→2→3→4→5→6→7」と執筆順で読むのがいいのか、「6→7→1→2→3→4→5」と作品内時系列で読むのがいいのか、ということになります。

やはりですねえ、作品の完成度としては執筆順で読んだ方がいい気がするのです。シリーズのクライマックスでの感動度合いはその方が大きいのではないかと。
ただその場合、ファウンデーションシリーズとしては初期三部作を最初に読むことになります。これが万人にお勧めできる話ではないのですよ。SFファンの中ではおそらくこれをアシモフの代表作とする人も多いのではないかと思われる名作ですし、確かに面白い。でも舞台立てが遠い未来で星間交通が当たり前の銀河帝国が築かれているというものなので、SF慣れしていない人だと入り込みにくいかも。また特に前半は1話1話の独立度が高いので、キャラやストーリーの勢いで読むのには向かない気がします。半世紀以上も前に書かれた未来世界なので既に古いんじゃないのみたいなことも書かれていて、フィクションはフィクションとして割り切って楽しめないとひっかかるところもあるかもしれないですし。
なので、ファウンデーションの1巻がちょっと読みにくいかも……と思った人は作品内時系列に添って、つまり「ファウンデーションへの序曲」から読むのがいいかもしれません。初期3部作から四半世紀も経って書いただけのことはあり(?)リーダビリティは格段に向上、思わず一気に読んでしまうことは間違いありません。ただ少々ネタバレ気味になってしまうので5巻の感動が薄れるかもしれません。あと、この順番で読む場合7巻の後書きはシリーズ全体のネタバレになっているので読まないことをお勧めします。とはいえ6,7から来るとその勢いでやや古く感じられる1〜3も一気に読めると思います。

なお、私は執筆順で読んでいます。なので5作目にあたる「ファウンデーションと地球」では鳥肌が立つほど感動しましたけれど、6,7はやや外伝的気分になってしまったかな。

(2)ミステリ
アシモフはミステリも数々書いており、日本でも創元推理文庫を中心に翻訳が出されています。ミステリも書いており、というかSFであってもミステリ仕立てであったりするわけで、アシモフは謎の提示とその解決という基本路線に忠実かつ優れていたということなのでしょうけれど。

 ・黒後家蜘蛛の会
アシモフの人気ミステリ連作短編集シリーズ。日本では創元推理文庫で1〜5までが出ており、6については当サイト内で事情を語っています。(→「黒後家蜘蛛の会」
ニューヨーク・マンハッタンの架空のレストランにおいて毎月開催される女人禁制ディナー、出席者は6人の会員と1人のゲスト。なぜか彼らが話をしていると解明のつかない謎が話題になり、ああでもないこうでもないと議論が白熱します。しかし解決が見つからず皆頭を抱え、お手上げ状態となったときに聞こえてくるのはテーブルで給仕にあたっていたヘンリーの「一言よろしゅうございますか、皆様」……そして謎は解明されるのです。
安楽椅子探偵(といっても探偵役のヘンリーは働いていますけど)の名作。実はミステリとしては大掛かりなものはほとんどなく、どちらかというと会話や雰囲気を楽しむ話ながら根強いファンが多いシリーズです。陰惨な殺人や暴力といったものがほとんどないのも安心して読めるポイントです。


最後に一言
アシモフの生涯、著作リスト、未来史研究、登場人物辞典等はネット上でもいろいろ調べることが出来ます。
ですがやはり一番の魅力は実際に彼が書いたものを読んでみてこそだと思います。絶版になってしまっているものやそもそも未訳のものも多いので読めるものは限られてはいますが、是非アシモフを読んで、彼の作り出した世界に浸る楽しさを心行くまで味わって下さい。
そうそう、上述の長いシリーズは置いておいてとりあえず1冊……というなら、「宇宙の小石」がお勧めです。この「宇宙の小石」は遠い未来にタイム・スリップしてしまう老人(←この「老人」という設定が面白い)の話で、人間いつ何があるか分からないけれど道は自分で切り開くもの、そして年取るのも悪いことじゃないなと思わせてくれ、しっかりSFを楽しみながらふっと心が軽くなるお話です。


(2006/3/6〜3/29)