ピチモ物語-D








第一志望の「ラブベリー女学院」に合格できず、しかたなく滑り止めに受験した「ピチモ学園」に通うこととなった、天野リエ。

彼女は、密かにイギリスの学校へ留学することを決意する。高校では友達は作らず留学許可を待つだけ、と心に決めた。

この物語は、最初周囲に心を閉ざしていたリエが、写真部の友達たちとの交流により次第に打ち解け、やがては強い絆で結ばれるようになるという過程を描いたもである。







●scene1:『お泊り会』


新学期が始まって間もない、4月のある日。各部とも、新入生獲得競争に忙しい。ここ、リエの所属する写真部の部室でも、新入生勧誘の準備が行われている。

ピチモ学園の写真部部員は、2年生しかおらず、しかも現在たったの4人。超真面目で融通の利かない部長の高木ユウ、写真よりも男の子に興味があるギャル系女子高生八鍬サトミ、写真部の「やる気なさそ〜なところ」が気に入って入部したという柳生ミユ、そして、クラスでも浮いているリエといった面々である。

このまま新たに1年生が入部せず、2年だけの4人となると、部の存亡に関わるということで、なんとしてでも新入部員を獲得したい部長のユウ。ひとりで勧誘ビラをつくり、ポスターを作り、今も必死に来週行われる合同部活説明会で使う原稿を書いている。

「ねぇ〜、みんな〜。少しは手伝ってよぉ〜」

ユウが手を止め、3人に向かって頼み込む。

「あん? うち、忙しいねん」

「サトミもニャ☆」

ミユとサトミは、お菓子を口に運びつつ、ファッション誌を読んでいる最中。部長の声に、一瞬顔を上げただけで、再び雑誌に目を落とす。

「もぉ〜。って、あれ? リエ?」

呼ばれたリエはといえば、もちろん睡眠中。机に突っ伏して、うとうと居眠りするリエ。それを眺め、

「やれやれ」

溜め息を漏らすユウだった。





1時間後。

「ふぅー。ま、とりあえず、こんなとこかな」

伸びをするユウ。ようやく原稿が完成した。と、ここで肘がとなりで居眠りを続けるリエにちょっと当たってしまった。

「あっ」

「にぃ!?」

リエ、お目覚め。目をこすって。

「ごぉめんやにぃ」

「ありゃ、起こしちゃった? ってか、なんでリエが謝んのよ。ぶつかったの、あたしだし」

「そっか」

そして、寝ぼけまなこのままリエ、部室を見渡して。

「ありぃ〜? さとみんたちは?」

自分とユウの2人っきりなのに気づく。

「サトミとミユは、食料の買出し」

「そっかぁ〜」

「気づかなかった?」

「うん。なんか、うとうと」

「うとうと熟睡?」

「でもぉ〜、買出し部隊まで出たってコトは、今日は遅くまでやるってことやにぃね?」

「まあね。今回は最低5人、1年生に入ってもらわなきゃね。・・・ってか、あんたたちが手伝わないからでしょ!」

「ご・・・ごめんやにぃ」





さらに30分後。部室のドアが開く。

「今、帰ったわ」

ミユが買い物袋を抱えて、戻ってきた。

「ミユやにぃ〜」

「おかえり」

ミユ、袋から大量のお菓子を取り出し、机に並べつつ。

「お菓子やにぃ〜」

「こんなんもんでええか? しっかし夏服は、暑いわぁ〜」

4月といえど、夏のような陽気である。下敷きをウチワ替わりにパサパサあおぐミユ。

「わぁ〜、すっごい量やにぃ〜」

お菓子大好きなリエは、目を輝かせる。

「あれっ? そういえばサトミは?」

ユウ、ミユに尋ねる。

「あぁ。今日な、どうしても早く家に帰らなあかんのやて。部長に伝えといて、言われたわ」

「そう」





それから、さらに2時間。

「やっば〜い、もうこんな時間!」

時計の針は7時45分。

「もう帰らなきゃ!」

「うち、雑誌読んでただけや」

「リエなんか、ず〜っと寝てたにぃ〜♪」

「ほらほら、8時に校門閉まるんだよ。くっちゃべってないで、さっさと帰り支度しよぉ」

「にぃ」

バタバタする部室。やがて後片付けが終わり、いよいよ3人部室を後にしようという、まさにというその時。

なんと、先に帰ったはずのサトミが私服姿(もちろんロリ服)で戻ってきた。





「もう・・・終わっちゃった?」

努めて普通に振舞うサトミ。ユウに向かって尋ねる。

「あっ、ありぃ〜??? さとみんやにぃ〜」

「どしたのよ、サトミ! その服は」

こんな時間に、しかも私服姿で戻ってきたサトミを見た一同は、戸惑い気味。もちろん、戻ってきた事実よりも、目の前のサトミのありえないロリ服に戸惑い気味。

「なんや? なんかあったん?」

「うん・・・ちょっとニャ☆」

サトミ、うつむいてそれだけ言うと、視線を上げてユウに。

「なんか、残ってる作業あったら言ってニャ。やっとくから」

「やっとくって・・・帰んなきゃ。・・・てか、アンタいままで何にも手伝ってないじゃん!」

ちょっと怒ってユウ。

「だいたいそんなとんでもない格好、見つかったら、ヤバイわ。てか、確実に退学やで」

しかし、狼狽するユウ達に対し、冷静なサトミ。

「いいんニャ、別に」

「もう、門閉まっちゃうよ。いっしょに帰ろうよ」

「サトミはどうすうんのや?」

「いいんニャ。サトミのことは」

「よくないよ」

ユウ・ミユ・サトミの問答の中、ここでリエが割って入る。

「も・・・もしかしてぇ〜」

「何?」

「もしかしてぇ、さとみん。家出かぁ?」

「家出?」

ユウ、その言葉の響きにちょっとびっくりして。

「ううん。家出じゃないけど、今日はここにいるニャ」

「親と、けんかしたの」

「してないニャ」

「じゃあ帰ろうよ」

「ヤダ」

「帰ろうってば!」

「ヤダヤダヤダ。サトミ、せぇ〜ったい帰らないんニャ!」

「わぁ〜。こりぃわやっぱ確実に家出やにぃ〜♪」

リエ、ワクワクして。

「ここ、泊まる気?」

リエを無視してユウが尋ねる。

「行くとこないし、お金もないし・・・」

小さい声で、サトミ。

「夜、ひとりじゃ怖いで」

ミユ、脅すように。

「用務員さんに見つかるかもよ」

ユウも、続ける。

「バレないように、がんばるニャ!」

「先生に言われちゃったらやばいことなるで」

「廃部とか、なったらあたしの苦労が・・・」

ここでサトミ、懇願するように。

「部長には迷惑かけないニャ!」

表情は、真剣だ。この展開にユウ、少々困って。

「ううん、迷惑とか・・・あたしはそういうこと言ってんじゃなくってね。なんて言うのかな、その・・・」

「もろ言ってるやにぃ〜♪」

「リエ、うっさい!(バシッ)」

「にぃ・・・」

「ここ、真っ暗にしなきゃあかんよ」

と、ミユ。

「マドに暗幕はるんニャ」

「食料、うちが買出し行って来たから、あるで」

「助かるニャ」

「でも・・・退屈やで」



サトミの家庭が、親が、どんななのか、リエは知らない。もちろん、サトミの過去も。だから、どんな事情があるのか、分からなかったんやにぃ〜。リエたち、みんなクラス違うし、週に数回部室で会うだけ。

それでも、サトミと一緒、みんなでここに残ったんやにぃ。






時計の針は、夜9時を回った。

「うひゃ!誰かおるで」

見回りの目を逃れるため電気を切り真っ暗にした部室。その窓に、月明かりに照らし出された二つの人影が浮かぶ。

「うちの学校の制服ニャ」

サトミが声を潜めて。

「ヒロコとマコトや」

外の2人、もちろん誰かに見られてるなぞ、思ってもいない。

「こんな時間に何してんるんやにぃ??」

「決まってるでしょ」

「カップルニャ〜♪」

「な〜にアンタ達、覗き見なんかしてんのよ」

ユウも窓際にやってくる。4人が窓際に並んで。

「なぁ〜んかいい雰囲気って感じやな」

ミユ、うらやましそうに。

「あー、あれはキスするニャ〜」

サトミ、したり顔で。

「キスやにぃ〜キスやにぃ〜」

リエ、イマイチ状況が飲み込めないも、とりあえず興奮して。

「ねぇねぇ。ひろぴょんの手、まこてぃの胸さわってニャー?」

「アホ。そないとこまで、見えんわ」

「まこてぃのお胸、ぺったんこやにぃ〜♪」

と、ここで4人いっせいに。

「あっ!?」



その瞬間、窓の向こうの恋人たちは、そっと唇を重ねた。リエたちは、それを息を潜めて見つめる。とてもとても長い時間に感じたんやにぃ。



明け方。

「うーーーん」

リエが目を覚ます。

「リエ? 起きてるニャ?」

「うん」

2人布団に入ったまま会話。他の2人はまだ眠っている。

「ホントに泊まっちゃったニャ」

「うん」

「ゆうころがすっごい盛り上がってて、リエ驚いたにぃ」

「リエが残ってくれのも、意外だったニャ」

「え〜(照)?」

「あのニャ、昨日ニャ、サトミのパパが・・・」





こうして、部室で行われたヒミツのお泊り会は、無事終わった。この後、みんなで学校から歩いてすぐのサトミの家に行って、変わり番こにシャワー浴びて、再び登校したんやにぃ〜。

リエたち4人の距離が一気にグッと近づいて、以来、部室に入り浸るようになったのは、この出来事からだったんやにぃ。




〜〜〜scene1(終わり)〜〜〜






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