満理子のリハビリ日記Part3

ステージ1
1.満理子の茶道教室
2.音楽療法の成果2
3.リハビリの復習
4.最近のリハビリ状況

1.満理子の茶道教室(初めてのお茶会)

平成14年9月26日

最近では意識レベルもずいぶんよくなった満理子ですが、まだ自己主張や意欲が欠けています。
「あけぼの」では音楽療法において、その部分を重点的に補う療法をしています。
それとは別に、「あけぼの」のスタッフの方に、パソコン操作などを教えてもらっていますが、数ヶ月前より意欲の向上を目指して、満理子の茶道教室を始めてくれました。
元気な頃の満理子にとって、一番自信のあるものは茶道でした。 子供たちが大きくなって余裕ができたら庭に茶室を作って教室を開くことが夢だったんです。
その自信のあるものに、「あけぼの」のTさんは目をつけ、教室を始めてくれたのです。
一応、満理子が先生ということで、Tさんがお弟子さんの役割です。 
体は動かないものの、おしゃべりはずいぶん達者になったので、教室も言葉だけで指示をするものです。
幸い、お茶の知識は全部残っていて集中している時は適切な指示を与えているようです。

今までは、すべて受身の生活だった満理子は、発病後、初めて主導的な立場に立つことになったのです。たとえ真似事でも・・
リハビリの最中でも、すぐに他の事に気をとられ、訓練にもあまり意欲的ではなかったのですが、お稽古をしている間は、それまでの満理子と目の輝きが違っていました。
やはり、人間は、自分の存在価値を見出すと、意欲が出てくるものだとつくづく感じました。

約3ヶ月間、この教室をしていましたが、目標と楽しみを持つために、お茶会を開くことになりました。
季節のいい、この時期に野点をやることになったのです。 あまり記憶力のよくない満理子ですが、9月26日・野点の日はいつも覚えていました。
Tさんと、当日に準備するものや招待客、どのような段取りをするかなどを念入りに打ち合わせをしました。 
その内容は連絡ノートで逐一教えてもらっていて、なんだか、結構本格的になってきて、私まで緊張するようになってきました。
いよいよ、お茶会の当日になりました。
過ごし易いこのごろ、満理子は朝起きるのが、遅くなってきました。 しかし、この日に限って、朝5時半に顔を覗いたら、目をぱっちり開いていました。
さすがに、どこかに緊張感か嬉しさが有ったのかもしれません。 でも、本人は緊張はしていないと言っていました。
早めの朝食を終え、いつもより少しだけおめかしをして、お迎えを待っていました。 今日は、薄茶だから正装の必要はないそうです。(という満理子の話)
満理子を送り出して、私も少し遅れて10時前に、「あけぼの」に行きました。
注)管理人は茶道には全く知識が無いため用語などについて間違いが有るかも知れませんがご容赦ください。

気候もよく、風情があるということで今日は野点になりました。 ほぼ準備が終わっていて、お客様を待つばかりになっていました。
メインのお客様が着席した頃を見計らい、このお茶会の亭主として満理子(茶名:松春庵理光)が開会の辞を述べました(ムービー)。 多少おふざけの部分はありましたが、それなりに主旨は言えたと思います。
そして、いよいよ正客であるここのリーダーのSさんに、お茶を立てることになりました。
ほとんど手が動かない満理子なので、お湯を汲んで、お茶の粉を入れ、ある程度混ぜるまでは、愛弟子のTさんがやってくれます。
今日のこの日まで、満理子はTさんに口伝えで指導?してきたのですが、実際にはうまく伝わっていないところが多かったと思います。
でも、Tさんは満理子に恥をかかせないようにと、独学で本を読んで勉強したり、心得のあるお母さんにご教授してもらい準備されてきました。
一番緊張していたのは、たぶんTさんかもしれません。
Tさんが茶道のルールに従って、ある程度混ぜた後、満理子に茶せんを渡し、仕上げの泡立てをして(ムービー)、お客様にお出ししました。
一杯目は緊張のせいか、力が入っていてうまくかき混ぜられなかったようですが、 2杯目以降は、見た目にもよく手が動いていたように見えます。
お茶のことを知らない人は、どのようにして飲めばいいのか、どのようなことを言えばいいのかなど質問攻めに有っていました。
それらの質問に一応適切な解答をしていたように思います。 そのやり取りで、また周りからの的外れの意見が出たり、大騒ぎで和やかなお茶会になってきました。
一人一人にお茶を立て、約10人のお客様のもてなしをしました。 さすがに、疲れてきたのか、だんだん、集中力が無くなり、手の動きも悪くなってきました。
でも、何とか無事に終えることができました。
約1時間半のお茶会でしたが満理子にとって、とても有意義な時間を過ごせたと思います。
最初の挨拶も、その場にふさわしいものでしたし、質問に対する答えも適切だったと思います。 お茶もうまくかき混ぜることができていました。
ご案内 お茶会セット そろそろ始めます
弟子が代理で前準備 仕上げは師匠が・・ 私もご相伴に・・
満理子のために、このような機会を作ってくれた、Tさんはじめ「あけぼの」のスタッフの皆さんに本当に感謝します。
そして、お客様になっていただいた利用者の方々や、わざわざ来て下さった、音楽療法のA先生、飛び入りで参加して下さった看護婦さん、本当にありがとうございました。
今の満理子にとって一番欠けている”やる気”、”意欲”がこの企画によって大きな変化があったと思います。
今後も引き続き、お稽古をしていただけるそうで、2回目、3回目のお茶会ではどれくらい進歩するか楽しみです。

しかし、満理子の夢を知っていた私にとって、もし病気にならなければ、もっと違う形で晴れ姿を見れたかもしれないという複雑な気持ちがよぎってしまいました。
でも、おかげで、「あけぼの」の皆さんと出会うことができたことは満理子にとって、この上の無い幸せだとも感じました。


2.音楽療法の成果2

平成14年10月16日

昨年の同時期に、1年間音楽療法を実施して、満理子がどのような変化があったかを評価していただきました。
昨年の結果は、たった1年で集中力と記憶力に大きな進歩が見られました。
その時の面談で、これからの1年間の目標を設定しました。

あれから、約1年(療法を始めて2年)経った今、その成果報告の面談をしていただきました。
昨年の面談で挙げた目標は、知的機能の向上を目指し、工夫していくということでした。
具体的には、満理子の一番欠けている、意欲と状況判断です。
結果は、下のグラフで分かるように、目標としていた部分が伸びていました。

先生は、まず意欲を高めるために、満理子の興味のある訓練を試行錯誤されました。
もともと、ピアノの心得があるので、キーボードを演奏??する訓練を始めたところ、最初はなかなか、思ったキーのところに指が行かず、集中力も欠けていたそうですが、エルゴレストという補助具を用いることで、腕の平行移動が容易になり、指の動きも良くなりました。その結果、先生の指示にも反応が良くなり、音楽に合わせようとするようになったそうです。 そして、思った音がうまく出るようになると、もう一度やりたいと言うようになり、セッションにも意欲的になったそうです。

また、セッション中にオレンジの匂いがしたが、誰か食べている人がいるかもしれないので、その場では匂いのことは言わず、セッションが終わってから話題にしたそうです。 これは、周囲の状況を見て判断できている例だと思います。

運動機能も、以前は握った物を放すのが苦手でしたが、合図によってタイミングよく放せるようになりました。

これらの結果は、音楽療法を基盤とし、接する機会の多いデイサービスのスタッフとの連携も大きな要因だと思います。

まだまだ、これらのことが安定してできているとは言えませんし、家に帰ると緊張感が無くなり、セッション中に比べると顕著な変化が無くなりますが、あきらかに、設定した目標に効果を示していると思われます。

今後も引き続き、意欲と判断力の向上を目指していただくと共に、一番の目標である、自己主張ができるようになって欲しいと思います。
自分の要求を言えるようになって、はじめて安心して満理子を人に託すことができるようになります。
それには、今の自分の状況を完璧に認識する必要が有り、それは、満理子にとって、とても残酷なことかも判りません。(今は、認識していないことが多い)
でも、満理子の将来を考えると、それを克服しないと、私以外の介護・援助を受けることができないのです。

それは満理子にとって残酷な仕打ちになることですが、あえて、そこをクリアすることをお願いしました。
ただ、先生は、結果を急ぐあまり満理子が傷ついて元気をなくしてしまうことを避けるために、慎重に段階を踏んでいくことが重要だと考えられています。
それは、まず、自分に自信をもてる体験を増やしていくこと。 これは、山を越える時の底力になります。
そして、情緒の絶対なる安心感、充実感、やさしさやあたたかさで満ち溢れるような気分にひたれるようなできるだけの環境を蓄積すること。人から必要とされているんだと言ったような充足感が山を超える時ではないか。
これらは、とても重要なことで、必要なことという説明を受けました。
私にしても、今の満理子の明るさを失うことは、絶対に避けたいと思うので、基本方針は先生にお任せすることにしました。

音楽療法評価表(MCL-S法)
A:積極性
1.指示されても回避的でなかなか活動しようとしない。
2.消極的であるが指示された活動はしようとする。
3.受身的なところもあるが、やり始めると積極性の芽生えが有る。
4.受身的なところもあるが、積極的意欲が発言や行動に現れる。
5.積極的に参加し、新しい課題に取り組もうとする。 B:持続性
B:持続性
1.数分で活動できなくなってしまう。
2.短時間は集中できるようになるが、活動中に途中で場を離れてしまうことがある。
3.短時間は集中できるようになり、途中で場を離れることはない。
4.決まった時間内に集中できるようになるが、時に疲れて集中しにくくなることも有る。
5.コンスタントに活動に集中する。
C:協調性
1.他者と交流をもとうとしない。
2.マイペースで好きな行動はするが、他者と交流することは少ない。
3.受身的であるが協調的である。
4.能動的な協調性が現れる。
5.協調的で必要であればリーダーシップもとれる。
D:情緒性
1.自己表現はなく、他者への共感性を全く現さない。
2.情緒表現は殆ど見られないが他者への共感性が少し見られる。
3.働きかけられれば僅かな情緒表現は見られる。
4.働きかけられれば情緒表現はよく見られる。
5.情緒豊かで、他者と共感した表現行動が可能になる。
E:知的機能
1.判断力に問題が有り、記憶は定かではない。所謂、痴呆症状が見られる。
2.判断力は少し問題が残る程度だが記憶力にあいまいな部分が見られる。
3.判断力に殆ど問題は見られない、記憶力は向上が見られる。
4.古い記憶は再生され、学習はある程度可能であるが維持されがたい。判断力は良い。
5.記憶力も良く、学習も可能で、判断力も良い。
F:運動状況
1.把握力が弱く日常生活に著しい支障が有る。
2.日常生活に何らかの支障が有り、楽器の操作は単調なものに限る。
3.把握力は見られるが、手、指の細かい動作は難しい。
4.時間はかかるが、指の細かい動作も多少できる。
5.日常生活における手の操作は円滑で、打楽器のリズムも正確に打てる。


3.リハビリの復習

平成14年11月2日

つい最近、訪問リハビリでお世話のなり、頼りにしていたN先生が病院を辞められました。
地域にとっては大きな痛手ですが、先生の理想のための判断なので応援したいと思っています。 
遠くに行かれたので、あまりお会いする機会はないのですが、メールで連絡は取り合えるので引き続きいろんなアドバイスはしていただけるとのことです。

ここんところ、訪問にはI先生に来ていただいています。 I先生は若い女性ですが、N先生の意思を引き継ぎ、とても熱心に訓練をしてくださっています。
音声入力などの新しい試みや、私のプライベートな相談にも乗っていただいています。

最近の訓練内容は、現在の最大の目標であるパソコン入力を重点的に行いスイッチの使い方などの練習をしていました。 
手、指の動きはずいぶん良くなったものの、実際に入力するにはまだまだ稚拙です。
先日、インストールした音声入力ソフト(IBMのViaVoice)のおかげで、曲りなりに満理子がネットデビューを果たすことができました。
そこで、今までいろいろやっていた訓練を、もう一度復習していただくことにしました。
同じ訓練をやることによって、以前とどれくらい能力が上がっているかを把握することもできます。

前にも、ムービーでお知らせしたお箸の練習は久しぶりの訓練にもかかわらず、非常にうまくできたと思います。 お箸を握った瞬間、かちゃかちゃとお箸をカスタネットのように動かしました。 スポンジもうまくはさめて、横方向への移動も比較的スムーズに腕が動きました。
大きな違いは、はさんだスポンジを支持されたらすぐに落とすことができ、そして、お箸を手から放してテーブルの上に置くことができたのです。 以前は、この放す行為がなかなかできませんでした。

次の訓練では、字を書く練習をしました。 以前の訓練ではペンを持つことはできても、手を思ったとおりに動かすことができず、勝手に動いた手のとおりに線が引けた程度でした。
今回では、一応先生の指示通りに動かそうとする意思と動きが見えました。 ペンを動かそうとすると、緊張が高くなり力が入ってなかなか手が動きません。 そして、ペンを紙から上げる行為も難しいようです。 でも、なんとか線も引けたし、とても字とは言えないがそれっぽい形にはなりました。
真剣なまなざし 宮という字のつもり
どちらの訓練でも、以前と比べて、やろうとする強い意志に大きな違いがありました。 また、指先の細かい動きもずいぶん良くなっていたし、つかんでいたものを放すことをスムーズにできるようになったのが目立った進歩でした。

今後も、時々このような復習をしていただくことで、訓練結果の判断材料にして、次のステップへの足がかりにしていただきたいと思っています。


4.最近のリハビリ状況

平成15年2月23日

ここしばらくリハビリ日記を更新していないので、最近の状況をお知らせします。
前項でも述べているように、今は在宅になった頃と比べてどの程度進歩しているかの見極めと同時に進歩に応じた訓練をしています。
いつも最初はストレッチから入ります。 満理子はこれが一番嫌いなようです。 やっぱり痛いですからね。  筋を伸ばすといつも泣きそうな顔をするのでその顔に向かってカメラを向けると無理に笑顔を作ってしまいました。 感想はいつも「痛、気持ちいい」と言っています。なんとなくわかってもらえるでしょうか。
相変わらず、先生とは仲良しでとても楽しい雰囲気で訓練をしています。

復習ということで、以前よく使っていたスイッチでワープロの入力などもやっています。 5個のボタンがあるスイッチでカーソルを上下左右と移動でき、目的とする時のところへカーソルを持っていき決定ボタンを押します。 この訓練はかなりやっているので、ボタンの機能は十分把握しているようですが、ボタンを押して移動させて目的のところへ止めることがなかなかできません。押した指を離せないのです。 比較的押すことはうまくできますが、放す行為は難しいようです。  しかし、以前よりは理解しているせいか、ボタンを離そうという意思は見られます。 お箸の訓練でも、終わった後お箸をテーブルの上に置く行為で、以前はお箸を放せなかったのですが、今は時間はかかるけど、放して置く事ができるようになりました。
痛いのになぜか笑顔 ワープロ入力1 ワープロ入力2
新しいことも試しています。 下の写真は携帯電話のメールの要領でパソコンに文字入力できるものです。 親指だけで、文字入力や決定、カーソル移動などできるので動きの不自由な人には便利なものです。 
満理子の場合、指の動きが稚拙なため思ったところに指を持っていけません。 角度を変えたり、握りやすくしたり工夫しましたが、ちょっとむずかしい。 ボタンが小さく、意外と押すための力が要りました。 大きなボタンは何とか押せたので、顔文字入力で楽しみました。
又、文字を書く練習もしています。
昨年暮れから、満理子は意識レベルが向上しました。  とくに記憶力の向上は目ざましく、満理子にとってインパクトのあることは1度聞けば覚えるようになりました。 テレビのコマーシャルもよく覚えています。 相変わらずさっき食べたことはすぐに忘れてしまいますが・・  
今までも、何か変化があるときは急によくなるような傾向がありました。 その良くなるきっかけや要因がわかれば今後のリハビリの役に立つのですが、はっきりはわかりません。 
今回の向上で思い当たるのは、娘の仕事が変わり夕食を家族でとる機会が増え、皆で楽しくおしゃべりをよくするようになったこと。 私や息子はあまりしゃべりませんから。
そして、私が今までやっていた仕事を辞めて新しい仕事を始めたこと。 満理子とは前の職場で知り合ったため、満理子には愛着のある会社だったと思います。 そこを辞めることは満理子にとって印象深いものになったのかもしれません。

しかし、その反面、訓練中にほかの事を考えたり、訓練が面白くなかったりすると集中力がなくなってしまうことも多くなりました。 「あけぼの」でのお茶の練習も同様に集中力に欠けることもしばしばだそうです。 その上、気分が乗らない時の感情も表すようになったようです。
でも、これらの症状は自己表現の現われで一概に悪いものとは思っていません。 確かに練習には支障をきたしますが、今までは言われたことは何も考えずにやっていたことを、自分の意思でやれるようになってきた証拠だと思っています。
今後も引き続き、以前やった訓練で向上の度合いや、新しいことへチャレンジして前進へのきっかけにしたいと思っています。

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