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肩甲帯の機能障害

1 はじめに

肩関節の精密な動きは、精密であるがゆえに小さな変化が微細損傷を引き起こし、痛みを引き起こすことに繋がってしまいます。小さな運動の変化によって引き起こされた痛みは、結果として代償運動を特定の方向に起こすため、機能障害としての分類ができるように発展します。これらをさかのぼるように評価することで、機能障害とその関与因子を明らかにすることができます。評価によって判明した因子を解決するようなエクササイズや動作の修正は、症状の改善に直結します。例えば、肩関節の屈曲の間に見られるインピンジメントに起因する肩関節の痛みは上腕骨の外旋が増加することで改善することがあります。肩甲骨と上腕骨の位置関係がわずかに変化しただけでも、アライメントと筋出力に影響を及ぼす可能性があるといえます。これは肩関節に認められる多くの症候群が肩甲骨の位置や動作のタイミング障害に起因していることが予想されます。

2 肩甲帯

■肩甲帯の正常なアライメント

アライメントを把握することは、正常な運動を再獲得させるために必要な目安となります。例えば肩関節の外転をする場合、肩関節の運動開始肢位が内旋位にあると、動作中には外転を行うためにより多くの外旋が必要になります。結果、タイミングのずれた上腕骨大結節と烏口肩峰靭帯とが衝突する可能性が高くなってしまいます。つまり、アライメントの変位とは、運動効率のよい理想的な位置関係からの変位といえます。

1.

【正常なアライメント】

両肩は前額面上の後面から見たとき、T1を通る水平軸からわずかに下がった位置にあります。矢状面上では垂線が肩峰の中央を通過します。

【アライメント異常】

挙上位:頸部が短く見え、両肩が耳に近づいています

下制位:鎖骨が水平、或いは肩鎖関節が胸鎖関節よりも低い位置にあります

前方変位:肩峰が前方に位置して見えます

 

2.肩甲骨

【正常なアライメント】

肩甲骨の内側緑は脊柱に平行で、胸郭の中心から7〜8pの位置にあります。高さは脊柱レベルにおいてT2〜T7の間にあり、前額面に対して30°の角度をもって胸郭に張り付いています。

【アライメント異常】

下方回旋:肩甲骨の肩甲棘基部よりも下角が内側に位置しています。肩に痛みを訴える人は、肩甲挙筋と菱形筋が短縮し、僧帽筋上部線維が延長していることが頻繁にあります。

下制:肩甲骨の上緑がT2よりも低い位置にあり、僧帽筋上部線維が延長されていることを示しています。

挙上:肩甲骨の上角が挙上されて高い位置にあり、肩甲挙筋の短縮されていることを示しています。また、肩峰までも挙上されている場合には僧帽筋の上部線維が短縮されていることを示しています。

内転:肩甲骨が脊柱に近づいた位置にあり、菱形筋と僧帽筋の短縮,前鋸筋の延長を示しています。

外転:肩甲骨が脊柱から離れた位置にあり、主に前鋸筋と大胸筋が短縮されていることをしめしています。通常、肩甲骨が外転する場合には、全額面に対して30°異常の回旋が組み合わさります。

傾斜:肩甲骨の下角が胸郭から離れて突き出ている状態であり、小胸筋の短縮が最も多い原因です。その他には上腕二頭筋や三角筋前部線維の短縮があります。上腕二頭筋の短縮が原因の場合は、肩甲骨を正しい位置に補整すると肘関節が屈曲してしまいます。

下制と傾斜:原因は下制と傾斜の組み合わせです。

外転と傾斜:原因は外転と傾斜の組み合わせです。

浮き上がり:浮き上がり(翼状肩甲)は肩甲骨内側縁が胸郭から浮き上がっている状態であり、前鋸筋の筋力低下が最も多い原因です。

上方回旋:肩甲棘の基部は下角よりも内側に位置しています。僧帽筋が短縮していることを示しています。

 

3.上腕骨

【正常なアライメント】

肩甲上腕関節の適切な評価は、肩甲骨が正常なアライメントであることを確認してから行います。肩峰に対する上腕骨頭の変位は、骨頭の3割程度となります。上腕骨の回旋中間位は、手掌体側位につけた状態で肘頭が後方を向いていることを確認します。手指屈筋が短縮していると手掌が後方を向く場合があります。

【アライメント異常】

前方変位:上腕骨頭の三割以上が肩峰より前方に位置しています。

挙上:上腕骨頭が肩峰に向かって上方に上がっています。

外転:上腕骨遠位端が身体から離れており、肩甲骨が下方回旋または下制しています。

内旋:肘窩は内側、肘頭は外側を向いています。

外旋:外旋は稀だが肩甲骨が著しく外転している場合、上腕骨が外旋することがあります。

 

4.胸椎

【正常なアライメント】

胸椎はわずかに後彎しています。

【アライメント異常】

後弯:胸椎の後彎が過度に増加した状態です。

側弯:肩甲骨の位置が左右で極端に異なる場合には側弯症が考えられます。

平坦:胸椎の正常な後弯が失われると肩甲骨の浮き上がりを引き起こします。

 

■肩甲帯の運動

1.肩甲帯の運動パターン

・肩甲上腕リズム

肩関節屈曲0°〜60°と外転0°〜30°以降、肩甲骨と上腕骨は一定の割合で動くようになります。肩甲上腕関節2°の動きに対して肩甲胸郭関節は1°動くようになります。結果、180°屈曲した場合には肩甲上腕関節120°に対して肩甲胸郭関節は60°動くことになります。

・肩甲骨運動のタイミングと運動範囲

肩甲骨の運動を追跡する場合には、母指と示指で肩甲骨下角を軽くはさむことで評価できます。肩関節180°屈曲位では肩甲上腕リズムによって60°回旋しています。当然、肩甲骨の下角は回旋によって外側に向きますが、極端に突き出す場合には過剰な外転を疑います。

・最終域

肩関節180°屈曲位になるまでに肩甲骨はわずかに下制,後傾,内転します。しかし、胸椎の過剰な後弯があったり小胸筋の短縮があったりすると、肩甲骨の下制が妨げられてしまいます。

・上腕骨頭

上腕骨の回旋軸は全般的に一定であることが求められるため、屈曲や外転動作には三角筋による上方への牽引力に拮抗するだけの力が必要になります。また、烏口肩峰靱帯/肩峰と大結節が衝突することを防ぐには上腕骨を下制/外旋しなくてはいけません。しかし、上腕骨の下制を大胸筋や広背筋に頼ると上腕骨は内旋してしまうので注意が必要です。

・脊柱

胸椎の過剰な後弯は肩甲骨を前傾させるため、肩関節屈曲の可動域は明らかに減少します。そのため、胸椎の過剰な後弯の改善は、間接的に肩関節の可動域改善につながります。

2.肩甲帯の筋活動

・胸郭⇔肩甲骨

僧帽筋は上部,中部,下部の線維があるため、上部線維は挙上,下部線維は下制を内転と同時に行います。肩関節屈曲/外転において肩甲骨の挙上が不足している場合には、僧帽筋上部線維の活動が不十分である可能性があります。

肩甲挙筋は肩甲骨を内転/下方回旋を行います。この筋は第1〜4頸椎の横突起に付着しており、頸椎の回旋を制限しております。肩甲骨には上角に付着しているので、短縮すると肩峰部は挙上しないで上角部だけが挙上されます。僧帽筋とは内転動作では共同筋ですが、回旋動作では拮抗筋となります。

菱形筋は肩甲骨を内転/下方回旋を行います。肩甲挙筋と類似しており、僧帽筋とも共同と拮抗の作用をもち合わせています。この筋は僧帽筋よりも優位に活動しやすいため、優位過多になると肩甲骨の上方回旋を妨げる可能性があります。

前鋸筋は肩甲骨の外転/上方回旋を行います。前鋸筋は肩甲帯の主要な外転筋であり、この筋による肩甲帯の制御が不十分な場合には、可動域障害の原因となります。上腕骨の動きに対する肩甲骨の運動タイミング不良は、僧帽筋の筋力低下と前鋸筋の筋力低下とを識別することが大切です。どちらも上方回旋筋ですが、内転と外転では拮抗筋になるので、これらの動作に注意すると識別することができます。

小胸筋は烏口突起を前方/尾側に傾けることによって肩甲骨を前方に傾斜させます。したがって小胸筋が短縮すると下角は内側に回旋し、肩甲骨の上方回旋は妨げられることになります。関連する因子としては、腹筋の短縮や硬化によって胸郭の挙上が制限される場合、その上方回旋の制限はさらに増悪します。また、厄介なことに短縮していてもストレッチすることが難しい筋でもあります。胸郭を安定させたまま烏口突起を圧迫するにはペアストレッチが効果的です。

・胸郭⇔上腕骨

 大胸筋と広背筋は胸郭から上腕骨に直接付着していますが、肩甲帯に与える影響は大きいとえいます。これらの筋は発揮量が大きく、体幹の広範囲に起始を持っている上腕骨の内旋筋です。そのため、筋が短縮して硬化すると肩関節屈曲の可動域後半で外旋が制限されます。また、大胸筋と広背筋は肩甲骨を下制させるため、短縮を伴うと肩関節屈曲時の肩甲骨挙上を著しく制限することがあります。さらに、これらの筋は肩甲上腕関節の回旋軸から離れた位置に付着しているため、拘縮や硬化などの筋活動の乱れが上腕骨の制御を妨げる恐れがあります。

・肩甲骨⇔上腕骨

三角筋は上腕骨の外旋を行います。筋力発揮はとても大きく、上腕骨を肩峰の方向に牽引する力が働きます。したがって、上腕骨を下制させる棘上筋,棘下筋,肩甲下筋,小円筋が拮抗することで、三角筋の活動による上腕骨頭の上方変位を防がなくてはなりません。また、三角筋の活動優位パターンで多いのが、肩関節の外旋筋としての三角筋後部線維です。本来、肩関節の外旋は棘下筋と小円筋が主動筋になることで安定した動作が行えますが、三角筋後部線維が優位になってしまうと上腕骨頭の前方変位が起きてしまいます。

棘上筋は肩甲骨を外転/外旋させ、関節窩に対して上腕骨を下制させることで安定します。この筋は肩峰下を通過するため、肩甲帯が下制しているときに損傷しやすくなります。さらに、肩甲上腕関節が外旋していれば烏口肩峰靱帯と大結節は衝突を起こして棘上筋を挟み込んでしまいます。

棘下筋は上腕骨を外旋/下制させます。三角筋後部線維は強力な外旋筋であると共に、上腕骨を上方へ滑らせます。内旋筋群と外旋筋群の発揮力を比較してみても内旋筋群のほうが強いため、外旋筋群と後方関節包は短縮したり硬化したりすることが頻繁に起こります。

小円筋は上腕骨を外旋/下制させます。その役割としては棘下筋と同様であり、肩関節の外旋筋として重要な役割を担っています。これらの筋は臨床でも頻繁に機能異常がみられ、短縮や硬化によって上腕骨の過度な前方/上方すべりに起因するインピンジメント症候群を引き起こします。

肩甲下筋は上腕骨を内旋/下制させます。この筋は肩関節前方の安定性に関与しており、弱化すると上腕骨の過度な前方すべりが生じて痛みを発生させることがあります。また、内旋筋には大胸筋や広背筋などの強力な筋もあるので、肩甲下筋が劣勢になることがあります。仮に大胸筋が肩甲下筋よりも内旋筋として優位に働いてしまう場合、上腕骨を前方に引き出してしまうので屈曲/水平屈曲動作で前方関節包が圧迫されることになります。

大円筋は肩関節を内旋/内転、そして伸展させます。この筋が短縮すると、肩関節の屈曲は制限され、同時に上腕骨の下制と外旋は妨げられます。

 

3 肩甲骨症候群の評価基準

・誘導による痛みの変化を確認する

 主要な問題は阻害された肩甲骨の運動であり、さらに上腕骨の運動障害を引き起こして痛みを発生させます。したがって、トレーナーが患者の肩甲骨動作を正しく誘導した場合、その症状は軽減することがありあます。誘導による痛みの軽減,消失があれば、これらの関与因子を特定することで回復プログラムの作成に役立ちます。

・損傷程度の段階分けを行う

炎症状態が急性期の場合、肩関節は自発痛が生じます。肩関節を正しいアライメントに修正した状態で、机に肘をついて上腕骨頭に対するストレスを軽減させます。結果、痛みが変化しない場合は軽負荷の軽負荷の回復プログラムに留めるべきでしょう。また、肩甲骨の動作に重点を置くようなプログラムでは肩甲上腕関節での動作において、60%は痛みを伴わずに運動できる必要があります。肩甲上腕関節に著しい制限や痛みがある場合には、まず肩甲上腕関節の可動域改善を目指すべきでしょう。

・肩甲上リズムを確認する

肩甲上腕関節は肩甲胸郭関節よりも容易に動きます。肩甲骨が十分に上方回旋しないと、肩甲上腕関節が代償動作を起こしやすくなります。例えば、菱形筋の硬化によって肩甲骨の上方回旋が阻害されることがあります。また、これに拮抗する僧帽筋と前鋸筋の活動不足でも同じことが起こります。小胸筋の硬化では肩甲骨が前傾してしまうため、その結果として上方回旋が妨げられます。僧帽筋上部線維,下部線維が延長していたり活動が不足していたりする場合、肩甲骨を上方回旋させることができません。

・筋の長さや筋力の評価をおこなう

小胸筋,大胸筋,広背筋,肩外旋筋,肩内旋筋,棘上筋,三角筋,菱形筋,前鋸筋,僧帽筋等の短縮や筋力の評価を行います。

■肩甲骨の運動機能障害症候群

1.肩甲骨下方回旋症候群

【症状】

肩甲骨が下方回旋していることで上腕骨との連動性が低下し、上腕骨と肩峰との間で滑液包や回旋筋腱板,上腕二頭筋長頭腱が挟み込まれることをインピンジメントと呼びます。肩の外転や屈曲動作で挟み込むような痛みが、肩峰周囲や三角筋の付着部に現れることが多いようです。

 肩甲骨が下制,下方回旋,前傾している場合には前腕の尺側に痺れるような痛みが出現することもあります。

【改善プログラムのポイント】

まずは日常的に肩甲骨の下方回旋や外転を防ぎ、可能な限り正常な位置に保つようにします。エクササイズでは前鋸筋と僧帽筋の活動を強化すことが重要であり、肩甲骨上方回旋の方法を習得する必要があります。しかし、強化するといっても、通常の僧帽筋強化トレーニングであるシュラグは避けなければなりません。上肢下垂位で肩をすくめる動作は僧帽筋上部線維よりも、肩甲挙筋と菱形筋の活動を強調させてしまうからです。したがって、腕を挙上させた状態でシュラッグを行うことで、僧帽筋上部線維を強調させることができます(右下図)。さらに、評価によって短縮/硬化が認められた筋にはストレッチを行います。上方回旋を促すようなストレッチとしては、四つ這い位から状態を後方に移し、踵に座るような状態で肩甲挙筋や菱形筋を伸張させていきます。治療台やベッドで行う場合には端を握って行うと効果的です。しかし、肩甲挙筋が硬化している場合には、制限された肩甲骨の運動を代償して頭部を持ち上げてしまうため、顎を胸に向かって引くように指導しましょう。前方頭位姿勢の改善にも効果的です。

2.肩甲骨下制症候群

【症状】

この症候群は菱形筋と肩甲挙筋が短縮していないことを除けば、肩甲骨の下方回旋症候群と類似しています。肩関節の屈曲/外転のあいだ、僧帽筋下部の活動が優位となり、僧帽筋上部線維による肩甲帯の挙上が見られません。一般的には僧帽筋上部線維は特に延長および弱化しており、広背筋,大胸筋,小胸筋が短縮していることで、肩甲骨の挙上を妨げています。症状も肩甲骨の下方回旋症候群と同じです。

 

【改善プログラムのポイント】

最も重要なことは両肩が下制位にならないように注意することです。ものを運んだり持ったりするような動作で、肩甲骨下制を助長する動作は可能な限り避けさせます。僧帽筋上部線維のトレーニングを実施し、肩甲骨を下制させる僧帽筋下部線維のトレーニングは避けましょう。また、広背筋や大胸筋,小胸筋が短縮している場合にはストレッチを行います。

3.肩甲骨外転症候群

【症状】

肩甲上腕関節の屈曲/外転において、肩甲骨の過剰に外転によって肩甲骨下角が胸郭の外側へ突き出してしまうのが観察されます。原因は肩甲骨の内転筋である僧帽筋と菱形筋が過剰に延長し、前鋸筋が短縮していることがあげられます。また、三角筋や棘上筋が短縮すると、安静時でも上腕骨は外転位になるため、肩甲骨を外転方向に引っ張ってしまいます。

【改善プログラムのポイント】

筋力トレーニングとしは僧帽筋下部線維と中部線維の機能向上が目標とされます。重要なことは、肩甲骨の下制ではなく、内転を重視した僧帽筋下部線維の強化です。また、短縮した肩甲帯の筋郡のストレッチも重要となります。

4.肩甲骨浮き上がり症候群(Winging

【症状】

肩甲上腕関節の屈曲/外転において、肩甲骨下角の傾斜または内側緑の浮き上がりが観察されます。この現症は挙上位から戻す動作のあいだにも観察される場合があり、外転からの戻りよりも屈曲からの戻り動作で顕著に現れます。肩甲骨下角の浮き上がりが示しているように、小胸筋が短縮することで肩甲骨が前傾してしまいます。また、それに拮抗する前鋸筋の活動不足も原因といえます。さらに、肩関節の内旋において外旋筋群の短縮がある場合、肩甲骨の浮き上がりの一因となります。

 

【改善プログラムのポイント】

改善の重点は肩甲骨の前傾と浮き上がりの修正です。肩甲骨の前傾は、トレーナーや介助者に協力してもらい、小胸筋をストレッチすることで改善します(右図)。安静位や肩関節屈曲位において肩甲骨の浮き上がりが認められた場合、前鋸筋の筋力低下を意味しているので強化が必要です。浮き上がりが運動初期で認められるならば、四つ這い位での体重移動は効果的な方法です。著しい前鋸筋の筋力低下がある場合にはインピンジメント症候群を防ぐため、肩関節の完全な屈曲を伴うストレッチやプログラムを行うべきではありません。

 

4 上腕骨機能障害症候群の評価基準

・誘導による痛みの変化を確認する

 トレーナーが患者の運動障害を正しく修正した場合、その症状は軽減することがありあます。誘導による痛みの軽減,消失があれば、これらの関与因子を特定することで回復プログラムの作成に役立ちます。とくに肩関節を屈曲する際、上腕骨の外旋を介助すると痛みが緩和,消失することが多く、原因の特定に役立ちます。

・肩甲帯の評価もおこなう

最も痛みの原因となるのが関節窩における上腕骨の機能障害です。しかし、多くの場合が肩甲帯の運動も同時に障害を発生させていることがあります。必ず肩甲帯の評価も合わせて確認するようにしましょう。

・筋の長さや筋力の評価をおこなう

小胸筋,大胸筋,広背筋,肩外旋筋,肩内旋筋,棘上筋,三角筋,菱形筋,前鋸筋,僧帽筋等の短縮や筋力の評価を行います。

■上腕骨の運動機能障害症候群

1.上腕骨前方すべり症候群

【症状】

肩甲上腕関節の内旋/過伸展/水平外転の初期段階に、上腕骨頭の前方すべりが起こることで肩関節前方に疼痛が発生します。本来、大胸筋の収縮による上腕骨頭の前方への牽引力は、肩甲下筋によって相殺されなくてはなりません。しかし、肩甲下筋が弱化している場合には、大胸筋の強力な収縮力によって前方すべりが増強してしまいます。棘下筋と小円筋の牽引力が肩甲下筋によって相殺できなくなると、常に外旋/下制位になるので後方関節包が硬化してしまいます。後方関節包の硬化は肩関節屈曲時に上腕骨頭と肩峰の衝突を引き起こしてしまいます。

また、上腕二頭筋腱の近位にも疼痛が発生する場合があるので、インピンジメント症候群や上腕二頭筋腱炎との鑑別に注意が必要です。

 

 

【改善プログラムのポイント】

前方変位の修正をする場合、肩甲下筋を強化することで前方からの求心力を向上させます。また、上腕骨外旋筋群の硬化も頻繁に認められるため、上腕骨頭の後方すべりを可能にするための内旋可動域の確保が重要になります。プログラムの順番としては、適切な内旋の可動域を確保してから、次の段階である肩甲下筋の強化に移行したほうがよいでしょう。

2.上腕骨上方すべり症候群

【症状】

肩甲上腕関節の屈曲/外転において上腕骨頭が近位方向に変位し、肩峰または烏口肩峰靭帯に対する上腕骨頭のインピンジメントを引き起こします。三角筋の活動と上腕骨下制筋の活動の間で牽引力のバランスが保たれていないことが原因です。また、三角筋の過剰な牽引力は、肩甲骨の下方回旋による代償動作を頻繁に引き起こします。

【改善プログラムのポイント】

第一に着眼する点は三角筋の短縮および活動優位性であり、最初に改善すべきでしょう。また、肩甲骨が下方回旋している場合には、これまでに述べたアライメント修正のプログラムを実施します。

3.肩関節内旋症候群

【症状】

大胸筋や大円筋,広背筋等の活動優位によって、上腕骨が解剖学的肢位で内旋してしまいます。解剖学的肢位において肘頭と手掌を観察すると理解しやすくなります。手掌が後面を向いていても肘頭が中間位であれば、前腕の回内筋群によるものとなります。しかし、肘頭が外側を向いている場合には上腕骨の内旋を示しております。

【改善プログラムのポイント】

アライメントを改善させるには上腕骨の外旋筋群をコントロールする必要があり、内旋筋群のストレッチが有効です。大円筋の短縮をストレッチで改善させる場合、肩甲骨の動きを制限するように注意しましょう。また、外旋筋群の強化が必要な場合、腹臥位でベッドの端から前腕を垂らし、肩関節90°肘関節90°で外旋動作を行います。肩甲骨の内側縁を触診しながら外転/浮き上がりが生じないように注意させます。

4.上腕骨過少可動性症候群

【症状】

癒着性関節包炎と凍結肩は上腕骨過少可動性症候群に含まれる主要な障害です。男性よりも女性に発生することが多く、糖尿病患者にも多く確認されます。上腕骨過少可動性症候群には3段階のステージがあり、@痛みのある急性期A凍結期B解凍期に分かれます。三角筋の活動が最も優位になっていることが多く、ほとんどの肩甲上腕筋群が短縮しています。

【改善プログラムのポイント】

まずは可動域の改善に長い時間が必要になることを説明します。急性期には痛みが持続的であることが多いため、エクササイズは避けたほうがよいでしょう。日常的に可能な限り、肩への負担を減らす努力が必要になります。痛みのない範囲で健側の手で患側の腕を持ちながら、可能な限り頭方へ上げていきます。その際、尺側を壁に当てながらゆっくりと挙上していきましょう。壁を利用して他動的に挙上していくことで、上腕骨頭の後方/下方へのすべりを介助することができます。自動で挙上を行う場合、上腕骨の上方すべりを引き起こすので注意が必要です。挙上の可動域が回復した後、内旋可動域の改善と腱板機能の強化が必要となります。内旋可動域の改善には、背臥位で肩関節約70°外転位で上腕の下に枕を入れ、水平屈曲の肢位で痛みが出ないことを確認します。肘関節を屈曲させて重りを持たせますが、不随意的に肢位が保持される程度の重りに留めます。肩関節外転のエクササイズは自動的外旋可動域が75%以上になるのを確認してから行います。

 

 

 

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