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リコンディショニング

1 はじめに

 リコンディショニングについて説明する前に「コンディション」や「コンディショニング」についてお話します。最近、スポーツ現場でも頻繁に聞かれるようになった「コンディション」や「コンディショニング」という言葉ですが、その内容については確立されておらず規定されていません。これまでは「なんとなく体調を維持すること」というような意味合いで「コンディショニング」という言葉が捉えられていたように思われます。たしかに体調を整えることや維持することがコンディショニングですが、実際にはさらに細分化されており、様々なカテゴリーが存在します。ただ漠然と維持,調整しようとしても、その方法や対処策を把握せずに高いパフォーマンスを保つことは困難です。またコンディショニングとは、ある一面だけをアプローチしても望ましい成果は得られません。様々な要因〔フィットネス(健康),スキル(技術),メンタル(精神),メディカル(医療),栄養,環境〕を考慮し、総合的なスタンスでコンディショニングに望まなければなりません。しかし、結果的にこれらの要因のどれかが崩れてしまった場合、適切にリコンディショニングしていく必要があります。さらにコンディショニングと同様、リコンディショニングにも様々な要因が存在し、いかにして崩れていったかも把握しなくてはなりません。コンディショニング,リコンディショニングのどちらも、まずは同じミスを繰り返さないことから意識していきます。

2 言葉の定義

≪コンディションとは≫

コンディションとはピークパフォーマンスの発揮に必要なすべての要因(健康,技術,精神,医療,栄養,環境)で、一般的に「状態」「体調」「条件」と捉えられています。

≪コンディショニングとは≫

 コンディショニングとは、コンディションを目的に向かって日常的に望ましい状態に整えることで、刻々と変化するコンディションを把握し、適切に微調整(adjust)していくことをいいます。

≪リコンディショニングとは≫

リコンディショニングとは、なんらかの原因によりコンディションが崩れてしまった場合に、再び望ましい状態に回復させることをいいます。これは競技スポーツを行っている以上、必要になってくる要素です。競技スポーツには不注意によるコンディショニングミス以外にも、トレーニングの代償として疲労は蓄積され、一時的にコンディションを崩す場合があります。このような状況に対し、改善策を講じるのもリコンディショニングです。

3 コンディショニングのカテゴリー

 今回はリコンディショニングについてですが、コンディショニングの進め方も軽くふれておきたいと思います。リコンディショニングにも関わることですので注意しておきましょう。

競技現場でコンディショニングを実施していく場合、どのようなカテゴリー(部門,範囲)でアプローチしていくか明確に把握する必要があります。個人では健康,技術,精神,医療,栄養,環境などがあり、さらにサッカーのようなチームスポーツでは、チームのレベルや方針,現場環境などを考慮してプランニングしなくてはなりません。

 しかし、こうした調整方法はマニュアル化しにくいものであり、日々変化するコンディションに対して臨機応変に対処することも重要です。この見極めは短期間で身に付くものではなく、経験によって養われていきます。W-UPでのランニングや表情などでも判断材料になりますし、チェック項目を作成して日々測定することで把握してもよいでしょう。

4 コンディショニングを崩す要因

 選手がコンディションを崩す場合、同じコンディショニングミスを繰り返してしまうことがほとんどです。例えば、雨の中の練習で気温が低くグランドも優れない状態では、練習後すぐに体のケアをしなくてはなりませんし、雨でスリッピーなグランドに対して注意もしなくてはなりません。これらは当然のように注意すべき点ではありますが、こういった一番身近なことがコンディションを崩す原因となっているのが現状です。成果のあるコンディショニングを実現させるためには、過去のコンディショニングミスについて分析し、そのミスがいかなる要因によって発生したかについて明確にしなければなりません。

≪トレーニングとストレスによる要因≫ 

オーバートレーニング

強度  時間  頻度

物理的ストレス

気温  湿度  気圧  大気汚染  水

生理的ストレス

スポーツ障害  貧血  睡眠不足  内科的疾患

生物学的ストレス

ウィルス  細菌  減量  休養  時差

精神的ストレス

プレッシャー  不安  緊張  人間関係

 

5 コンディショニングの把握方法

 リコンディショニングやコンディショニングを行っていく際、当たり前のことですが現在のコンディションを把握しなくてはなりません。コンディションを崩す要因は前述したように、オーバートレーニングとストレスに分けられます。これはトレーニング負荷が不適切であったり、疲労回復が十分でないために引き起こされることが大きな原因となっています。指導者は適切な運動負荷を与え、選手の疲労回復具合をチェックしながら指導するために、しっかりと選手のコンディショニングを把握しなくてはなりません。さらに選手にも日常から自己体調を把握させ、自分自身で微調整させるように促します。

そこでスポーツ選手のコンディションを把握するには、そのための指標が有効です。指導者の主観的な評価も必要ですが、より細かいところまで把握するには専用の指標が必要でしょう。また、普段のトレーニングは指導者の主観的チェックで行い、合宿や強化練習期など特にトレーニング量の増加する時期に指標を用いることで、疲労の程度や体調の回復具合を知るという利用方法もあります。

しかし、指標を用いる場合にはその数値だけを判断するのではなく、選手の性格や立場など選手のバックグランドをよく理解した上で評価することが重要です。

@簡単な把握方法

●ウエイトトレーニングでの把握方法

 ウエイトトレーニングでは、W-UPでコンディションが把握できます。まずは挙上速度やテンポ,フォームなどを観察し、大体のコンディションを把握します。次にチェックする点はrep(反復回数)で、1RM(1回しか挙上できない重さ)の70%のウエイトを使用して8回反復できなければ、その日に1RMは挙上できない可能性があると判断できます。もう少し正確に把握するには、W-UP終了後に1RM80%で行い、5回挙上させる方法を試みてもよいでしょう。また、部員数が多いチームでは固定したパートナーを組ませ、評価に個人差が生じないようにします。

●グランドでの把握方法

 その日のコンディションは短距離走にでやすく、30m走などで把握できます。この方法はある程度の過去データが必要になるため、強化期間にこの方法を実施するのであれば、それ以前から測定を開始しておきます。

A注意点

 上記したコンディションの把握方法は、主観的,客観的評価であるため、必ずしもサッカーに反映されるとは限りません。サッカーのパフォーマンスには様々な要素があり、指標や測定数値だけでは完全に結びつけることはできません。例えば、体に疲労感があってもいいプレーができることもあります。これらの把握方法は、コンディショニングの参考にするためのものであって、これが全てではないことも理解しておかなくてはなりません。

6 実際の調整方法

コンディションが把握できたら今度は、低下している要因に対して適切なアプローチをしていきます。いくらコンディションを把握していても、バットコンディション(BC)への対処策が適切でなかったり、策を講じなければコンディションを把握している意味がありません。

ここではBCを改善するリコンディショニング方法を説明していきます。それぞれの要因に対して、BCを引き起こすファクターが必ず存在しますので、明確に理解してコンディショニングに望みましょう。

@低温浴による疲労回復方法

 疲労感が体に残るということは、乳酸(疲労物質)が滞留していることを示します。本来ならば十分な休養や睡眠,運動後のトリートメントで除去されるはずなのですが、何らかの理由により滞留し疲労感をもたらしたと思われます。このような場合、ストレッチングや軽いジョギングと併用して低温浴を行います。

●低温浴の効果

低温浴の効果は、温熱によって筋中の血流量が増加することによってもたらされます。よくある誤説で「高温(42℃以上)に入浴したほうが疲労回復しやすい」と思われていますが、高温浴では皮下血流量が増加するため、代償として筋中の血流量が減少してしまいます。生体反応からしても、低温浴(3740℃)の温度が神経的なリラックス効果が得られやすく、疲労物質の除去効率がよいとされています。さらに効果的な入浴方法として、5分程度で一度湯から上がり、また入浴するほうが連続でつかっているよりも保温効果が持続します。

図1:運動後はシャワーだけで済ますのではなく、低温浴で四肢を伸ばし心身共にリラックスさせます。広い浴槽であれば水中ストレッチングも行いましょう。低温浴中には筋温が適度に上昇し、可動域も拡大しているため効果的です。

図2:気泡浴は通常の低温浴よりもリラックス効果が得られやすく、全身を心地よくマッサージしてくれます。

*強化合宿を行う場合など、こういった十分な疲労回復環境があるかどうかということも、合宿地選びの際に注意しなくてはなりません。

A筋肉痛への対処法

 ハードなトレーニングやウエイトトレーニングには、筋肉痛がつきものです。しかし、適切に対処することによって回復を促進し、円滑に後日のトレーニングに望むことができます。高強度のトレーニングで筋肉痛が発生する可能性のある場合、ストレッチングを行うことは当然の事ながら、運動後に素早く冷浴(15℃以下)を行います。これは運動終了後から、ある程度時間が経過すると効果がなくなってしまいますので、運動直後に行うようにします。また、筋線維の補修成分であるタンパク質(アミノ酸)や他の栄養素の補給も重要になりますし、筋肉痛の回復には睡眠が大きく関与してきます。筋線維の修復作業は睡眠中に最も活発に行われ、吸収した栄養素によって回復していきます。筋肉痛への対処法は、こういった多方面からのアプローチによって成り立っているため、各要素を的確に遂行できたときに大きな効果が望めるでしょう。

●冷浴の効果

 まずはストレッチングにより緊張状態にある筋をリラックスさせ、体にトレーニングが終了したことを伝えます。冷浴の効果は、筋温を瞬時に下げることにより得られ、出浴後には低下した筋温に対して生体が反応し、その反動で血流が活発になります。運動後は筋温が上昇しており、運動終了後にもエネルギーが奪われて疲労してしまうため、冷浴により筋温を下げて素早く常温に近づけます。入浴時間の目安は5分程度で、基本的には選手の主観に頼ります。

図1:下半身だけではなく上半身のウエイトトレーニングも行ったときなど、全身がつかるように入浴して筋温を瞬時に下げます。水温が極端に低い場合(氷風呂)は、手袋や靴下をはめて凍傷を予防してから入浴します。

図2:これはスポーツ現場でも比較的、容易に用いることのできる冷浴です。運動終了後すぐにポリバケツに氷水を入れ、下半身だけ冷却します。特にハードなトレーニングを行う場合には取り入れたほうがよいでしょう。

●栄養補給

 栄養補給(プロテインなどのサプリメント)するタイミングは、色々な説がありますが配合されている成分によって異なるため、栄養士に相談することをお勧めします。

B食事によるリコンディショニング

 スポーツ選手にとって食生活は、競技成績に大きく関わってきます。食事はコンディションを維持,向上させる重要な要素であることはいうまでもありませんが、あまりに日常的なため軽視されやすい要素でもあります。各個人で食事の好みは異なりますが、トレーニングと同じで嫌いだから食べないというわけにはいきません。また、それぞれの体調によっても効果的な食事は異なりますので、現在の体調を把握し適切な食事を行います。

●カゼを早く治す食事

 カゼをひいた場合、基礎代謝が亢進してエネルギー消費量が増加するので、十分な栄養補給が重要です。また、胃への負担も考慮して、4〜5回に分けて食事したほうがよいでしょう。

@十分に水分補給する

発熱や微熱が続く場合、また下痢を伴う場合は特に水分補給が重要です。補給する飲料は口当たりのよいスポーツドリンクなどで、糖質やミネラルも一緒に補給できます。

A効果的な食事

なま物や冷たい物は控え、消化がよく水分の多い温かいものにします。(雑炊,うどん,豚汁)

Bビタミンをとる

カゼに対し抵抗力をつけるためには、ビタミンが不可欠です。果物は口当たりもよく、ビタミンが多く含まれています。また、市販されている野菜ジュースや果汁ジュースでも代用できます。(オレンジ,キウイフルーツ,グレープフルーツ)

*食事量が減ると筋量が落ちてしまうので、何回かに分けて食べやすいものを食べましょう。

●骨折したときの食事

 骨折したときは普段の生活での動作も限られ、代謝が低下します。骨折前と同じような食生活では、栄養の過剰摂取になり体重が増加してしまうこともあります。骨折部では修復作業が行われるため、修復成分(カルシウム)を積極的に摂取する必要があります。

・栄養の過剰摂取を防ぐ

調理方法を変化させることでもカロリーは抑えられます。また、食事回数を2回に減らすことは、かえって体重を増加させやすくしてしまうので、1日3回規則正しく食事することが大切です。

・カルシウムを多く含む食品

牛乳,ヨーグルト,チーズ,ちりめんじゃこ,干しエビ,あさり,豆腐,納豆,小松菜,モロヘイヤ,パセリ,ひじき,昆布,もずく,切り干し大根,ごま 

・カルシウムの吸収を助ける食品(ビタミンD

レバー,いわし,かつお,キノコ類

・カルシウムの吸収を妨げる食品(リン)

レトルト食品,インスタント食品,アルコール

・集中力を回復させるサプリメント

トレーニングでも技術的,戦術的な練習では、身体疲労と同時に脳など神経系も疲労します。脳のエネルギー源は主にブドウ糖であり、脳が疲労している場合や集中力が低下している場合には糖質の補給が重要です。また、運動すると血液中のバリン,ロイシン,イソロイシンといった分岐鎖アミノ酸(BCAA)が減少し、脳が疲労を感知して筋活動が制御されるため、タンパク質の摂取も疲労には望ましいと思われます。その他にも、神経伝達物質の生成や神経細胞の合成,修復に関係するビタミン,カルシウム,マグネシウム,ナトリウム,カリウムなどのミネラルも重要です。

C患部のケア

 障害や外傷が発生した場合など、十分に回復を待つことも大切ですが、その回復期を早める努力も必要です。患部へのケアを行った選手と行わない選手では、大きく復帰時期に差が生じ、復帰してからの動きにも歴然の差がでるでしょう。しかし、患部のケアは誤った方法で行うと逆効果になり、取り返しのつかない事態にも発展する可能性があるため、自己判断はしないようにします。

●捻挫や打撲には交代浴

交代浴とは温浴と冷浴を交互に入浴するもで、理論的には血管の拡張と収縮を繰り返すことによって血流量が増大し、患部の治癒機構が早く改善されるというものです。実施方法は温浴(40℃前後)と冷浴(5℃以下)の浴槽を用意し、両者の温度差は必ず30℃以上は必要です。サッカーでは足関節の捻挫や打撲などが多いため、バケツなどを浴槽代わりにしてもよいでしょう。入浴する順番は温浴からで入浴時間は3分間、次に冷浴を1分間でこれを交互に5セット(20分間)行います。これは急性期(受傷後2日以降)でも慢性期でも効果があり、早期復帰にとても役立ちます。

図1:冷浴と温浴を用意し、例浴は5℃以下で温浴は40℃前後に設定します。これは繰り返し行っていると温度が変化してしまいますので、時々チェックするようにします。

図2:温浴が3分間で冷浴が1分間を交互に5セット行います。温浴と冷浴の切り替えは素早く行い、あまり間を空けないようにします。

Dメンタルトレーニング

 メンタルトレーニングでは自らの精神をコントロールし、余計な緊張による精神的,肉体的疲労を軽減させることができます。サッカーの試合では緊張状態が長時間続き、試合中は常に精神が高ぶった状態になります。そのため試合終了後も精神が高ぶってしまい、交感神経の緊張状態が続き、心身共にリラックスできずに疲労が残ってしまうことがあります。

 これらの疲労を防ぐためにも自らの精神安定方法を習得し、いいイメージは記憶して悪いイメージは引きずらないようにします。これが正確に実施できるようになると、精神的なコンディションが安定し技術的な調子や集中力が高まります。また、メンタルトレーニングには色々な目的がありますが、今回は緊張を緩和させるリラクゼーションについて説明します。

●リラクゼーション方法

・リラックスできる状態をつくる

騒音など集中力を妨げる要素をなくし、室温などリラックスできる環境を整えます。

・横に寝た状態

人間は横に寝た状態が一番、覚醒水準が低下するためリラックスできます。

・自己のプレーを客観的にイメージ

他人ではなく自分のプレーをイメージし、ゆっくりとプレーを思い浮かべます。

・1回5分以内

長時間イメージするのではなく、簡潔に5分以内で終わらせます。

・睡眠前が効果的

興奮状態では寝つきが悪く、寝られても浅い眠りになってしまいます。そのような状態に対してリラクゼーションを用いると効果的です。

7 総論

 今回、特集したリコンディショニングはコンディショニングと同様、色々な要素が複雑に絡みあっています。ある一点だけに対してアプローチしても、ほとんど効果がありません。また、どの要素が欠けてもピークパフォーマンスは保つことができません。このようにコンディショニングやリコンディショニングは、無数の要素から成り立っているため、選手の意識が重要になってきます。いくらコンディショニングスタッフが最善を尽くしても、実際にプレーしているのは選手であり、体調を正確に把握できるのも選手自身しかいません。今回の特集で一番重要なことは、選手自身がどれだけコンディショニングやリコンディショニングを重要視できるかだと思います。この意識付けをできるかどうかは、チームの指導者やトレーナーにかかっており、確かな情報を分かりやすく選手に伝えなくてはなりません。しかし、最初から全てを理解することは非常に困難であるため、複数ある要素を少しずつ理解していきましょう。

 

 

 

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