アスレティックトレーナー チーム
TARSEES TRAINER

アスレティックトレーナーATHLETIC TRAINER

TOP PAGE

AT STUDY

 

 

 

 

 

 

緊急時のスポーツアセスメント

1 初期評価について

アスレティックトレーナーは現場において、いかなる緊急事態にも冷静に迅速な判断と行動が求められます。スポーツ現場での緊急事態の状況としてあげられるのが、選手の生命を脅かす傷害が発生した場合です。初期評価ではこれらの状況を迅速に判断し、適切に行動しなくてはなりません。これらは日々の準備やスタッフ間の意識統一なしには不可能といえます。スポーツ現場に携わるものとして、アスレティックリハビリテーションやトレーニングも大変重要なことですが、選手の生命を守ることが最重要であることはいうまでもありません。

1.傷害が発生したら何をすべきか

傷害が発生した際には、最初に二次的な傷害が患者及び周囲の人々に起こらないように状況を統制しなくてはなりません。最初の処置は移動を最小限に抑え、迅速かつ適切な対応を行います。激しい外傷を伴う場合には、判断に長い時間を取ると死亡率が高まります。明らかに医学的症状が主要な外傷であれば、救急車との連携を重視すべきでしょう。

●傷害発生時の確認優先順位(頚椎の損傷に注意)

@最優先

1.呼吸器,心臓血管の障害:顔面や首,胸部の損傷

2.外部の激しい出血

 

A優先

3.腹膜後の損傷:ショック,出血

4.腹膜内の損傷:ショック,出血

5.頭蓋,大脳,脊髄損傷:観血か非観血かを観察

6.熱傷:広範囲にわたる皮膚の損傷

 

B若干の優先

7.尿生殖器:出血,血液溢血

8.抹消血管,神経,運動機能の損傷:観血か非観血かを観察

9.顔,首の損傷(1と2を除くもの)

10.凍傷

 

C特別なもの

11.骨折,脱臼

12.破傷風予防

 

2.初期評価

選手が鎖骨よりも上に外傷を受けた場合、脊髄損傷や頚椎損傷を考慮しなくてはなりません。まず、患者に話しかけて、その返答を確認します。通常の声で返事を返し、質問に対して適切なものであれば気道は十分で、脳にも十分な還流があることが仮定できます。次に、発生時の状況を聞きだしますが、意識を失った状態であれば周囲に居合わせた人々に尋ねましょう。また、同時進行で話している間に「動けるか」「発作があるか」などを観察します。患者が動けるのであれば少なくとも部分的な意識があり、明らかな神経障害がなく、心肺機能も十分であることを意味しております。動けなくて意識も無い場合には、神経障害がありなんらかの主たる機能障害があることを呈しています。発作がみられる場合には全身的,心理的な機能損失を意味しています。

脊髄損傷や脳への損傷が疑われる場合には、素早い評価として舌を突き出すような簡単なテストを行います。

緊急時の手順

@頭部と頚椎の固定(動かしてはならない)

A患者に話しかけて意識レベルを確認する

B呼吸停止,心停止時のみ患者を動かす

C気道が確保されているかを確認する

D心拍数を確認する

E出血,ショック,脳脊髄損傷を確認する

F瞳孔を確認する

G脊髄損傷を確認する

H患者のポジション

I頭部外傷の確認

J熱障害

K動作の評価

 

意識レベル(@ A B)

患者に脊髄損傷が無いことを確認した後、意識があるかどうかを確認しましょう。混乱や錯乱,昏睡状態でないかなど、正しい受け答えが出来るかどうかを確認します。

 

気道の確保(C)

呼吸や脈拍,内外出血やショック状態をチェックします。この初期評価は心肺蘇生法のABCairway/breathing/circulation)と呼ばれています。また、優先すべきことは十分な気道確保,血液動態の安定を維持することです。そして、明らかな出血には止血の処置を施します。

 

Airway

チンリフト法で気道確保し、仰向けの状態で指先を下顎の下にあてて、ゆっくりと顎を前方に挙上します。頚椎損傷が疑われる場合、むやみに頭部を動かすと危険が伴うので注意が必要です。

 

Breathing

胸が動くかどうか,呼気が鼻や口から出ているかを確認します。
呼吸をしていればその回数や深さを観察し、呼吸がなければ直ちに人工呼吸法を行います。

 

Circulation

人差し指と中指のはらで頚動脈部を触診し、耳を直接胸に当てて心音を聞いて拍動を確認します。心停止がある場合はCPR:cardio pulmonary resuscitation=心肺蘇生法を行います。

 

気道の確保は、口や胸部を見て耳を近づけて聴いて自発呼吸を確認します。呼吸は大人で1分間に10回〜25回,子供で2030回が基準となります。もし、自発的な呼吸が行われていなかったり心拍動が無かったりしたら客観的な死が約4分後に訪れるでしょう。また、呼吸と心拍動が4〜6分までに回復しなければ脳へのダメージが残るでしょう。

 

注意したい呼吸パターン

過呼吸

深くて数が多い呼吸

()呼吸

数が多い呼吸。1分間に20回以上

徐呼吸

数が少ない呼吸。1回の呼吸量が多い。1分間に10回以下

無呼吸

一時的に呼吸運動が停止した状態

チェーンストーク

(Cheyne-Stokes)呼吸

深くて数が多い呼吸と無呼吸が交互に来る危険な呼吸

努力呼吸

顎や肩などを使った呼吸

 

 異常がみられる場合には、気道の圧迫,舌根沈下,気道の閉鎖,異物の混入,アナフィラシキー性ショック(アレルギー反応),大気汚染,煙などの原因を探します。異物を飲み込んでいる場合、意識があってセキや嗚咽があれば、そのまま観察を続けます。以降、肺に空気が入らなかったり意識がなくなったりするようであればハイムリック法を試みましょう。

 

ハイムリック法(上腹部圧迫法)

患者の上半身を起こして後ろに回り、お腹へ自分の両手を回します。片方の手で、握り拳を作りみぞおちの少し下に親指を当て、その上を もう一方の手で握ります。そして、両腕をすばやく上内方に引き絞るようにしてお腹を圧迫 します。

*ハイムリック法は、成人には推奨されますが、お腹の臓器を傷める危険性があるため「乳幼児や妊婦」に行ってはいけません。「乳幼児や妊婦」には、背部叩打法が推奨されています。

 

血液循環,心拍動の確保(D E)

 脈が確認できなければ患者は心拍動を行っていないと仮定でき、ただちにCPRを行うべきでしょう。また、脈が確認できたら、その速さ,強さ,リズムを評価します。血液の十分な循環の評価は小指球を絞ることで簡単に確認できます。方法は小指球を絞った後に開放し、色が2分以内に戻らなければ毛細血管の再充血が遅れていることを示します。

 また、脈の速度異常はショック状態の可能性を現しています。さらに、顔や皮膚の蒼白は30%以上の血液不足を示しています。ショック状態が進行すると意識を失う可能性があるので十分に注意しましょう。

 

ショック状態のサインと徴候

1.速度異常の心拍動

2.冷たい,ひんやりと湿っている,青い皮膚

3.あふれ出す汗

4.のどの渇き

5.異常な意識レベル

6.広がった瞳孔

7.吐き気,嘔吐

 

 脳脊髄液や血液が耳から漏れている場合、それは頭蓋骨骨折を意味しています。患者に頚椎損傷がなければ患側を下に傾けて排水を促進させます。

 

瞳孔の確認(F)

 瞳孔のチェックは形や反応をペンライトなどでチェックします。正常な瞳孔はライトの強さや焦点距離に反応します。瞳孔は暗い環境や長い焦点距離で拡張し、明るい環境や短い焦点距離で収縮します。通常、瞳孔は均一な円型で均一に広がったり小さくなったりします。しかし、中枢神経傷害は不均一な瞳孔の原因となります。しかし、健常であっても等しくない瞳孔をもつ人も稀にいるので、環境や状況を考慮して判断しましょう。

 瞳孔の反応は活発な状態(正常),鈍い状態,無反応な状態に分類されます。また、卵型,楕円型,拡張したまま動かない瞳孔は頭蓋内圧の上昇を意味しており、脳の虚血や酸素欠乏症の最後も同様の反応がみられます。

 

拡張

収縮

 

脊髄損傷の確認(G H)

脊髄損傷の徴候

1.首の痛み,硬直

2.頚椎の筋スパズム

3.非対称性で異常な位置関係

4.呼吸困難(胸の動きが無い)

5.勃起

6.無意識の状態

7.痺れ,うずき,焼付け

8.筋力低下,麻痺

9.腸や膀胱の調節不能

 

 脊髄損傷の疑いがある場合、クイックテストとして、舌を突き出させたり手足の指を動かせたりすることで、脳と脊髄の素早い評価ができます。

 

頭部外傷の確認(I)

頭部外傷の危険な徴候

1.頭痛の増加

2.不均等な瞳孔

3.嘔吐,吐き気

4.方向感覚の喪失

5.異常な意識レベル

6.血圧の上昇

7.脈拍の減少

8.痛みに対する反応の減少

 

 頭部外傷の場合、受傷直後に異変が見られなくても、断続的なチェックを必要とします。少しでも異常が確認された場合には迅速に医療機関に搬送しましょう。

 

熱障害の確認(J)

 生命を脅かす熱障害を疑うならば、熱射病と日射病を考慮する必要があります。高温多湿な環境や、その環境になじめていない選手に起こります。体温が42°を超えると脳にダメージを受け、適切な処置を施さない場合には死に至ることもあります。これらの状態には、それに至るまでに様々な徴候がみられるので、見落とさないように注意しなくてはなりません。

熱障害の危険な徴候

1.筋痙攣

2.極度の疲労と虚弱

3.身体の協調性欠如

4.頭痛

5.理解力,思考力の減少

6.めまい

7.吐き気,嘔吐

8.反応時間の減少

 

 

熱障害の症状と処置方法

 

症状

処置方法

日射病

頭痛・めまい・はき気・嘔吐・顔は青白く大量の汗が出、皮膚は冷たくじっとりした感じになります。

@    日陰で涼しい場所に移動させ衣服をゆるめ安静にさせます。

A    薄い食塩水(水500mlに対し塩5g)又はスポーツドリンクを飲ませます。

B    血圧低下のために足を30cm程度高くして寝かせます。

熱痙攣

日射病と同様、頭痛・めまい・はき気・嘔吐の他、腹痛・身体の各部分で筋肉の痛みを伴う痙攣が起こることがあります。

熱疲労

頭痛・めまい・はき気・嘔吐・顔は青白く発汗などで、体温は40℃以下で、軽度の意識障害が起こります。

@    日陰で涼しい場所に移動させ衣服をゆるめ安静にさせます。

A    濡らしたタオルを当てたり、扇風機などで風を送ったりして体を冷やします。わきの下・首・足などを冷やすのが効果的です。

B    意識があるときは薄い食塩水(水500mlに対し塩5g)又はスポーツドリンクを飲ませます。

熱射病

頭痛・めまい・はき気・嘔吐があり、顔が赤くなって呼吸が荒く、皮膚は熱くてサラサラと乾いた状態で汗が出ません。体温は40℃以上で意識障害・けいれん・内臓に重い障害が出るなど、生命への危険を及ぼすことがあります。

症状の大きな見分け方として、生命の危険のある熱障害は、日射病・熱けいれん・熱疲労とは異なり、顔が赤く、体温が40℃以上になり汗が出なくなります。この状況では、適切な処置と同時に医療機関への搬送準備が必要です。

 

運動機能の評価(K)

 患者が頚椎損傷等の生命を脅かす傷害が無いことを確認した後、骨折や捻挫,肉離れ等の外傷を確認します。初期評価において、これらの外傷は致命的ではないので、緊急時での優先順位は低くなります。

 

3.緊急時の評価時間の目安

気道の確保

5〜7秒

呼吸の確認

5〜8秒

脈拍の確認

2030

出血の確認

2030

神経的な損傷の確認

1020

合計時間

6095

初期評価の間はメッセージ伝達、他の援助者を呼びましょう。いかなる場合に誰が居合わせてもいいように、全てのスタッフが緊急時の対応マニュアルを習得しておく必要があります。

 

4.緊急連絡事項の整理,確認

メッセージ,電話での情報伝達で確認すべき点

1.電話をしている人の名前

2.使用している電話

3.緊急のタイプ(何で緊急なのか)

4.緊急の程度(大至急,至急,急ぎ等)

5.正確な場所と施設名

6.救急車のルート(運動施設内,施設まで)

7.到着までの時間を確認

 

処置や救急車の手配をしている間にも、患者に対して生命を脅かす状況になっていないかを注意しなくてはなりません。これらは練習しないで緊急時に対応できるはずも無く、練習や日々の確認こそが緊急時に適切な処置を可能にします。

待機している間の注意事項

1.気道を妨げていないか

2.呼吸困難になっていないか

3.心停止していないか

4.激しい熱傷を負っていないか

5.頭部の損傷はないか

6.頚椎の損傷はないか

7.激しい出血はないか

 

 

 

 

 

 

TARSEES TRAINER 本サイトの記載内容についての無断転載を禁じます。TARSEES TRAINER