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足関節捻挫

1 はじめに

足関節捻挫はスポーツ現場では頻繁に発生する代表的な急性外傷であり、リハビリテーションや応急処置として扱う機会の多い疾患となります。しかし、足関節捻挫は前十字靭帯損傷や腱板損傷のように選手生命を直接的に脅かす外傷ではないため、軽視される傾向にあります。そのため、再発率も非常に高くなっており、「捻挫は癖になる」とまで言われております。実際に球技の選手では捻挫経験がない人の方が少なく、それも繰り返し受傷しているケースがほとんどです。また、その中でも未だに違和感や痛みがとれないと感じている選手が大勢いるようです。適切な処置とその後のケアを軽視してしまい、結果的には大きく選手のパフォーマンスを低下させてしまう足関節捻挫です。ここでは足関節の細かい構造と機能を説明し、その対処方法までを紹介していきたいと思います。

2 足関節の構造と機能

@骨

 下腿の骨は断面が三角柱状の脛骨と、脛骨に対して添木状の細い腓骨からなり、その下に26個の骨で足部を構成しております。足部の骨は脛骨を経てくる体重の衝撃を吸収するように縦のアーチと横のアーチを形成し、衝撃を吸収する配列となっています。 足部はリスフラン関節(足根中足関節)とショパール関節(横足根関節)によって、前足部,中足部,後足部に分けられます。前足部は趾骨と中足骨からなり、中足部は楔状骨,舟状骨,立方骨からなります。後足部は腓骨と踵骨からなります。足部の骨の特徴としては、距骨はほとんどが軟骨で覆われており、筋腱が一本も付着していない骨になっています。

足部の骨格

足部の解剖図

@

踵骨

A

距骨

B

舟状骨

C

立方骨

D

第三楔状骨

E

第二楔状骨

F

第一楔状骨

G

中足骨

H

基節骨

I

中節骨

J

末節骨

 

 

A関節

 足関節は距腿関節とも呼ばれており、脛骨,腓骨,距骨からなります。関節の種類としては蝶番関節であり、可動性の高い関節です。距骨と踵骨からなる距踵関節は距骨下関節とも呼ばれ、複雑な関節運動を行っております。内反と外反の動作は距骨下関節と横足根関節(ショパール関節)でおこる動きであり、滑走関節に分類されます。その他、足根中足関節(リスフラン関節)も滑走関節ですが、動きはほとんどありません。

足部の関節図

足部の関節

 

B筋腱

下腿から足部前面にかけて付着する筋腱は、前脛骨筋,長母趾伸筋,長指伸筋が走行しており、これらは全て背屈筋です。後面には底屈筋の代表格であるアキレス腱があり、下腿三頭筋の終末として踵骨隆起部に付着しております。その他にも後脛骨筋,長母指屈筋,長趾屈筋があります。

C靭帯

足関節は下腿の形状をみても分かるように、強力な筋組織よりも微力で細長い筋が多く存在します。そのため、足部の安定性は靭帯に依存することが多く、数多くの靭帯によって支持性が保たれております。主な靭帯としては、内側に前脛腓靭帯,三角靱帯,後脛腓靭帯があり、外側には前距腓靭帯,踵腓靭帯,後距腓靭帯が存在します。

 

足部の靭帯図

 

足部の靭帯

 

Dアーチの機能

 足部のアーチには縦アーチと横アーチの二種類あります。さらに縦アーチは内側縦アーチと外側縦アーチがあり、横アーチには足根横アーチと中足横アーチがあります。アーチを保持するには骨性の配列と多くの靭帯及び足底筋膜です。とくに足底筋膜は踵骨結節から基節骨に付着しているため、中足趾節関節が背屈すると足底筋膜が緊張し、巻き上げ機現象(ウィンドラス・メカニズム)が生じます。

足部の巻き上げ機現象図

3 足関節内反捻挫の受傷機転

 スポーツ現場で発生する足関節捻挫のほとんどが内反捻挫であり、その原因もいくつか考えられます。骨的要素では外果と比べて内果が短いことで内反の制限は少なくなります。また、背屈位に比べて底屈位では、脛骨と腓骨との間に距骨が挟まれる割合が少なくなるので、安定性が低下します。筋的要素では、腓骨筋群が底屈位では機能しにくいという点があげられます。これら足関節の構造上の特徴から、足関節内反に対する制動が弱いとされています。

 さらにスポーツにおける内反捻挫の発生には、動作時の運動連鎖が大きく関係しております。ジャンプ動作では不整地への着地によって内反強制されたり、ダッシュ動作からの切返しで踏み込み足が内反強制されたりと、スポーツで頻繁に見受けられる動作によって発生する可能性があります。

4 重症度の判断と目安

 足関節捻挫の重症度は、受傷後のストレスX線撮影で距骨傾斜角や距骨前方引き出し量などを求めて定量化によって分類する方法もありますが、一般的には臨床症状によって軽度(T度),中等度(U度),重度(V度)に分類されます。

下記の表には各重症度の症状と治療手段および大まかな治療期間を提示しております。軽度は靭帯の一部が瞬間的に伸張されて機能的な損失がないもので、痛みや腫脹が軽度の状態です。中程度は靭帯の部分断裂であり、足関節外果周辺に痛みと腫脹が出現するが、関節不安定性はわずかとなります。重度は靭帯の完全断裂であり、受傷後の痛みと腫脹が強く外果周辺だけでなく内果にも痛みが出現することがあります。また、明らかな関節不安定性が出現し、場合によっては観血的(出血を伴う)治療を選択する場合もあります。

 

重症度

損傷の程度

疼痛

腫脹

対処・治療

回復期間

軽度

(T度)

靭帯の瞬間的な伸張

機能的損失はない

軽度

軽度

RICE処置

1W以内

中等度

(U度)

靭帯の部分断裂

機能的損失

強い

さまざま

保存療法

3W

重度

(V度)

靭帯の完全断裂

機能的損失と不安定性

強い

強い

保存療法

手術療法

612W

5 アスレティックリハビリテーションの概念

 足関節捻挫に対するアスリハは競技復帰を目的とすること以外にも再発や二次的機能障害を防止するような配慮が必要となります。そのため、損傷された靭帯を保護し、痛みや腫脹を軽減させながら運動機能の獲得が求められます。

@   損傷された靭帯の保護

靭帯保護のため、損傷された靭帯に加わる伸張ストレスを排除します。患部が回復する前に内反の動作を行ってしまうと不安定性を残存させる結果となり、スポーツ活動時に足関節周囲の痛みを引き起こしやすくなってしまいます。

A   足関節背屈可動域制限の防止

背屈制限は捻挫後の二次的な足関節周囲の痛みを惹起するだめでなく、スポーツ動作時における荷重位での十分な膝関節屈曲を阻害することになります。また、受傷後の腫脹が残存し、背屈制限を助長してしまうことがあるので注意が必要です。

B   足関節周囲筋の筋力強化

 足関節は患部保護のために固定するべきですが、この期間が長過ぎると足関節周囲筋の筋力低下を招いてしまいます。とくに足関節内反を制御する腓骨筋群や足部アーチの保持に関係する筋群の筋力低下には注意が必要です。

C   固有受容感覚器の改善

長期にわたる不活動や運動を制限するような腫れがある場合など、固有受容感覚が部分的に損なわれてしまうのです。靭帯に損傷を受けると全体的な神経と筋系のコントロールが低下するといわれており、受傷後にはバランストレーニンが重要となります。

6 アスレティックリハビリテーションの流れ

@疼痛と腫脹の軽減

 足関節捻挫の対処は損傷の程度に応じて進めていきますが、疼痛と腫脹の軽減は損傷の重度,軽度に関わらず、共通の目的となります。T度の捻挫と判断した場合にはRICE処置を行いますが、足関節が腫脹の進行によって可動域制限がでるまえにU字パット等で圧迫を行います。また、足関節はニュートラルポジションして断続的なアイシングを就寝までに繰り返し、2日間程度は続けましょう。U度の場合でも対処方法はT度と同じですが、異なるのは固定期間です。T度では原則的に約2日間程度ですが、U度では靭帯の断裂を伴っているため出血があり、腫れが目立つので一週間程度と長くなります。T度と同様に2日間程度アイシングを繰り返しますが、3日目以降は腫脹の状況を見ながらストレッチングを行っていきます。

A可動域回復のトレーニング

タオルとチューブを使用したトレーニングは筋力強化という段階ではありません。いわば強化トレーニングに備えた体操といえます。痛みを伴わない範囲で足関節を動かし、全可動域において足関節周囲筋の促通を行うことが目的です。これは痛みを感じない範囲で行うことが前提です。痛みを感じた状態で行うと患部の悪化のみならず、目的の筋の使用を避けて代償運動が起こってしまうのです。これでは形だけの意味のない動作になってしまいます。

タオルギャザー

腓骨筋群トレーニング

後脛骨筋トレーニング

 

■ 復帰に向けた漸進的プログラム比率 ■

■ 復帰に向けた誤ったプログラム比率 ■

  

足関節の固定と周囲筋の筋力強化と柔軟性の回復は相反する項目です。したがって、固定期間が長すぎても、筋力強化や柔軟性回復のトレーニングが早すぎても、競技復帰は遅くなってしまうのです。固定期間が長すぎて可動域と筋力が不十分な場合、痛みはおそらく消失していますが再発や違和感,促通不足による二次的傷害の発生確率が高くなってしまします。反対に固定期間が短く積極的過ぎる機能回復訓練を行うと、腫脹を長引かせて疼痛の除去に時間がかかってしまいます。回復に向けて効率的に望むには、前進的に安静,固定を減少させ、反対に徐々に筋力と柔軟性の回復を図っていくことがアスレティックトレーニングには重要となります。

B筋力&バランストレーニング

 筋力とバランストレーニングの本題に入る前に、発生原因の確認をおこなっておきましょう。足関節捻挫の受傷機転は様々ですが、その多くが疲労時の集中力低下による判断ミスが要因と考えられます。また、足関節捻挫は靭帯や筋腱だけに損傷が起きているのではなく、関節包の中に存在する神経終末にも影響を及ぼします。従って、予防や捻挫からの復帰のためにも、疲労しにくくする筋力トレーニングと、疲労しても崩れにくいバランストレーニングが求められるのです。

この両者は一種類のトレーニングでも、種目を選べば筋力とバランスを複合的に強化することが可能であり、大掛かりな器具も必要としないので取り入れることが容易です。

 

ボール キャッチ&リリース

バランス マット

足の趾でボールをキャッチし、器の中へ入れる。柔らかい小さいボールからはじめ、ビー玉等の硬い玉へと難易度を増していく。

バランスマットに片足立ちとなり、体勢が傾かないようにバランスをとる。両手で何かを持ったり目を閉じたりして難易度を増していく。

 

バランス ボール プレス

バランス キャッチボール

バランスボールを押しつぶすように力を入れていく。押しつぶす力が大きくなればなるほど不安定になる。軸足も不安定にしていくと、さらに難易度が増加する。

不安定な状態でキャッチボールを行う。ボールの軌道によってバランスが崩れるので、リカバリー能力が重要である。サッカーではリフティング,テニスではラケット,バスケではドリブルなど、各種の競技特性を徐々に織り交ぜていく。

 

バランス ステップ

    

患側でのジャンプ動作を行う。当然だが、このトレーニングにいたる前に通常の両脚ジャンプや簡単なステップ動作を行い、段階的に高めていく必要がある。足関節捻挫で最も不安な動作は、サイドステップなどの横からの外力である。最初は低いジャンプから動作を確かめるように行い、ある程度なれてきた段階でハードルを使用して高さをあげていく。導入段階ではリスク管理としてテーピングの使用をおすすめする。

 

7 足関節捻挫のテーピングについて

 テーピングは関節を固定させ、運動による患部の負担減少や再発の防止に大きく貢献してくれます。しかし、テーピングもよい効果ばかりではなく、使用方法や使用期間によっては悪影響を及ぼすこともあります。今回はテーピングの悪影響に着目し、説明していきたいと思います。

@テーピング依存症への注意

テーピングを使用する際の弊害として、大きなポイントは関節の動きを制限させることで起きる固有受容感覚器への悪影響です。本来ならば関節をコントロールするべき筋機能が、テーピングの使用によって廃用性弱化を起こします。具体的に説明すると、固有受容感覚器は筋や腱に存在し、関節の位置や運動方向,運動速度等を感じるセンサーの役割を果たしております。そこで受け取った情報は、脳に伝達して様々な運動を行う際のサインとなります。しかし、これらがテーピングの使用によって、固有受容感覚器は働かなくても損傷が起きない状態となり、その状況に身体が悪い意味で適合していってしまうのです。この適合が起きてしまうほどの長期間のテーピング固定は、テーピング不使用時の機能低下を引き起こし、不安感も大きなものとなってしまいます。これが一部の選手にみられるテーピングや装具への依存症メカニズムです。

A関節硬化症への注意

 テーピングによって長期間固定していると、関節可動域の低下を引き起こします。とくに足関節背屈制限は顕著に現れ、両足を揃えた状態で踵を浮かさずにしゃがみ込めない選手を大勢見かけます。スポーツでは足関節の背屈動作が非常に重要であり、パワーポジションでは足関節の背屈可動域が必要となります。背屈制限のある選手はパワーポジションで重心の後方移動を防ぐために股関節外転に構えます。この姿勢はknee-in/toe-outを呈しやすく、膝関節の傷害の原因ともなります。また、重心の後方移動を防ぐために上体を前傾させるという代償動作を行うため、腰痛の原因ともなります。

 このように足関節の可動域制限は、他の傷害への波及性が高い問題なのです。そのため、適切な時期でのテーピングや装具の利用停止を、段階的に行っていくことが非常に重要とえます。

 

正常な足関節背屈動作によるしゃがみ込み

足関節背屈動作に制限のあるしゃがみ込み

足関節の背屈が十分であり、腰の位置も十分に下げることができる。また、重心も後方に移動してしまうことはない。

足関節の背屈が制限されているため、膝関節の屈曲が行えない状態である。従って、腰の位置も高くなり、後方重心となる。

 

足関節背屈制限の代償動作@

足関節背屈制限の代償動作A

股関節を外転,外旋させることで腰の位置を下げ、後方重心になることを防ぐ。しかし、この位置はknee-in/toe-outを呈しやすく、膝関節の傷害の原因ともなる。

足関節の背屈制限による重心の後方移動を防ぐために、股関節の屈曲角を増加させて重心を前方に移動させることでバランスを保つ。しかし、この姿勢は腰部の負担が大きく、腰痛の原因ともなる。

 

 

 

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