幼児虐待の病理

 このところ毎日のように、子どもを虐待して殺したとか、半殺しにしたとかのニュースが続いている。子ども大好き人間のオレには、まったくその心理がわからないね。
 平塚市に親の虐待から保護するために子どもを育てている施設がある。乳幼児から高校生まで80人がそこで生活してる。そこの責任者である波岡龍平さんの話によれば、虐待のひどい親に限って、子どもを取り返したがるという。身勝手なもんだ。波岡さんの仕事の半分は、そういう身勝手な親と、その親の言い分どおりにしがちな裁判所との戦いだ。
 麻薬中毒とかアル中の親なんかの場合、薬や酒が切れると一見まともなふうになる。そこで、もう更生しましたから子どもを返してくださいとか親が裁判所に訴えると、裁判官なんてたいて世間知らずだから、親の元に返せという命令が簡単に出される。出版の差し止めと同じ。連中は近視眼的なヤツばかりだからね。
 子どもが親の元に返ると、どうなるか。また同じことの繰り返し。もっとひどい虐待が始まる。子どもを独占しようとする気持ちと愛情とはまったく関係がない。子どもは親を選べないって言うけど、こんな情けない話はない。
 オレに言わせれば、理由もなく子どもにたばこの火を押しつけたような親は永久に親の資格を失うんだよ。ヤクのせい、酒のせいなんて言い訳は無用。体の傷は治ったって、心の傷は一生消えないんだから。
 子どもを虐待するヤツは、たいてい自分自身が虐待されたトラウマを背負っている。でも、だからといって自分の子どもにそれを繰り返してよいわけがない。それがいやなら、子供なんて作るべきではない。
 昔、オレが新宿から町田の家までロマンスカーで通勤してたころ、オレの前の窓際の席に、5,6歳のかわいい男の子が座っていた。通路側の席にはその子の父親らしい人物とその連れの男が座っていた。
 男の子は、窓の外を見ながらさかんに父親に話しかけ、父親は目を細めて相づちを打っていた。ところが、その父親が連れの男と話している内容を聞くともなく聞いて愕然とした。「ヤツはハジキを持ってるからな」うんぬん。この男は暴力団員だったのだ。
 おれは思わずその可愛い男の子と、父親の顔を見比べてしまった。この子はいったいこれからどういう宿命を背負って生きていくのだろう。やっぱりヤクザになってしまうのだろうか。そうならないまでも、どんな不幸が待ち受けているのだろうか。その子のつぶらなひとみがいまだに忘れられない。
 子どもを産むのも育てるのも個人の自由だ。しかし、まともに育てようと思うなら、まず親自身がまともな人間になることが第一条件。まともな生き方もできない人間が、快楽の果てに子どもを作ること自体が、すでに幼児虐待なんだよ。

幼児はなぜ虐待されるのか、考えたことある?