ペンは大砲より強い

  海外へ出てみるとすぐわかるけど、日本人くらい自己主張をしない民族はいない。レストランで食事を注文して、頼んだものと違うものが出てきても、怪訝な顔をしながらも文句を言わず、そのまま食べてしまうような人が多い。
 外国人は、そんな場合、言葉が通じようと通じまいと、とにかく自分の主張を大声で口に出す。カネを払うのは自分なのだから、相手の言うとおりにする必要はないと考える。当然のことだ。
 だから、ことが自分の国の威信に関わるようなことになると、個人でも集団でも、猛烈に反発して抗議活動をする。特に日本に対して怨念を抱えているような国は、どうでもいいようなことに過敏に反応する。
 ドイツはこの前の戦争が終わって60年になろうというのに、いまだにナチスの行った罪悪について世界中から非難されている。でも、その非難が、少しでも事実に反するような場合は、けっして黙っていない。マスコミを中心に、断固抗議する。
 日本の場合はどうだろう。領土を侵犯されようと、国家的な人さらいをやられようと、史実に反する、いわれのない攻撃をされようと、だんまり引きこもったまま。自閉症国家だ。
 一方、外国の飛行機が日本の領空を侵犯したり侵犯しそうになると、自衛隊の戦闘機がスクランブル発進して、相手の飛行機に警告を発して追い払う。海の場合も基本的には同じ。自分の国の権益を守るための当然の行動だ。
 しかし、日本について言論で攻撃されたり、ありもしないことを言いふらされたりした場合はどうだろう。外交ルートを通じて抗議するのはまれなこと。たいていはひたすらがまんがまんの、マゾ的な国だ。
 オレは、ディベートに関心のある人たちが集まる席で、こんな現状を打破するために、有志が集まって、言論の「早期警戒システム」を構築すべきだと提案したことがある。外国人が日本について、いわれのない非難や暴言を吐いたときは、とにかくそれを否定する意見を相手方に送ったり、インターネット上などで発表したりするネットワークを作ろうという考えだ。たとえどんなに弱い立場でも、直ちに反撃することに意味があるはずだ。
 ところが、オレの意見に賛成してくれたのは、三十数名中の2,3人しかいなかった。でも、その中の一人の人は、会合が終わったあと、オレの所にやってきて、ぜひ、一緒にやりましょうと言ってくれた。社会的な地位もある人だったので、うれしかった。
 国益を護るための論壇を築くなんてことは、政府主導で行えるわけがない。なにしろ、あの外務省はあのていたらくだ。われわれ民間人が自発的に行動するしかない。その論調は、国民を代表してなんていう気負いは必要ない。ひとりの日本人として、言わなければいけないことを素直に述べればいいことだ。みんながその意識に目覚めれば、世界の人が日本を見る眼は変わるだろう。武器を持って外国へ乗り込んでいく前に、やるべきことはたくさんある。

国を護るものは、大砲や爆弾だけとは限らない。