教えない教師が最高

 養老孟司という解剖学者の書いた『バカの壁』っていう本が、売れまくっている。2003年のベストセラー第1位で、200万部以上売れたんだって。養老先生が手にした印税は、ざっと1億4千万円。すごいねー。養老の滝みたいな話。
 あの本は、本人も言ってるけど、養老先生が書いた本の中でいちばん手を抜いて作った本なんだよ。数時間しゃべった内容をテープ起こしで原稿にしたもの。それがばんばん売れちゃうんだから、世の中わかんない。
 オレが雑誌の編集やってたころ、一生懸命企画をねった号が全然売れずにがっくり。そんじゃあ気楽にやってやろうてんで、手を抜いて編集したら、その号が最高に売れちゃったことがある。世の中、いったいどうなってるんだと思ったね。
 なんでもそうだけど、必死になってやればいいというもんじゃない。久米宏のあとの番組として「報道ステーション」が始まったけど、キャスターを担当した古舘伊知郎も、見ていて気の毒だもん。ぱっと見ただけで、「だみだこりゃ」と思ったよ。早く降ろしてあげなければ、かわいそうだ。
 学校でも、年がら年中勉強してるのに成績がぱっとしない人がいる反面、授業以外ほとんど勉強してないのに成績のいいヤツがいる。要領がいい人と悪い人の違いなんだろうか。
 オレは、大学入試を3回も失敗している受験生の親から相談を受けたことがある。本人に会って話してみたら、いやーびっくりしたね。中学校で習う英語が全然わかってないんだから。それじゃあ何年受験しても、うかりっこないよ。
 そんな状態なのに、家庭教師をつけたり予備校に通ってきたというんだから、またびっくり。本人は必死でむずかしい単語かなんかを詰め込んでいる状態。いったいどれだけ無駄な時間と金を費やしてきたんだろう。
 オレのアドバイスにしたがって、中学校教科書の音読とディクテーションを徹底的にやったら、翌年はすいすい合格しちゃった。
 だから、最良の教師は、「教えない先生」だと思う。知識は、基礎がわかっていないのに詰め込めば詰め込むほど、何がなんだかわからなくなっちゃう。枠組みだけきちんと示しておいて、各自が自分の方法で知識を積み重ねていけるようにすれば、誰だって勉強はできるようになるし、少なくともキライにはならない。
 それと、英語に関して言えば、中学校の先生が、すべてを決めるね。オレの中学時代の先生は、とにかく「教えない先生」だった。そのかわり、基礎的なドリルを徹底してやらされた。
 授業はいつもダブルのスーツをきちんと着て、教壇に立たれた。人格的に尊敬できる先生だったな。体育の教師でもないのに、朝からジャージかなんかだらしなく着て、「アイアム、えーと、スチューデント」って教える先生でなくて、本当にラッキーだったよ。アンタの先生はその手じゃなかった?あー、やっぱしねー。

「教える先生」より「教えない先生」が生徒を伸ばす。