引っ越しの回数

 オレは生まれてこの方、全部で10回、引っ越しをしてる。キミはどのくらいしてる?
 日本人が一生の間に引っ越しする回数は、平均5回だそうだ。地方に住んでる人の中には、一生生まれた土地で過ごし、そこに骨を埋めるなんていう人もいるだろうから、そんなもんだろうなという気がする。
 アメリカ人の場合は、平均が15回だそうだ。連中は、とにかくよく引っ越しをする。職住近接が当たり前だから、職場を変えるごとに引っ越しをすることもめずらしくない。それに、たいていの家には作りつけの家具があるから、日本みたいに、何とか引っ越しセンターに頼まなくても、車ひとつで気軽に引っ越しできちゃう。
 アメリカ人は平均が15回だから、当然もっと頻繁に引っ越しをする人もいる。おもしろいのは、引っ越しの回数と、収入の大きさには相関関係があるということ。つまり、社会的に成功してる実業家などは、平均25回にもなるんだって。
成功する人は、しょっちゅうヘッドハンティングがあり、そのたびに職場が変わるわけだから、住まいも変わる。ブルーカラーのように、比較的引き抜きされないような職業の人は、同じ所に住み続けざるをえない。
 日本も、だんだんアメリカ型になると思うな。オレの経験からいっても、どんな理由であっても、住まいを変えることはけっして悪いことじゃない。たとえ今までより狭いところや、不便なところに移ったにしても、気持ちを新たにして出直す機会ができるわけだから、引っ越しは新しい自分を発見する手がかりを与えてくれる。
 仮に持ち家を手放したり、狭くて日当たりの悪い部屋に引っ越さなければならないとしても、新たな住まいは新たなチャンスに満ちている。問題は、気持ちを切り替えられるかどうかだ。気分を一新させてがんがん働けば、運勢をがらっと一変させることができる。借金コンクリート、ローンまみれの家に住み続けるより、ずっと冒険ができる。
 「起きて半畳、寝て一畳」というように、だだっ広いところは元もと人間には必要ではない。出版社なんかも、でーんと広い空間にぽつぽつ人が座ってるような会社で儲かっているのを見たことがない。
 オレは青山の家を処分してしまったけど、そのこと自体はぜーんぜん後悔していない。もともと借金だらけで買った物件だから、買ったあとも地価が下がり続けたのは、痛かった。借金が増えていくのと同じことだから。無理に買うことはなかったってことさ。オレの寝る場所もない家だったからね。
 まあ、見ててよ。あの青山の家以上の物件を、今度は即金で買うから。人生、チャンスは、どこにでもある。「人生、至るところに青山あり」っていうじゃない。ぴったりオレのためにある格言だね。

たとえ夜逃げ同然の引っ越しだって、新たなチャンスのきっかけになる。

(C) 2004 by Mitsuhiko Takeshita

ミッチャンのエセエッセー                        by 竹下光彦