5秒くらい立ってろよ!

 合気道を始めて、かれこれ8年くらいになるけど、いまだに師範から指摘される悪い癖がある。それは、使っていない手や腕に気が通わず、ぶらぶらしてしまうこと。これは、確かにかっこわるいだけでなく、実戦ではスキができることにつながる。
 合気道では、相手を投げるときや、投げたあとの姿全体のバランスを重視する。投げたあとでバランスを崩しているようでは、次の闘いに移れないからだ。相手を投げたあとも、相手のほうを直視して、次の動作に移らなければいけない。この姿を「残姿」といって、審査の時にもチェックされる。
 この残姿は、日常生活でも大切だ。何かの動作を終えたあと、その形をきちんと作ること。文字を書くときの「とめ」もこれに当たる。
 話はまったく変わるけど、車で相手を送っていったとき、車から降りると後ろを振り向くこともなく、すたすた家に入っていく人が結構いる。これは、残姿ができていない例だ。
 二十代のころ、デートのあと、大学生だったガールフレンドを車で家まで送ったときのこと。ルームミラーで見ていたら、後ろも見ずに家に入っていった。正直、がっくり来たね。何の余韻も感じさせない態度だもの。
 何もクラブのホステスみたいに、ずっと立ったまま、深々と頭を下げろというのじゃないの。送ってくれた人に対するあいさつとして、5秒間でいいから、相手の車を見つめるだけでいいんだ。たとえ嫌いな相手でも。運転してる相手は、ミラーでちゃんと見ているんだから。見ててくれるだけで、送った相手はうれしくなるんだよ。
 駅員だって、ホームを出て行く電車を見送って、無事に構内を離れたかどうか、確認するでしょうが。タダで送ってくれた人間に、それくらいのことをしろっていうんだ。たった5秒で、人生は大きく変わるかもしれないよ。

男の話じゃない、むしろ女のアンタのことだ。

ミッチャンのエセエッセー                    by 竹下光彦

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