第五話・・・リペアの依頼 Tokai Cat's Eye

No.1 this page No.2  No.3  No.4 2006.1.19.UP
検証 ボディとヘッドのリペア 最終調整 おまけ


No.1 検証
 リペアの依頼を受けたギターです。
 物はTokaiのCat's Eye。
 まだヘッドにTokaiのロゴや、サウンドホールから見えるラベルのなかった頃の物です。非常にレスポンスのいい、乾いたいい音がしています。現状のままで弾けないことはないですが、3弦のペグに不具合があるとのこと。
 では、つぶさに見ていきましょう。
 ビンテージタイプのペグです。
 確かにがたついています。何度か修理にトライしたのか、ねじ山も随分ヘタっています。
「旦那、これはビンテージタイプじゃなく、ビンテージそのものじゃあござんせんか」
「おお、言われてみれば、その通りじゃ」
 ペグを外してみました。
 ビス穴もかなり緩々になっています。
 蓋を固定している爪を、そおっと起こして、中を見てみました。
 このペグのがたつきは、かなり以前からあったようです。歯車がかなり磨り減っています。どうしましょう。直るのでしょうか。直らなければ、魔法の抽斗から、新しいペグを出してくればいいのです。
 と、安易に考えていたのですが、ヘッドを良く見ると、つき板がかなり浮いてきています。ブッシュを抜くときに、つき板も道連れにしてしまいます。
 まずは蓋をし、起こした爪を元通りに折っておきましょう。
 普通に元に戻しただけでは、がたついたままですので、枕を敷いて、ポンチで叩いておきます。
 表側から少し強めに叩くために、固定する台と局所的に叩く棒をエボニーの端材で作りました。
 ヘッドの裏です。
 少しゆるいビス穴を埋めました。ペグも直りました。依頼された件は片付きましたが、これで返したのでは、面白みも何もありません。もう少し手の加えられるところはないか見ていきましょう。
 そりゃあこれだけの年数が経っていれば、こんな所も欠けるでしょう。
 うーん。
 やる気が出てきますねえ。
「おっ、意外でやんすなあ」
「半七、このギターはなかなか良いのう。つくりの丁寧さはため息が出るほどじゃ。訳の分からんのが続いておったから、久しぶりにいい気分じゃ」
 見事なクラックです。
 幸いなことに塗装だけで、木部には達していません。
 この指板には驚き、笑ってしまいました。
 弾き込まれ、磨り減っていると言うよりは、かなりへこんでいます。オーナーは武蔵丸のような人なのかもしれません。
 いえいえ、このギターのオーナーは、Jama- Bandという関西のライブハウスでは有名なバンドのドラマーの方です。ギターの腕も確かなものです。不思議なことに、これだけ指板をへこませているのに、ピックガードはほとんど無傷です。
 私にはハードルの高いリペアになりますが、このギターに触れていると、とにかく楽しい。マーチンのコピーですが、本家を超えてやろうという当時のギターメーカーの心意気のようなものが、感じられます。1桁も違う値段で、こんなものを作ってしまうのですからねえ。いやはや、恐れ入りました。