第8話・・・YAMAHA ダイナミックギター

 すごい物が私のところへ回ってきました。
 なんとYAMAHAのFGシリーズの前身、ダイナミックギターです。小さく薄いボディですが、噂通りの「馬鹿鳴り」のギターです。まさかこんなものが私のところへ回ってこようとは・・・。
 これは、制作やりペアの腕を上げる上でも、鳴るギターの秘密を探る上でも、貴重な経験になりそうです。ああ、ホンマニええもんもろうたわあ。
 ええ実は、このギターは頂き物なんです。前々回のリペアのフェンダーストラトのオーナーである、ANIKIさんに、修理のお礼にと頂きました。この方は、ギターのプレイは一流ですが、埋もれているいいギターを探してくる嗅覚も並々ならぬものがあります。おそらくトリフがギターの形をしていたら、この方に全部掘り当てられてしまうことでしょう。 

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塗装剥ぎ バインディング

No.1 塗装剥ぎ
 はい、サウンドホールから見えるラベルです。
 この何というか、古色蒼然とした感じが良いですね。ボンカレー、オロナミンC、キンチョーの蚊取り線香などのブリキの看板と同じ香りがしてきます。
 もっとよく見たいという方のために・・・。
 No.10Aとあるのは、当時10000円のギターだったという意味ですね。
 全体像です。
 一言で言うなら、ガットギターに鉄弦を張ったようなギターです。
 指板には、アールがついていません。フラットです。いや、フラットよりもまだ中心部がへこんでいます。現状のままでも十分弾けますが、この弦高で、この逆アールの指板に、スチール弦という組み合わせは、かなり弾きにくいことは確かです。
 このサドルが泣かせるではありませんか。
 もう私は博物館へ行ったような気分で、やっております。
 このサドルは、竹ひご? いえいえ、パッと見はそう見えますが、さすがに竹ではありません。材質はプラスチックです。
 おお、よしよし、いいぞいいぞ。
 なぜかボディ全体にできている、大小様々なウェザークラックを見て喜んでいる私です。
 この剥げ具合がなんともいえませんねえ。
 ブルージーな感じです。念のため言っておきますと、私はレリック加工などには、何の興味もありません。ただ私は、この目の前のギターの経てきた歴史を、好き勝手に想像して、一人悦に入っているだけです。
 ヘッド部分です。
 弦もペグも外しましょう。
 それでは塗装を剥いでいきます。
 かなり薄く作り込まれていますので、塗料はがし液をぬって、じわじわ剥がしていきます。
 ブリッジがやはり邪魔なので、外すことにします。
 真ん中にある貝のインレイは、固定用のボルトの頭を隠すためのものです。くじりの先で、コンコンと割りました。
 アイロンで熱を加えます。
 塗装剥がし用のスクレーパーをじわじわ差し込んでいきます。
 表板に致命傷を与えないように、無理をせず左右から差し込めるところを探していきます。
 はい、無事に外れました。
 この指板は、作り直す予定ですので、これも外します。
 まずは喰い切りで、フレットを抜いておきます。
 アイロンで少しずつ熱しながら、指板を外していきます。
 鑿の刃は使わないで、横にスライドさせていきます。
 最後の最後に、少し表板を道連れにしてしまいました。
 ロゼッタの部分は木が薄くなっていますので、本当に難しいですね。
 表の剥ぎも大体終わりました。
 小さなサウンドホールなので、手を入れにくかったのですが、何とか入れて探ってみたところ、ちょっと変わったブレーシングがされています。
 もちろんアコギのようなXブレーシングではありませんし、かといってガットギターのような放射状のブレーシングでもありません。
 このブリッジの裏は、鉄弦の張力に耐えるための補強が主目的だったような木の配置です。
 なのに、この馬鹿鳴り・・・。
 指板を剥がすときに道連れにした部分は、切り取ります。
 ここに新しいスプルースの板を貼り付けます。切り取られた表板の断面は、逆「ハ」の字型にしておきます。
 貼り付ける材の方も「ハ」の字型に側面を削り、あわせたときに隙間ができないようにします。
 さあこれをこれからどうしていきましょうか。