No.4 ヘッドの加工、ストリングブッシュの穴開け
 近付いてはいけない、近付いてはいけないと言い聞かせていたのに、ヘッドにもつき板を貼れという悪魔の囁きが聞こえてしまいました。
 もう既に指板から滑らかなカーブを描き一体になっているこのヘッドに、どうやってつき板など貼れましょうや。こんな所に「余計なこと」をしたら、失敗するのは目に見えています。ここはこのままでいいんだと、決めておりましたのに、ボディとヘッドがお揃いの模様なら綺麗だろうなと思ったが最後、まるであり地獄のように、その考えに引きずられていくのでした。
 あーあ、止せばいいのにと思いながら、継ぎ目に刃を入れてしまいました。
 もうこれだけ木を削ってしまったら、後戻りはできません。
 つき板の厚みぶん薄くします。
 なだらかな丘陵部分から裾野にかけてサンディングで落としていきます。メイプルですからね、これがなかなか落ちないんですよね。
「まあ、ネックは借り物で楽をしようとしたツケが回ってきたんでやんすな」
「だから、少々のしんどさは我慢しろと」
「まあ、そういうことでやんすな」
 平野部もゴシゴシ。
 うわあ、この寒い中汗ばんだり、ラジバンダリ。
 少し段差が付いたのが分かるでしょうか。
 それではつき板を接着しましょう。
 まずは濡れ雑巾でよく拭いて、埃やゴミを取ったり、ボンドの伸びをよくしたり、ラジバンダリ。
 結構この薄いつき板を貼り付けるという作業は、難しいんですよね。
 あーあー、気をつけてこちらの方に寄せていたのに、乾燥したら、やっぱり平野部の方に引っ張られていました。
 まあ、予想はしていたことですが。エポキシにローズの粉を混ぜて埋めておきましょう。
 サンディングして出来上がりました。
 うーん、ボディとお揃いで、ちょっとイカスなあ。
「うわあ、旦那、言い回しが太陽族みたいで、古いでやんすなあ」
「それを知っているお主もな」
 ヘッドはひとまず置いておいて、今回リアに使うピックアップはこれです。
 そう、猿山のボスの咆哮かッテいうような、音を出すやつです。
 ハードウェアに組み込んで、ブリッジの位置を決めます。
 鉛筆で描いた円の中心を、くじりで突いておきます。
 向こうの4つは、ビス留めの位置で、手前の6つが弦通しの穴です。
 ボール盤の懐がもう少し長ければ、ちっとは楽なんでしょうが・・・。
 仕方がないので、垂直ガイドを使って穴を空けます。垂直ガイドの高さとビットの長さを比べて貰えば分かると思いますが、これを使って空けられる穴の深さはたかがしれてるんですよね。
 その後は、「逆らいません。私ほど素直な人間はいません」という気持ちで、流れに沿って穴を空けていきます。
 1弦と6弦の穴が貫通しました。
 芯芯間を測ってみると55oでした。つまり大成功ということです。仮にこれが少々ズレテいても、顔に出してはいけません。どんな長さでも、平然とした顔で、5等分します。
 ストリングブッシュの径は8oです。
 こちら側からは8oのビットで穴を空けます。
 いきなり空けても構いませんが、ズレテあららららとなってもいけませんので、ドリルの逆回しで様子を伺いましょう。
 ええい、いっちやえー。
 最後は腕と度胸です。
「なら旦那の場合どちらも・・・」
「やかましいわ」
 8oの穴なら8oのビットがピッタリ嵌りますね。
 いや、別にそんなことを調べている訳じゃないです。穴の周りにケバケバができて、サンディングで落とそうとすると、この周りだけへこんでしまいますので、ビットのお尻で押し込んでいます。
 8oの穴が待ち受けてくれているなら、もう安心ですね。
 2弦〜5弦の穴は怖いもの無しで空けていきます。
 怖いものがありました。
 チップさせた付き板の欠片を、またいつもの癖で吹き飛ばしてしまいました。飛び散ったおが屑の中から執念で見つけ出したものです。
 瞬間接着剤とサンディングで何事もなかったかのような顔をしましょう。
 やれやれ。
「旦那、むしろつき板の継ぎ目の方が目立つくらいでやんすなあ」
「黙っておれ、ここも直すつもりじゃ」
 はあ、やれやれ、私を安堵させる6条の灯火です。
 はい、これでボディの加工は総て終わりました。
 あとはまたヒーヒーいいながらサンディングして、塗装に回しましょう。回しましょうと言いましても、塗装も私なのですが・・・。