新・根津美術館 2009.10



            設計:隈 研吾
             photo by mirutake  2009.11


表参道から歩いてくると、あーここだけ昔のままの切妻屋根じゃないのと思ってしまうが、どうも様子が違う。近付いて行くと、瓦の大屋根から続く庇が薄っぺらく鉄板で作られていることや、壁もやはり薄い鉄板パネルを、目地を大きく開けて並べているのが解る。なるほどこの軽快さが、作家ここにありだねと感じだす。









旧根津美術館は残念ながらちゃんと見ていないのです。この場所はかつて何回も前を歩いていたのですが、写真も撮っていません。
この切妻屋根は旧美術館へのオマージュもあるんでしょうね。旧根津美術館の写真を見ていると、屋根がやはり普通の物より薄いと感じる。(新美術館ほどではないが)また軒の出を支える片持ち梁が、軒先先端まで行かない途中で止まるという風に見せていて、この止め方も似ている。(旧館はコンクリートではあるが、勿論梁形は三角形ではなく普通の長方形。)



生垣の切れている入り口を入って行くと、竹竿が立ててある左面と竹の生垣の右面がずーっと続いて、行く長いアプローチに出会う。質感の面構成の密度を見せる。この凝集(求心)された和風に出会うと、ここが日常とは違う空間であること、表参道の町並みとは違う空間に導いて行くための「効果」を考えて和風が選ばれたことが解ってくる。美術館という異空間に導いて行くために。
天井はコンクリート系のボード素地で、その薄板の軒を支える鉄板の片持ち構造材が三角形に表しになっている。この構造鉄板と15ミリくらいの目地を取って天井ボードが納められている。この簡便さと薄さを表す納め方が、また構造鉄板が三角形に天井に飲み込まれ消えていくところが、良いなーと思もってしまうのでした。











このアプローチが終わると90度左に曲がって玄関となる。
ここにはなんと構造鉄骨を剥き出しに、今まで隠してきた構造鉄骨を見せたデザインがでてきている。唐突と言える見せ方ではないでしょうかね。おまけに構造鉄骨は亜鉛メッキで、これで鉄の素材感をだそうとしているんだろう。また鉄骨は全溶接にして、きれいに見せるのではなく、ボルト接合のボルトを密に見せることをしている。和風のデザインとはおよそ似つかわしくない構造の見せ方と言うべきだが、何かへの挑戦と見えるのでした。ここに本格的な建築的回答=構造を美の一員として創る建築を模索しようとする思考があるのだと感じたのでした。今までだと格子の奥にそのままの構造が見えてしまっている、何かつや消しというか、密度のなさというか、仮設的に見せていたが、もっとデティールの密度のあるものが見たい!と思ってしまう。今回の構造片持ち梁鉄板と天井ボードの納まりなら、軽快でいて、構造そのまま見せているところも正攻法に思えた。















内部は天井船底型(外形切妻型)を使ったエントランスホールであり、自然光がふんだん入ってきている。そこで美術作品を展示している在り方になっている。1階では特に庭の緑を背景にした作品展示となっており、上手い。軒が深いので直射光は当たらないと思う。


2階ホール



竹集成材パネルの小口拡大

天井は竹材のパネルを切妻型に配置して、薄っぺらい感じと、竹パネル面構成へと抽象感をだしており、和風の感じは全くない。開放感あふれる大板素材面が空間全体の動的な感じを出している。が、集中した空間構成ではなく、大開口部から外部へと拡散している。(階段登りで正面に直射日光がきて強烈にまぶしいということがあった。3階に行く階段は幅が狭いですね。)




3階展示室廊下




3階に行くと通路の吹き抜け側大ガラスに、黒いクロスを掛けて遮光しているのに出会う。クロスの向こうに、吹き抜けを通して庭の緑が透けて見えている。不思議な感じで、これはいい。これは展示室に対して暗い通路とすることと、この場所の位置を示す視線を吹き抜けに通したかったのでしょう。上手くいっていると思えたが、階段側に300ミリ位のクロスだけにしたところは、仮設のようでいただけないです。




地下への階段

1階ホール展示室の外部犬走り軒下空間






中庭に面して大屋根が、薄い瓦と見せている。
庇も、鉄板3ミリで、特に薄く、フラットな面として見せ、軽快にしている。(2度目に行ったときにはもう雨の後がはっきり鉄板に表れていた。これが上手く表情となれば成功だが、まだ良くわからない。)











家型民家型、藁葺きの農家屋根を表しているのだろうか。
屋根は鉄板だが、極力フラットに、目地も小さく納めている。(ここは薄板だから、本館の鉄板庇ほどフラットにはならず、波打が見える。)内部の和紙抽象化天井と合わせて、単純なボリュームを創ろうとしているのが解る。求心的な天井形だ。反対に壁はカウンター以外は全面ガラスにして外に開いて拡散させている。
本館もまた求心と拡散がテーマなのかもしれない。













アプローチ通路 照明が点いて一段と象徴的情感を感じる。



表参道の地で、深い緑の庭が広く、茶室外観と、和風庭園が楽しめる。
                               091123

(公称2階建てですが、3階と呼んだ方が解りやすいのでそうしました。)



    奇想遺産―世界のふしぎ建築物語¥ 2,940 新潮社 (2007/9/25)
鈴木 博之/藤森 照信/隈 研吾/松葉 一清/山盛 英司 (著)
建築って、こんなに面白い!
思わず息をのみ、そして気付く。「この建物、なんかヘン!」
一体どうして、これほどに異様で、おかしな建物ができたのか?
その魅力の虜になった専門家たちが解きあかす77の物語。
生涯にわたって石を集め、ナゾの宮殿を建てた郵便配達夫を突き動かした情熱とは?
現在、高い評価を得ている巨匠の作品が、完成当時、物議を醸したのは何故か?
建築たちの情熱が今も息づく建物をめぐる旅へ――。
(「BOOK」データベースより)

★この本の隈研吾の語りは面白かった。自己の主張を込めて簡潔に語られている。
巨大建築がすでに時代の主役を降りた中で、次なる主体を浮かび上がらせる。ウィットに富んだ時代の読みを示す。なかなかうならせる内容ばかりだった。短い文章で一気に全体を伝えてしまう。
シアトル中央図書館/レム・コールハウス 新凱旋門/ヨハン・オットー ゲートウエー・アーチ/エーロ・サーリネン 太陽の塔/岡本太郎 シドニーオペラハウス/ヨーン・ウツソン ロンシャン礼拝堂/ル・コルビュジェ アブラクサス/リカルド・ボフィル バレ(宮殿)とよばれるくらいだから、どんな金持ちが住む高級マンションが聳えているのだろうと、 設計者のボフィルは、ローマ流の古典主義様式の名手として知られる。その肝さえ心えていれば、材料がプレキャストコンクリートの工場で作った安い材料を使いながら、ダイナミックな空間を作れるのが、このスタイルのマジックである。ヨーロッパには安家賃で、安定した生活を保障するという伝統がある。一方日本ではアメリカ流の自由競争市場万能主義で、その先にどんな殺伐とした都市と生活とが待っているかを、誰も真剣に考えていない。(建築家達には伝統的にこの批判を共有している。take) 
ビルバオ・グッゲンハイム美術館/フランク・ゲーリー ジョンソンワックス本社ビル/ライト フラットアイアンビル/ダニエル・バーナム テート・モダン/ヘルツォーク/ムーロン ユダヤ博物館/リベスキンド 昌徳宮 ソニー・センター/ヘルムート・ヤーン ウィーン郵便貯金局/オットー・ワグナー ロースハウス シュレーダー邸
 ル・ランシーのノートル=ダム協会/オーギュスト・ペレ 
「ここに神がいる」と、大声で叫びたくなった。」でも1923年完成のコンクリート打ち放しの建築にどうして、神が宿るのか。光が鍵である。そして光の印象を圧倒的にしているのは、屋根を支持する高さ11メートルの細く長い柱である。「直径40センチの柱がこんな大空間を支えられるわけがない!」。突然われわれは、この地上を離れ、無重力の宇宙空間に放り出される。そこに神の光が降り注ぐ。めまいを覚えるほどの光の洪水。果てなく高揚する精神。 そしてこの一つの力強い実物は、教会以外の建築物にも大きな影響を与えた。もっとも貧しい材料に、もっとも崇高な精神が宿ることを示した。(抜粋take)
レーモンドの東京女子大チャペルを是非みたいと思うのでありました。(take)