あかるくのどかな汽車旅〜〜タイ国鉄南東線

 

その6  海岸沿いを南へ進む

 

 

■南へ……

 パタヤを後にした車内は、閑散としてさびしくなってきた。まだまだ先は長いけれど、人影うすく気だるい趣、もう旅は終わりという感じになってくる。

 ちなみに、南東線は海岸沿いに南下するというのに、せっかくの美しい水面がほとんど見えなかったりする。その点では車窓に恵まれているとはいえず、長い乗車時間を埋めるのはなんとも単調で退屈だ。

    車内風景

 

■いよいよ独り

 貨物支線が左に分岐していく。この支線には二往復の貨物列車が運転されているらしいが、ここから先の本線には貨物列車の設定はない。つまり、いま乗っている列車が一日の全てというわけだ。

 明るくのどかな大地の上に、敢えてさびしい孤影を刻みつつ、列車は終点を目指す。

  貨物支線の分岐

 

■ほんとうの終着駅は

 この南東線、タイ国鉄でも歴史が新しい路線だというのに、列車運行本数がごく少ない。ものすごく不思議な状況ではあるが、しかし、ほんらいの終点は実はバンプルタウアンではなく、さらにその先に置かれていたと知れば、話がわかりやすくなる。

 ほんとうの終着駅は、ここサタヒップ。駅名標には「SATTAHIP COMMERCIAL PORT」即ち「サタヒップ商港」と記されている。経済が成長して貨物の輸出入が増え、バンコク港が手狭になったゆえに、第二の商港はどうしても必要だった。しかし、サタヒップが軍港としての地位を捨てることは決してなく、今日もなお海軍の駐留地となっている。その一方、バンコク港の逼迫からしてモラトリアムが許される状況ではなく、ラムチャバン港などが新設されるに至ったのである。

 かくして、サタヒップ港の商港転用をにらんで敷かれた線路は、深く錆びつき、荊棘の温床となっている。この線路に列車が走ることは、おそらくあるまい。

  サタヒップ

 

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