あかるくのどかな汽車旅〜〜タイ国鉄南東線

 

その1  バンコクの玄関ホアランポーン駅

 

 

■ほほえみの国

 タイという国は、よく「ほほえみの国」と呼ばれる。やわらかくて、つつしみ深い典雅さを含んだ表現で、いかにもタイらしい風あいを感じる。ところが、現実のタイはかくも生やさしい場所ではない。とにかく暑い! 単に気温が高いだけではなく、蒸し蒸しする重い湿気があり、暑気が苦手な人などは、ただいるだけで切なくなってくるだろう。

 バンコクの街角に立つとさまざまな匂いを感じる。アスファルトの灼熱、トゥクトゥクの排ガス、雑踏を行き交う人々の汗くささ、屋台から漂ってくる焼鶏やスープの香り……。これらに山と積まれて売られているドリアンの甘ぐさい芳香がかぶさった日には、「これがバンコクだよね」と妙に納得してしまうものがある。

 そのバンコクの中心部に、ホアランポーン駅はある。御覧のとおり、かまぼこ型の特徴ある大駅舎で、いかにも国の中心という風格だ。実際のところ、タイ国鉄の北線・南線・北東線・東線などの幹線系統列車は、ことごとくこのホアランポーンに集まってきている。四通八達するネットワークの要、多くの優等列車が並ぶ姿は壮観だ。ただしそれゆえに、ホアランポーン直近では線路容量が極度に逼迫しているという弱点もあるのだが。

  ホアランポーン駅

 

■南東線列車

 目当ての列車はこちら。日に一本しかない、東線から南東線(海岸線とも呼ばれる)へと直通する列車だ。一目してすぐわかるとおり、タイ国鉄でも古参のディーゼル機関車が古い客車を引っ張るかたち。

 東線は、カンボジア国境近くまでとどく路線だが、優等列車の設定がないローカル線である。その東線から分岐する南東線は、ローカル線というよりもむしろ貨物列車の街道筋であり、旅客の流れはごく少ない。だから、こんな古めかしい列車でも充分というわけか。

  ホアランポーン

 こちらが列車のサボ。行先表示ではなく、実は運用表示になっている点に注目されたい。バンコク(ホアランポーン)から、南東線終点バンプルタウアンまで行って、バンコクに帰ってくる。確かにそうかもしれないが、お客さんが見てわかるのだろうか。細かなことなど気にしない鷹揚さが、タイらしいといえばらしいのだが。

  ホアランポーン

 

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