ムッタ・デーヴァ氏インタヴュー

 「河上イチロー」という名前(ハンドルネーム)をご存知の方はおられるだろうか。ぼくは宮崎学氏のサイトで初めてその名前を知り、本を出版しておられるというので図書館で借りてきて読んでみたのだが、その内容には大変感銘を受けた。まだサイトを運営し始めてそれほど経っていないぼくに、ネットというメディアの可能性、面白さを教えてくれたという点で、「河上イチロー」氏の存在の大きさは特筆すべきものがあった。さっそく氏が運営しておられるサイトを見に行ったのだが、その時点ではすでに閉鎖されており、そのコンテンツも他のネットワーカーの方に引き継がれたとの事で、何も残っていなかった。河上氏はネット上から完全に姿を消してしまったのだ。というワケでぼくは、残念ながらリアルタイムで河上イチロー氏の活躍を目にすることはできなかった。着いた頃には、祭りはすでに終わっていたのだ。

 これは後から分かった事なのだが、河上氏がネットから姿を消すのとほぼ同時期に、氏がオウム真理教(その時点ですでに「宗教団体・アレフ」と改称していたが)のサマナ(出家信者)であるという事実が知れ渡ったらしい。すっかりネット上から姿を消してしまった河上氏だが、氏がサイトを閉じられてからちょうど1年が経過した2001年10月、氏は宗教団体・アレフ(注:デーヴァ氏が所属している団体名の表記は「アーレフ」に変更されたが、インタヴュー中では当時の呼称に倣って両者とも「アレフ」と呼んでいる場面が多くある)の信徒として、「aleph.to」ドメインのアドレスにて個人サイト「半跏思惟」の運営を始められた。今回は河上イチローではなく、ホーリーネーム「カーマ・アニッチャ・パンニャッタ・パンニャーヤ・ムッタ・デーヴァ」(「ムッタ・デーヴァ」と略されるようだ)としての個人サイトだという。

 もちろんリアルタイムで見ていたワケではないのでネット上での「河上イチロー」キャラについてさほど詳しいワケではないのだが、「ムッタ・デーヴァ」としての語り口は、明らかに河上イチローのそれとは違うと感じられた。河上氏の、毒を含んだ鋭い文章に比して、ムッタ・デーヴァとして仏教を語っている彼は、おだやかで内向的な、いわゆる典型的「オウムの人」のイメージに近い。かといってまったく河上キャラが消えてしまったワケでもなさそうで、いったんネタとしての対象を捉えた時の、異常と言っていいほどの綿密かつ執拗な調査、追跡ぶりは昔からの一貫した姿勢のようにも映る。とにかく、彼のサイト自体が「オウム」の一言では括れない印象なのだ。

 さて。こうなるとぼくとしても気になってしょうがない。もともといわゆる「オウム問題」に対しては、何らかの形でコミットしていきたいと思っていた。テレビ等でいわゆる「オウムの人」を目にする時、誰もが感じるであろう距離感や、そこに生ずる「コミュニケーション不全」の問題を、自分なりに捉えてみたいと考えていたのだ。しかしぼくとて、他のアレフ会員の方に対しては、こうしたアプローチをとろうとは思わなかっただろう。だが、彼の場合は特別だ。なにより河上イチローというキャラクタの存在がある。おおげさな言い方をすると、「河上イチローとムッタ・デーヴァとの間に横たわる溝を埋めてみたい」…そんな風に考えたのだ。思い切って申し出たところ、あっけないほど簡単に話に乗っていただいた。メールという便利なツールを介する事によって、一度も顔を合わせる事はなくとも、対話する事が可能となった。申し出を快く引き受けていただいたデーヴァ氏には、心よりお礼を申し上げる。

 メールによるインタヴューは依然として続行している。このやりとりがいつまで続くか分からないが、キリのよいところで区切って順次公開していきたいと思っている。ぼくとしてはデーヴァ氏さえ厭わなければ、何年でもこの作業を続けたいと思っている。聞きたいことはいっぱいあるし、この対話自体を楽しんでいる自分に気づくからだ。

 まず現在「ムッタ・デーヴァ」として運営しておられる「半跏思惟」へのリンク。

サイト・半跏思惟

 「河上イチロー」としての活動をご存知ない方は多くいると思われるが、残念ながら上記したとおり氏がかつて運営しておられたサイトは、すでに閉鎖されてしまっている。いちばんいいのは刊行されている書籍を読んでもらう事だろうと思う。「サイバースペースからの挑戦状」「サイバースペースからの攻撃」の2冊が雷韻出版から出ている。

Amazon.co.jp内の「河上イチロー」著作ページ

 あるいは、検索エンジンを駆使してネット上を探し回れば、量的には多くないが当時の文書を保存してあるページも存在するし、河上氏に言及している文書も多々ある。興味をお持ちの方は調べていただくといいと思う。

 なお、実際のメールのやりとりをベースに、ぼくの質問のパラグラフの間にデーヴァ氏が答えを挟み込んだり、逆にぼくが氏の発言の間に「合いの手」を後から挟み込んだりもして、なるべく実際の対話のような雰囲気を実現しようと試みている。公開にあたっては、テキストファイルにまとめたものをデーヴァ氏とやりとりして、若干の校正を加えている。では、前置きが長くなったがインタヴューをお読みいただきたい。


⇒インタヴューPart1(2002年1月16日〜2月13日メールやりとり分)

⇒インタヴューPart2(2002年2月19日〜4月9日メールやりとり分)

⇒インタヴューPart3(2002年4月22日〜6月1日メールやりとり分)

⇒インタヴューPart4(2002年5月23日〜6月8日メールやりとり分)

⇒インタヴューPart5(2002年6月15日〜8月26日メールやりとり分)

⇒インタヴューPart6(2002年8月14日〜11月28日メールやりとり分)