太陽は宇宙でどうやって燃えているの?


 空を見上げると数え切れないほどたくさんの星たちが目に飛び込んできます。そんな中で、私達にとって最も身近で、最も大切な星といえば、間違いなく太陽でしょう。もし太陽が無かったら、この地球は寒さでとても生命が存在できる環境ではありません。
 さらに、
私達は太陽エネルギーを使って生活しています。これは、身の回りにいっぱい太陽電池があるとか、そんな次元の話じゃありません。私が生きているという、その生命エネルギーは、実は太陽エネルギーなのです
 例えば、あなたが体を動かすためのそのエネルギーは、どこからやってきたものですか?それは、毎日食べている食事からです。お肉や野菜から栄養を摂取して、その栄養を体内で燃やして、そのエネルギーで体は動いているんですね。では、お肉や野菜に含まれている栄養はどこから来たんでしょう?例えば、お肉は、もともと動物なので、植物や他の動物を食べて栄養をえていたはずです。では食事ができない野菜、つまり植物は? 実は、植物は根っこから吸収した水と、葉っぱから吸収した二酸化炭素を使って
光合成をしています。この光合成によって栄養を作っているんですね。中学校で詳しく習ったと思うけど、光合成とは

水 + 二酸化炭素 + 太陽光エネルギー → 酸素 + 養分

という反応です。つまり、人間の口にしている栄養は、全て光合成、つまり太陽エネルギーに行き着くわけです。それだけではありません。潮の干満のエネルギー、風力エネルギーといった自然のエネルギーはもちろん、もともとは大昔の植物からできた石油や石炭も、もとをたどれば太陽エネルギーなんです。
 というわけで、改めて太陽の重要さ、偉大さを確認できたんじゃないかと思います。今回は、そんな太陽についてご紹介しましょう。

 

 この写真はもちろん太陽です。太陽というのは、実は宇宙の中で特別な星ではなく、最もよくある主系列星と呼ばれるタイプの恒星です(恒星や主系列星については『星にはどんな種類があるの?』を参照してください)。夜空を見上げるととてもたくさんの星が見えるわけですが、その多くが、その一つ一つが、太陽のような大きさを持ち、太陽のように熱く燃えているわけです。しかし、太陽以外の恒星は、太陽から非常に遠くにあるため、詳しく調べることができません(太陽から最も近いα-Cenという恒星でさえ、4.2光年も離れています)。なので、地球人にとっては、太陽は唯一詳しく調べることのできる恒星という事になります。

 さて、ここで、こんな疑問が浮かびませんか?「太陽は、空気の無い宇宙でどうやって燃えているんだろう?」。これはなかなか鋭い質問ですね。だって、中学校では「物が燃えるためには酸素が必要」って習ったはずです。化学反応式で書くと

C + O → CO    炭素 + 酸素 → 二酸化炭素

です。身の回りの「燃焼」という反応は、ほとんど全てこの反応です。一方、「宇宙空間は空気が無い真空の空間です」とも習ったはずです。でも、上の写真を見ると、どう見ても太陽は「燃えている」。この疑問を解決できますか?

 実は、太陽は酸素が必要の無い反応で燃えているんです! 核融合と呼ばれる反応です。反応式を具体的に書いてみると

4H → He   水素4個 → ヘリウム

という反応です。実は太陽というのは水素の塊なんですね。その水素が自分の重さでぎゅっと圧縮された結果、中心部では非常に高温になり、このような反応が起こり、そのエネルギーで燃えているんです。
 地球上に存在する最も恐ろしい爆弾に、水素爆弾という、原子爆弾なんかより数十倍の破壊力を持つものがありますが、実は、水素爆弾はこの反応を利用しています。つまり、水素爆弾は小さな太陽という事が言えるのかもしれません。幸いにも、人類の歴史の中で水素爆弾が戦争等で使われたことはありませんが、すでに地球上に存在しています。人類は小さな太陽を兵器として作ってしまったんですね。恐ろしいことです。
 中学生の人だと、「原子が他の原子に変わるなんてありえない!」と思う人がいることでしょう。確かに中学校では「原子は物質の基本単位で、他の物質に変わったり、分割したり、何も無いところから生まれたりしない」と習ったはずです。でも、実はこれはウソ。原子は他の物質に突然変わることもあるし、分割することもできるし、何も無いところから生まれることもあります!! 詳しくは高校や大学で習ってね。
 更に言うと、体を構成している
物質の多くは、このような恒星内部の核融合反応で作られたんです! 宇宙はビックバンによって137億年前にできたということになっているんですが(ビックバンについては『宇宙は何歳?』を参照してください)、ビックバンのときに作られた元素は水素(H)とヘリウム(He)だけだということが分かっています。でも、身の回りには水素やヘリウム以外の元素もいっぱいあるよね? 例えば、体を作っているたんぱく質、お米やパンの中に含まれている糖分などの有機物は、炭素が骨格となってできています。他にも、地球上には鉄などの金属がいっぱいありますね? ビックバンの直後には水素とヘリウムしか無いんだったら、これらの元素はどこからやってきたんでしょう? 実は、これらの物質は、太陽のような恒星の中の核融合反応で作られたんですね。
 太陽は今は水素からヘリウムを作る反応で燃えているけど、いずれ燃料の水素が無くなってしまうわけです。そうすると、今度はヘリウムが燃えて、炭素ができるのです。反応式で書くと

3He → C   ヘリウム3個 → 炭素

という反応です。更に時間が経つと、炭素が燃えて窒素ができて、酸素ができて・・・、という感じで、水素やヘリウム以外の元素が恒星の中で作られます。恒星がこの段階にやってくると、恒星は非常に大きく膨れ上がります。このような状態の星を赤色巨星といって、さそり座のアンタレスやおうし座のアルデバランが有名です(赤色巨星については『星にはどんな種類があるの?』を参照してください)。太陽の場合、地球を飲み込むくらいの大きさになってしまいます。でも、それは今から約50億年後のことだから大丈夫。赤色巨星の状態を通り過ぎると、星の重さにもよるのですが、一部の星は爆発してしまいます。その爆発によって、中で作られていた元素が宇宙空間にばら撒かれます。そして、今度はそれを材料としてまた新たな星が作られるんですね。地球もそんな風に出来上がってきました。下の写真は、かに星雲(M1)といって、昔に起こった超新星爆発という大爆発の残骸です。こういった爆発によって、星の中でできた元素が宇宙にばら撒かれるんですね。ちなみに、かに星雲の原因となった大爆発は1054年に起こったということがわかっています。なぜそんなことが分かるかというと、藤原定家の『明月記』や中国の『宋史天文志』に、空に急に明るい星ができたという記録が残っています。今では、その明るい星というのが超新星爆発で、現在、その天域を見ると、以下のような星雲が見えるわけです。
 そういうわけなので、私達の体を作っている元素のほとんどは、夜空に輝く星の中で作られたということになります。みんな、星の中で生まれた兄弟なんですね。



 かに星雲(M1)

 さて、こんな感じで太陽は燃えているわけなんですが、それでは一体、太陽って何度くらいなんでしょう? 想像できますか? 太陽の表面温度は約6000度です。とても熱いですね。でも6000度くらいだったら、地上でも比較的簡単に作れちゃいます。そういわれると、なんだ、太陽も実はたいしたこと無いんじゃないかって思ってしまいそうです。しかし、実は、太陽の周辺の温度を調べてやると、なんと約100万度もあることが知られています。表面温度が6000度しかないのに、なぜ周囲が100万度もあるんだ? その理由は、太陽の磁場が周囲にエネルギーを運んでいるからだとか色々言われていますが、実はまだ良く分かっていません。

 太陽を詳しく見てみると(注:詳しく見ようと思って望遠鏡とかで太陽を直接見ないこと!!)、黒い点がいくつかあることが分かります。これを黒点といいます。黒点は周囲より温度が低く、約4000度しかないため、黒く見えるのです。黒点を詳しく観察すると、黒点が移動していることが分かります。この事から、太陽も自転しているということが分かるのです。
 また、太陽表面に黒点がどれくらいあるかというのは、
太陽の活動の活発さを調べる重要な手がかりとなります。その黒点の数は、11年周期で変動するということが知られています(厳密には22年周期なんやけど、11年ごとにNとSが入れ替わるだけなので、見た目は11年周期に見える)。従って、太陽からの磁気嵐や、若い女の子なら誰もが気にする紫外線なんかも、11年周期で強い時期がやってくるので、皆さん注意しましょう。

 その他、太陽で有名な構造といえば、以下に挙げるコロナプロミネンスでしょう。コロナとは、太陽から出ている強いエネルギーのことで、日食の時なんかに良く見えます。プロミネンスは、太陽表面の爆発です。その他、太陽の地震である日震というのも存在するということも分かっています。

  
           
コロナ                            プロミネンス

  写真だけではあんまし実感がわかないですか? では、次はこれらの映像を見てもらいましょう。これは2006年9月23日に内之浦から打ち上げられた太陽観測衛星「ひので」の観測結果です。この動画はものすごいですよ!なんたって太陽を専門に研究している研究者が「なんじゃこりゃ?!」と驚いた動画ですから。心してごらんあれ。

 宇宙科学研究本部 「ひので」初期成果

 太陽からやってきているのは普通の光だけではありません。紫外線や高エネルギー粒子、小柴先生で有名になったニュートリノなんかも太陽風に乗ってやってきています。ニュートリノは人間にとって無害なので問題ないですが、紫外線など、太陽風は人体にとって有害なものも多く含んでいます。それらが地球に届かなくするためのバリアのようなものが、オゾン層だったり、地球の磁場だったりします。私達は、太陽の恩恵を大いに授かっているわけですが、危険もいっぱい。でも、そんな危険は地球が守ってくれているというわけです。太陽だけでなく、地球にも感謝しなければならないですね。

 というわけで、今回は私達にとって最も身近な星、太陽のお話でした。太陽は私達にとって特別な星だけれども、実は宇宙規模で見るとありふれた星、天の川銀河の中には、太陽のような星が1000億個もあって、そんな銀河が宇宙の中には更に1000億個もあります。宇宙って想像もできないくらい大きいですね。
 夜空を見上げた時に見える、一つ一つの暗い星も、実は太陽のように激しく熱く燃え盛っている。今度夜空を見上げる時は、そんな想像をしながら星を眺めるのもいいかもしれません。