パルサーって何?



 宇宙はとてつもなく広いので、その中には変わった星、奇妙な星も色々たくさんあります。パルサーというのは、そんな不思議な星の中でも、もっとも有名で最も変わった天体の一つでしょう。その不思議な性質ゆえ、発見された当時は「宇宙人からの信号」とさえ言われました。今回は、そんな不思議な天体、パルサーをご紹介します。

 まず、「パルサー」とはどういう天体なのでしょうか? それは、その名前の由来を考えるとわかります。皆さんは「パルス」というのは知ってますか? パルスとは単発の波のことです。音でたとえると、「ピッ」という感じです。つまり、パルサーとは、連続的に光がやってきているのではなく、周期的に規則的に、光が「ピッ ピッ ピッ ・・・」とやってきている星なんですね。やってくる光の様子をグラフで表すと以下のようになります。

   
普通の星からの光                     パルサーからの光

 パルサーからは非常に規則的に「ピッ ピッ ピッ ・・・」と信号がやってきます。その周期はものによりますが、だいたい1秒から1000分の1秒くらいです。「こんな規則的な信号が自然現象で説明できるはずがない! これはきっと宇宙人からの信号だ!」 と、発見された当初は考えられていましたが、残念ながら(?)無事に自然現象でパルサーを説明することができました。パルサーの正体とは、「高速回転する中性子星」(中性子星のついては『星にはどんな種類があるの?』を参照)なのです。

 それでは、このようなパルス信号がどのようにして高速回転する中性子星で説明されるのかを見ていきましょう。
 まず、パルサーを理解するうえで重要な概念は
「ジェット」です。ジェットとは、ブラックホールや銀河中心などから物質がまさしく「ジェット」のように噴き出している現象で、宇宙では比較的よく見られる現象です。ジェットがどのような仕組みで動いているのかということは、実はまだ細かいことはよくわかっていないんですが、「磁場」が重要な役割を果たしているということは間違いなさそうです。磁場というのはおわかりですよね? そう、磁石の周りにあるあれです。地球にも磁場はあります。北がS極で南がN極ですね。だから、地球上では磁石のN極が北を向いてくれるわけです。
 このように磁場を持つ天体は地球だけではありません。太陽や他の星も持っています。パルサーもそんな星です。そして、ジェットというのは、ある条件がそろうと、北極と南極から噴き出すと考えられています。
 さて、もう一つパルサーを理解するうえで重要なのは、「高速回転」です。当然ですが、全ての星は自転しています。地球はもちろん、太陽も自転しています。自転しているということは、自転軸があるというとことです。地球の自転軸は北極と南極を結ぶ線ですね。
 ここで重要なことは、
自転の北極・南極と、磁石の北極・南極は違うということです。皆さん知ってました? 地球儀上の皆さんが普通に北極や南極と聞いて連想するのは、自転軸の極です。磁石の極はそこからちょっとずれていて、確か磁極の北極はカナダの北のほうだったと記憶しています。なので、カナダやアラスカで方位磁針を使う時には気をつけましょう。というか、その辺りでは使い物になりません。
 磁極の北極と、自転軸の北極が異なるということは、磁極の北極が自転に従って回ってるということですね。で、ジェットは磁極の北極から噴き出している。という事は、ジェットも回転しているということです。図で表すと以下のようになります

 つまり、パルサーと地球の位置関係によりますが、パルサーの回転に従って、パルサーからのジェットが周期的に地球を照らすことになります。まるで、港の灯台のサーチライトのように。これが、パルサーのメカニズムです。

 つまりパルサーとは、中性子星から噴き出すジェットが中性子星の自転によって周期的に地球を照らすことによって起こる現象だということです。これで、あのきれいな周期性も説明できるわけです。でもここでまだちょっとした疑問が残ります。確かパルサーの周期は1秒から、短いのは1000分の1秒でしたよね。ってことは、パルサーは1000分の1秒で一回転するほど超高速で自転しているという事になります。こんなに早い自転って本当にあるの?
 結論を先に言ってしまうと、あります。逆に、高速自転じゃないとおかしいんです。その理由は
「角運動量保存則」にあります。

 角運動量とは、

 P = r × mv   角運動量 = 距離 × 質量 × 速度

で表される物理量で、理由はともかく保存します(変化しない)。中学校の時に「エネルギーの保存則」というのを習ったと思いますが、まぁ、それと同じようなものだと思ってください。
 角運道量の保存則は、例えばフィギュアスケートを連想するとわかりやすいです。フィギュアスケートの選手は、氷の上でクルクルと回転します。その回転をしている時に、広げていた腕をぎゅっと縮めると、回転速度は上がりますよね。あれは角運動量の保存なんです。4回転ジャンプで有名な安藤美姫選手とかも、ジャンプする時は腕を縮めて回転していますよね。

  

 パルサーが高速回転するのも同じ理由です。中性子星とは、もともと大きかった星が最終的につぶれてできた星です。でも、つぶれていく課程の中で、角運動量は保存する、つまり角運動量は変化しない。上の公式を見ながら考えると、角運動量は変わらないのに、距離は小さくなって(つぶれて小さくなってるんだからね)、質量はほとんど変わらない。となると、速度を大きくするしかない! ということで、中性子星が高速回転をしているというのは、ごくごく自然なんです。

 さて、こんなパルサーがはじめて発見されたのは1967年、発見したのはなんと当時大学院生の女子学生、
ジョスリン・ベルという人です。当時指導教官だったヒューイッシュの指導の下、天体観測をしていた時に偶然発見したのです。このパルサーの発見は、天文学上で非常に大きな意味があるため、ノーベル賞が与えられたのですが、なんと受賞したのは指導教官のヒューイッシュ。ベルはノーベル賞をもらえませんでした。確かに、指導教官の指示の下に行われた観測だったし、ヒューイッシュがノーベル賞を受賞したことに異議はありません。しかし、肝心の発見者であるベルにノーベル賞が与えられなかったことは、成歩堂龍一風に「待った!」「異議あり!」です(成歩堂龍一についてはCAPCOM「逆転裁判」のサイトを参照、超オススメのゲームです)。この観測はパルサーを発見することを目的としたものではなかったこと、それでも偶然にも発見できたのは、ベルの洞察力や注意深さがあったからでしょう。当時はまだ大学院生だったというのも、ノーベル賞を逃した一つの理由になっているという指摘も見逃せません。発見者のベルにもノーベル賞を与えるべきであったという批判は、今なお根強く残っていますし、私自身もそう思います。
 ところで、女性研究者が宇宙からの重要な信号をキャッチしたけれども、その功績は上司に取られてしまったって、どっかで聞いたことある展開じゃないですか?そうです、映画
「コンタクト」です(コンタクトについては「書籍紹介」を参照)。おそらくこの映画は、ベルとヒューイッシュのパルサー発見の様子をモデルにしているのだと思われます。

 こんな感じでパルサーについてわかってもらえたでしょうか?残念ながらパルサーは宇宙人からのメッセージじゃなかったわけですが、とても不思議な天体です。宇宙はとてつもなく広いので、ひょっとしたらまだ人類が発見していない天体の中で、もっと不思議な天体があるかも知れません。その中には、本当に宇宙人からの信号がまぎれているかも知れませんね。