宇宙飛行士になるのはどうしたらいいの?


 宇宙は、これからどんどん私たちの生活にとって身近なものになってくるはずです。考えてみてください。ライト兄弟が初めて飛行機で空を飛んだのが約100年前、たった100年で人を月に送ったり、探査機を木星や土星、もっと遠くまで送れる様になったんです。私たちが海外旅行に行くつもりで、ちょっと月まで行ってくる、なんて時代もまもなくやってくることでしょう。
 しかし、そうなるためにはまだまだ課題があります。実際のところ、現在宇宙にいけるのは特別な訓練を受けた
「宇宙飛行士」という職業の人だけです。だから、宇宙飛行士という職業は、かっこいいし、誰もがあこがれる職業なのではないでしょうか? 私は、宇宙飛行士とは、プロ野球選手やプロサッカー選手のように、子供たちの憧れの存在でなければならないと思っています。それは、これからの宇宙開発を支えるのは今の子供たちだから、そして、一般の人たちにとっては難解な「科学」というものの重要さとその意味を広く伝えるためには、「宇宙飛行士」という職業が最適だと思うからです。
 「宇宙飛行士になりたい」「宇宙に行ってみたい」と漠然とでも一度は頭の中をよぎった人はきっと多いことでしょう。でも、普通の人はそこで止まってしまいます。「どうせなれるわけがない」と思っってしまうのでしょうか、実際にどうすれば宇宙飛行士になれるのかを調べて知っている人は以外に少ないはずです。そこで今回は、宇宙飛行士になるにはどうすればいいのかという事について考えてみます。ただし、ここでは、「日本の」宇宙飛行士に限って話をします。アメリカやロシアの宇宙飛行士になるにはその国の国籍を持っていないとだめらしいので、現状ではちょっと無理でしょうからね。

 日本で宇宙飛行士を養成しているところは、もちろんJAXA(宇宙航空研究開発機構)です。現在、JAXAの宇宙飛行士は8人います。そのうち、NASDA(昔のJAXA)が最後に行った宇宙飛行士試験はなんと平成10年、10年も昔の話です(追記:平成20年2月27日に、新たに宇宙飛行士を募集するとの発表がJAXAからありました。募集要項の発表は平成20年4月1日のようです)。この時には、古川さん・星出さん・山崎さん(当時は旧姓の角野さん)の三人が宇宙飛行士に選ばれました。
 このように、宇宙飛行士はめったに募集されません。なぜ、宇宙飛行士を頻繁に募集をしないのでしょうか? それには、色々な理由がありますが、もっとも大きな理由のひとつは
宇宙飛行士1人を養成するには莫大なお金が必要であるということでしょう。したがって、そんなに多くの宇宙飛行士を養成できません。しかし、2004年の1月に、日本は「有人」の方向で宇宙開発を進めていくと発表しました。これは、将来多くの一般人が宇宙へ飛び立つ時代へ向けての第一歩だと思います。宇宙飛行士の毛利さんは「現在、日本の宇宙飛行士は数が少ない」と言っていました(私が毛利さんに直接質問しました)。これからは宇宙の時代、「宇宙に行きたい」と思っていれば、きっと宇宙にいけるはずです では、具体的に、宇宙飛行士になるための条件とはどんなのでしょうか?ここで、前回の宇宙飛行士募集の際の条件を見てみましょう。詳しくは以下を参照してください。また、実際に宇宙飛行士選抜試験を受験して最終選考まで残った人が書いた体験記『中年ドクター宇宙飛行士受験奮戦記』や、少年サンデーコミックス『パスポートブルー』も参考になると思います。

   宇宙に行こう、未来を拓こう [国際宇宙ステーション搭乗] 宇宙飛行士募集


まずは、主な募集条件を見てみましょう。宇宙飛行士になるために最低限必要な条件は


 
1、日本国籍を有すること
 2、大学(自然科学系※)卒業以上であること
    ※理学部、工学部、医学部、歯学部、薬学部、農学部等
 3、自然科学系の研究・設計・開発・などに3年以上の実務経験があること
   (修士号取得者は1年、博士号取得者は3年とみなす)
 4、堪能な英語力があること
 5、心身ともに健康であること
   (身長:149〜193cm 視力:両目とも裸眼0.1以上、矯正1.0以上 など)
 6、協調性等、長期間宇宙飛行士業務に従事できる心理学的特性を有すること


などです。要するに、
理系の大学を卒業して、3年以上働いたら誰でも宇宙飛行士に応募できるわけです。結構、門は広いですね。これは前回の募集条件ですが、宇宙飛行士の古川氏によると、「おそらく次回も大きくは変わらないだろう。条件がゆるくなることはあってもきつくなることはおそらくない」といっていました(こちらも直接本人から伺いました)。だからまず、「宇宙飛行士になりたい」と思っている人は、理系の大学に進学しましょう。あと、宇宙開発の関係者なら誰もが口をそろえて重要だというのは4と6です。まず、
英語が「ペラペラ」であること「英語ができる」程度ではダメ。ペラペラでなければ。だから、宇宙飛行士になりたいと思っている人は、1〜2年くらいは英語圏へ留学した方がいいのかな。 6は、要するに「みんなと仲良く出来る、社交的な人」ということです。ISSという限られた空間で、限られた人物が長い期間生活するわけだから、喧嘩っ早い人はダメ、みんなと仲良くできる人じゃなきゃダメだという事ですね。

 この募集があった時、応募者は864名だったそうです。その中から宇宙飛行士になれたのは3人という事は、倍率は288倍ということですね。どうですか? 高いと思いますか? ちなみに、モーニング娘。の第6期新メンバーオーディションへの応募は12417名で選ばれたのが3名、倍率は4139倍でした。宇宙飛行士になるより、モーニング娘。になる事の方が難しそうですね。

 では、実際の募集の流れを見てみましょう。まずは書類選考と英語検定です。英語検定は、全国6箇所で受検できたそうです。ここで多く人が落とされます。おそらくは「英語力」ででしょう。まずこの最初の審査をパスできたのは195名です。下は25歳から、上は45歳までだそうです。
 ここからが本番、第1次審査は書類審査の約3ヵ月後、筑波で行われました。第1次審査では、
一次医学検査・一般教養試験(筆記)・基礎的専門試験(筆記)・心理適性検査が行われました。古川さんによると、専門試験は「大学入試問題のようだった」らしいです。また、「物理・化学・生物・地学の全てのジャンルを問われるから、それら全てのジャンルにおいての基礎的な知識が必要」とも言っていました。ISSでの宇宙飛行士の任務には、色々な実験が含まれます。それらの実験をきちんとこなせるためには、理系全般にわたっての基礎的な知識は必要なのでしょう。この1次試験をパスしたのは54名だそうです。
 1次試験にパスした人は、更にその約2ヵ月後の2次試験に挑みました。2次試験は筑波宇宙センターで実施され、
2次医学検査と面接試験(心理・英語・専門・一般)
が行われました。この面接で大幅に人数がカットされ、たったの8名にまで候補が絞られました。ここまで来る人は、だれが宇宙飛行士になってもおかしくない人たちでしょう。
 この8人から最終的に宇宙飛行士を選びます。その最終試験は筑波と、アメリカのヒューストンで行われました。内容は、
長期滞在適性検査と面接試験です。この長期滞在適正検査というのは、狭い部屋に閉じ込められて、そこで色々な課題に取り組み、その行動を観察されたらしいです。ISSという狭い空間での生活をシミュレーションしているのでしょう。この最終試験にパスしたのが上に挙げた古川さん・星出さん・山崎さんの3名という事になります。
 ただ、注意しなければならないのは、
次回の試験はきっと試験の方法が変わっているだろう
ということです。特に、2次以降は全く別の試験になっていることでしょう。

 どうですか? 宇宙飛行士になれそうですか? それとも無理そうに感じましたか? 確かに募集段階ではかなり門戸を広く取っていますが、採用までの道のりは長く険しいものですね。それでも、宇宙飛行士とはこれからの職業であることは間違いないので、宇宙飛行士になりたいと思っている人はあきらめてはいけません。きっとチャンスはあると思います。
 では、どんな人が宇宙飛行士になれるのでしょうか? 頭がいい人? 英語がペラペラな人? 確かにそれらは重要な条件ではあると思います。しかし、もっと重要のことは、
「ひと」として尊敬できるかどうかという事ではないかと思います。「たまたま宇宙で、人類最初に宇宙人に会っちゃった時、とりあえず地球の、人類の代表として、そして一人の”人”として、胸をはれるような人間」(『パスポートブルー』11巻72ページより、一部改)、そんな人が宇宙に行くべきなのだと思います。