『アフターダーク』
村上 春樹著 講談社刊 1400円(税別)

あらすじ
「真夜中から空が白むまでのあいだ、どこかでひっそりと深淵が口を開ける」(本書帯より)
ある日の深夜12時前から翌朝7時前までの間に、眠れない妹マリと眠り続ける姉エリの姉妹に起こる出来事が「空を高く飛ぶ夜の鳥の目を通した私たち」の視点で語られる。

感想
いつもの春樹さんの小説とは少し趣がちがうなあというのが読みはじめての印象。その特徴でもある比喩的な言い回しが極端に少ないし、何を意図して上空からとらえた光景として物語をすすめているんだろう?春樹さんの小説はいつもそうなのだけど、そこに深々と横たわる謎を解きあかそうなんてことをしてはいけない。「わけわかんねーよ」という感覚も楽しめなくては、彼の小説のよさはきっとわからないと思う。でもこの話には、なにかメッセージがこめられてる気がしてならないんだな。まだちっともわからないんだけど。もうしばらく寝かして(笑)もう一度読み直してみようと思う。



『図書館の神様』
瀬尾 まいこ著 マガジンハウス刊 1200円(税別)

あらすじ
高校時代の出来事で心に傷を負った清(きよ。女性です)は、高校の講師。そしてお菓子作り教室の先生、浅見さんと不倫をしている。まだたまに心身のバランスを崩してしまうが、やりたくもない文芸部の顧問をいやいやながら引き受け、たった1人の部員である垣内くんと心を通わせるうちになんとなく自分を取り戻して行く。

感想
なんつうことのない、これといって盛り上がりのないお話。なのに、読みはじめたらぐいぐい引き込まれてあっという間に読んでしまった。なんていうことのない物語って、著者の自己満足で妙に文体が凝ってたり、かっこつけて書いてあったりして、ただイタイまま終ってしまうことが多いんだけど、これはまったくそういうものがなかったのがよかった。とても素直な読みやすい文章。清ががんばり過ぎてないところも好感が持てた。でも浅見さんのことはどうしても好きになれなかった。やさしぶってるけど、ただの自己ちゅーな男じゃんか。けっ。それにくらべて垣内君のしなやかなことよ。清とのゆるーい会話に彼の成熟度が表れていて、いい感じだ。



『キャッチャー・イン・ザ・ライ』
J.D.サリンジャー著 村上 春樹 訳 白水社 1600円(税別)


あらすじ
J.D.サリンジャーの不朽の青春文学『ライ麦畑でつかまえて』が、40年ぶりに新しい訳で生まれ変わった(…らしい)。退学処分となった16歳のホールデン・コールフィールドが、学校の寮を出て家に帰りつくまでのお話、、、かな。簡単に言えば。

感想
いや、うるさいうるさい。(笑)このホールデンくん。文句ばっか言ってる男はきらいよっと何度も途中で本を閉じたくなった。なにかにつっかかりたくて仕方ない、まわりの人間すべてにケチつけたい、という、思春期にありがちな不安定な精神状態が余すことなく語られている感じ。春樹さんの訳でなければ読み通せなかったかもしれない。大好きな妹のフィービーとの最後のシーンだけは、好きでした。ここだけは、じんときた。

『PAY DAY !!!』
山田 詠美 著 新潮社 1500円

あらすじ
ハーモニーとロビン、アフリカ系の父とイタリア系の母との間に生まれた双子の兄と妹。17歳のふたりに訪れる、別れ、新しい出会い、恋。そして、9月11日、ニューヨークの忌わしい出来事。大切な人の死。さまざまな問題にぶつかっては成長していくふたりと、ふたりをとりまく人々を、ゆったり美しいアメリカ南部を舞台に描く。

感想
待ってました!の、詠美さんの新刊♪読み終わるのがさみしかった〜。ハーモニーとロビン、それぞれの視点から交互に物語が進められます。
911、ニューヨークで起こったテロで愛する者を失った人々。物語の軸はそこにあるんだけど、決してしめっぽくもないし、説教くさくもない。そこのとこは、さすが詠美さんだと思います。詠美さんのご主人は、ニューヨーク生まれの軍人さん。あのテロや、今起こっている戦争については、わたしなんかには想像できないほど、胸に迫るものがあるのだろうと思います。そして誰よりも、口先だけの正義や道徳が意味をなさないこともご存知なんだろうと。理不尽で圧倒的な暴力に巻き込まれながらも、恋人との関係に思い悩んだり、父親の新しい恋人に心穏やかでなかったり…。いつもと変わらない日常がそこにある安心感がやわらかに描かれています。

ディス イズ マイ ペイデイ!! イッツ グッデイ フォーペイデイ!! 少なくとも給料日には、人は幸せになれる。う〜ん。ほんとだよね〜。詠美さんの人を見つめる目は本当にやさしい。

心に残った一文
ロビンが、恋人ショーンに向かって言う言葉。
「約束って、未来のためにあるんじゃないのよ。今のこの瞬間を幸せにするためにあるのよ」


『遠い海から来たCOO』
景山 民夫 著 角川文庫 520円

あらすじ
海洋生物学者の父・徹郎とフィジー諸島のパゴパゴ島に移り住んで3年になる12歳の洋助は、ある朝、珊瑚礁の潮だまりにひとつの生命を発見した。それは、6000万年以上も昔に死に絶えたはずのプレシオザウルスの赤ん坊だった。愛らしい黒い瞳で「COO」と鳴く幼い恐竜と少年との至福の日々がはじまった。だが、間もなくその平和に忍び寄る黒い影が…。

感想
主人公の洋助がとにかくいいです♪そして、彼をとりまく大人達や動物たちも…。自分に息子がいたら、こんなふうに心優しくたくましく育てたいなあ。COOを命がけで守る洋助は、もはや12歳の少年ではありません。フランス政府の核実験問題がからんでくるあたりからのアクションシーン(?)はどきどきするけど、洋助のたくましさ、前向きさに支えられて、重苦しくもなく痛快です。最後のエピローグは涙が出ちゃうぞっ。



『ロミオとロミオは永遠に』
恩田 陸 著 早川書房 1800円

あらすじ
日本人だけが地球に残り、膨大な化学物質や産業廃棄物の処理に従事する近未来。それを指導するエリートへの近道は、大東京学園の卒業総代になること。しかしそこは、前世紀サブカルチャーの歪んだ遺物と閉ざされた未来への絶望が支配するキャンパスだった。

感想
はじめは、こういうSFチックなのってちょっと苦手な分野だなあと思ったんです。しかも、483ページ、二段組!(笑)でも大好きな恩田陸さんだし…と思って読みはじめたら…これがおもしろいのなんのって!ありえねーーと思いつつもどんどん引き込まれていくうちに、いや、いまの状態で世界が動いていくとすれば、まったくあり得ない話じゃないかもなと思い直しました。おおこわ!
クライマックスは、本当に心臓がどきどきしてるのが自分でもわかるくらい。そして主人公のアキラとシゲルにすっかりほれちまったわたしなのでした♪

TOP

HOME